21 / 147
アルバイターガレイト
元最強騎士に慣れない少女
しおりを挟む「それは……たしかにそうだけど、でも、危険なんじゃ……」
「いえ、火山牛程度、なんの問題ありませんとも!」
そう言って自身の胸を叩くガレイト。しかし、モニカはそんなガレイトとは対照的で、訝しむようにその自信満々な顔を見ていた。
「指定危険魔物が問題ない……?」
「え?」
「そういえば、今考えてみれば……なんか、火山牛討伐の時もやけに帰ってくるのが早かったよね……」
「う!?」
「ねえ、ガレイトさんって本当にただの傭兵だったの? 嘘ついてない?」
「そ、それは……なんというか……」
「火山牛クラスの魔物を難なく倒すクラスの傭兵って、もうそれだけでかなり有名になってくるんじゃ……」
「ち、ちがうんですよ……!」
「……何が?」
「あの、じ……じつは……その……み、道端に落ちてたんですよ!」
「……はい?」
「それを、偶然通りかかった俺が拾ったというか……」
「火山牛が……偶然、道端に落ちてた?」
「は、はい。なんかこう……ぐでっと横たわっていて、静かに息を引き取っていました」
「いや、どういうことよ」
「ですから、俺があの時、火山牛を持って来れたのはたまたまということで……」
「なんで?」
「なん……え? なんで……ってなにが?」
「まあ、百歩譲って〝落ちてた〟事に目をつむれば、なんで落ちてたのか気になるよね。火山牛を倒すほどの魔物はここら辺にはめったに出ないし」
「た、たしかに」
「でも、外傷もなかったし、綺麗な状態だったから……たぶん、相当強い魔物か、人が……」
「じゅ、寿命……」
「え?」
「そ、そうです、寿命だったんですよ!」
「火山牛が、老衰で死んでたっての?」
「はい。もうそれしか考えられないかと!」
「でも、あの火山牛、結構若かったと思うんだけど……」
「そ!? ……それはやはり、やりたいことをやり終えたからではないでしょうか?」
「どういう意味?」
「もう悔いはない! 死のう! って」
「いやいや……」
「だから、道端ボルケイノしていたのでしょう」
「み、道端ボルケイノ!?」
もはや吹っ切れてしまったのか、ガレイトは真顔で意味不明な単語を言い放った。
「あの、ごめん。道端ボルケイノってなに?」
「道端ボルケイノはもう、道端でボルケイノですよ。いくら火山牛でもその衝撃に耐えられなかったのでしょうね。ですから、安らかな顔で逝っていました」
「……いやいや、でもね──」
「あの、モニカさん、よろしいですか?」
「なに……?」
「この場合、俺が火山牛を狩ったかもしれないという仮定の話よりも、俺が火山牛を持ってきたという事実に目を向けるべきだと思いますが」
「はい?」
「事実、俺は火山牛を持って帰りました。違いますか?」
「いや、だからその経緯の話を……」
「モニカさん」
「は、はい……」
ガレイトは自身の巨大な手を、スッとモニカの前へ差し出してニコッと笑った。ガレイトのその有無を言わさぬ雰囲気に吞まれたモニカは、しばらくガレイトの手と顔を交互に見ると、渋々と言った感じで握手に応じた。
「改めて、よろしくお願いします。モニカさん」
「あ、はい。……まあいいや」
しばらくしてモニカはその手をゆっくり離すと、ガレイトを見て続けた。
「なんか事情がありそうだから、もうあまりガレイトさんの事は詮索しないけど、これからはあんな危険なことしないでね」
「危険……」
「いや、自覚すらないんかい! 火山牛のことだよ!」
「ああ!」
「……ほんと、あたしもブリもめちゃくちゃ心配したんだからね?」
「す、すみません……」
「だから、食材を取ってくれるって申し出は実際嬉しいし、ありがたいけど、火山牛みたいな危ないのは無し。おっけー? まずは山菜とか野草とかにしよう」
「きょ、極力……!」
ガレイトはぷるぷると小刻みに震えながら言うが──
「だめ! 絶対! ……約束しないと、ここで解雇します!」
「そ、そんなぁ……!」
「約束してくれるよね?」
「や……約束……しま……!」
「しま?」
「せ……」
「せ?」
「約束しませす……ッ!」
「どっち!?」
「約束します……」
ガレイトはがっくりと肩を落とすと、観念したように言葉を吐いた。
「よろしい! ……まあ、ここ三日間は忙しくてあまり構ってあげられなかったけど、明日からはあたしもブリもガレイトさんに料理を教えられると思うから、楽しみにしておいて」
「本当ですか……!」
さきほどまでやつれていた表情が一変し、ガレイトの顔がぱぁっと明るくなる。
「わ、わかりやすいな……というわけだから、ブリ、こっち来な」
モニカはそう言うと、ちょいちょいとブリギットに手招きをしてみせた。
「え? で、でも、モニモニ……」
「いいからいいから。こういうところはさすがに締めないと。それにいい加減、ガレイトさんにも慣れておかないとだめでしょ?」
「な、慣れる……」
「そ、それは……また明日……から、頑張りまひゅ……」
「ブリ?」
ブリギットはモニカにそう言われると、観念したように目をぎゅっと瞑り、よたよたとよろめきながら、陰から出てきた。
「何やってんの……?」
「し、視覚を遮断して、他の感覚を鍛える修業……」
「なぜ今?」
生まれたての赤ん坊のように、よたよたとモニカに近づいていくブリギットだったが──
「──あっ!?」
ブリギットは何もないところで躓くと、前のめりに倒れ、それをすかさずガレイトが受け止めた。
「あ、ありがとう、モニモニ」
「え? いや……」
「でも、なんか変に逞しくなってない? 筋トレでもし──ビャッ!?」
「もう、言わんこっちゃない。ただでさえすぐ転ぶのに、そんなことしてるからすぐ……ブリ?」
──ブリギットは、ガレイトの太い腕に抱かれたまま気絶していた。
目を開けたままのブリギットはピクリとも身じろぎはせず、ただただ漬物石が如く、ずぅんとガレイトに体重を預けていた。
「どうやら……気絶、しているようです」
「見りゃわかるさ。……はぁ」
モニカはひときわ大きなため息をつくと、身に纏っていたエプロンをはぎ取った。
「明日までにガレイトさん対策考えるよ」
モニカはそれだけを言い残すと、そのまま店を出た。
「俺対策……」
ぽつんと店内に残されたガレイトは目をパチパチと瞬きさせると──
「ああ、上まで運ぶんだったな……」
そのままオステリカ・オスタリカ・フランチェスカの三階まで上がっていった。
0
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる