いぢわる王子様

西羽咲 花月

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S王子の秘密

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手伝ってほしい事、とは、遺品整理のことだった。


普通、こういうのは身内がやるものだけど、どうしても、と頭を下げられたので私はすぐるの部屋へ足を踏み入れていた。


初めて入る、すぐるの部屋。


たった一日……。


ううん。


一日も一緒にいることのなかった、恋人の部屋。


部屋の中は案外綺麗に整えられていて、机、本棚、ベッド、テレビ、DVDデッキ、それ以外に大きな物は見当たらない。


私はまず最初に、本棚の本を手にとった。


パッと見るだけでも、少年漫画ばかり。


こういうのって、捨ててもいいのかな。


遺品整理なんて、生まれてこのかたやったことがない。


けれど、大切なものっていうのは写真とか、手紙とか。


そういうものだと思っていた。


私はマンガ本を何冊も両手に抱え、大きなダンボールへと入れていった。


これだけでも、なかなか大変だ。

「漫画ばっかり読んでるから馬鹿なんじゃない」


大量の漫画に苦戦しながら、私は愚痴る。


その時だった。


漫画の間から、何かがスルリと足元へ落ちた。



何?


それを手に取り、「あ……」と、呟く。


写真だ。


満面の笑みのすぐると……知らない、女の子のツーショット。


後ろはお花畑で、2人で手をつないでいる。


幸せそうな、笑顔……。


ズキン。


ズキン。


ズキン。


胸の痛みに、私はその写真を裏返して、漫画の隙間へ戻した。


『すぐるにとってあなたが特別なワケじゃないわ。勘違いしないであげてね?』


また、清子さんの言葉がよみがえる。


……っ!!


わかってるよ!!


それに……すぐるはもう……。


なのに、なんで胸が痛いんだろう?


たった一日だよ?


たった、それだけの付き合いだよ?


「……ハハハッ……馬鹿は私か……」


たった一日。


その一日で、本当に好きになった。


森山すぐるに、恋をした。


そして失った。


あっという間に。


この、写真の中の花のように。


はかなく散っていった。

あ、違うか。


写真に入れれば永遠に花は散らない。


私には、写真さえ、ないんだ。


こぼれそうな涙をグッとこらえて、私は「よいしょ!」と、わざと声を出して漫画をダンボールへつめた。


写真も、一緒に。


そして、今度は机を見る。


今度はこっちを片付けなきゃ。


気合を入れなおすように、腕まくりをする。


今の時期だと、少し寒い。


けど、私にはちょうどよかった。


一番上の引き出しを開けてみると、教科書やノートが出てきた。


パラパラとめくってみると、ノートには一応ちゃんと授業内容が書かれていた。


字も、思ったより汚くない。


こういうのは、一応本人の思い出として取っておいた方がいいのかな……。


そう思い、ノートは引き出しの中へと戻す。


じゃぁ教科書は?


本屋にいけばいくらでも売ってるものだし……。


と、またペラペラとめくってみる。


そして、隅っこの走り書きに気づいた。


ん?


さっき本棚にも置いてあった、漫画のキャラクターが描かれている。


しかも、パラパラ漫画だ。


私は思わず、プッと笑った。


「案外可愛いんだ」


予想外のパラパラ漫画に、今度は胸のあたりがポッと暖かくなる。


そっか。


色んな顔があって当たり前だよね。


いきなりキスしてくるからって、そこまで嫌な奴ってワケじゃ、ないんだよね……。



私は、教科書もノートと一緒に引き出しの中へ戻した。


なんとなく、捨てたくなかったから。


続けて、2番目の引き出しを開ける。


「封筒……?」


そこには、茶色い封筒が一枚入っていた。


首をかしげ、それを手に取る。


これって、見てもいいのかな?


なんだか、見てはいけないような気がして、部屋の中をキョロキョロと見回す。


しばらく迷ってから……。


えぇい! 見ちゃえ!


決心して、私は封筒をあけた。


その瞬間――。


唖然とする。


なに、これ……。


中から出てきたのは、女の子とすぐるのツーショット写真。


けど、さっきのとは違う。


何枚も何枚も出てくるソレは、全部違う女の子たちだった。


なに?


なんなの?


頭の中が、パニックを起こす。


すぐる、こんなたくさんの子と付き合ってたの!?


私は、律の言葉を思い出す。


『すごく有名だよ』


そっか。


そういう意味だったんだ……。


写真に写る女の子たちは、誰もみんなかわいくて、おとなしそうな雰囲気をしていた。



「嘘つき……」


気の強い女を探してたって、言ったじゃん。


そこには、私とは正反対な女の子たちしかうつっていなかった。


私は……。


いけないと思っていたけれど、とめられなかった。


写真を全部封筒へしまうと、それをまるで雑巾をしぼるようにグシャグシャにし、そのままマンガ本と一緒にダンボールの中へ投げ入れた。


なんでよ……。


なんでこんなことになるの?


胸が、痛い。


そのまま床にペタンと座りこんで、ついに泣き出してしまった。


まるで小学生のようにしゃくりあげて、声を上げて。


なにがS王子よ!


なにが契約よ!


好みでもない私にわざわざ声かけて……。


ファーストキス奪って、好きにさせといて!!


それで死んじゃうなんて……卑怯だよ。


卑怯だよ、すぐる!!!

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