史上最強の料理人(物理)~役立たずと言われパーティを追放されましたが、元帝国最強騎士なのは内緒です~

枯井戸

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懐かしのヴィルヘルム

元最強騎士、少年を探す

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 ガレイトたちが漂流した砂浜から見て、島の反対側の砂浜。
 そこに、少年の住処があった。
 削り出され、成形される途中の木材や、漂着物であろう錆びたハンマーや、のみのこぎりなどが、無造作に砂浜の上に置かれていた。
 そこからすこし視点を陸のほうへ移すと、枝などの細い木材で組まれ、葉をかぶせて作られた、一人分の住居スペースがあった。
 ガレイトが遠慮がちにその中を見てみると、船の設計図のようなものが、砂浜の上に深く刻み込まえがかれていた。


「──どうやら、いないようですね。あの少年」


 辺りの砂浜を捜索していたイルザードが、ガレイトに言う。
 それを合図にブリギットとサキガケもガレイトの周りに集まってきた。


「う~む。今朝、拙者たちと会っていたから、そう遠くまで行っていないのはわかるでござるが……一体どこへ……?」

「船を作ってるんだったら……その材料を探しに行ってるの……かな?」

「まあ、それはわかるが……」

「ご、ごめんなさい……」

「……うん? なぜブリギット殿が謝る?」

「え? えっと、ごめんなさい……」


 イルザードはそれ以上何も言わず、ため息交じりに話を続けた。


「……だとすれば、なおさら、あの少年はどこへ行ったのでしょうか」

「現状をかみ砕いて、さらに簡潔に言うと、少年の目的は島の脱出。そして、その為の船造りだ。砂浜に点在しているヤシの実は水分補給……生命線であるから、無数にあるとはいえ、木材としては使えない。漂着物の数も限られている。だとすれば、他の木材調達法といえば──」

「島中央にある密林……?」


 ブリギットが、あえて皆が口にしなかったことを口にする。


「まずいな。イケメンさんの話が本当だとすれば、少年の命が危ない……」

「でも、なぜ今更になって密林へ……?」

「……いや、おそらく少年が密林に行くのは最初じゃないはずだ」

「どういうことですか、ガレイトさん?」

「そこに作りかけの船があるだろう? あの太さや木目からして、ヤシの木を加工したとは考えにくい。たしかに漂着物である可能性もあるが、今はそう考えたほうが・・・・・・・・自然だろう」

「たしかに……でも、それはそうと、早く連れ戻さないと、拙者たちはひょっとしたら永久に、脱出の糸口を失うことになってしまう事になるでござる……」

「──よし」


 暫く考えていたガレイトは、顔を上げると、イルザードとブリギット、そしてサキガケを指さした。


「……三人は引き続き、浜辺の周辺で少年の捜索を続けてください」

「え? あの、ガレイトさんは……?」


 ブリギットが、不安そうな顔でガレイトを見上げる。


「俺は急ぎ、密林へ向かいます。もしブリギットさんたちが少年を見つけたら……イルザード、おまえの大声で俺を呼べ」

「で、でも……危ないんじゃ……」

「そうですよ、ガレイトさん。以前にも密林でやらかして、ダグザ殿に助けてもらったのでしょう?」


 ブリギットとイルザードが心配そうな目でガレイトを見る。


「あ、あれは、たまたま腹を壊していただけだ。……今度は心配ないさ」

「なら、せめて半日ごとにここへ帰って来てください」

「それは無理だ。時間が経てば経つほど、少年の生存確率も減っていく。これは時間の勝負でもあるんだ」

「なら、私が行きます」

「ダメだ。おまえにそのような経験がない事は知っている。仮におまえが密林に入ったからと言って、出来ることはたかが知れているだろう。……ここで忌避すべきは、おまえが少年の二の舞になってしまう事だ。なら、この中で一番頑丈な俺が行けばいいだけの話だ」

「なら二人で……」

「話を聞いていたか? 俺とおまえ、二人で行っても意味はないだろ。むしろ、ここにブリギットさんとサキガケさんだけを残すほうがまずい。俺はまだ、ここの人間を信用しているわけじゃない」

「それは私も同じですが……」

「だったら──」

「……お言葉ですが、私は反対です。密林あそこであなたをひとりには出来ません」


 イルザードが珍しく、真剣な表情でガレイトの提案を否定する。
 反論をしたガレイトだったが、無駄だと悟ったのか、その言葉を引っ込めた。


「……困ったな」


 ガレイトが焦るようにガシガシと頭を掻くと、その話を聞いていたサキガケが手を挙げた。


「なら、拙者がついていくでござる」

「サキガケさんが……?」

「ニン。仮にも拙者は魔物殺し。大方の魔物、動物の生態、対処法は頭に入っているでござる。なればこそ、拙者を連れていけばいい」

「だが、サキガケ殿は方向音痴だろう……?」

「ニン……そこは……がれいと殿に先導してもらうでござる。拙者の役割は、外敵の対処と、その安全確保でござるから」

「それは……たしかに頼もしいが……」

「……どうだ、イルザード。サキガケさんも来てくれるんだ。これでいいだろう」

「……わかりました」


 イルザードはしばらく考え込んだ後、すがるようにサキガケの顔を見た。


「ですが、なるべく早く見切り・・・はつけてくださいね」

「縁起でもないことを言うな」

「ごめんなさい……」

「おまえはブリギットさんの安全に気を配りつつ、引き続き島の周囲で少年の捜索を続けてくれ」

「はい……」


 肩を落とし、覇気のない声で返事をするイルザード。
 ガレイトはため息をつくと、ポンとイルザードの頭に手を置いた。


「心配するな。今度も・・・きちんと帰ってくる」

「……待ってますから」

「──では、行きましょう、サキガケさん」

「ニン。お供するでござる」


 二人はそう言うと、島の中心──
 密林地帯へと歩を進めた。
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