無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸

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第2章 丹梅国グルメ戦記・四象の蛇亀

第127話 フェニ子イレイザーガン

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「わぷっ!? な、なにするのよ!」
「落ち着きなって、紅月。フェニ子怖がってんじゃん」
「ま、親愛的ますたあ……!」
「それに、火炎爆発はまだ早いよ」
「かえ……なんじゃそれ?」
「なにって、ほら、フェニ子を投げつけて爆発させるやつ」
「妾の神秘的な営みに、なに物騒な名前つけとるんじゃ!」
「いいよ、大丈夫。わかってる。今は使わない。最終手段だからね」
「そんなことを言っておるのではない! そもそもの話、妾を便利な爆弾として活用しようとするな、と言っておるのじゃ!」
「うんうん、わかってる。大丈夫だよ」
「なんじゃその理解のあるカレみたいな、面倒くさい女を窘めるみたいな。……もうよい! 妾がやる!」

 フェニ子はそう言って、蛇媧と表記されていた大蛇の前に躍り出た。

「ちょ、危ないって、フェニ子! まずは私と紅月で戦うから、それで倒しきれなかったら、その時に爆発をお願い!」
「じゃから、爆発なぞ死んでもするか!」

 死んだら爆発する癖に。というツッコミを呑み込み、私はフェニ子に言う。

「……でも、火炎爆発も使わずにどうするつもりなの?」
「なんか、その名前に落ち着きそうなのも嫌なんじゃが――無論、妾の力でこの蛇めを倒すのじゃ」
「いや、でもフェニ子、なにも出来ないんじゃ……」
「螭龍の時も言ったであろう。鳳凰の祠を周り、妾も幾分か力を取り戻したと」
「……ん? そんなこと言ってたっけ」
「それを言う前に親愛的ますたあが、妾をぶん投げたんじゃろうが!」
「そうだっけ」
「もうよい。そこで見ておれ」

 どうやら彼女は独力で倒そうとしているみたいだ。
 いつもなら窘めるところだが、その顔はいつになく自信に満ち満ちていた。
 蛇媧自体、なにか特殊な能力を持っているわけでもなさそうだ。
それに――失敗したらそれはそれで爆発して退治してくれるだろうし。
そう判断した私は、そのまま見守ることにした。

「――聞け、蛇よ。黙って道を譲るなら、寛大な妾じゃ。何も見なかったことにしてやる。じゃが、もし、妾たちを襲おうというのなら――」

 〝シャアアアアアアアア!〟

 しびれを切らしたかのように、蛇媧は大口を開けてフェニ子を呑み込もうと襲い掛かった。
 またツチノコの二の舞かと思ったその時――

フン、所詮は爬虫類というわけか」

 フェニ子はそう鼻を鳴らすと、蛇と同じように口を大きく開け――

 〝ゴウッ〟

 凄まじい勢いの炎を吐いた。

 あの技だ。
 それを見た瞬間、私の脳裏に燦花での戦いが思い起こされる。
 規模や威力はまだあの時には及ばないものの、私の肌がチリチリと焼けるほどの熱気を放っている。

 蛇媧はまるで壁にでもぶつかったように体をくねらせると、そのまま蛇行しながら、一目散に逃げ去ってしまった。

「……逃げた……のかしら?」
「た、たぶん……?」

 私と紅月の意識はすでに逃げた蛇ではなく、フェニ子のほうに向いていた。

「な、なんなの、あんた……」
嘻嘻ふふ、見たか親愛的ますたあ。これが妾の……フェニ子の力じゃ」

 フェニ子はそう言うと腰に手を当て、誇らしげに胸を張った。
 さきほどまで全身を包んでいた泥はカピカピに乾燥しており、すでにボロボロと崩れ始めている。
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