【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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誤魔化しきれない想い ~結人Side~

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 亮を拒絶してから、バイトの日数を増やし、学校へ通う日が極端に少なくなっていた。

 俺が学校にいなければアイツもクラスにはやって来ないし、駆流との接点もなくなるだろう、そう考えていたからだ。

 でもこの考えは自分をも苦しめる案だというのに気付いたのは、3、4日経ってからだった。

 高校に入学してからいつも幼馴染の顔を見ていた事もあり、アイツの顔を見られないという事が思いの外しんどくなってきて辛い。

 バイト先なんて教えてないので、こんなところに来るはずないのに、客が来る度に期待する自分がいるのだから重症だ――――

 中学時代は全く会わずに生活出来ていたのに、一度会ってしまうとこんなにも脆くなってしまうものかと思い知る。
 
 それに加えてアイツがあまりにも可愛く進化しているものだから……最近はこのまま避け続ける事への限界を感じているのだった。

 そんな俺の願望を具現化したように、バイト先に亮が現れる。

 
 「なっ、お前ら……!!」


 まさか駆流が教えたのか?!

 2人で登場したのを見て、そうとしか思えなかった。亮が一人でここに来るわけがない。

 それでも目の前に現れた事に喜びを隠せない自分がいる。

 前髪も伸ばし、眼鏡をかけているのに……全然可愛さを隠せていない。

 そんな俺の理性を試すように、上目遣いで亮がお願いをしてくる。

 
 「一緒に帰ろうよ。家も近いんだし」


 甘い蜜のような誘惑だった。

 一緒に帰りたい…………でも俺と一緒だと怖がらせるだろうし、楽しくないだろう。

 昔とはもう違う。

 でも先日コイツを拒絶した時の悲し気な表情を思い出し、これ以上拒否する言葉が喉から出てこない。

 まごつく俺の様子を見兼ねたのか、駆流がさっさと決めてしまうのだった。
 
 
 「僕も一緒に帰ろう~~じゃあ裏で待ってるね。じゃね~~」


 2人が出て行ったあと、店内には静寂が訪れる。

 でも俺の心臓だけは口から音が漏れているのではと思うほど、ドクドクと脈打っていた。

 亮と一緒に帰る…………たったそれだけの事なのに、小学生以来の事態に手が震えて変な汗が滲んでくる。

 とにかく変な事を話さないように気を付けなくては。

 駆流もいるし、大丈夫……大丈夫…………そう自分に言い聞かせる。

 残りの仕事がまったく手につかない状況だったが、なんとか終わらせて裏口から出ると、そこには宣言通り(可愛い)幼馴染が待っていたのだった。


 ~・~・~・~・~


 「お疲れ様!」


 仕事終わりに、笑顔でそう声をかけてくる幼馴染。

 これは現実か?

 亮が待っていてくれただけで、全身が悦びでいっぱいになっていった。
 
 そろそろこの気持ちをなかった事に出来ないと思い始めている自分がいる。
 

 「…………チッ」


 自分の意思の弱さに腹立たしくなる。

 会えない間にここまで拗れてしまった自分の気持ちを持て余し、どんな態度をすればいいか分からなくなり、駆流と意味もない言い合いをしてしまうのだった。

 ふいに制服の裾を引っ張られた気がして視線を移した。

 そこにいたのは、俯きながら頬を赤らめる幼馴染の姿――――

 
 …………天使?
 
 
 「…………なんだよ」


 あ――――どう返していいか分かんねぇ。

 ずっと理性を試されている気がする。


 「あ、ごめん!もうすぐ日も落ちちゃうし、そろそろ帰ろう」


 俺の素っ気ない言葉に、慌てながら答える姿も胸を抉るような可愛さで辛い。

 可愛いって思いたくないのに、俺の全てのベクトルがそっちに流されていく――――
 
 とにかくこんな場所に留まっていても仕方ないので3人で歩き始めた。

 なんだよ、これ……高校に入ってこんな日が来るとは思わなかった。

 淡々と過ぎていた日常に、亮が加わっただけで何もかもが彩られていく……相当頭がお花畑になっていたのか、前から通行人が来ている事にも気付いていなかった俺は、端を歩いている亮がぶつかるのを回避してやれなかったのだった。

 ぶつかった相手はクラブでよく顔を合わせるヤツらで、向こうも俺らだと気付き、その場で話し込む事に。

 名前も覚えていないが、何となくクラブで会話していたのは覚えているぐらいの顔見知りだ。
 
 彼らの中に女もいて、許可もしてないのに腕に絡みついて離れない。

 図々しいな……親父が連れてきたあの女みたいだな。


 「結人ぉ~~最近クラブで見ないから寂しいんだけど」

 「知らねーし」

 「もう!冷たぁい」


 自分の性の対象が同性なのもあり、女に絡まれる事が苦手なので余計に嫌悪感を抱いてしまう。

 コイツらもぶつかったのが俺の友人だと分かれば、亮を見逃すだろうと考えていた。

 しかしすぐに自分の考えが甘かったと気付く――――


 「おいおいおい、どこ行こうとしちゃってるわけ?オレにぶつかっておきながら」


 俺と同じくらいの背丈で俺よりも体格のいい男に、幼馴染が制服の襟を鷲掴みにされて引っ張られてしまったのだ。


 「亮!!!!」
 

 苦しそうな幼馴染の表情を見て、血の気が引き、頭が真っ白になった。
 

 「おい!!そいつは俺たちの連れだ!!!」

 「え――こんなのが?ウソでしょ~~全然結人と合わないじゃん」


 腕に絡み付く女に殺気を覚える。

 こんなの?

 女から腕を払い退け、じりじりと距離を詰めていく。


 「お前みたいな女と亮を一緒にするな」

 「なっ!超失礼だし!!」


 こんな女の相手をしてる場合じゃねぇ……!

 すぐに亮を締め上げている男ににじり寄り、そいつの腕を片手で掴み、力を込めていく。


 「おい、その手を離せって言ってんだろ……っ!!」

 「…………っぐ……なんだよ……ただのお遊びだろ!分かったよ!」


 男の言葉にホッとしたのも束の間、亮を締め上げていた腕は、幼馴染を乱暴に放りだしたのだ。

 
 「亮クン!!」


 咄嗟に駆流が腕を伸ばし、細い体を受け止めていた。

 
 「亮!!大丈夫か?!」


 駆流の腕の中にいる幼馴染に触れると、顔に擦り傷が付いているしグッタリしていて、壊れてしまったのではと全身から血の気が引いた。

 巻き込んだ……俺が…………こんな目に遭わせたかったわけじゃない。

 それでも亮は、自分を傷つけた連中に対しても律儀に謝り、思いやりのある態度を見せ、事態を大きくしないように努める。

 そして眼鏡をしていない亮に謝られた男が、顔を真っ赤にしている姿に苦笑いするしかなかった。

 相変わらず自分の魅力に全く気付いていないんだろうな……。

 
 「結人も駆流クンも迷惑かけてごめんね。僕の為にお友達と仲悪くなったらごめん……」


 こんな時でも俺たちを気遣う幼馴染の姿に、変な意地を張り続けている自分が堪らなく恥ずかしくなっていった。


 「気にするな」


 擦り傷がついている亮の白い頬をそっと撫でた。

 綺麗な肌なのに傷をつけちまった…………地面に打ち付ける前に駆流が受け止めてくれたから大怪我しなくて済んだが……。

 眼鏡をしていないのでよく見えないのか、大きく綺麗な目をパチパチと瞬きをしている。

 可愛いな。

 その綺麗な瞳に映るのが俺だけになればいいのに。

 物心ついた時からそう思っていたけど、中学時代に拗れたせいでその気持ちを封印してしまっていた。

 でももう無理だな……誤魔化すのは。

 一度自分の気持ちを認めてしまえばスッキリするもので、目の前の存在が愛おしくて仕方ない。

 どうして今まで冷たく出来たんだろう。

 あんな風に傷つけられて苦しそうな亮を見ただけで、心臓が止まりそうだったのに。

 もう二度とあんな目には遭わせねぇから。

 今はただ傷ついた彼を優しく労り、無事に送り届けなければ。

 しかしその帰り道、思いもよらないライバルが俺の前に立ちはだかったのだった。
 
 
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