神の花嫁

果桃しろくろ

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―― ナオの場合02

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 ――翌朝

 冷たい床の上でそのまま寝てしまったのですが、なぜか何時もより身体が軽くて調子がいいのです。
 生まれて初めて感じた、絶好調っていうやつでしょうか?
 ストレッチをしていると綺麗な顔をした眼鏡の男性がやってきました。
 どうやら私は、お城で下働きとして住まわせてもらえるそうです。
 白鳥さんも『ぜひ』と勧めてくれたらしく、お給金も、多少ですが出るとか!? 初めての仕事にドキドキしています。


 作業着として渡されたのは、黄土色のワンピースに白いエプロンと大判のスカーフ。
 女性で短い髪と黒髪は目立つらしく、スカーフを頭に巻いて隠すようにと言われました。
 ワンピースは、ぶかぶかで胸から足にかけてスゥスゥとして頼りなかったのですが、久しぶりの女の子らしい格好に少しだけ弾むような気持ちになりました。

 初めての仕事は失敗の連続でした。
 でも、折角、白鳥さんが私の為を思って勧めてくれた仕事。
 投げ出すわけには、いきません!
 笑顔! 笑顔! で、乗り切っていきます。
 それに時々ですが、心配してくれた白鳥さんが私の所に会いに来てくれるのです。

「本当は、会ったらいけないんだって。だから、内緒にしていてね」

 白鳥さん、良い人すぎません? 学校での人気も頷けます。私もファンになってしまいそう。

 彼女は、今、神殿に住んでいるようで、そこはとても厳しく全然自由がないそうです。
 周りの人も知らない人ばかりで、とても冷たく、私がここに居るだけで頑張れると言ってくれました。
 そうやって恥ずかしそうに話す白鳥さんはとても可愛らしく、私は白鳥さんの為にも、一生懸命頑張ろうと決意を新たにしたのです。

(白鳥さん、ほんと推せます!)

「アイリ様」
「!」
 
 白鳥さんとの内緒の交流中。見知らぬ誰かの声がしました。
 咄嗟に白鳥さんを背に庇い、私が彼女を引き留めたのだと言おうとした時、白鳥さんは私を押しのけて「やだ、見つかっちゃった」とその声の持ち主に駆け寄りました。

(もしかして、庇ってもらった?!) 

 今、私が何かを話して白鳥さんが叱られる事になってはいけません。
 どうしていいのかわからなくて、オロオロとしていると、視線を感じたのです。

「……」
「……」

 紺色の祭服を着た綺麗な顔をした男の人は、私の方をじっと見ていて――それが、とても恐ろしかった。
 白鳥さんと親しく話していたのがダメだったのかもしれません。

 このことがあって以来、白鳥さんは私の元に来てくれなくなりました。
 でも、時より耳にはいる噂話では、皆さんに愛されていると。
 
(ああ、よかった)

 私は安心と少し誇らしい気持ちになり、ほっと一息をついたのでした。
 


 “仕事をして、少しの食事、そして寝る”

 というのが、私の下働きとしての生活でした。
 食事は、水とフランスパンの様な固いパンと豆類が少々。
 たまに、干し肉のようなものが付いてきますが、干し肉は固くて中々食べられないので苦手です。
 しかし、あれ程苦労した向こうの世界での食事より、粗末なこちらの食事は、何故かとても私の身体に合いました。
 “馴染む”っていうのが合っているのかもしれません。
 充実した食生活の中、付いてくる豆で愛しの“納豆”をどうにかして作れないものかと、呑気に過ごしていたのですが――困った事になったのです。

「髪が……」

 私の髪は、真っ黒だったはずなのに。
 生え際が“薄い金色”になってきました。
 もの凄く格好悪いです。
 しかも、呪いの人形みたいなスピードで伸びていくのです。怖い。
 あれほど部活で焼けて真っ黒だった肌も、どんどん白くなっていますし、どうしたものかと悩み中です。
 容姿の変化には吃驚してますが、体調はすこぶる快調です。
 ジャンプも楽しくて何度も出来ちゃう。
 体も軽く、余りにも軽くて、空も飛べそうって思っちゃってます。
 という訳なので、多少の変化なんかで白鳥さんに心配をかけるわけにはいきません。
 白鳥さんを遠目でしか見かけなくなったのですが、私は見てしまったのです。なんと! 金髪の男性と抱き合っていたのです! 金髪の男性は、なんと! 王子様らしいのです。お二人は恋人なんでしょうか? 前は別の髪色の人だった気がしますが……見間違いでしょうね。
 しかし、異世界での恋だなんて――物語みたいでドキドキします。

 私は支給された大判のスカーフでなるべく顔を隠して、髪と肌を見られないように過ごしました。



 この世界に来て、数ヶ月が経ちました。

 この頃になると、私の髪の毛は元の色が無くなっていました。
 肌も真っ白になってしまい、あれ程ガリガリだった体型も女の子らしくなってきました。
 正直に白状しますが、憧れのボインの一歩手前で……ちょこっと、ほんと、ちょこっとだけですが浮かれています。
 でも、困りました。
 ちょっとこの姿……元の世界の両親に私と気付いてもらえるか心配な所です。
 この髪の色を見て、グレたと思われたらどうしよう。

 いえ、それより――

(帰れるのかな)

「はぁ……」

 いけない。

『ため息ばかりついていたら、幸せが逃げるわよ』

 と、お母さんがいつも言っていました。 
 辛い事があると、いつも笑顔のお母さんに励まされたものです。
 顔をパチンと叩いて、ニコニコと笑顔を作りました。

 (頑張ろう!) 

 また新たに誓いをたてて、今日も頑張って洗濯をするのでした。

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