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雑兵編
辛うじて全裸は免れてたのに服を燃やされた。
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「反応が変わった」
『え? なにがですか?』
タカシは動かなくなり、積み上がった屍の上で、自分の右手を眺めていた。
頬や手には髪と同じ色の、鮮血がベットリとこびりついていた。
しかしその鮮血はすべて返り血で、タカシが受けた傷は皆無に等しかった。
「あいつの反応だよ。色が変わった」
『え? なにがですか?』
「それにさっき、あいつらのひとりが出口じゃなくて、奥のほうに逃げていった。これはなんかあるかもな……」
『え? なにがですか?』
タカシはルーシーをにらみつけると、パチンと猫だましをかましてみせた。
『わわっ! な、なにすんですか!』
「え? なにがですか?」
『なんなんですか、もう!』
「おまえがオレと会話する気がないからだろ。そりゃ猫も騙されるわ」
『意味がわからないですよ。それにしょうがないじゃないですか。目を閉じて、耳も塞いでましたし……』
「……あのさ、それ、おまえのヒトダマ特有の持ちネタかなにかか?」
『え? なにがですか?』
「それはもういいんだよ! ……まあいいや。とにかく、もう終わったから」
『そうなんですね。……それよりもなんなんですか、あなたは。ほんとに』
「オレか? オレはほら、あれだよ。タカシ君だよ」
『ほら、またそうやってはぐらかす。悪魔さん……とかじゃないですよね?』
「悪魔さんがルーシーさんの命を救うかよ。第一、悪魔のタカシ君ってなんだよ。となりのト〇ロみたいに言うなよ」
『言ってないですよ! それに誰ですか〇トロさんって!』
「とにかく、あいつはもう使いものにならなくなったみたいだから、服、取りに行くぞ」
『え? だれが使いものにならなくなったんですか?』
「……あのな、さっきオレが言――」
火の玉がタカシの頬を掠めた。
人の頭ほどの大きさの火の玉。
それが洞窟の奥からまっすぐ飛んできた。
タカシ口をキュッと結ぶと、火の玉の飛んできた方向をにらみつける。
「……よく避けたな、クソガキ!」
アジトの奥から出てきたのは、さきほどヘンリーの腹部を貫いた山賊だった。
山賊の右手には真紅のグローブがはめられており、手の平からは黒煙が立ち昇っていた。
山賊の顔は憎悪で満ち満ちており、視線はタカシに注がれていた。
「おいおいおい……、なんなんですか、その軍手は。ガーデニングするならもっと良いの貸すから、寄越しなさい」
「黙れ、クソガキ! よくも……よくも、ここまで暴れてくれたな!」
「いやいや、あなたがたから先に手を出してきたんじゃないですか。自業自得って言葉知らないんですか?」
「もうテメェの仲間を殺したぐらいじゃ割に合わねえ……、この落とし前はきちんとつけてもらうからなァ!」
山賊はそう言うと、右手のひらを突き出した。
無数の火の玉が、つぎつぎと手のひらから発射されていく。
火の玉は壁や天井、それぞれがビー玉のようにぶつかり合った。
乱反射し、それぞれが独立してタカシに牙を剥く。
タカシは足元にあった山賊の屍を盾にして火の玉を防いだ。
ある程度までは防いでいたが、すべてを防ぐことはできず、いくつか直撃を受けてしまった。
身に着けていた肌着が焦げ、白い素肌が露になる。
体中についていた返り血も、焦げて赤黒く変色していた。
「あっつ……!」
「て、てめえっ! 仲間になにしてくれてんだ!」
「なにって……、なにが?」
タカシはもはや、炭と化してしまった山賊の死体を地面に放り投げた。
死体は地面にぶつかり、風に吹かれるとパラパラとくずれて、そのまま消えてしまった。
辺りにあった死体もすべて焼死体になっており、同様に風に吹かれると消えていった。
「てめえに……、人間の血は通ってんのかよ!」
「山賊ごときが偉そうに道徳語ってんじゃねえ。そこにあったから使った。それだけだろうが。文句あっか」
「使った……だと! クソ、ガキィ……ッ!!」
「まあ、待てって……そんなにそれ使うと――」
山賊はタカシの制止はきかず『殺す!』と吐き捨てた。
それと同時に、さきほどとは比べ物にならない数の火の玉が飛び出してきた。
火の玉は縦横無尽に洞窟内を駆け回ると、そのままタカシめがけ飛んでいった。
それに対しタカシはただ、なにもしないで突っ立っていた。
『ちょ、タカシさん!? なに自信満々で突っ立ってんですか! 守ってください! 体を! プロテクトプロテクト! まだ焼死体になりたくないですよ!』
「だまってみてろ。あの火の玉はとどかねえ」
火の玉はタカシの宣言通り、蝋燭が風に吹かれるように消えてしまった。
「な、なにを……!」
「なにをって……、なんもしてねえよ」
「じゃあ、これはなんなんだよ……」
山賊は急に足元がおぼつかなくなると、その場に力なく崩れ落ちた。
「しんどいだろ? 立ってられねえだろ? 目が霞んでくるだろ?」
「く……そ……なんでだ!」
「そりゃ魔法も満足に使えない、ただの一般人がその火力で火球を出し続けたら、パワー切れおこすだろ」
「パワー切れ……だと……?」
「人間が一日中全速力で走れねえのと一緒だよ。それもなにも鍛えてもいない体だと、より一層その体に大きな負担になってのしかかるって話だ。わかりやすいだろ?」
「ふざ……けんな、オレはまだ……!」
「終わりだって。……まあ、複数人でその手袋使いまわされてたら、めんどくさかったけどな」
タカシは山賊に近づいていくと、手袋の中指部分をつまみ、ズルッと脱がした。
「んでこれ、没収な」
「ざっけんな! それはオレたちの――」
タカシは山賊の頭を足で頭を踏みつけた。
山賊の歯と歯が強制的に打ち付けられ、ガチッと音が鳴る。
「まあまあ、どうせどっから盗んできたもんだろ? オレがきっちり持ち主に返してやっから。そのまま死んでていいよ」
「んー! んんんんんー!!」
「――よっと」
タカシは一息に脚に力を込め、山賊の首の骨を簡単に折ってみせた。
山賊はピクリとも動かなくなると、タカシはさきほど脱がした手袋をはめ、死体を焼いた。
「これで、抵抗するやつは最後っぽいな……」
『た、タカシさん、終わりました?』
「……終わってねえよ。おまえはずっと目、閉じてろ」
『わかりました。目、開けますね』
「なんでだよ」
『もう大体、あなたがどういう人かわかってきたからですよ』
「ほほう。言ってみてくれたまへ」
『意地悪な人です』
「ハッハッハ! まっさかー。オレほど実直で熱意溢るる熱血漢、他にはいないぜー?」
『タカシさんがほんとうに実直で熱意溢るる熱血漢だった場合、意味の定義も変わってきますからね。本当に、他にもいなくなってしまいますねー』
「言うじゃん」
タカシは口を尖らせると、それ以上は何も言わずにアジトの奥へと進んでいった。
アジトはそこまで複雑な造りにはなっておらず、一本の長い通路に、いくらか枝分かれしたような道ができているだけであった。
タカシはその一本道をただひたすら、出口とは逆方向へと進んでいった。
『ちょ、タカシさん、アレ……!』
そんな折、ルーシーが突然うわずった声をあげた。
「なんだ? 実直で熱意溢るる熱血漢が空でも飛んでたか?」
『ふざけてないでください、アレですよ!』
「いや、いやいや、あのな。おまえは必死に指さしてるかもしれんが、こっちはただフワフワしてるだけにしか見えないんだってば」
『ヘンリーさんが……ヘンリーさんが……!』
「ああ……いいやつだったよ。無茶しやがって」
『いいやつだった……って、こうなったのも半分タカシさんの責任でもあるんですよ!?』
「いやぁ、新しい肉体が手に入ったから、ルーシーは解放されるな。やったね!」
『いやいや、そういう問題じゃないでしょ』
「んだよ、手でも合わせるか? 線香でも焚くか? 焼香でもあげるか? 遅かれ早かれそいつはそうなってたんだよ」
『そんな言いかたは、あまりにもあんまりです』
「てか、死んでねえよ、こいつ!」
『ふぇ?』
タカシはヘンリーの襟首を掴んでひっぱりあげてみせた。
ヘンリーは喀血すると、震えるまぶたを少しだけ持ち上げた。
「おーい、どんな感じ? ねえ、いまどんな感じ?」
『ちょ、あまり揺すらないでくださいってば! 剣も刺さってるし、もうホントに虫の息じゃないですか! というか、どうにかならないんですか? タカシさんならできるでしょ?』
「できるよ?」
『できるよ? ってキョトンとされましても……。それじゃあ、お願いしますよ』
「ただ、こいつが死にたいって顔してるしさ……。オレからすればここで無駄に苦しませるよりも、一気に――」
ヘンリーは大きく目を見開くと、頭が取れそうな勢いで首を左右に振ってみせた。
『……生きたいって言ってますけど……?』
「…………」
『それにしても、意外と元気そうで安心しましたよ!』
「なら、ここで放っておいても大丈夫かもな」
ヘンリーは大きく目を見開くと、頭が取れそうな勢いで首を横に振ってみせた。
「元気じゃん。……しかたねえな……」
タカシはヘンリーの腹部から乱暴にズボッと剣を引き抜く。
そして、目を閉じて手を患部へあてた。
緑色の光がタカシの手から放たれると、ヘンリーの腹部から波のように広がっていき、そのまま全身を包み込んでいった。
しばらくすると、光は急速に収束していき、タカシの手へと戻っていった。
ヘンリーは目を白黒させると、自分の腹をペタペタと触った。
傷口は完全に塞がっており、縫合跡のようなものも見当たらなかった。
タカシはヘンリーの襟首から手を離す。
ヘンリーはその場でドサッと尻もちをついて倒れた。
「やったじゃん。おつかれさん」
タカシはニカっと歯を見せて笑うと、そのまま宝物庫へと歩いていった。
ヘンリーはポケーッと呆けながらそれを見送った。
『よかったですね、タカシさん』
「よかったのはおまえだろ、ルーシー。これで露出狂って言われずに済むな」
『って、ああ!! タカシさん! もうボロボロじゃないですか! 見えてしまいますって! ポロっていっちゃいますって! 隠してくださいよ!』
「うるせーな。いまから隠すんだろーが。第一、誰がこんな色気のねぇ体に発情すんだよ」
『はぁ!? ちょ、聞き捨てなりませんね……! わたし、こう見えてモテるんですから! 男性が放っておかないんですから!』
「モテるって動物にだろ? 男性ってオスにだろ?」
『ぐぐぬっ……! なぜ、それを……!』
「まあ、オレもだいたいおまえのことが分かってきたからな」
『わかったって……わたしのなにをわかったって言うんですか!』
「マヌケ」
『え? なにがですか?』
タカシは動かなくなり、積み上がった屍の上で、自分の右手を眺めていた。
頬や手には髪と同じ色の、鮮血がベットリとこびりついていた。
しかしその鮮血はすべて返り血で、タカシが受けた傷は皆無に等しかった。
「あいつの反応だよ。色が変わった」
『え? なにがですか?』
「それにさっき、あいつらのひとりが出口じゃなくて、奥のほうに逃げていった。これはなんかあるかもな……」
『え? なにがですか?』
タカシはルーシーをにらみつけると、パチンと猫だましをかましてみせた。
『わわっ! な、なにすんですか!』
「え? なにがですか?」
『なんなんですか、もう!』
「おまえがオレと会話する気がないからだろ。そりゃ猫も騙されるわ」
『意味がわからないですよ。それにしょうがないじゃないですか。目を閉じて、耳も塞いでましたし……』
「……あのさ、それ、おまえのヒトダマ特有の持ちネタかなにかか?」
『え? なにがですか?』
「それはもういいんだよ! ……まあいいや。とにかく、もう終わったから」
『そうなんですね。……それよりもなんなんですか、あなたは。ほんとに』
「オレか? オレはほら、あれだよ。タカシ君だよ」
『ほら、またそうやってはぐらかす。悪魔さん……とかじゃないですよね?』
「悪魔さんがルーシーさんの命を救うかよ。第一、悪魔のタカシ君ってなんだよ。となりのト〇ロみたいに言うなよ」
『言ってないですよ! それに誰ですか〇トロさんって!』
「とにかく、あいつはもう使いものにならなくなったみたいだから、服、取りに行くぞ」
『え? だれが使いものにならなくなったんですか?』
「……あのな、さっきオレが言――」
火の玉がタカシの頬を掠めた。
人の頭ほどの大きさの火の玉。
それが洞窟の奥からまっすぐ飛んできた。
タカシ口をキュッと結ぶと、火の玉の飛んできた方向をにらみつける。
「……よく避けたな、クソガキ!」
アジトの奥から出てきたのは、さきほどヘンリーの腹部を貫いた山賊だった。
山賊の右手には真紅のグローブがはめられており、手の平からは黒煙が立ち昇っていた。
山賊の顔は憎悪で満ち満ちており、視線はタカシに注がれていた。
「おいおいおい……、なんなんですか、その軍手は。ガーデニングするならもっと良いの貸すから、寄越しなさい」
「黙れ、クソガキ! よくも……よくも、ここまで暴れてくれたな!」
「いやいや、あなたがたから先に手を出してきたんじゃないですか。自業自得って言葉知らないんですか?」
「もうテメェの仲間を殺したぐらいじゃ割に合わねえ……、この落とし前はきちんとつけてもらうからなァ!」
山賊はそう言うと、右手のひらを突き出した。
無数の火の玉が、つぎつぎと手のひらから発射されていく。
火の玉は壁や天井、それぞれがビー玉のようにぶつかり合った。
乱反射し、それぞれが独立してタカシに牙を剥く。
タカシは足元にあった山賊の屍を盾にして火の玉を防いだ。
ある程度までは防いでいたが、すべてを防ぐことはできず、いくつか直撃を受けてしまった。
身に着けていた肌着が焦げ、白い素肌が露になる。
体中についていた返り血も、焦げて赤黒く変色していた。
「あっつ……!」
「て、てめえっ! 仲間になにしてくれてんだ!」
「なにって……、なにが?」
タカシはもはや、炭と化してしまった山賊の死体を地面に放り投げた。
死体は地面にぶつかり、風に吹かれるとパラパラとくずれて、そのまま消えてしまった。
辺りにあった死体もすべて焼死体になっており、同様に風に吹かれると消えていった。
「てめえに……、人間の血は通ってんのかよ!」
「山賊ごときが偉そうに道徳語ってんじゃねえ。そこにあったから使った。それだけだろうが。文句あっか」
「使った……だと! クソ、ガキィ……ッ!!」
「まあ、待てって……そんなにそれ使うと――」
山賊はタカシの制止はきかず『殺す!』と吐き捨てた。
それと同時に、さきほどとは比べ物にならない数の火の玉が飛び出してきた。
火の玉は縦横無尽に洞窟内を駆け回ると、そのままタカシめがけ飛んでいった。
それに対しタカシはただ、なにもしないで突っ立っていた。
『ちょ、タカシさん!? なに自信満々で突っ立ってんですか! 守ってください! 体を! プロテクトプロテクト! まだ焼死体になりたくないですよ!』
「だまってみてろ。あの火の玉はとどかねえ」
火の玉はタカシの宣言通り、蝋燭が風に吹かれるように消えてしまった。
「な、なにを……!」
「なにをって……、なんもしてねえよ」
「じゃあ、これはなんなんだよ……」
山賊は急に足元がおぼつかなくなると、その場に力なく崩れ落ちた。
「しんどいだろ? 立ってられねえだろ? 目が霞んでくるだろ?」
「く……そ……なんでだ!」
「そりゃ魔法も満足に使えない、ただの一般人がその火力で火球を出し続けたら、パワー切れおこすだろ」
「パワー切れ……だと……?」
「人間が一日中全速力で走れねえのと一緒だよ。それもなにも鍛えてもいない体だと、より一層その体に大きな負担になってのしかかるって話だ。わかりやすいだろ?」
「ふざ……けんな、オレはまだ……!」
「終わりだって。……まあ、複数人でその手袋使いまわされてたら、めんどくさかったけどな」
タカシは山賊に近づいていくと、手袋の中指部分をつまみ、ズルッと脱がした。
「んでこれ、没収な」
「ざっけんな! それはオレたちの――」
タカシは山賊の頭を足で頭を踏みつけた。
山賊の歯と歯が強制的に打ち付けられ、ガチッと音が鳴る。
「まあまあ、どうせどっから盗んできたもんだろ? オレがきっちり持ち主に返してやっから。そのまま死んでていいよ」
「んー! んんんんんー!!」
「――よっと」
タカシは一息に脚に力を込め、山賊の首の骨を簡単に折ってみせた。
山賊はピクリとも動かなくなると、タカシはさきほど脱がした手袋をはめ、死体を焼いた。
「これで、抵抗するやつは最後っぽいな……」
『た、タカシさん、終わりました?』
「……終わってねえよ。おまえはずっと目、閉じてろ」
『わかりました。目、開けますね』
「なんでだよ」
『もう大体、あなたがどういう人かわかってきたからですよ』
「ほほう。言ってみてくれたまへ」
『意地悪な人です』
「ハッハッハ! まっさかー。オレほど実直で熱意溢るる熱血漢、他にはいないぜー?」
『タカシさんがほんとうに実直で熱意溢るる熱血漢だった場合、意味の定義も変わってきますからね。本当に、他にもいなくなってしまいますねー』
「言うじゃん」
タカシは口を尖らせると、それ以上は何も言わずにアジトの奥へと進んでいった。
アジトはそこまで複雑な造りにはなっておらず、一本の長い通路に、いくらか枝分かれしたような道ができているだけであった。
タカシはその一本道をただひたすら、出口とは逆方向へと進んでいった。
『ちょ、タカシさん、アレ……!』
そんな折、ルーシーが突然うわずった声をあげた。
「なんだ? 実直で熱意溢るる熱血漢が空でも飛んでたか?」
『ふざけてないでください、アレですよ!』
「いや、いやいや、あのな。おまえは必死に指さしてるかもしれんが、こっちはただフワフワしてるだけにしか見えないんだってば」
『ヘンリーさんが……ヘンリーさんが……!』
「ああ……いいやつだったよ。無茶しやがって」
『いいやつだった……って、こうなったのも半分タカシさんの責任でもあるんですよ!?』
「いやぁ、新しい肉体が手に入ったから、ルーシーは解放されるな。やったね!」
『いやいや、そういう問題じゃないでしょ』
「んだよ、手でも合わせるか? 線香でも焚くか? 焼香でもあげるか? 遅かれ早かれそいつはそうなってたんだよ」
『そんな言いかたは、あまりにもあんまりです』
「てか、死んでねえよ、こいつ!」
『ふぇ?』
タカシはヘンリーの襟首を掴んでひっぱりあげてみせた。
ヘンリーは喀血すると、震えるまぶたを少しだけ持ち上げた。
「おーい、どんな感じ? ねえ、いまどんな感じ?」
『ちょ、あまり揺すらないでくださいってば! 剣も刺さってるし、もうホントに虫の息じゃないですか! というか、どうにかならないんですか? タカシさんならできるでしょ?』
「できるよ?」
『できるよ? ってキョトンとされましても……。それじゃあ、お願いしますよ』
「ただ、こいつが死にたいって顔してるしさ……。オレからすればここで無駄に苦しませるよりも、一気に――」
ヘンリーは大きく目を見開くと、頭が取れそうな勢いで首を左右に振ってみせた。
『……生きたいって言ってますけど……?』
「…………」
『それにしても、意外と元気そうで安心しましたよ!』
「なら、ここで放っておいても大丈夫かもな」
ヘンリーは大きく目を見開くと、頭が取れそうな勢いで首を横に振ってみせた。
「元気じゃん。……しかたねえな……」
タカシはヘンリーの腹部から乱暴にズボッと剣を引き抜く。
そして、目を閉じて手を患部へあてた。
緑色の光がタカシの手から放たれると、ヘンリーの腹部から波のように広がっていき、そのまま全身を包み込んでいった。
しばらくすると、光は急速に収束していき、タカシの手へと戻っていった。
ヘンリーは目を白黒させると、自分の腹をペタペタと触った。
傷口は完全に塞がっており、縫合跡のようなものも見当たらなかった。
タカシはヘンリーの襟首から手を離す。
ヘンリーはその場でドサッと尻もちをついて倒れた。
「やったじゃん。おつかれさん」
タカシはニカっと歯を見せて笑うと、そのまま宝物庫へと歩いていった。
ヘンリーはポケーッと呆けながらそれを見送った。
『よかったですね、タカシさん』
「よかったのはおまえだろ、ルーシー。これで露出狂って言われずに済むな」
『って、ああ!! タカシさん! もうボロボロじゃないですか! 見えてしまいますって! ポロっていっちゃいますって! 隠してくださいよ!』
「うるせーな。いまから隠すんだろーが。第一、誰がこんな色気のねぇ体に発情すんだよ」
『はぁ!? ちょ、聞き捨てなりませんね……! わたし、こう見えてモテるんですから! 男性が放っておかないんですから!』
「モテるって動物にだろ? 男性ってオスにだろ?」
『ぐぐぬっ……! なぜ、それを……!』
「まあ、オレもだいたいおまえのことが分かってきたからな」
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「マヌケ」
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