無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸

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第2章 丹梅国グルメ戦記・四象の蛇亀

第128話 遠火でじっくり

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「いや、たしかにすごかったけど……燦花にいた時は使えなかったんだよね?」
「うむ。祠を巡るたび、妾の力も強化されておったようじゃな」
「これは……さすが残響種ね。もう立派な戦力じゃない」

 紅月が感心するようにフェニ子を見る。
 彼女の言うとおり、この火力に私のステータス・オープンが合わさったら、あの時の鳳凰のような火力も出せるかもしれない。

「……うん、本当に。これなら当分、火炎爆発も必要ないかもね」
「ま、まだ言うか……」
「ていうか、こんなことができるなら、もっと早めに言ってよ」
「じゃから、それを伝える前に妾を投げたんじゃろ」
「そっかそっか、それはごめん。……それで、他に出来るようになったこととかある?」
「ほか……とな?」
「そう。今のところ祠を巡ってわかったのは、フェニ子に関する他の四象の記憶と、フェニ子が力を手に入れたということでしょ? もしまだ何か私たちに言ってなかったら、いい機会だし、今のうちに訊いておこうかなって」
「ええ、何ができるかは知っておきたいわ。今後の作戦で採れる行動も増えるだろうしね」
「なんか、二人とも急にゲンキンじゃな……じゃが、他に伝えるべきことはな――あっ」
「お。なに? 他にもなにかあった?」
「い、いや、なにも……ないのじゃ……」

 フェニ子はそう言って目を伏せた。
 どう見ても何かあったようなリアクションだけど……ここは追及すべきだろうか。
 私が横目で紅月を見ると、彼女は困ったように肩をすくめてきた。
 それに対して私は――

「……そっか。わかった」

 無理に聞き出すようなものではないと判断し、そう答えた。
 いま・・話したくないのか、それとも私たち・・・に話したくないのか。
 フェニ子の心中を推し量ることはできないけど、私はそんな彼女の意思を尊重した。
 それと同時に、その時が来たら話してくれると思ったからだ。
 紅月も、そんな私の考えを察してくれたのか、何も意見を挟んでこなかった。

「……それじゃ、とりあえず瑞饗に帰ろっか」

 なんやかんや状況も一段落したところで、私は踵を返して歩き始めたが、すかさず紅月が私の首根っこを捕まえてくる。

「何言ってるのよ。このまま祠に行くわよ」
「いやいや、もう進めるような状態じゃないって。なんか大きな蛇も出てくるみたいだし」
「たしかに今の蛇、すこし気になるわね。このあたりにあんな大蛇がうじゃうじゃいる……なんて考えにくいし……」
「あと、尻も濡れてるし……」
「……フェニ子、真緒のお尻を乾かしてあげなさい」
「合点じゃ。火は直火の強火でよいかの」
「尻焦げるわ」

 どうやらこのまま帰してくれる気はないようだ。
 私はこれ見よがしにため息をつくと、祠へ向かって歩き始めた。

「……わかったよ、わかった。その代わり、遠火の弱火でお願い」
「任せておけ」

 歩きながら、私はフェニ子の〝話したくないこと〟がふと気になった。
 そういえば、四象関連の記憶って、今のところ全部フェニ子から聞いたものだったなと。
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