家帰ってきたら、ケーキの彼女が首吊って死んでた。

橘スミレ

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三品目 胴

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 次はどこを食べようか。
 それはもう決まっている。胴体だ。
 四肢を食べたので残るは胴体と頭。頭は最後に食べたいので必然的に胴体と決まる。

 もっちりとした肌に歯を立てるとやわらかい甘みとほのかな酸味が広がる。ここは腕や脚と変わらない。胴体はクッキーのようにほろほろとした感じだ。やわらかくしっとりとしていてとっても美味しい。

 腹を食べれば内臓が出てくる。でもその前に私は包丁でモルの胸部を切り取った。ゆらすとプルプルとふるえる胸は食べるとつるんととけていく。
 これはプリンの食感だ。ふんわりとした香りがする。きっとこれは卵。卵のふんわりとした感じとつるんとした甘さ。とっても美味しい。中に詰まったとってます甘い部分はカラメルかもしれない。どっしりずっしりとした幸福感が詰まっていてとても美味しい。

 そして今度こそ内臓に向き合う。とりあえず 胃から食べてみる。
 繋がってる両端を切り離して一口食べてみる。
 酸っぱい。指先がきゅっとなる。その後にやってくる幸福の甘み。さらに大海原のような青くて白い味もやってくる。これは……塩味?

 モルは塩は酸味と似てるけどきゅっとなるというよりはびっくりする味と言っていた。そして透き通るような青い味であり、光を受けて輝く白いような味でもある。そうも言っていた。
 かすかに感じるこの味はきっと塩の味だ。
 美味しい。

 無限に食べれそうだがモルの胃以外を食べるなど考えられないのである分だけ食べてしまう。
 この塩味が癖になる。美味しかった。

 次は迷ったが腸にした。興味本位で伸ばしてみたらとっても長かった。
 ……こんなグミあったな。モルがよく食べていた。生産中止が決まった時はそこら中のスーパーを駆け回って少しずつ買ってまわったっけ。
 懐かしい思い出だ。

 だが腸の食感は全然違った。ムースのようなやわらかい感じ。ほくほくとした甘さ。これは栗とさつまいもだろう。
 お正月に食べる栗きんとんの名残がある。ほとんどモルが食べたのであまり口にすることはなかったが、たまに食べた栗きんとんがすごく良い食感をしていたのをよく覚えている。私も結構好きだった。
 でも腸はそれと比べてもっととろりとしていて、口の中でとけていく。きっとクリーミーってやつなのだろう。あんなに長いのにクリーミーとやらのおかげですぐになくなってしまう。

 さてさて、お次は肝臓だ。
 これまた丁寧に取り出して食べるとふわふわで甘酸っぱい味がした。
 これはマフィン? 寒い中、毛布に包まれたような甘さと酸っぱさの共存の仕方をしている。寒くて指がきゅっとなったような酸っぱさ。毛布でやさしく包まれて暖かくなるようなほのかな甘さ。どちらも良い感じである。

 次は膵臓にした。どんな味がするのだろう。
 おそるおそる口にすると少し乾いた、それでいてずっしりと甘い味がした。これはドーナツ。

 モルと学校帰りによって、一緒に勉強しながら食べたときの食感だ。勉強しつつドーナツをほおばる可愛いモルを観察していた。幸せそうなモルをみているとドーナツが甘くなった気がしていた。

 膵臓ドーナツも食べきったら、今度は肺を食べる。スッと歯を立てるとほろほろと崩れ落ちた。
 味はほんのりと幸せが広がるような感じ。
 空気のようなこれはきっとモナカ。ふわふわとした食感がそのまま味にも表れている。
 食べていればそのまま空に浮かんでいけそうだ。
 私が行くのは地の底だろうというのに、今にも空の向こうは浮き上がっていきそうだ。

 残った臓器も全て食べ、骨のチョコレートと胴体のクッキーも食べきったら残ったのは頭だけだ。
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