上 下
62 / 67
ユキと千夜 気に食わないけど実力は認めてるケンカップル

片方がもう片方をエスコートするまで出れない部屋

しおりを挟む
「今度は部屋に何もないね」
「ここで何をしろっていうんだろうね」

 机も椅子もないただの空間だ。
 今度は何をさせられるのだろうか。

「カードあった。ええっと『片方がもう片方をエスコートしないと出れない部屋』だってさ。私がエスコートしてあげるよ」
「どうして。僕がするよ」
「千夜。エスコートの仕方わかるの?」
「……多分」

 正直やったことない。というかほとんどみたこともない。
 できるかはわからない。
 でも、エスコートされるよりはエスコートするほうがいい。

「多分って。まあやってみる? できるか知らないけど」

 めっちゃ見下されている。
 腹立つ。
 めっちゃ腹立つ。

「やってみせるよ」

 ユキの左側に立ち、右手を出す。

「お手をどうぞ。お嬢様」
「あら、ありがとう」

 そっと手を重ねられた。
 無駄に所作が綺麗だ。

 ユキの手を握ったままゆっくりと歩き出す。
 ユキは静かに半歩後ろをついてくる。
 良いとこのお嬢様みたいに見える。慣れてるっぽい。

 扉は目と鼻の先にあるはずなのに、妙に遠く感じた。
 ユキを引っ張らないよう、それでいて遅くなりすぎないよう気をつけて歩く。

 最後に扉を開いて先に進むよう手で促す。

「ありがとう」
「どういたしまして」

 ユキの後から自分も入って完了だ。
 終わってみるとビックリするくらい疲れていた。

「まあ良かったんじゃない?」
「上から目線だね」
「だってお嬢様だから」

 もしユキがお嬢様なら、ユキの付き人にだけはなりたくない。
 文句が多そうだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

幸介による短編恋愛小説集

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:2

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:42,285pt お気に入り:3,695

ぶち殺してやる!

現代文学 / 完結 24h.ポイント:397pt お気に入り:0

チート鋼鉄令嬢は今日も手ガタく生き抜くつもりです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,237pt お気に入り:134

詩集「支離滅裂」

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:349pt お気に入り:1

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:63,438pt お気に入り:6,227

処理中です...