無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸

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第2章 丹梅国グルメ戦記・四象の虎

第123話 嘘と誠

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 今更――
 本当に今更気づいてしまったんだけど、これ、字面だけ見たらとんでもないな。

 ただでさえ残響種を連れているのに、そのうえ魔王に会うのが目的だと言えば、今以上に警戒されはしないだろうか。
 もし私が黄さんと同じ立場だったら、ひょっとして国を滅ぼしに来たんじゃないかって思うかもしれない。

 それでなくても、軽く国外追放くらいにはなるかもしれない。
 どう答えればいいのか。私は、ほんの一瞬、言葉を失った。

「……えっと」

 無理やり、なんとか口を開いたはいいものの、言葉が続かない。舌が回らない。
 黄さんは、そんな私の反応をただじっと見ている。
 その表情からは相変わらず何も汲み取れない。

 そして頭の中で、二つの仮説がせめぎ合う。
 ひとつは、黄さんが本当に、ただ勇者しごととして私たちの目的を確認しているだけ。
 もうひとつは――私の反応を見るために、あえて〝知らないふり〟をしている。

 もっさんの件は、ここにいる紅月以外は基本的に知らないはず。

 かといって、先ほどのギルドのように、予め丹梅国の誰かとコンタクトを取っている可能性もある。
 もっさんのことだから〝今からあの子たちがそっちに行くから、くれぐれもよろしく頼むっス〟くらいの手回しはしているかもしれない。
 それを踏まえての質問だとすれば、今ここで試されているのは、私の誠実さ。

 事実をありのまま述べるか、嘘をでっちあげるか。

 どちらだろう。
 判断を誤れば後々といわず、今、この瞬間に厄介なことになる。
 この男は勇者。もしこの場で嘘をついてそれがバレてしまえば、どんな目に遭うか……。

 私は彼になるべく悟られないよう息を深く吸い、落ち着こうとした。

「えっと、観光……というか、祠巡りですね」

 言葉を選びに選んで、そう答えた。
 我ながら苦しい。
 だが、嘘ではない。祠を巡っているのは事実だ。
 ただ一番重要なことを言っていないだけ。

 黄さんは一瞬だけ目を細め、軽くため息をついた。
 まずい。バレたか。

「それは知ってる」
「え」
「毎日、朝早くから、あちこちに行ってたのは見てたからな。けど、なんのために祠に?」
「フェニ子……この子の記憶を取り戻すためです」
「記憶って、なんだ? その残響種は記憶喪失なのか?」

 黄さんがそう尋ねてくると、私はここ数日に起きたことをかいつまんで話して見せた。
 私が話している間も、彼は表情を崩さず、相槌も打たない。ただじっと私の顔を見ていた。
 やがて、話し終えると――

「なるほど。要するに、そこの残響種ちゃんは記憶を失っていて、それを思い出すために、瑞饗の四方にある祠を巡っていると」
「はい」
「四神から四象……そうか、あの祠にそんな役目があったとはな……」

 黄さんは祠の役目については知らなかったようだ。
 さすが、寂れて久しい四象の祠。
 現地の勇者ですら知らないなら、そりゃ守護者連中も暇なわけだ。

「――だいたいわかった。今のところ俺の独断だが、滞在を許そう」
「え?」
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