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四品目 頭
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ついにこの時がやってきてしまった。
とうとうモルの頭を食べなければならない。
これを食べれば本当にモルが私と一体化してしまう。それは少し怖くて、寂しい。でもやらなくてはならない。私はモルを弔わなければいけないのだ。
どこから食べるか色々迷ったが、ここは心を決めてほおにかぶりついた。
ふわふわとやわらかいソフトクリームのような食感がした。とっても幸せが詰まっている。
顔を離してみればかなりモルらしさが消えている。
もう綺麗な姿のモルはいなくなってしまった。でもモルがかなり私と一体化した。
汚れるたびに一体化できるのだ。私は首とほおのチョコレートとソフトクリームをたっぷり食べた。
そして次に目を食べることにした。
キッチンからスプーンを取ってきて、くりぬいた。ゆらすとプルプルするそれはプリンかと思ったが違った。
シュワシュワと弾けて消えるような儚げな甘みと酸味。これはソーダ味のゼリーだ。
音がしないのに耳の奥からシュワシュワと音がしてくる。これはきっと昔モルが作ってくれたゼリーの音だ。
私が風邪を引いた時、モルはゼリーを作ってくれた。果物の沢山入ったソーダのゼリー。つるつるでさっぱりしてて、食べれば風邪が吹き飛ぶような味。元気になれる味だ。
目はこんなに元気になれる味をしていても、モルは中で疲れていたのだ。少し悲しくなる。でもモルに伝えるべきはお疲れ様だ。今まで耐えて、頑張ってお疲れ様なのだ。
両目を食べながら心の中でお疲れ様と唱えた。
ついで食べたのは髪の毛だ。
つやつやでさらさらな大好きな髪。モルの一番好きなところは? と聞かれたら絶対に髪というだろう。
気になるお味は意外なことにマシュマロのようにふわふわしていた。もっとパリッとしているものだと思っていたから意外だ。美味しいけどね。
食べるたびにふわふわと沈み込むような幸せに囲まれていく。見た目も美しく味も良い。これは反則じゃあなかろうか。
美味しすぎてあっという間になくなってしまった。いや、私と一体化してしまった。
次に私は舌を食べた。口を開いて噛みちぎるとグミのような食感がした。味は恋人との会話のように甘ったるい。でもそれが良い。噛めば噛むほど甘くなるのが話せば話すほど甘くなる恋人との会話と似通っている。
モルはグミが好きだから、食べれたらハマっていただろうなと思う。
歯はカヌレのようだった。外側は硬く中はしっとりやわらかい。外側のぎゅっと押し込められた幸せも、中のふわふわとした幸せも、どちらも良い。甘くて美味しい。幸せになれる味がしている。
モルはカヌレを何か特別なことがあった日に食べていた。例えば誕生日。例えば大きな行事をやりきったとき。例えばはじめてキスした日。
今日も特別な日。カヌレにぴったりな日だ。
そして最後に残った脳。そっと口をつければクリーミー? な甘さが広がった。これはきっと生クリーム。脳がこんなに甘いなんてびっくりだ。
もしかしたらモルは死んだとき幸せに包まれていたのかもしれない。甘くなれるくらい、最期は幸せだったのかもしれない。だってこんなに幸せな味がするのだから。
いや、これは私の願い、エゴだ。モルに幸せな最期を迎えて欲しいという私のエゴだ。
それに気がついたのはモルを跡形もなく食べきった時だった。
とうとうモルの頭を食べなければならない。
これを食べれば本当にモルが私と一体化してしまう。それは少し怖くて、寂しい。でもやらなくてはならない。私はモルを弔わなければいけないのだ。
どこから食べるか色々迷ったが、ここは心を決めてほおにかぶりついた。
ふわふわとやわらかいソフトクリームのような食感がした。とっても幸せが詰まっている。
顔を離してみればかなりモルらしさが消えている。
もう綺麗な姿のモルはいなくなってしまった。でもモルがかなり私と一体化した。
汚れるたびに一体化できるのだ。私は首とほおのチョコレートとソフトクリームをたっぷり食べた。
そして次に目を食べることにした。
キッチンからスプーンを取ってきて、くりぬいた。ゆらすとプルプルするそれはプリンかと思ったが違った。
シュワシュワと弾けて消えるような儚げな甘みと酸味。これはソーダ味のゼリーだ。
音がしないのに耳の奥からシュワシュワと音がしてくる。これはきっと昔モルが作ってくれたゼリーの音だ。
私が風邪を引いた時、モルはゼリーを作ってくれた。果物の沢山入ったソーダのゼリー。つるつるでさっぱりしてて、食べれば風邪が吹き飛ぶような味。元気になれる味だ。
目はこんなに元気になれる味をしていても、モルは中で疲れていたのだ。少し悲しくなる。でもモルに伝えるべきはお疲れ様だ。今まで耐えて、頑張ってお疲れ様なのだ。
両目を食べながら心の中でお疲れ様と唱えた。
ついで食べたのは髪の毛だ。
つやつやでさらさらな大好きな髪。モルの一番好きなところは? と聞かれたら絶対に髪というだろう。
気になるお味は意外なことにマシュマロのようにふわふわしていた。もっとパリッとしているものだと思っていたから意外だ。美味しいけどね。
食べるたびにふわふわと沈み込むような幸せに囲まれていく。見た目も美しく味も良い。これは反則じゃあなかろうか。
美味しすぎてあっという間になくなってしまった。いや、私と一体化してしまった。
次に私は舌を食べた。口を開いて噛みちぎるとグミのような食感がした。味は恋人との会話のように甘ったるい。でもそれが良い。噛めば噛むほど甘くなるのが話せば話すほど甘くなる恋人との会話と似通っている。
モルはグミが好きだから、食べれたらハマっていただろうなと思う。
歯はカヌレのようだった。外側は硬く中はしっとりやわらかい。外側のぎゅっと押し込められた幸せも、中のふわふわとした幸せも、どちらも良い。甘くて美味しい。幸せになれる味がしている。
モルはカヌレを何か特別なことがあった日に食べていた。例えば誕生日。例えば大きな行事をやりきったとき。例えばはじめてキスした日。
今日も特別な日。カヌレにぴったりな日だ。
そして最後に残った脳。そっと口をつければクリーミー? な甘さが広がった。これはきっと生クリーム。脳がこんなに甘いなんてびっくりだ。
もしかしたらモルは死んだとき幸せに包まれていたのかもしれない。甘くなれるくらい、最期は幸せだったのかもしれない。だってこんなに幸せな味がするのだから。
いや、これは私の願い、エゴだ。モルに幸せな最期を迎えて欲しいという私のエゴだ。
それに気がついたのはモルを跡形もなく食べきった時だった。
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