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第2章 丹梅国グルメ戦記・四象の蛇亀
第157話 文庫での一幕 その1【戸瀬視点】
しおりを挟む「……はぁ」
俺は表紙に白雉国の国璽が押印されたファイルを閉じ、薄暗い天井を見上げて嘆息を吐いた。
〝白雉国中央図書院・黙示録文庫〟
ギルドの口利きで、俺はそんな大層な名前の部屋で目当ての資料を漁っていたわけだが――
「書いてあるのは、知っている事ばかり……か」
俺はファイルを持ち上げると、それを投げ捨てたくなる衝動を抑え、席から立ち上がった。
〝反旗を翻した魔王たちは神魔大戦にて神の軍勢に敗れ、七つの大陸に封印された〟
どの資料も要約すると、書かれてあるのはこれだけ。
その戦争の詳細な内容や、両陣営の思惑、事の発端……等々、核心に触れるような記述は一切ない。
どの資料も要約すれば同じ結論に行き着く。
神魔大戦の「結果」だけが、綺麗に整えられて並んでいる。
それでもこうして、一般人が決して足を踏み入れられない文庫だからと粘ってはみたが、ただの徒労に終わったようだ。
俺は手にしていたファイルをそっと書棚に戻すと――
「やあ」
不意に背後から声をかけられた。
よく知っている声。わざわざ振り向くまでもない。
「……なんの用だ、アスモデウス」
「用? 外で知り合いを見かけたら声をかけるのって、ただの礼儀じゃないんスか?」
一瞬、面倒くさいからスルーしようかと思ったが――
「……まずひとつ。ここは普通の場所じゃねえ」
「ほう」
「この国のお偉いさん、もしくはギルド長の許しがないと、そもそも立ち入ることすらできねえ文庫だ」
「へえ」
「次に、俺は毎日ここを利用しているわけじゃねえ。利用するのは今日が初めてだ。……当たり前だな。入るのにコネが要るんだから、それを処理するのにも時間と手間がかかる」
「ふむふむ」
「したがって、今日、この瞬間、おまえが俺の背後をドヤ顔でとっているのは、偶然じゃねえってことだ」
「あら、振り返ってないのに、なんであたしがドヤ顔してるってわかるんスか」
「テメェがいつもニヤケ顔晒してっからだろ」
「すごい偏見だなあ」
「で、だ。それを踏まえて、改めて最初の質問だ。なんの用だ、アスモデウス」
俺が背中越しに問いかけると、不意に後ろから手が伸びてきて、俺がいま書棚に仕舞った資料を抜き取った。
「……ふむふむ、なるほど。カズキは歴史の勉強をしているところだったんスね」
ここで俺は振り返る。
正面にいたのは青肌の魔王ではなく、瓶底眼鏡に、襟元がヨレヨレのTシャツを着たアスモデウスだった。
「おい。俺の質問に――」
「ねえ、カズキ」
「あ?」
「あたしがカズキに用がある……んじゃなくて、カズキがあたしに用がある……んじゃないんスか?」
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