無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸

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第2章 丹梅国グルメ戦記・四象の蛇亀

第146話 鯤

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 巨大なそれ・・は、湿地の地面に半ば浮き上がるように横たわっていた。
 その体表に走る鱗は、いまだ淡い蒼光を帯びており、倒れていてもなお威圧感を放っている。
 魚のことについてはあまり詳しくはないが、まだ死んでいないということだけはわかった。

 それにしてもすごい魚……魚?
 おもわず魚とか、それとかって呼んじゃってるけど、結局なんなんだろう。
 背ビレ胸ビレがあるから魚かなと思ったけど、立派なひげがあるし龍に見えなくもない。
 なんならクジラっぽい骨格にも見えるけど、ここ海水じゃないしなあ。

 そういえば呂さん、さっきたしかコンとか言って気が――

 そう思っていた矢先だった。
 呂さんがいつの間にか、コンの頭付近へ移動していた。
 その様子はどこか浮足立っており、先ほどまでの飄々とした雰囲気とは違う。

 やがて呂さんはコンの頭に触れると、何かを念じはじめ――

 〝ずるり……ずるり……〟

 あの巨体が呂さんの手のひらに吸い込まれていく。
 正直、一から十までをここで呂さんに質問したいのだが……脳裏に直前の、呂さんの攻撃がチラつく。
 不用意な質問をして、仮に呂さんの機嫌を損ねてしまったら、私たちはそこで――

「……ん?」

 気が付くと、玄冥がじぃっとこちらを見つめてきていた。
 何だろうと思っているのもつかの間、彼女はそのまま呂さんのところへいき、彼の服の裾を掴んだ。

「呂尚」
『なんだ、玄冥』
「そろそろ説明……すべきじゃない……?」
『説明……』

 呂さんはそうつぶやくと、コンを吸い込んだままこちらを見た。

『……おっと、そうか。そうだな。おまえさんらからすると、何が何やらって感じだよな』
『ま、まぁ……急に釣りの試練が始まったと思ったら、気づいたら死にかけてましたし……』
『悪かったな。無視して進めるつもりはなかったんだが、まさか本当にが釣れるとは思ってなくてな。年甲斐もなくはしゃいじまった』

 はしゃいでたんだ。

『……さて、説明つっても、どこからしていいもんかわからねえ。したがって、おまえさんらに任せる。何から聞きたい?』
『えっと、なんでも答えてくれるってこと……ですかね?』
『まあ、答えたくない質問は適当にはぐらかすからよ、話半分で訊いてみてくれ』

 そうわざわざ宣言してくるあたり、優しいのか、適当なのか。

『――では、私から……!』

 そう言って颯爽と手を挙げたのは紅月だった。
 その顔には若干の緊張が見てとれる。
 なんだか少し心配だが、釣りのときは普通に話してたし、大丈夫だろう。

『呂さんの……ご趣味は?』
「なんで、今」
『趣味……か。やっぱ、釣りじゃねえかな』
『でしょうね』
『で、では次は……呂さんの――』
「いや、あんたはもういいから、質問は私からするから」

 私は不満げな紅月を押し退けると、改めて呂さんと向き合った。
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