憑依転生~女最弱騎士になった『俺』が最強に成り上がるまで

枯井戸

文字の大きさ
6 / 92
雑兵編

辛うじて全裸は免れてたのに服を燃やされた。

しおりを挟む
「反応が変わった」

『え? なにがですか?』


 タカシは動かなくなり、積み上がった屍の上で、自分の右手を眺めていた。
 頬や手には髪と同じ色の、鮮血がベットリとこびりついていた。
 しかしその鮮血はすべて返り血で、タカシが受けた傷は皆無に等しかった。


「あいつの反応だよ。色が変わった」

『え? なにがですか?』

「それにさっき、あいつらのひとりが出口じゃなくて、奥のほうに逃げていった。これはなんかあるかもな……」

『え? なにがですか?』


 タカシはルーシーをにらみつけると、パチンと猫だましをかましてみせた。



『わわっ! な、なにすんですか!』

「え? なにがですか?」

『なんなんですか、もう!』

「おまえがオレと会話する気がないからだろ。そりゃ猫も騙されるわ」

『意味がわからないですよ。それにしょうがないじゃないですか。目を閉じて、耳も塞いでましたし……』

「……あのさ、それ、おまえのヒトダマ特有の持ちネタかなにかか?」

『え? なにがですか?』

「それはもういいんだよ! ……まあいいや。とにかく、もう終わったから」

『そうなんですね。……それよりもなんなんですか、あなたは。ほんとに』

「オレか? オレはほら、あれだよ。タカシ君だよ」

『ほら、またそうやってはぐらかす。悪魔さん……とかじゃないですよね?』

「悪魔さんがルーシーさんの命を救うかよ。第一、悪魔のタカシ君ってなんだよ。となりのト〇ロみたいに言うなよ」

『言ってないですよ! それに誰ですか〇トロさんって!』

「とにかく、あいつはもう使いものにならなくなったみたいだから、服、取りに行くぞ」

『え? だれが使いものにならなくなったんですか?』

「……あのな、さっきオレが言――」


 火の玉がタカシの頬を掠めた。

 人の頭ほどの大きさの火の玉。
 それが洞窟の奥からまっすぐ飛んできた。
 タカシ口をキュッと結ぶと、火の玉の飛んできた方向をにらみつける。


「……よく避けたな、クソガキ!」


 アジトの奥から出てきたのは、さきほどヘンリーの腹部を貫いた山賊だった。
 山賊の右手には真紅のグローブがはめられており、手の平からは黒煙が立ち昇っていた。
 山賊の顔は憎悪で満ち満ちており、視線はタカシに注がれていた。


「おいおいおい……、なんなんですか、その軍手は。ガーデニングするならもっと良いの貸すから、寄越しなさい」

「黙れ、クソガキ! よくも……よくも、ここまで暴れてくれたな!」

「いやいや、あなたがたから先に手を出してきたんじゃないですか。自業自得って言葉知らないんですか?」

「もうテメェの仲間を殺したぐらいじゃ割に合わねえ……、この落とし前はきちんとつけてもらうからなァ!」


 山賊はそう言うと、右手のひらを突き出した。
 無数の火の玉が、つぎつぎと手のひらから発射されていく。
 火の玉は壁や天井、それぞれがビー玉のようにぶつかり合った。
 乱反射し、それぞれが独立してタカシに牙を剥く。
 タカシは足元にあった山賊の屍を盾にして火の玉を防いだ。
 ある程度までは防いでいたが、すべてを防ぐことはできず、いくつか直撃を受けてしまった。
 身に着けていた肌着が焦げ、白い素肌が露になる。
 体中についていた返り血も、焦げて赤黒く変色していた。


「あっつ……!」

「て、てめえっ! 仲間になにしてくれてんだ!」

「なにって……、なにが?」


 タカシはもはや、炭と化してしまった山賊の死体を地面に放り投げた。
 死体は地面にぶつかり、風に吹かれるとパラパラとくずれて、そのまま消えてしまった。
 辺りにあった死体もすべて焼死体になっており、同様に風に吹かれると消えていった。


「てめえに……、人間の血は通ってんのかよ!」

「山賊ごときが偉そうに道徳語ってんじゃねえ。そこにあったから使った。それだけだろうが。文句あっか」

使った・・・……だと! クソ、ガキィ……ッ!!」

「まあ、待てって……そんなにそれ使うと――」


 山賊はタカシの制止はきかず『殺す!』と吐き捨てた。
 それと同時に、さきほどとは比べ物にならない数の火の玉が飛び出してきた。
 火の玉は縦横無尽に洞窟内を駆け回ると、そのままタカシめがけ飛んでいった。
 それに対しタカシはただ、なにもしないで突っ立っていた。

『ちょ、タカシさん!? なに自信満々で突っ立ってんですか! 守ってください! 体を! プロテクトプロテクト! まだ焼死体になりたくないですよ!』

「だまってみてろ。あの火の玉はとどかねえ・・・・・

 火の玉はタカシの宣言通り、蝋燭が風に吹かれるように消えてしまった。


「な、なにを……!」

「なにをって……、なんもしてねえよ」

「じゃあ、これはなんなんだよ……」


 山賊は急に足元がおぼつかなくなると、その場に力なく崩れ落ちた。


「しんどいだろ? 立ってられねえだろ? 目が霞んでくるだろ?」

「く……そ……なんでだ!」

「そりゃ魔法も満足に使えない、ただの一般人がその火力で火球を出し続けたら、パワー切れおこすだろ」

「パワー切れ……だと……?」

「人間が一日中全速力で走れねえのと一緒だよ。それもなにも鍛えてもいない体だと、より一層その体に大きな負担になってのしかかるって話だ。わかりやすいだろ?」

「ふざ……けんな、オレはまだ……!」

「終わりだって。……まあ、複数人でその手袋使いまわされてたら、めんどくさかったけどな」


 タカシは山賊に近づいていくと、手袋の中指部分をつまみ、ズルッと脱がした。


「んでこれ、没収な」

「ざっけんな! それはオレたちの――」


 タカシは山賊の頭を足で頭を踏みつけた。
 山賊の歯と歯が強制的に打ち付けられ、ガチッと音が鳴る。


「まあまあ、どうせどっから盗んできたもんだろ? オレがきっちり持ち主に返してやっから。そのまま死んでていいよ」

「んー! んんんんんー!!」

「――よっと」


 タカシは一息に脚に力を込め、山賊の首の骨を簡単に折ってみせた。
 山賊はピクリとも動かなくなると、タカシはさきほど脱がした手袋をはめ、死体を焼いた。


「これで、抵抗するやつは最後っぽいな……」

『た、タカシさん、終わりました?』

「……終わってねえよ。おまえはずっと目、閉じてろ」

『わかりました。目、開けますね』

「なんでだよ」

『もう大体、あなたがどういう人かわかってきたからですよ』

「ほほう。言ってみてくれたまへ」

『意地悪な人です』

「ハッハッハ! まっさかー。オレほど実直で熱意溢るる熱血漢、他にはいないぜー?」

『タカシさんがほんとうに実直で熱意溢るる熱血漢だった場合、意味の定義も変わってきますからね。本当に、他にもいなくなってしまいますねー』

「言うじゃん」


 タカシは口を尖らせると、それ以上は何も言わずにアジトの奥へと進んでいった。
 アジトはそこまで複雑な造りにはなっておらず、一本の長い通路に、いくらか枝分かれしたような道ができているだけであった。
 タカシはその一本道をただひたすら、出口とは逆方向へと進んでいった。


『ちょ、タカシさん、アレ……!』


 そんな折、ルーシーが突然うわずった声をあげた。


「なんだ? 実直で熱意溢るる熱血漢が空でも飛んでたか?」

『ふざけてないでください、アレですよ!』

「いや、いやいや、あのな。おまえは必死に指さしてるかもしれんが、こっちはただフワフワしてるだけにしか見えないんだってば」

『ヘンリーさんが……ヘンリーさんが……!』

「ああ……いいやつだったよ。無茶しやがって」

『いいやつだった……って、こうなったのも半分タカシさんの責任でもあるんですよ!?』

「いやぁ、新しい肉体が手に入ったから、ルーシーは解放されるな。やったね!」

『いやいや、そういう問題じゃないでしょ』

「んだよ、手でも合わせるか? 線香でも焚くか? 焼香でもあげるか? 遅かれ早かれそいつはそうなってたんだよ」

『そんな言いかたは、あまりにもあんまりです』

「てか、死んでねえよ、こいつ!」

『ふぇ?』


 タカシはヘンリーの襟首を掴んでひっぱりあげてみせた。
 ヘンリーは喀血すると、震えるまぶたを少しだけ持ち上げた。


「おーい、どんな感じ? ねえ、いまどんな感じ?」

『ちょ、あまり揺すらないでくださいってば! 剣も刺さってるし、もうホントに虫の息じゃないですか! というか、どうにかならないんですか? タカシさんならできるでしょ?』

「できるよ?」

『できるよ? ってキョトンとされましても……。それじゃあ、お願いしますよ』

「ただ、こいつが死にたいって顔してるしさ……。オレからすればここで無駄に苦しませるよりも、一気に――」


 ヘンリーは大きく目を見開くと、頭が取れそうな勢いで首を左右に振ってみせた。


『……生きたいって言ってますけど……?』

「…………」

『それにしても、意外と元気そうで安心しましたよ!』

「なら、ここで放っておいても大丈夫かもな」


 ヘンリーは大きく目を見開くと、頭が取れそうな勢いで首を横に振ってみせた。


「元気じゃん。……しかたねえな……」


 タカシはヘンリーの腹部から乱暴にズボッと剣を引き抜く。
 そして、目を閉じて手を患部へあてた。
 緑色の光がタカシの手から放たれると、ヘンリーの腹部から波のように広がっていき、そのまま全身を包み込んでいった。
 しばらくすると、光は急速に収束していき、タカシの手へと戻っていった。

 ヘンリーは目を白黒させると、自分の腹をペタペタと触った。
 傷口は完全に塞がっており、縫合跡のようなものも見当たらなかった。
 タカシはヘンリーの襟首から手を離す。
 ヘンリーはその場でドサッと尻もちをついて倒れた。


「やったじゃん。おつかれさん」


 タカシはニカっと歯を見せて笑うと、そのまま宝物庫へと歩いていった。
 ヘンリーはポケーッと呆けながらそれを見送った。


『よかったですね、タカシさん』

「よかったのはおまえだろ、ルーシー。これで露出狂って言われずに済むな」

『って、ああ!! タカシさん! もうボロボロじゃないですか! 見えてしまいますって! ポロっていっちゃいますって! 隠してくださいよ!』

「うるせーな。いまから隠すんだろーが。第一、誰がこんな色気のねぇ体に発情すんだよ」

『はぁ!? ちょ、聞き捨てなりませんね……! わたし、こう見えてモテるんですから! 男性が放っておかないんですから!』

「モテるって動物にだろ? 男性ってオスにだろ?」

『ぐぐぬっ……! なぜ、それを……!』

「まあ、オレもだいたいおまえのことが分かってきたからな」

『わかったって……わたしのなにをわかったって言うんですか!』

「マヌケ」
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです 魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。 「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」 「ええっ!?」 いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。 「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」 攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

処理中です...