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―― ナオの場合03
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ある日、以前に白鳥さんを迎えに来た紺色の祭服を着た神官様が私の元にやってきました。
「最近、白鳥さ……アイリ様は来てらっしゃらないですよ?」
実は、白鳥さんはとても偉い方になったようで、私が「白鳥さん」というと、皆さんとても嫌な顔をするのです。
なので、皆さんに習って私も「アイリ様」という練習をしているのですが、油断していると……つい口が滑ってしまいます。
私が口の中で「アイリ様、アイリ様」と練習していると、グイっと手を引っ張られて、顔に巻いているスカーフを取られてしまいました。
「!! キャッ、返して下さい!!」
「!………失礼しました。ナオ様。ああ、やはり、貴女様が……」
神官様は、私を見つめて何やらブツブツ言っています。
若干視線が合わなくて、ちょっと怖いです。
「美しい……本物の“神の花嫁”。嗚呼、恋に狂った愚かな男をお赦しください。貴女様が居ると、私の愛する……アイリ様のお立場が……大変困る事になるのです」
狂気に、愛に狂った目。
私は遠い昔にこういう目をずっと、ずーーっと見ていた事があるような……。
そういうえば……私は
どうして、この世界と馴染んだんでしょう?
どうして、この世界に受け入れられたのでしょうか?
――“神の花嫁”―?
か み の は な よ め ?
私は、意識を手放しました。
気がつくと、知らない場所でした。
知らない場所のはずなのに、なぜか懐かしい場所。
目の前には、黒いローブを来た魔術師様がいらっしゃいました。
どうやら彼が、お城で命を狙われた私を救ってくださったようです。
「ぜひ、このまま森の神殿にお住み下さい」
折角お城の仕事も慣れた所だったのですが、あの神官様が私がいると白鳥さんが困るっておっしゃってました。
それに、例の“神の花嫁”という言葉も気になります。
行く所のない私は、魔術師様にお世話になる事にしました。
森の神殿は全然使われてなかったらしく、お掃除のやり甲斐のある場所でした。
魔術師様は何もしないで下さいとオロオロとされていましたが、お世話になっているのに、そういう訳にもいきません。
神殿には、ほとんど一人でいるので顔も隠す必要もなく、足首まで伸びた髪はぐるんぐるんに束ねています。
(切っても切っても、その長さになるのです。はっきりいって邪魔です)
魔術師様は、素敵なドレスや宝石を沢山用意してくださいましたが、恐れ多い事です。
私は、眼鏡の人が下さったワンピースとエプロンの仕事着で、あっちにこっちに動き回りました。
そんな私の姿を魔術師様は、とても残念そうに見られるのですが……楽なんですよ?
それに魔術師様は私の為に食料も沢山用意して下さって、本当に至れり尽くせりで申しわけないのです。
神殿のお掃除も粗方終わったら、今度は“納豆”作りに大忙しです。
あれほど大好きだった食べ物なのに材料が“大豆”しかわからなくて、試行錯誤の繰り返しでした。
大豆に近い豆をゆでて、何日か放置をしていたら、透明の糸が出て納豆っぽくなった!
と、私のテンションは鰻登りです。
いざ! 実食! と、口にいれようとしたら、目の前から“納豆もどき”が、消えて吃驚。
後ろを振り向くと涙目の魔術師様に「やめてください」と叱られてしまいました。
……今度は、見つからないように頑張ります。
時々、白鳥さんの様子も聞きました。
すると、魔術師様は一瞬黙り「幸せそうですよ。(頭の中が)お花畑で」と、ニッコリ笑われるのです。
それを聞いて安心しました。こちらは緑が多い森の中ですが、お城の神殿はお花が咲き乱れているのでしょうか。
料理・洗濯・掃除・時々納豆作りと神殿での生活も、楽しいものになっていました。
私の必要なものを用意してくださる魔術師様には、本当に頭が上がりません。彼は向こうの世界でのネット通販みたいです。
(ここは森の中なのに、彼は有名な密林さんなのでしょうか? 異世界マジック、おそるべし!)
でも、お城で働いていた時代に貯めたお金で、外に出てウインドショッピング……なんてのもしたいんですけど……なぜか、私の防衛本能が働いて外に出たいと魔術師様に言えません。 ……どうしてでしょう?
気がつくと、私がこの世界に来て1年が経ちました。
魔術師様は落ち着かない様子で、時々空を見上げて過ごしています。
何かあるのか訪ねてみると、真剣な表情をして「3日後に、何事もなければと……こういう時、祈るのは……誰に祈ればいいのでしょうか」と、返されました。
そして――3日が経ちました。
今日も朝から魔術師様がいらして、いつも以上に顔色が悪かったのです。
心配になって、声を掛けようとした……その時!!
ドンッ!!
!!!!
神殿に、眩しい光が落ちたのです。
眩しい光の中……現れた彼を見て
私は!
私は!!
「いやあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
静かな森の中。
私の悲鳴が、こだましたのでした。
「最近、白鳥さ……アイリ様は来てらっしゃらないですよ?」
実は、白鳥さんはとても偉い方になったようで、私が「白鳥さん」というと、皆さんとても嫌な顔をするのです。
なので、皆さんに習って私も「アイリ様」という練習をしているのですが、油断していると……つい口が滑ってしまいます。
私が口の中で「アイリ様、アイリ様」と練習していると、グイっと手を引っ張られて、顔に巻いているスカーフを取られてしまいました。
「!! キャッ、返して下さい!!」
「!………失礼しました。ナオ様。ああ、やはり、貴女様が……」
神官様は、私を見つめて何やらブツブツ言っています。
若干視線が合わなくて、ちょっと怖いです。
「美しい……本物の“神の花嫁”。嗚呼、恋に狂った愚かな男をお赦しください。貴女様が居ると、私の愛する……アイリ様のお立場が……大変困る事になるのです」
狂気に、愛に狂った目。
私は遠い昔にこういう目をずっと、ずーーっと見ていた事があるような……。
そういうえば……私は
どうして、この世界と馴染んだんでしょう?
どうして、この世界に受け入れられたのでしょうか?
――“神の花嫁”―?
か み の は な よ め ?
私は、意識を手放しました。
気がつくと、知らない場所でした。
知らない場所のはずなのに、なぜか懐かしい場所。
目の前には、黒いローブを来た魔術師様がいらっしゃいました。
どうやら彼が、お城で命を狙われた私を救ってくださったようです。
「ぜひ、このまま森の神殿にお住み下さい」
折角お城の仕事も慣れた所だったのですが、あの神官様が私がいると白鳥さんが困るっておっしゃってました。
それに、例の“神の花嫁”という言葉も気になります。
行く所のない私は、魔術師様にお世話になる事にしました。
森の神殿は全然使われてなかったらしく、お掃除のやり甲斐のある場所でした。
魔術師様は何もしないで下さいとオロオロとされていましたが、お世話になっているのに、そういう訳にもいきません。
神殿には、ほとんど一人でいるので顔も隠す必要もなく、足首まで伸びた髪はぐるんぐるんに束ねています。
(切っても切っても、その長さになるのです。はっきりいって邪魔です)
魔術師様は、素敵なドレスや宝石を沢山用意してくださいましたが、恐れ多い事です。
私は、眼鏡の人が下さったワンピースとエプロンの仕事着で、あっちにこっちに動き回りました。
そんな私の姿を魔術師様は、とても残念そうに見られるのですが……楽なんですよ?
それに魔術師様は私の為に食料も沢山用意して下さって、本当に至れり尽くせりで申しわけないのです。
神殿のお掃除も粗方終わったら、今度は“納豆”作りに大忙しです。
あれほど大好きだった食べ物なのに材料が“大豆”しかわからなくて、試行錯誤の繰り返しでした。
大豆に近い豆をゆでて、何日か放置をしていたら、透明の糸が出て納豆っぽくなった!
と、私のテンションは鰻登りです。
いざ! 実食! と、口にいれようとしたら、目の前から“納豆もどき”が、消えて吃驚。
後ろを振り向くと涙目の魔術師様に「やめてください」と叱られてしまいました。
……今度は、見つからないように頑張ります。
時々、白鳥さんの様子も聞きました。
すると、魔術師様は一瞬黙り「幸せそうですよ。(頭の中が)お花畑で」と、ニッコリ笑われるのです。
それを聞いて安心しました。こちらは緑が多い森の中ですが、お城の神殿はお花が咲き乱れているのでしょうか。
料理・洗濯・掃除・時々納豆作りと神殿での生活も、楽しいものになっていました。
私の必要なものを用意してくださる魔術師様には、本当に頭が上がりません。彼は向こうの世界でのネット通販みたいです。
(ここは森の中なのに、彼は有名な密林さんなのでしょうか? 異世界マジック、おそるべし!)
でも、お城で働いていた時代に貯めたお金で、外に出てウインドショッピング……なんてのもしたいんですけど……なぜか、私の防衛本能が働いて外に出たいと魔術師様に言えません。 ……どうしてでしょう?
気がつくと、私がこの世界に来て1年が経ちました。
魔術師様は落ち着かない様子で、時々空を見上げて過ごしています。
何かあるのか訪ねてみると、真剣な表情をして「3日後に、何事もなければと……こういう時、祈るのは……誰に祈ればいいのでしょうか」と、返されました。
そして――3日が経ちました。
今日も朝から魔術師様がいらして、いつも以上に顔色が悪かったのです。
心配になって、声を掛けようとした……その時!!
ドンッ!!
!!!!
神殿に、眩しい光が落ちたのです。
眩しい光の中……現れた彼を見て
私は!
私は!!
「いやあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
静かな森の中。
私の悲鳴が、こだましたのでした。
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