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告白は突然に
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すぐるの名前が誠先輩の口から出てくるのに、時間はかからなかった。
「あいつと付き合ってた子たち、全員同じ目にあってんだよね」
ズキン。
ズキン。
胸が苦しくて、声ができない。
数日前に見た虹は今はもう消えていて、ほんの少しの幻だったのだと、空があざ笑う。
「学校が違う子でさえ、同じようにいやがらせを受けてた。
君も、あいつと付き合ってるんだよね?」
「……っ!」
誠先輩の質問に答えられず、私は走り出していた。
冷たい空気が、顔に当たって痛い。
その痛みで、ようやく涙が出た。
一回出ると、もうとまらない。
我慢していたものが、ボロボロと、全部水滴となって目からあふれ出す。
「碧!!」
前方に、誰かがいる。
私の名前を呼んでる。
けど、視界がゆがんで見えないよ。
「碧、どうした? 何泣いてる?」
その人物がすぐるだとようやく気づき、私は勢いよくその胸に飛び込んでいった。
この人に傷つけられたのに、なんで甘えてるんだろう。
この人がいなければ傷つかなかったのに、なんで安心するんだろう。
「碧、今度は何があった?」
すぐるが、私の頭を優しくなでながら、ささやくように聞いてきた。
「……制服……」
たったそれだけ言うと、すぐるはすべてを理解したように、大きな息を吐き出した。
「ごめんな、碧」
「今までの子達も……?」
「……あぁ」
「なんっ……で!!」
「ごめん、碧。ごめん」
なんで?
なんで謝るばかりなの?
涙が止まらなくて、すごく近くにいるすぐるの顔さえも、ハッキリとは見えなくなる。
こんなに近いのに、わからない。
こんなに近いのに、私は何も知らない。
「碧、もう少し我慢できるか?」
え……?
「俺にあたってくれてもいい。だから、もう少し――」
「待って! 私、いやがらせの犯人わかったの」
すぐるの言葉をさえぎって言う。
けれど、すぐるはうつむき、左右に首をふった。
「すぐる……?」
「清子のこと、責めないでやってほしいんだ」
え……?
なに?
どういうこと?
すぐるは、最初からいやがらせの犯人を知ってたの?
知ってて、黙ってたの?
「すぐる、どういうこと? わかんないよ」
頭の中が、パニックを起こす。
わけがわからない。
「理由はちゃんと……話すから」
顔をゆがめ、何かに耐えるような表情で、すぐるはそう言い、私の体を引き離した――。
「すぐるっ!!」
呼び止めようとする私の声を無視して、すぐるは自転車にまたがり、走りだした。
どうして?
大声で呼び止めたいけど、声が詰まって出てこない。
『清子のこと、責めないでやってほしいんだ』
わかんない……。
すぐるの考えてることが、わかんないよっ!
どんどんどんどん、すぐるの後姿が小さくなって行く。
私は、その様子をただバカみたいに見つめていることしか、できなかった……。
☆☆☆
「碧ちゃん、大丈夫?」
その言葉に一瞬ビクッと身を縮め、それから振り返る。
「アハ。そんなに驚かなくてもいいじゃん」
そう言って、誠先輩が笑った。
秋なのに、春の花みたいにポッと温かくなるような、笑顔だった。
「目、真っ赤。こすったらダメだよ?」
誠先輩はそう言って、目薬を差し出してきた。
私はそれを無言のまま受け取り、先輩を見上げる。
本当に、背、高い。
すっと顔を見てると、首が痛くなりそうだった。
「碧ちゃん、家どっち?」
「……むこう、ですけど」
私は、自分の家の方向を指差した。
大きなスーパーが立ち並ぶ通りかた、細い道へ入った場所にある。
「ちょうど、俺の家もそっち方面なんだ」
そう言うと、誠先輩は私の右手を握り締めてきた。
その動作があまりにも自然すぎて、思わず握り返してしまう。
「あ、ごめんね?」
慌てて手を離した私に、誠先輩が申し訳なさそうに言う。
なんか、こういうの慣れてる感じ?
見た目、全然そんなんじゃないのに。
「ほら、帰ろ?」
誠先輩はそう言って、今度は私の荷物をヒョイと抱え上げて、歩き出した。
「先輩! カバンくらい自分で持ちますから!」
「いいのいいの。男はね、女を守るために筋肉がついてるんだから」
「守るためって……。カバンは荷物ですけど」
そう言う私に誠先輩はまた、アハと笑って「細かいこと気にしすぎ」と言った。
細かいこと……かな?
まだよく知らない年上の男性にいきなりカバンを持ってもらって歩くなんて、なんだか変な気分。
すぐるみたいに突然キスしてくるのも変だけど、この人も同じくらい変かも。
そんなことを思いながら、ゆっくりと歩いていく。
学校を出てすぐ、細い道を入っていくと生徒たちの姿もほとんどない。
車の通りもすくなくて、落ち葉を踏む足音は、私たちだけのもの。
「あの……」
沈黙が苦しくて、私の方から声をかけた。
「うん?」
「なんで、あのタイミングで声をかけてきたんですか?」
「あのタイミングって?」
「……だから……あの……」
すぐるが、私を置いて帰ってしまった、あのタイミング。
「俺はさ。泣いてる女の子をほっといて帰ることができないんだ。あいつと違って」
誠先輩の言葉に、胸がズキンと痛む。
深く、鋭い痛み。
「誠先輩は……すぐるをよく知ってるんですか?」
「んん……、そうだね。あいつをっていうより、北河を、よく知ってるんだ」
「清子さんを?」
誠先輩は、清子さんの知り合い?
じゃぁ、清子さんが私や他の子たちにしてたイヤガラセも、知ってるってこと?
「北河は、かわいそうな子でね」
「……清子さんが?」
全然、かわいそうになんて見えない。
美人で、頭がよくて。
すぐると同じで、家も大きいハズだ。
なにも、不自由なんてしてない。
それなのに、私は……。
知らず知らずの内に、眉間にシワがよる。
清子さんのことを思い出すと、表情が険しくなる自分がいる。
「一番大切だった人を、失ってるんだ」
誠先輩のその言葉に、私は立ち止まる。
え?
「北河が昔好きだった人、死んだんだよ」
私の数歩前で立ち止まり、そう言った。
「きっと北河は今でもその人のことが好きなんだ。だから……」
「……だから?」
風が吹いて、道に落ちた木の葉が舞い上がる。
誠先輩が、振り向いた。
今までのやわらかい表情から、少し険しい表情に変わっている。
「誠先輩?」
「俺さ、碧ちゃんが好きだよ」
突然の、告白。
思いもよらない展開に、頭が全くついていかない。
けど、誠先輩はすごく真剣な顔をしている。
「北河みたいに、好きな人はいついなくなるかわからない。だから、俺は隠さず気持ちを伝えたいんだ」
誠先輩の言葉が、風にのって耳まで届く。
届くのに、頭に入らない。
真っ白、だ……。
「もう一回言うよ?」
ドクン。
ドクン。
ドクン。
心臓が、うるさいくらいに響く。
「俺は、碧ちゃんが、好きだ――」
「あいつと付き合ってた子たち、全員同じ目にあってんだよね」
ズキン。
ズキン。
胸が苦しくて、声ができない。
数日前に見た虹は今はもう消えていて、ほんの少しの幻だったのだと、空があざ笑う。
「学校が違う子でさえ、同じようにいやがらせを受けてた。
君も、あいつと付き合ってるんだよね?」
「……っ!」
誠先輩の質問に答えられず、私は走り出していた。
冷たい空気が、顔に当たって痛い。
その痛みで、ようやく涙が出た。
一回出ると、もうとまらない。
我慢していたものが、ボロボロと、全部水滴となって目からあふれ出す。
「碧!!」
前方に、誰かがいる。
私の名前を呼んでる。
けど、視界がゆがんで見えないよ。
「碧、どうした? 何泣いてる?」
その人物がすぐるだとようやく気づき、私は勢いよくその胸に飛び込んでいった。
この人に傷つけられたのに、なんで甘えてるんだろう。
この人がいなければ傷つかなかったのに、なんで安心するんだろう。
「碧、今度は何があった?」
すぐるが、私の頭を優しくなでながら、ささやくように聞いてきた。
「……制服……」
たったそれだけ言うと、すぐるはすべてを理解したように、大きな息を吐き出した。
「ごめんな、碧」
「今までの子達も……?」
「……あぁ」
「なんっ……で!!」
「ごめん、碧。ごめん」
なんで?
なんで謝るばかりなの?
涙が止まらなくて、すごく近くにいるすぐるの顔さえも、ハッキリとは見えなくなる。
こんなに近いのに、わからない。
こんなに近いのに、私は何も知らない。
「碧、もう少し我慢できるか?」
え……?
「俺にあたってくれてもいい。だから、もう少し――」
「待って! 私、いやがらせの犯人わかったの」
すぐるの言葉をさえぎって言う。
けれど、すぐるはうつむき、左右に首をふった。
「すぐる……?」
「清子のこと、責めないでやってほしいんだ」
え……?
なに?
どういうこと?
すぐるは、最初からいやがらせの犯人を知ってたの?
知ってて、黙ってたの?
「すぐる、どういうこと? わかんないよ」
頭の中が、パニックを起こす。
わけがわからない。
「理由はちゃんと……話すから」
顔をゆがめ、何かに耐えるような表情で、すぐるはそう言い、私の体を引き離した――。
「すぐるっ!!」
呼び止めようとする私の声を無視して、すぐるは自転車にまたがり、走りだした。
どうして?
大声で呼び止めたいけど、声が詰まって出てこない。
『清子のこと、責めないでやってほしいんだ』
わかんない……。
すぐるの考えてることが、わかんないよっ!
どんどんどんどん、すぐるの後姿が小さくなって行く。
私は、その様子をただバカみたいに見つめていることしか、できなかった……。
☆☆☆
「碧ちゃん、大丈夫?」
その言葉に一瞬ビクッと身を縮め、それから振り返る。
「アハ。そんなに驚かなくてもいいじゃん」
そう言って、誠先輩が笑った。
秋なのに、春の花みたいにポッと温かくなるような、笑顔だった。
「目、真っ赤。こすったらダメだよ?」
誠先輩はそう言って、目薬を差し出してきた。
私はそれを無言のまま受け取り、先輩を見上げる。
本当に、背、高い。
すっと顔を見てると、首が痛くなりそうだった。
「碧ちゃん、家どっち?」
「……むこう、ですけど」
私は、自分の家の方向を指差した。
大きなスーパーが立ち並ぶ通りかた、細い道へ入った場所にある。
「ちょうど、俺の家もそっち方面なんだ」
そう言うと、誠先輩は私の右手を握り締めてきた。
その動作があまりにも自然すぎて、思わず握り返してしまう。
「あ、ごめんね?」
慌てて手を離した私に、誠先輩が申し訳なさそうに言う。
なんか、こういうの慣れてる感じ?
見た目、全然そんなんじゃないのに。
「ほら、帰ろ?」
誠先輩はそう言って、今度は私の荷物をヒョイと抱え上げて、歩き出した。
「先輩! カバンくらい自分で持ちますから!」
「いいのいいの。男はね、女を守るために筋肉がついてるんだから」
「守るためって……。カバンは荷物ですけど」
そう言う私に誠先輩はまた、アハと笑って「細かいこと気にしすぎ」と言った。
細かいこと……かな?
まだよく知らない年上の男性にいきなりカバンを持ってもらって歩くなんて、なんだか変な気分。
すぐるみたいに突然キスしてくるのも変だけど、この人も同じくらい変かも。
そんなことを思いながら、ゆっくりと歩いていく。
学校を出てすぐ、細い道を入っていくと生徒たちの姿もほとんどない。
車の通りもすくなくて、落ち葉を踏む足音は、私たちだけのもの。
「あの……」
沈黙が苦しくて、私の方から声をかけた。
「うん?」
「なんで、あのタイミングで声をかけてきたんですか?」
「あのタイミングって?」
「……だから……あの……」
すぐるが、私を置いて帰ってしまった、あのタイミング。
「俺はさ。泣いてる女の子をほっといて帰ることができないんだ。あいつと違って」
誠先輩の言葉に、胸がズキンと痛む。
深く、鋭い痛み。
「誠先輩は……すぐるをよく知ってるんですか?」
「んん……、そうだね。あいつをっていうより、北河を、よく知ってるんだ」
「清子さんを?」
誠先輩は、清子さんの知り合い?
じゃぁ、清子さんが私や他の子たちにしてたイヤガラセも、知ってるってこと?
「北河は、かわいそうな子でね」
「……清子さんが?」
全然、かわいそうになんて見えない。
美人で、頭がよくて。
すぐると同じで、家も大きいハズだ。
なにも、不自由なんてしてない。
それなのに、私は……。
知らず知らずの内に、眉間にシワがよる。
清子さんのことを思い出すと、表情が険しくなる自分がいる。
「一番大切だった人を、失ってるんだ」
誠先輩のその言葉に、私は立ち止まる。
え?
「北河が昔好きだった人、死んだんだよ」
私の数歩前で立ち止まり、そう言った。
「きっと北河は今でもその人のことが好きなんだ。だから……」
「……だから?」
風が吹いて、道に落ちた木の葉が舞い上がる。
誠先輩が、振り向いた。
今までのやわらかい表情から、少し険しい表情に変わっている。
「誠先輩?」
「俺さ、碧ちゃんが好きだよ」
突然の、告白。
思いもよらない展開に、頭が全くついていかない。
けど、誠先輩はすごく真剣な顔をしている。
「北河みたいに、好きな人はいついなくなるかわからない。だから、俺は隠さず気持ちを伝えたいんだ」
誠先輩の言葉が、風にのって耳まで届く。
届くのに、頭に入らない。
真っ白、だ……。
「もう一回言うよ?」
ドクン。
ドクン。
ドクン。
心臓が、うるさいくらいに響く。
「俺は、碧ちゃんが、好きだ――」
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