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優しい恋人
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最低な秋祭りが終わってから、私はしばらく学校に行けずにいた。
夜、冷たい風の中泣きながら走り回った私は、見事に風邪をひいてしまったのだ。
すぐるの事を思い出すと学校なんか行く気にもなれなかったから、一日中ベッドの中で過ごしていた。
熱が出て、ボーッとしている内はまだすぐるへの気持ちを忘れられる。
けれど、少し体調がよくなると、私の頭の中はあっという間にすぐる一色になってしまった。
誰もいない家の中、一人で枕に顔をうずめしゃくりあげる。
こういうときは、律からの励ましもメールも役にたたない。
世界中で一番不幸だとか、そんな甘ったれた考えで支配されてしまうのだ。
こんなに胸が痛くて、呼吸さえ苦しくて、なのに、何で私は生きているんだろう?
どうして、お腹がすいちゃうんだろう?
そんな自分がすごく嫌で、また涙が溢れ出す。
何度目かの涙を拭いたとき、玄関でチャイムが鳴った。
「誰……?」
鼻声でそう呟き、顔を上げる。
けれど、泣いたばかりの不細工な顔で人前に出るなんてできない。
私は少し迷ったが、また布団にもぐりこんだ。
相手には悪いと思うけど、留守のフリをしよう。
そう思い、目を閉じる。
けれど、チャイムの音は止まらなかった。
ピンポーン、ピンポーンと、続けざまに何度も鳴る。
私は頭から布団をかぶり、キュッと耳をふさぐ。
聞こえないフリ。
聞こえないフリ。
そうしていると、しばらく鳴り続けたチャイムはピタリと止まった。
ホッとして息を吐き出し、布団からソッと顔をのぞかせる。
居留守を使うのも、楽ではない。
その時だった、次に聞こえてきたのは「碧ちゃん、いないの!!」と、私を呼ぶ声。
これにはさすがに驚いて、ベッドから飛び起きる。
誰!?
と、一瞬硬直するが、その声には十分に聞き覚えがあった。
「碧ちゃん!! 俺だよ!!」
玄関先で、大声で私の名前を呼ぶのは、誠先輩だ。
「今出ます!!」
私は自分の部屋の中でそう返事をして、パジャマの上にカーディガンを羽織る。
この顔のままじゃやばい。
そう思い、赤くなった目に目薬をさす。
余計に泣いてみえるかもしれないけど、仕方がない。
私はパタパタと早足で玄関へと向かった。
「碧ちゃん、よかった」
私が玄関を開けると、ホッとした表情の誠先輩がいた。
「誠先輩……」
「突然来てごめんね? 体調どう?」
そう言いながら、誠先輩はコンビニの袋を私に手渡してきた。
中を見ると、プリンやバナナが入っている。
「ありがとうございます。大分、よくなりました」
「そっか。よかった」
本当に、自分の事のように安心した笑顔になる。
「心配して、わざわざ来てくれたんですか?」
時刻は、まだ4時過ぎ。
学校が終わってから、すぐにここまで来てくれたのだ。
「あぁ。碧ちゃん何日も休んでるって聞いたからさ。
それに、色々あったばかりだしね」
最後の言葉は、モゴモゴと言葉を濁しながら言った。
私は一つ頷き、「でも、いくら傷ついてもご飯だけは食べれるんです」と言った。
「漫画とかなら、失恋してご飯が喉を通らない。とか言うけど……実際はそんなこともないみたいです」
アハハ。と、自然と笑みがこぼれる。
久々に笑った気分だ。
「元々、すぐるの事好きでもなんでもなかったから、辛い辛いって思っても、そこまでじゃないのかも……」
「碧ちゃん、あいつの事好きで付き合ってたんじゃなかったの?」
誠先輩が、驚いたように目を見開く。
「いえ、もちろん途中からは本当に好きでした。
けど、出会って突然キスされて、付き合えって言われて……。それが、私たちの最初だから……」
「呆れたヤツだな」
誠先輩はそう言って、軽くため息を吐き出した。
「恋、してるつもりになってただけかもしれないです」
そう呟き、俯く。
初めて告白されて、彼氏ができたから……。
恋してるつもりになって、舞い上がっていただけ。
だって、そうじゃなきゃ今こうして誠先輩と笑いながら話なんて、できるワケがないもん。
「ねぇ、碧ちゃん」
「はい?」
「体調いいなら、明日には学校おいでよ」
私は誠先輩を見あげるようにして見る。
「まだ、森山のことが気になって来づらい?」
「そんなこと……ないです」
半分本当。
半分嘘の返事だった。
その瞬間、なぜだか私は、誠先輩の大きな腕の中にすっぽりと包まれていた。
目をパチクリする私を、誠先輩は優しく抱きしめる。
「誠……先輩?」
少しだけ、胸がドキドキと音を鳴らす。
「見て、られないんだ」
え?
「碧ちゃんが、あいつに振り回されたり北河にいやがらせされてるの、見てられないんだよ」
誠先輩が、力を込める。
私は、自然と誠先輩の背中に手を回していた。
先輩の痛みがそのまま私に流れ込んでくる。
この人は、私のために傷ついてる。
この人は、私を見て傷ついてる。
一方的で、傷つけるだけのすぐるとは、違う……。
「誠先輩……」
抱きしめられたまま、私は言った。
「私と……付き合ってください――」
夜、冷たい風の中泣きながら走り回った私は、見事に風邪をひいてしまったのだ。
すぐるの事を思い出すと学校なんか行く気にもなれなかったから、一日中ベッドの中で過ごしていた。
熱が出て、ボーッとしている内はまだすぐるへの気持ちを忘れられる。
けれど、少し体調がよくなると、私の頭の中はあっという間にすぐる一色になってしまった。
誰もいない家の中、一人で枕に顔をうずめしゃくりあげる。
こういうときは、律からの励ましもメールも役にたたない。
世界中で一番不幸だとか、そんな甘ったれた考えで支配されてしまうのだ。
こんなに胸が痛くて、呼吸さえ苦しくて、なのに、何で私は生きているんだろう?
どうして、お腹がすいちゃうんだろう?
そんな自分がすごく嫌で、また涙が溢れ出す。
何度目かの涙を拭いたとき、玄関でチャイムが鳴った。
「誰……?」
鼻声でそう呟き、顔を上げる。
けれど、泣いたばかりの不細工な顔で人前に出るなんてできない。
私は少し迷ったが、また布団にもぐりこんだ。
相手には悪いと思うけど、留守のフリをしよう。
そう思い、目を閉じる。
けれど、チャイムの音は止まらなかった。
ピンポーン、ピンポーンと、続けざまに何度も鳴る。
私は頭から布団をかぶり、キュッと耳をふさぐ。
聞こえないフリ。
聞こえないフリ。
そうしていると、しばらく鳴り続けたチャイムはピタリと止まった。
ホッとして息を吐き出し、布団からソッと顔をのぞかせる。
居留守を使うのも、楽ではない。
その時だった、次に聞こえてきたのは「碧ちゃん、いないの!!」と、私を呼ぶ声。
これにはさすがに驚いて、ベッドから飛び起きる。
誰!?
と、一瞬硬直するが、その声には十分に聞き覚えがあった。
「碧ちゃん!! 俺だよ!!」
玄関先で、大声で私の名前を呼ぶのは、誠先輩だ。
「今出ます!!」
私は自分の部屋の中でそう返事をして、パジャマの上にカーディガンを羽織る。
この顔のままじゃやばい。
そう思い、赤くなった目に目薬をさす。
余計に泣いてみえるかもしれないけど、仕方がない。
私はパタパタと早足で玄関へと向かった。
「碧ちゃん、よかった」
私が玄関を開けると、ホッとした表情の誠先輩がいた。
「誠先輩……」
「突然来てごめんね? 体調どう?」
そう言いながら、誠先輩はコンビニの袋を私に手渡してきた。
中を見ると、プリンやバナナが入っている。
「ありがとうございます。大分、よくなりました」
「そっか。よかった」
本当に、自分の事のように安心した笑顔になる。
「心配して、わざわざ来てくれたんですか?」
時刻は、まだ4時過ぎ。
学校が終わってから、すぐにここまで来てくれたのだ。
「あぁ。碧ちゃん何日も休んでるって聞いたからさ。
それに、色々あったばかりだしね」
最後の言葉は、モゴモゴと言葉を濁しながら言った。
私は一つ頷き、「でも、いくら傷ついてもご飯だけは食べれるんです」と言った。
「漫画とかなら、失恋してご飯が喉を通らない。とか言うけど……実際はそんなこともないみたいです」
アハハ。と、自然と笑みがこぼれる。
久々に笑った気分だ。
「元々、すぐるの事好きでもなんでもなかったから、辛い辛いって思っても、そこまでじゃないのかも……」
「碧ちゃん、あいつの事好きで付き合ってたんじゃなかったの?」
誠先輩が、驚いたように目を見開く。
「いえ、もちろん途中からは本当に好きでした。
けど、出会って突然キスされて、付き合えって言われて……。それが、私たちの最初だから……」
「呆れたヤツだな」
誠先輩はそう言って、軽くため息を吐き出した。
「恋、してるつもりになってただけかもしれないです」
そう呟き、俯く。
初めて告白されて、彼氏ができたから……。
恋してるつもりになって、舞い上がっていただけ。
だって、そうじゃなきゃ今こうして誠先輩と笑いながら話なんて、できるワケがないもん。
「ねぇ、碧ちゃん」
「はい?」
「体調いいなら、明日には学校おいでよ」
私は誠先輩を見あげるようにして見る。
「まだ、森山のことが気になって来づらい?」
「そんなこと……ないです」
半分本当。
半分嘘の返事だった。
その瞬間、なぜだか私は、誠先輩の大きな腕の中にすっぽりと包まれていた。
目をパチクリする私を、誠先輩は優しく抱きしめる。
「誠……先輩?」
少しだけ、胸がドキドキと音を鳴らす。
「見て、られないんだ」
え?
「碧ちゃんが、あいつに振り回されたり北河にいやがらせされてるの、見てられないんだよ」
誠先輩が、力を込める。
私は、自然と誠先輩の背中に手を回していた。
先輩の痛みがそのまま私に流れ込んでくる。
この人は、私のために傷ついてる。
この人は、私を見て傷ついてる。
一方的で、傷つけるだけのすぐるとは、違う……。
「誠先輩……」
抱きしめられたまま、私は言った。
「私と……付き合ってください――」
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