史上最強の料理人(物理)~役立たずと言われパーティを追放されましたが、元帝国最強騎士なのは内緒です~

枯井戸

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アルバイターガレイト

元最強騎士に慣れない少女

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「それは……たしかにそうだけど、でも、危険なんじゃ……」

「いえ、火山牛キャトルボルケイノ程度、なんの問題ありませんとも!」


 そう言って自身の胸を叩くガレイト。しかし、モニカはそんなガレイトとは対照的で、訝しむようにその自信満々な顔を見ていた。


「指定危険魔物が問題ない・・・・……?」

「え?」

「そういえば、今考えてみれば……なんか、火山牛討伐の時もやけに帰ってくるのが早かったよね……」

「う!?」

「ねえ、ガレイトさんって本当にただの傭兵だったの? 嘘ついてない?」

「そ、それは……なんというか……」

「火山牛クラスの魔物を難なく倒すクラスの傭兵って、もうそれだけでかなり有名になってくるんじゃ……」

「ち、ちがうんですよ……!」

「……何が?」

「あの、じ……じつは……その……み、道端に落ちてたんですよ!」

「……はい?」

「それを、偶然通りかかった俺が拾ったというか……」

「火山牛が……偶然、道端に落ちてた?」

「は、はい。なんかこう……ぐでっと横たわっていて、静かに息を引き取っていました」

「いや、どういうことよ」

「ですから、俺があの時、火山牛を持って来れたのはたまたまということで……」

「なんで?」

「なん……え? なんで……ってなにが?」

「まあ、百歩譲って〝落ちてた〟事に目をつむれば、なんで落ちてたのか気になるよね。火山牛を倒すほどの魔物はここら辺にはめったに出ないし」

「た、たしかに」

「でも、外傷もなかったし、綺麗な状態だったから……たぶん、相当強い魔物か、人が……」

「じゅ、寿命……」

「え?」

「そ、そうです、寿命だったんですよ!」

「火山牛が、老衰で死んでたっての?」

「はい。もうそれしか考えられないかと!」

「でも、あの火山牛、結構若かったと思うんだけど……」

「そ!? ……それはやはり、やりたいことをやり終えたからではないでしょうか?」

「どういう意味?」

「もう悔いはない! 死のう! って」

「いやいや……」

「だから、道端ボルケイノしていたのでしょう」

「み、道端ボルケイノ!?」


 もはや吹っ切れてしまったのか、ガレイトは真顔で意味不明な単語を言い放った。


「あの、ごめん。道端ボルケイノってなに?」

「道端ボルケイノはもう、道端でボルケイノですよ。いくら火山牛でもその衝撃に耐えられなかったのでしょうね。ですから、安らかな顔で逝っていました」

「……いやいや、でもね──」

「あの、モニカさん、よろしいですか?」

「なに……?」

「この場合、俺が火山牛を狩ったかもしれない・・・・・・という仮定の話よりも、俺が火山牛を持ってきたという事実に目を向けるべきだと思いますが」

「はい?」

「事実、俺は火山牛を持って帰りました。違いますか?」

「いや、だからその経緯の話を……」

「モニカさん」

「は、はい……」


 ガレイトは自身の巨大な手を、スッとモニカの前へ差し出してニコッと笑った。ガレイトのその有無を言わさぬ雰囲気に吞まれたモニカは、しばらくガレイトの手と顔を交互に見ると、渋々と言った感じで握手に応じた。


「改めて、よろしくお願いします。モニカさん」

「あ、はい。……まあいいや」


 しばらくしてモニカはその手をゆっくり離すと、ガレイトを見て続けた。


「なんか事情がありそうだから、もうあまりガレイトさんの事は詮索しないけど、これからはあんな危険なことしないでね」

「危険……」

「いや、自覚すらないんかい! 火山牛のことだよ!」

「ああ!」

「……ほんと、あたしもブリもめちゃくちゃ心配したんだからね?」

「す、すみません……」

「だから、食材を取ってくれるって申し出は実際嬉しいし、ありがたいけど、火山牛みたいな危ないのは無し。おっけー? まずは山菜とか野草とかにしよう」

「きょ、極力……!」


 ガレイトはぷるぷると小刻みに震えながら言うが──


「だめ! 絶対! ……約束しないと、ここで解雇します!」

「そ、そんなぁ……!」

「約束してくれるよね?」

「や……約束……しま……!」

「しま?」

「せ……」

「せ?」

「約束しませす……ッ!」

「どっち!?」

「約束します……」


 ガレイトはがっくりと肩を落とすと、観念したように言葉を吐いた。


「よろしい! ……まあ、ここ三日間は忙しくてあまり構ってあげられなかったけど、明日からはあたしもブリもガレイトさんに料理を教えられると思うから、楽しみにしておいて」

「本当ですか……!」


 さきほどまでやつれていた表情が一変し、ガレイトの顔がぱぁっと明るくなる。


「わ、わかりやすいな……というわけだから、ブリ、こっち来な」


 モニカはそう言うと、ちょいちょいとブリギットに手招きをしてみせた。


「え? で、でも、モニモニ……」

「いいからいいから。こういうところはさすがに締めないと。それにいい加減、ガレイトさんにも慣れておかないとだめでしょ?」

「な、慣れる……」

「そ、それは……また明日……から、頑張りまひゅ……」

「ブリ?」


 ブリギットはモニカにそう言われると、観念したように目をぎゅっと瞑り、よたよたとよろめきながら、陰から出てきた。


「何やってんの……?」

「し、視覚を遮断して、他の感覚を鍛える修業……」

「なぜ今?」


 生まれたての赤ん坊のように、よたよたとモニカに近づいていくブリギットだったが──


「──あっ!?」


 ブリギットは何もないところで躓くと、前のめりに倒れ、それをすかさずガレイトが受け止めた。


「あ、ありがとう、モニモニ・・・・

「え? いや……」

「でも、なんか変に逞しくなってない? 筋トレでもし──ビャッ!?」

「もう、言わんこっちゃない。ただでさえすぐ転ぶのに、そんなことしてるからすぐ……ブリ?」


 ──ブリギットは、ガレイトの太いかいなに抱かれたまま気絶していた。
 目を開けたままのブリギットはピクリとも身じろぎはせず、ただただ漬物石が如く、ずぅんとガレイトに体重を預けていた。


「どうやら……気絶、しているようです」

「見りゃわかるさ。……はぁ」


 モニカはひときわ大きなため息をつくと、身に纏っていたエプロンをはぎ取った。


「明日までにガレイトさん対策考えるよ」


 モニカはそれだけを言い残すと、そのまま店を出た。


「俺対策……」


 ぽつんと店内に残されたガレイトは目をパチパチと瞬きさせると──
「ああ、上まで運ぶんだったな……」
 そのままオステリカ・オスタリカ・フランチェスカの三階まで上がっていった。
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