5 / 27
突然の!?
しおりを挟む
それは、突然の知らせだった。
机の上の時計は3時を指していて、まだ朝日もあがりきっていない。
真っ暗な部屋の中、携帯電話が鳴り出した。
電話の音量は最大になっていて、私はベッドの中でビクンッと跳ね起きた。
「な……なに?」
いつもバイブレーターに設定しているから、着信音に一瞬首をかしげる。
あ、携帯か。
派手に鳴り響く携帯電話にベッドの中から手を伸ばし、画面を確認する。
着信《すぐる様》
もちろん、私がこんな名前入れるわけがない。
すぐる本人が《様》付けで登録したのだ。
しかも、その時に着信音の設定まで変えられていたらしい。
「なによ、もう」
文句を言いながらも、電話に出る。
「もしもし?」
不機嫌さを隠そうともしない私に、電話の相手は何度か咳払いをした。
『もしもし、山本碧さんですね?』
聞き覚えのない男の声に、私は眉をそせた。
すぐるの声じゃない……。
「そうですけど。……誰?」
『私は森山直樹といいます』
森山直樹?
聞いたことのない名前だ。
私が返事に困っていると、森山直樹と名乗った相手が話しを続けた。
『君は、すぐるの恋人だね?』
「はい……。そうなってますけど?」
勝手に決められて《彼女》という座を押し付けられただけ。
とは、言えない。
『私は、すぐるの父です』
「ちち……?」
聞き返し、ポカンと口をあける。
父って……すぐるの父親!?
なんで!? どうして!?
『落ち着いて、聞いてほしい事がある』
「は……はい」
思わずベッドの上に正座をして、ゴクリと唾を飲む。
落ち着いて聞け。
といわれても、無理な話だ。
なんでいきなり、すぐるが登録したこの番号から、すぐるの父親が電話してくるのか全く理解できない。
しかも、こんな時間にだ。
『実はね……』
また、何度か咳払いをして、すぐるの父親は話しをはじめた……。
☆☆☆
携帯電話が、自分の膝の上にある。
電話はとっくの前に切れていて、画面は真っ暗だ。
けれど、私はまだベッドの上で正座をしていた。
体が、カタカタと小刻みに震える。
なんで?
寒いから?
……違う。
すぐるの父親、森山直樹さんから電話をもらったからだ。
内容は?
なんだっけ?
なんで私、震えてるんだっけ?
私の頬に、冷たい涙が伝った。
「すぐる……」
口から、自然とその名前が零れ落ちる。
自分でも驚くくらい、情けない声。
その時、森山直樹さんが言った言葉を思い出した。
『ついさっき、すぐるが亡くなった』
何の感情も込めていない、義務的な口調。
『もしよかったら、今から来て手伝ってほしい事がある。家の住所は――』
うそでしょ……?
すぐる――!!
私は、パジャマ姿にカーディガンを羽織り、こっそりと家を抜け出した。
もし親に見つかったら、きっと止められてしまうから。
ほんのりと明るくなり始めた世界は空気が冷たくて、思わず身震いする。
この時間だと、タクシーはすぐにつかまる。
タイミングよく走ってきたタクシーを止めて乗り込むと、私は、震える声で場所を告げた……。
車で、一体何分くらいだろうか?
たぶん、10分くらいだと思う。
気持ちが重たすぎて、もっと長い時間だったように感じる。
付いた場所は、ある大きな家の前だった。
「ここ……」
この辺じゃ有名な豪邸だ。
もちろん、私もずっと前から知っている。
ここが、すぐるの家だったなんて……。
信じられず、しばらく家の前で突っ立っていると一人の大きな男の人が顔を出した。
「君が、山本碧さんかい?」
電話と同じ声だ。
私はひとつうなづくと、その人――すぐるの父親は、私を家の中へと招きいれた。
家の中は、その外観通り洋風の屋敷を思わせるつくりだった。
真っ赤なカーペットに、入ってすぐ広がる大広場。
私がどこで靴を脱げばいいか迷っていると、「靴はそのままで」と、言われた。
そんな家の、ある一室。
そこに、すぐるは寝かされていた。
真っ白なベッドの上に、目を閉じて……。
「すぐる……?」
普通に寝ているのと何も変わらない、すぐるの顔。
少し微笑んでいるようにも見えるけど、その肌は青白く、触れることもできなかった。
本当に……?
本当に死んじったの?
昼間、あれほど元気だったじゃない。
人のファーストキス奪っといて、女になれとか言っといて……。
私は、下唇をかみ締めた。
ここで、泣いたらダメだ。
すぐるの父親は、私に手伝ってほしいことがあるといっていた。
まずは、それをキチンとやらなければいけない。
少しでも泣いてしまうと、そこからもう何もできなくなりそうだった。
だから……。
「手伝うことって、何ですか?」
私はすぐるから目を離し、森山直樹さんへ向けて、そう言った――。
机の上の時計は3時を指していて、まだ朝日もあがりきっていない。
真っ暗な部屋の中、携帯電話が鳴り出した。
電話の音量は最大になっていて、私はベッドの中でビクンッと跳ね起きた。
「な……なに?」
いつもバイブレーターに設定しているから、着信音に一瞬首をかしげる。
あ、携帯か。
派手に鳴り響く携帯電話にベッドの中から手を伸ばし、画面を確認する。
着信《すぐる様》
もちろん、私がこんな名前入れるわけがない。
すぐる本人が《様》付けで登録したのだ。
しかも、その時に着信音の設定まで変えられていたらしい。
「なによ、もう」
文句を言いながらも、電話に出る。
「もしもし?」
不機嫌さを隠そうともしない私に、電話の相手は何度か咳払いをした。
『もしもし、山本碧さんですね?』
聞き覚えのない男の声に、私は眉をそせた。
すぐるの声じゃない……。
「そうですけど。……誰?」
『私は森山直樹といいます』
森山直樹?
聞いたことのない名前だ。
私が返事に困っていると、森山直樹と名乗った相手が話しを続けた。
『君は、すぐるの恋人だね?』
「はい……。そうなってますけど?」
勝手に決められて《彼女》という座を押し付けられただけ。
とは、言えない。
『私は、すぐるの父です』
「ちち……?」
聞き返し、ポカンと口をあける。
父って……すぐるの父親!?
なんで!? どうして!?
『落ち着いて、聞いてほしい事がある』
「は……はい」
思わずベッドの上に正座をして、ゴクリと唾を飲む。
落ち着いて聞け。
といわれても、無理な話だ。
なんでいきなり、すぐるが登録したこの番号から、すぐるの父親が電話してくるのか全く理解できない。
しかも、こんな時間にだ。
『実はね……』
また、何度か咳払いをして、すぐるの父親は話しをはじめた……。
☆☆☆
携帯電話が、自分の膝の上にある。
電話はとっくの前に切れていて、画面は真っ暗だ。
けれど、私はまだベッドの上で正座をしていた。
体が、カタカタと小刻みに震える。
なんで?
寒いから?
……違う。
すぐるの父親、森山直樹さんから電話をもらったからだ。
内容は?
なんだっけ?
なんで私、震えてるんだっけ?
私の頬に、冷たい涙が伝った。
「すぐる……」
口から、自然とその名前が零れ落ちる。
自分でも驚くくらい、情けない声。
その時、森山直樹さんが言った言葉を思い出した。
『ついさっき、すぐるが亡くなった』
何の感情も込めていない、義務的な口調。
『もしよかったら、今から来て手伝ってほしい事がある。家の住所は――』
うそでしょ……?
すぐる――!!
私は、パジャマ姿にカーディガンを羽織り、こっそりと家を抜け出した。
もし親に見つかったら、きっと止められてしまうから。
ほんのりと明るくなり始めた世界は空気が冷たくて、思わず身震いする。
この時間だと、タクシーはすぐにつかまる。
タイミングよく走ってきたタクシーを止めて乗り込むと、私は、震える声で場所を告げた……。
車で、一体何分くらいだろうか?
たぶん、10分くらいだと思う。
気持ちが重たすぎて、もっと長い時間だったように感じる。
付いた場所は、ある大きな家の前だった。
「ここ……」
この辺じゃ有名な豪邸だ。
もちろん、私もずっと前から知っている。
ここが、すぐるの家だったなんて……。
信じられず、しばらく家の前で突っ立っていると一人の大きな男の人が顔を出した。
「君が、山本碧さんかい?」
電話と同じ声だ。
私はひとつうなづくと、その人――すぐるの父親は、私を家の中へと招きいれた。
家の中は、その外観通り洋風の屋敷を思わせるつくりだった。
真っ赤なカーペットに、入ってすぐ広がる大広場。
私がどこで靴を脱げばいいか迷っていると、「靴はそのままで」と、言われた。
そんな家の、ある一室。
そこに、すぐるは寝かされていた。
真っ白なベッドの上に、目を閉じて……。
「すぐる……?」
普通に寝ているのと何も変わらない、すぐるの顔。
少し微笑んでいるようにも見えるけど、その肌は青白く、触れることもできなかった。
本当に……?
本当に死んじったの?
昼間、あれほど元気だったじゃない。
人のファーストキス奪っといて、女になれとか言っといて……。
私は、下唇をかみ締めた。
ここで、泣いたらダメだ。
すぐるの父親は、私に手伝ってほしいことがあるといっていた。
まずは、それをキチンとやらなければいけない。
少しでも泣いてしまうと、そこからもう何もできなくなりそうだった。
だから……。
「手伝うことって、何ですか?」
私はすぐるから目を離し、森山直樹さんへ向けて、そう言った――。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜
来栖れいな
恋愛
「覚醒しなければ、生きられない———
しかし、覚醒すれば滅びの呪いが発動する」
100年前、ヴァンパイアの王家は滅び、純血種は絶えたはずだった。
しかし、その血を引く最後の姫ルナフィエラは古城の影で静かに息を潜めていた。
戦う術を持たぬ彼女は紅き月の夜に覚醒しなければ命を落とすという宿命を背負っていた。
しかし、覚醒すれば王族を滅ぼした「呪い」が発動するかもしれない———。
そんな彼女の前に現れたのは4人の騎士たち。
「100年間、貴女を探し続けていた———
もう二度と離れない」
ヴィクトル・エーベルヴァイン(ヴァンパイア)
——忠誠と本能の狭間で揺れる、王家の騎士。
「君が目覚めたとき、世界はどう変わるのか......僕はそれを見届けたい」
ユリウス・フォン・エルム(エルフ)
——知的な観察者として接近し、次第に執着を深めていく魔法騎士。
「お前は弱い。だから、俺が守る」
シグ・ヴァルガス(魔族)
——かつてルナフィエラに助けられた恩を返すため、寡黙に寄り添う戦士。
「君が苦しむくらいなら、僕が全部引き受ける」
フィン・ローゼン(人間)
——人間社会を捨てて、彼女のそばにいることを選んだ治癒魔法使い。
それぞれの想いを抱えてルナフィエラの騎士となる彼ら。
忠誠か、執着か。
守護か、支配か。
愛か、呪いか——。
運命の紅き月の夜、ルナフィエラは「覚醒」か「死」かの選択を迫られる。
その先に待つのは、破滅か、それとも奇跡か———。
——紅き誓いが交わされるとき、彼らの運命は交差する。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
モテ男とデキ女の奥手な恋
松田丹子(まつだにこ)
恋愛
来るもの拒まず去るもの追わずなモテ男、神崎政人。
学歴、仕事共に、エリート過ぎることに悩む同期、橘彩乃。
ただの同期として接していた二人は、ある日を境に接近していくが、互いに近づく勇気がないまま、関係をこじらせていく。
そんなじれじれな話です。
*学歴についての偏った見解が出てきますので、ご了承の上ご覧ください。(1/23追記)
*エセ関西弁とエセ博多弁が出てきます。
*拙著『神崎くんは残念なイケメン』の登場人物が出てきますが、単体で読めます。
ただし、こちらの方が後の話になるため、前著のネタバレを含みます。
*作品に出てくる団体は実在の団体と関係ありません。
関連作品(どれも政人が出ます。時系列順。カッコ内主役)
『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』(隼人友人、サリー)
『初恋旅行に出かけます』(山口ヒカル)
『物狂ほしや色と情』(名取葉子)
『さくやこの』(江原あきら)
『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!』(阿久津)
明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)
松田丹子(まつだにこ)
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。
平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり……
恋愛、家族愛、友情、部活に進路……
緩やかでほんのり甘い青春模様。
*関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…)
★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。
*関連作品
『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点)
『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)
上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。
(以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
ズボラ上司の甘い罠
松田丹子(まつだにこ)
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。
仕事はできる人なのに、あまりにももったいない!
かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。
やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか?
上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる