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第3話 狂気の板前
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池から上がってずぶ濡れの二人は、休むことなく先へ進んだ。
なにしろ、暗くて池の大きさも形もわからない。もしかしたら犬と警備員が回り込んで待ち伏せしているかもしれない。だが、その気配は感じられなかった。
木の根につまずいて、二人一緒に転んだ。
「懐中電灯奪ってくればよかったね」
「そこな。山ちゃんなんで奪ってきてくれなかったん。ほんと、気が利かんわー」
「自分だって」
その時、再びやくざの怒号が聞こえた気がした。
「シイッ」
二人は身を伏せて眼球だけを動かした。
「おい、古川よ、おまえ……できねぇのかよ」
声は左側から、カートが通る道のある方から聞こえてくる。しかも、誰かが誰かを怒鳴っている。敵は複数のようだ。
「なんか知らんけど、コガワさんが怒られとる」
「逃げようよ」
「そやね」
二人は身を低くして右手に移動した。
後方からは怒号のほかにも草を刈るような音も聞こえてくる。
「おめえら、もっと早く進めや。まーったく、仕入れ忘れる上に走れもしねぇのかよ」
怒鳴り声はゆっくりで、とくに怒鳴っているわけではないのかもしれない。大声で話しながら罵倒するのに慣れた年配者の声。
「フロントマンじゃないね」
「なんかあれやけど、板さんだってことはわかった」
「マジで刺身にされそう」
そう言う山田のすぐ横の茂みから、白い帽子に白い服を着たおじさんが飛び出してきた。手には出刃包丁、赤い顔に血走った眼。立ち止まって大声で後方に呼びかける。
「親方ー、いましたよー。こっちですー」
包丁を振りながら二人に追い迫る。枝にぶつかろうとも転ぼうとも構わず前進する。そのロボット的な走りに狂気を感じた二人は震えあがって、ダッシュから猛ダッシュにギアチェンジする。
「ヤバいって、おじさん、目がヤバいって」
「絶対ストレスすごいんやって、もう周り見てへんもん」
二人は一応若いだけあっておじさんよりは早かった。急な上りでぐんぐん引き離して、姿が見えなくなったところで左に折れてひた走る。
大きな木の下に差しかかり、休憩のために太い根の陰に身をひそめることにした。
山田が先を歩いていた。そこへ、上から白いものが落ちてきて、ドシャッと山田をつぶして泥に沈めた。
突然のことに紺野は口を開けてただ見ていたが、気がつくと足元に包丁が転がっていた。とりあえず拾っておく。
落ちてきた板前は四つん這いで山田から離れ、その隙に、山田はゴキブリのごとく細やかなホフク前進で紺野の横にたどり着いた。
「山ちゃん、大丈夫?動きキモかったけど」
「くひっ、くひがどほのあひっ」
「何?言ってることわからんわ」
二人の前には息を切らした若めの板前が片膝を立てて座っていた。
「ごめん、ほんとごめんっ」と、なぜか謝っている。「おじさん疲れちゃって、ちょっと休ませて」
「ど、どうぞ」
紺野はふと思った。脱出を開始したのが夜10時半ごろ。どれくらい経ったか正確にはわからないが、11時は回っているだろう。なのに、このおじさんたち、まだ調理白衣着てる……。
「こんな遅くまで働いてたんですか?」
「そうよ、朝ごはんの準備してたの。毎日毎日ね。もうやだ」
「はぁ。しかも、あのセリフ読むように怒号発してるの、板長でしょ?」
「そ。いつもああよ。ほんと、あのおじさんブチ殺したい」
「内部分裂ですか、いいですねー。ボクらにしてみたら都合いいですわー」
「おれっちも一緒に逃げたいわー」
「板長3枚におろしてからですか」
そこで板前は包丁がないことに気づいた。見ると、話の相手が右手に持っている。
「ちょっと、それ、返してくれる?それ、10万したの」
「へー、マジすかー、10万っすかー」わざとらしい声を出しながら、紺野は山田の髪をつかんであとずさる。
「ほんとよ、板さんの包丁高いんだから」
「へー、でもねー、こんなん持って追って来られたらボクらチビりますんでねー、えぇ」
紺野は山田のシャツをつかんで引き上げた。
「行こっ」
「ほがっ」
二人は全速力で板前から離れた。
「くひあはいはいっ」
「言ってることわからんから、黙っといてくれるー」
前方は闇。コケないよう足元に集中する必要がある。
パッと、明かりが灯っておばあちゃんの顔が現れた。
「うわっ」
「ひゃっ」
紺野は転んで、山田はおばあちゃんに突進した。おばあちゃんは避けた。
「松尾さん、ここ照らしてちょうだい」
「はいはい~」
おばあちゃんは二人組だった。
二人の足を手際よくラップで縛ると、松尾さんが言った。
「牛島さん、板さんに電話してくれた?」
「今からするから、せかさないでよ」
おばあちゃんが番号を探す時間は、通話時間より何倍も長かった。
やがて、板さんたちがやって来た。
「まーったく、おばちゃんたちに先越されちまって、浜崎や、おまえ何してたんだよ」
板さん・浜崎は、暗い地面をスマホで照らしながら包丁を探していた。
「ミノちゃんや、あれ出せや」
「はい」
第4の目立たなかった板前が、ビニル袋から何やら長くて太いものを取り出して、ほかの板前に配った。
「よし、叩けや」
板長の命令で、ロボと浜崎とミノちゃんの3人の板前は、足を縛られてうつぶせに横たわる二人の若者を謎の凶器で叩き始めた。
「はうっ」
「痛っ」
「ふがっ」
「あたっ」
「よーし、よーし」と、板長は手を腰に当ててにやついている。
「ちょっ、あのっ、その武器何ですか」
「大根だよ」
大根が背中ではじけて折れると、おばあちゃんたちが新しいのを手渡した。
「だっ、だひこん、もったひなひっ」
「ちょっ、痛っ、もっと、キュウリとかないん?」
紺野の横顔に何かが激しくぶつかる。
「何?今のなに?」
おばあちゃんが笑いながら緑の野菜を見せてきた。
「ズッキーニだけど」
「ズッキーニ?それキュウリ違うし。イタっ、ズッキーニイタァッ」
そうこうしているうちに、足を縛っていたラップが緩んできた。
「山ちゃん、行ける?」
紺野が小声で尋ねると、山田は首を縦に振った。
「オッケー」
板前たちは板長の絶対命令のもと、一心不乱に大根を振り下ろしている。
紺野はカウントを始める。
「1,2の……3!」
紺野はあおむけになり、手につかんだ泥を板前たちに浴びせかけた。
山田は腹を軸に勢いよく回転して、板前たちの足を薙ぎ払った。
「よっしゃ」
二人は細くなったラップの輪から足をはずして、再び猛ダッシュした。
「あれ」
人ごとのように傍観するおばあちゃんたちの前を通り過ぎ、ジャングルの闇に飛び入る。
「おい、おまえら、逃げちまったぞーおい。早く立てや」
「ちょっと、お兄さん、包丁返してー」
背後から聞こえる声がだんだんと小さくなる。
山田が口から泥をぺっぺと吐いて、鼻をかむ。
「さっきの包丁どうしたの?」
「え?ああ、知らんわ。転んだ時に落としたんやと思う」
「大根もったいないよね。折ったのどうするんだろ」
「おろすんでしょ。それより、山ちゃん、手鼻かんだでしょ。近寄らんといてー」
上り斜面がいつの間にか下りに変わった。
距離を稼ごうと二人は大股で駆け下りる。
「根っこ気をつけて、根っこ」
紺野が注意した矢先、山田は木に正面衝突した。
「ふぐあっ」
「うそぉ」
山田は転がり倒れた。
「鼻血出た、鼻血」
「うっそ、山ちゃん、だ、大丈夫?」
紺野は笑いをこらえきれずに肩が笑っていた。
「あー、マジで痛い」
「でもさ、鼻やから。足じゃないから。早く、先行こ」
「いや、マジで痛いから」
「うん、わかるよー。今のは痛かった、うん」
そのとき、前方から今度は女性の声で怒号が飛んできた。
「この間抜けぇ、さっさと歩かんかい!」
「うるせぇ、たまにはその口閉じてろよ!」
二人は唖然として動きを止めた。
「今度は何?誰?オレらの心読んだの」
「恐い恐い恐い恐い」
山田は立ち上がって歩き出した。
再び怒号が飛び交う。
「どこ行ったんだよ、クソ坊主ども!こっちは朝早いんだよ」
「今度遅刻したらぶっ殺すからな!」
「黙れ横綱が!」
二人は縮みあがった。
どうやら横綱がやって来る……らしい。
なにしろ、暗くて池の大きさも形もわからない。もしかしたら犬と警備員が回り込んで待ち伏せしているかもしれない。だが、その気配は感じられなかった。
木の根につまずいて、二人一緒に転んだ。
「懐中電灯奪ってくればよかったね」
「そこな。山ちゃんなんで奪ってきてくれなかったん。ほんと、気が利かんわー」
「自分だって」
その時、再びやくざの怒号が聞こえた気がした。
「シイッ」
二人は身を伏せて眼球だけを動かした。
「おい、古川よ、おまえ……できねぇのかよ」
声は左側から、カートが通る道のある方から聞こえてくる。しかも、誰かが誰かを怒鳴っている。敵は複数のようだ。
「なんか知らんけど、コガワさんが怒られとる」
「逃げようよ」
「そやね」
二人は身を低くして右手に移動した。
後方からは怒号のほかにも草を刈るような音も聞こえてくる。
「おめえら、もっと早く進めや。まーったく、仕入れ忘れる上に走れもしねぇのかよ」
怒鳴り声はゆっくりで、とくに怒鳴っているわけではないのかもしれない。大声で話しながら罵倒するのに慣れた年配者の声。
「フロントマンじゃないね」
「なんかあれやけど、板さんだってことはわかった」
「マジで刺身にされそう」
そう言う山田のすぐ横の茂みから、白い帽子に白い服を着たおじさんが飛び出してきた。手には出刃包丁、赤い顔に血走った眼。立ち止まって大声で後方に呼びかける。
「親方ー、いましたよー。こっちですー」
包丁を振りながら二人に追い迫る。枝にぶつかろうとも転ぼうとも構わず前進する。そのロボット的な走りに狂気を感じた二人は震えあがって、ダッシュから猛ダッシュにギアチェンジする。
「ヤバいって、おじさん、目がヤバいって」
「絶対ストレスすごいんやって、もう周り見てへんもん」
二人は一応若いだけあっておじさんよりは早かった。急な上りでぐんぐん引き離して、姿が見えなくなったところで左に折れてひた走る。
大きな木の下に差しかかり、休憩のために太い根の陰に身をひそめることにした。
山田が先を歩いていた。そこへ、上から白いものが落ちてきて、ドシャッと山田をつぶして泥に沈めた。
突然のことに紺野は口を開けてただ見ていたが、気がつくと足元に包丁が転がっていた。とりあえず拾っておく。
落ちてきた板前は四つん這いで山田から離れ、その隙に、山田はゴキブリのごとく細やかなホフク前進で紺野の横にたどり着いた。
「山ちゃん、大丈夫?動きキモかったけど」
「くひっ、くひがどほのあひっ」
「何?言ってることわからんわ」
二人の前には息を切らした若めの板前が片膝を立てて座っていた。
「ごめん、ほんとごめんっ」と、なぜか謝っている。「おじさん疲れちゃって、ちょっと休ませて」
「ど、どうぞ」
紺野はふと思った。脱出を開始したのが夜10時半ごろ。どれくらい経ったか正確にはわからないが、11時は回っているだろう。なのに、このおじさんたち、まだ調理白衣着てる……。
「こんな遅くまで働いてたんですか?」
「そうよ、朝ごはんの準備してたの。毎日毎日ね。もうやだ」
「はぁ。しかも、あのセリフ読むように怒号発してるの、板長でしょ?」
「そ。いつもああよ。ほんと、あのおじさんブチ殺したい」
「内部分裂ですか、いいですねー。ボクらにしてみたら都合いいですわー」
「おれっちも一緒に逃げたいわー」
「板長3枚におろしてからですか」
そこで板前は包丁がないことに気づいた。見ると、話の相手が右手に持っている。
「ちょっと、それ、返してくれる?それ、10万したの」
「へー、マジすかー、10万っすかー」わざとらしい声を出しながら、紺野は山田の髪をつかんであとずさる。
「ほんとよ、板さんの包丁高いんだから」
「へー、でもねー、こんなん持って追って来られたらボクらチビりますんでねー、えぇ」
紺野は山田のシャツをつかんで引き上げた。
「行こっ」
「ほがっ」
二人は全速力で板前から離れた。
「くひあはいはいっ」
「言ってることわからんから、黙っといてくれるー」
前方は闇。コケないよう足元に集中する必要がある。
パッと、明かりが灯っておばあちゃんの顔が現れた。
「うわっ」
「ひゃっ」
紺野は転んで、山田はおばあちゃんに突進した。おばあちゃんは避けた。
「松尾さん、ここ照らしてちょうだい」
「はいはい~」
おばあちゃんは二人組だった。
二人の足を手際よくラップで縛ると、松尾さんが言った。
「牛島さん、板さんに電話してくれた?」
「今からするから、せかさないでよ」
おばあちゃんが番号を探す時間は、通話時間より何倍も長かった。
やがて、板さんたちがやって来た。
「まーったく、おばちゃんたちに先越されちまって、浜崎や、おまえ何してたんだよ」
板さん・浜崎は、暗い地面をスマホで照らしながら包丁を探していた。
「ミノちゃんや、あれ出せや」
「はい」
第4の目立たなかった板前が、ビニル袋から何やら長くて太いものを取り出して、ほかの板前に配った。
「よし、叩けや」
板長の命令で、ロボと浜崎とミノちゃんの3人の板前は、足を縛られてうつぶせに横たわる二人の若者を謎の凶器で叩き始めた。
「はうっ」
「痛っ」
「ふがっ」
「あたっ」
「よーし、よーし」と、板長は手を腰に当ててにやついている。
「ちょっ、あのっ、その武器何ですか」
「大根だよ」
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「だっ、だひこん、もったひなひっ」
「ちょっ、痛っ、もっと、キュウリとかないん?」
紺野の横顔に何かが激しくぶつかる。
「何?今のなに?」
おばあちゃんが笑いながら緑の野菜を見せてきた。
「ズッキーニだけど」
「ズッキーニ?それキュウリ違うし。イタっ、ズッキーニイタァッ」
そうこうしているうちに、足を縛っていたラップが緩んできた。
「山ちゃん、行ける?」
紺野が小声で尋ねると、山田は首を縦に振った。
「オッケー」
板前たちは板長の絶対命令のもと、一心不乱に大根を振り下ろしている。
紺野はカウントを始める。
「1,2の……3!」
紺野はあおむけになり、手につかんだ泥を板前たちに浴びせかけた。
山田は腹を軸に勢いよく回転して、板前たちの足を薙ぎ払った。
「よっしゃ」
二人は細くなったラップの輪から足をはずして、再び猛ダッシュした。
「あれ」
人ごとのように傍観するおばあちゃんたちの前を通り過ぎ、ジャングルの闇に飛び入る。
「おい、おまえら、逃げちまったぞーおい。早く立てや」
「ちょっと、お兄さん、包丁返してー」
背後から聞こえる声がだんだんと小さくなる。
山田が口から泥をぺっぺと吐いて、鼻をかむ。
「さっきの包丁どうしたの?」
「え?ああ、知らんわ。転んだ時に落としたんやと思う」
「大根もったいないよね。折ったのどうするんだろ」
「おろすんでしょ。それより、山ちゃん、手鼻かんだでしょ。近寄らんといてー」
上り斜面がいつの間にか下りに変わった。
距離を稼ごうと二人は大股で駆け下りる。
「根っこ気をつけて、根っこ」
紺野が注意した矢先、山田は木に正面衝突した。
「ふぐあっ」
「うそぉ」
山田は転がり倒れた。
「鼻血出た、鼻血」
「うっそ、山ちゃん、だ、大丈夫?」
紺野は笑いをこらえきれずに肩が笑っていた。
「あー、マジで痛い」
「でもさ、鼻やから。足じゃないから。早く、先行こ」
「いや、マジで痛いから」
「うん、わかるよー。今のは痛かった、うん」
そのとき、前方から今度は女性の声で怒号が飛んできた。
「この間抜けぇ、さっさと歩かんかい!」
「うるせぇ、たまにはその口閉じてろよ!」
二人は唖然として動きを止めた。
「今度は何?誰?オレらの心読んだの」
「恐い恐い恐い恐い」
山田は立ち上がって歩き出した。
再び怒号が飛び交う。
「どこ行ったんだよ、クソ坊主ども!こっちは朝早いんだよ」
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二人は縮みあがった。
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