無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸

文字の大きさ
159 / 203
第2章 丹梅国グルメ戦記・四象の蛇亀

第140話 釣り問答 その1

しおりを挟む

 時間にして、大体二時間ほどは話していただろうか。
 その間、私たちの釣竿に魚がかかる気配はなく、逆に、少し離れたところにいる玄冥はそれなりに釣れたようだった。
 そんな中、紅月の話を聞いていた呂さんがおもむろに口を開く。

『なるほどな。大体の話はわかった。白雉国の話も面白かったが――つまり、おまえさんらが今、祠を巡っているのは、なんらかの使命を帯びているわけじゃなく、そこのお嬢ちゃん……フェニ子ちゃんの記憶を呼び戻すためだと』
『はい』

 紅月がゆっくり頷く。

「うむ、非常に興味深かったぞ。妾も親愛的ますたあと紅月との話は初めて聞いたのじゃが……なぜ紅月と旅をしとるのじゃ」
『まあ、いろいろあったのよ……』

 紅月は仲直り(?)のくだりだけ、なぜか端折って話さなかったため、フェニ子が当然の反応を返してくる。
 呂さんのほうはなんとなく察してくれているみたいだが――

『で、お嬢ちゃんの正体が彼の伝説の鳳凰である……と』
「え? そ、そうじゃ……!」
『ふむ……』

 呂さんはフェニ子の顔をまじまじと見ながら、顎ひげを撫でる。

「な、なんじゃ! なんぞ、文句でもあるのか……!」
『いいや、文句なんてねえさ。だが、こうして鳳凰様をお目にかかるのは初めてだからな。有難ぇから、この目に焼き付けてんのよ』
「な、なるほどのう……ならば、赦そう! 妾の姿を拝謁することを!」
『調子に乗るな』

 紅月がそう言いながら手刀でフェニ子の頭を軽く叩く。
 フェニ子は「あでっ!?」と漏らすと、恨めしそうに紅月を見上げた。

 珍しい。
 今まで彼女はツッコむことはあったけど、こうやって手を出したのは……そんなにない気がする。

『――なあ、鳳凰様よ』
「なんじゃ」
『拝むついでに、ひとつこのジジイに聞かせちゃくれねえかい』
「うむ。なんでも訊くがよい。親愛的ますたあ含め、どうも妾、ここ最近の扱いが雑な気がするからのう。崇められるのは大歓迎じゃ」
『おう、じゃあ遠慮なく――』

 呂さんはそう言うと、片ひざを折り、フェニ子と同じ目線になった。

『鳳凰様、あんた……この二人になにか隠し事とか、してねえかい』
「――え」

 ここで私たち三人が綺麗にハモった。
 私と紅月はフェニ子を、フェニ子は呂さんを見ながら固まる。

『詳しいことはさっき紅月の嬢ちゃんから聞いた。……だがよ、ここ数日、祠を巡って得た四たちのそれぞれの記憶は――言っちゃあ悪ぃが、全部鳳凰様からの口伝だ。真実を伝えるにしろ、嘘を伝えるにしろ、全部あんたのさじ加減次第だ。そうだろ』

 呂さんの疑問はもっともだ。
 事実、私だってそういうふうに考えなかったことが、ないわけでもない。

 ここからだとフェニ子の頭しか見えないため、彼女がどのような表情をしているのかはわからない。
 確認しようと思えばすぐにでも出来るが……私の足は動かなかった。

『おっと、いきなりで悪いな。初対面のジジイにこんな話をされんのも嫌だろうがよ、割と真面目に身の上話されたもんだから、俺にもその話を聞いた責任ってのがある。……で、ここからはジジイの感覚の話になって申し訳ねえんだがよ、俺にはどうにも鳳凰様が、そこの二人に対して、なにか後ろめたいことを抱えてるんじゃあねえかって思うんだよ』

 そして、フェニ子は答えない。
 こうして誰かに詰められたことがないから戸惑っているのか、もしくは本当に私たちに何かを隠しているのか。けど――

『けど、私はフェニ子を信じています』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか!  【第15回ファンタジー小説大賞の爽快バトル賞を受賞しました】 ここは異世界エールドラド。その中の国家の1つ⋯⋯グランドダイン帝国の首都シュバルツバイン。  主人公リックはグランドダイン帝国子爵家の次男であり、回復、支援を主とする補助魔法の使い手で勇者パーティーの一員だった。  そんな中グランドダイン帝国の第二皇子で勇者のハインツに公衆の面前で宣言される。 「リック⋯⋯お前は勇者パーティーから追放する」  その言葉にリックは絶望し地面に膝を着く。 「もう2度と俺達の前に現れるな」  そう言って勇者パーティーはリックの前から去っていった。  それを見ていた周囲の人達もリックに声をかけるわけでもなく、1人2人と消えていく。  そしてこの場に誰もいなくなった時リックは⋯⋯笑っていた。 「記憶が戻った今、あんなワガママ皇子には従っていられない。俺はこれからこの異世界を謳歌するぞ」  そう⋯⋯リックは以前生きていた前世の記憶があり、女神の力で異世界転生した者だった。  これは狙って勇者パーティーから追放され、前世の記憶と女神から貰った力を使って無双するリックのドタバタハーレム物語である。 *他サイトにも掲載しています。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

処理中です...