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第2章 丹梅国グルメ戦記・四象の蛇亀
第140話 釣り問答 その1
しおりを挟む時間にして、大体二時間ほどは話していただろうか。
その間、私たちの釣竿に魚がかかる気配はなく、逆に、少し離れたところにいる玄冥はそれなりに釣れたようだった。
そんな中、紅月の話を聞いていた呂さんがおもむろに口を開く。
『なるほどな。大体の話はわかった。白雉国の話も面白かったが――つまり、おまえさんらが今、祠を巡っているのは、なんらかの使命を帯びているわけじゃなく、そこのお嬢ちゃん……フェニ子ちゃんの記憶を呼び戻すためだと』
『はい』
紅月がゆっくり頷く。
「うむ、非常に興味深かったぞ。妾も親愛的と紅月との話は初めて聞いたのじゃが……なぜ紅月と旅をしとるのじゃ」
『まあ、いろいろあったのよ……』
紅月は仲直り(?)のくだりだけ、なぜか端折って話さなかったため、フェニ子が当然の反応を返してくる。
呂さんのほうはなんとなく察してくれているみたいだが――
『で、お嬢ちゃんの正体が彼の伝説の鳳凰である……と』
「え? そ、そうじゃ……!」
『ふむ……』
呂さんはフェニ子の顔をまじまじと見ながら、顎ひげを撫でる。
「な、なんじゃ! なんぞ、文句でもあるのか……!」
『いいや、文句なんてねえさ。だが、こうして鳳凰様をお目にかかるのは初めてだからな。有難ぇから、この目に焼き付けてんのよ』
「な、なるほどのう……ならば、赦そう! 妾の姿を拝謁することを!」
『調子に乗るな』
紅月がそう言いながら手刀でフェニ子の頭を軽く叩く。
フェニ子は「あでっ!?」と漏らすと、恨めしそうに紅月を見上げた。
珍しい。
今まで彼女はツッコむことはあったけど、こうやって手を出したのは……そんなにない気がする。
『――なあ、鳳凰様よ』
「なんじゃ」
『拝むついでに、ひとつこのジジイに聞かせちゃくれねえかい』
「うむ。なんでも訊くがよい。親愛的含め、どうも妾、ここ最近の扱いが雑な気がするからのう。崇められるのは大歓迎じゃ」
『おう、じゃあ遠慮なく――』
呂さんはそう言うと、片ひざを折り、フェニ子と同じ目線になった。
『鳳凰様、あんた……この二人になにか隠し事とか、してねえかい』
「――え」
ここで私たち三人が綺麗にハモった。
私と紅月はフェニ子を、フェニ子は呂さんを見ながら固まる。
『詳しいことはさっき紅月の嬢ちゃんから聞いた。……だがよ、ここ数日、祠を巡って得た四神たちのそれぞれの記憶は――言っちゃあ悪ぃが、全部鳳凰様からの口伝だ。真実を伝えるにしろ、嘘を伝えるにしろ、全部あんたのさじ加減次第だ。そうだろ』
呂さんの疑問は尤もだ。
事実、私だってそういうふうに考えなかったことが、ないわけでもない。
ここからだとフェニ子の頭しか見えないため、彼女がどのような表情をしているのかはわからない。
確認しようと思えばすぐにでも出来るが……私の足は動かなかった。
『おっと、いきなりで悪いな。初対面のジジイにこんな話をされんのも嫌だろうがよ、割と真面目に身の上話されたもんだから、俺にもその話を聞いた責任ってのがある。……で、ここからはジジイの感覚の話になって申し訳ねえんだがよ、俺にはどうにも鳳凰様が、そこの二人に対して、なにか後ろめたいことを抱えてるんじゃあねえかって思うんだよ』
そして、フェニ子は答えない。
こうして誰かに詰められたことがないから戸惑っているのか、もしくは本当に私たちに何かを隠しているのか。けど――
『けど、私はフェニ子を信じています』
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