11 / 35
誤魔化しきれない想い ~結人Side~
しおりを挟む亮を拒絶してから、バイトの日数を増やし、学校へ通う日が極端に少なくなっていた。
俺が学校にいなければアイツもクラスにはやって来ないし、駆流との接点もなくなるだろう、そう考えていたからだ。
でもこの考えは自分をも苦しめる案だというのに気付いたのは、3、4日経ってからだった。
高校に入学してからいつも幼馴染の顔を見ていた事もあり、アイツの顔を見られないという事が思いの外しんどくなってきて辛い。
バイト先なんて教えてないので、こんなところに来るはずないのに、客が来る度に期待する自分がいるのだから重症だ――――
中学時代は全く会わずに生活出来ていたのに、一度会ってしまうとこんなにも脆くなってしまうものかと思い知る。
それに加えてアイツがあまりにも可愛く進化しているものだから……最近はこのまま避け続ける事への限界を感じているのだった。
そんな俺の願望を具現化したように、バイト先に亮が現れる。
「なっ、お前ら……!!」
まさか駆流が教えたのか?!
2人で登場したのを見て、そうとしか思えなかった。亮が一人でここに来るわけがない。
それでも目の前に現れた事に喜びを隠せない自分がいる。
前髪も伸ばし、眼鏡をかけているのに……全然可愛さを隠せていない。
そんな俺の理性を試すように、上目遣いで亮がお願いをしてくる。
「一緒に帰ろうよ。家も近いんだし」
甘い蜜のような誘惑だった。
一緒に帰りたい…………でも俺と一緒だと怖がらせるだろうし、楽しくないだろう。
昔とはもう違う。
でも先日コイツを拒絶した時の悲し気な表情を思い出し、これ以上拒否する言葉が喉から出てこない。
まごつく俺の様子を見兼ねたのか、駆流がさっさと決めてしまうのだった。
「僕も一緒に帰ろう~~じゃあ裏で待ってるね。じゃね~~」
2人が出て行ったあと、店内には静寂が訪れる。
でも俺の心臓だけは口から音が漏れているのではと思うほど、ドクドクと脈打っていた。
亮と一緒に帰る…………たったそれだけの事なのに、小学生以来の事態に手が震えて変な汗が滲んでくる。
とにかく変な事を話さないように気を付けなくては。
駆流もいるし、大丈夫……大丈夫…………そう自分に言い聞かせる。
残りの仕事がまったく手につかない状況だったが、なんとか終わらせて裏口から出ると、そこには宣言通り(可愛い)幼馴染が待っていたのだった。
~・~・~・~・~
「お疲れ様!」
仕事終わりに、笑顔でそう声をかけてくる幼馴染。
これは現実か?
亮が待っていてくれただけで、全身が悦びでいっぱいになっていった。
そろそろこの気持ちをなかった事に出来ないと思い始めている自分がいる。
「…………チッ」
自分の意思の弱さに腹立たしくなる。
会えない間にここまで拗れてしまった自分の気持ちを持て余し、どんな態度をすればいいか分からなくなり、駆流と意味もない言い合いをしてしまうのだった。
ふいに制服の裾を引っ張られた気がして視線を移した。
そこにいたのは、俯きながら頬を赤らめる幼馴染の姿――――
…………天使?
「…………なんだよ」
あ――――どう返していいか分かんねぇ。
ずっと理性を試されている気がする。
「あ、ごめん!もうすぐ日も落ちちゃうし、そろそろ帰ろう」
俺の素っ気ない言葉に、慌てながら答える姿も胸を抉るような可愛さで辛い。
可愛いって思いたくないのに、俺の全てのベクトルがそっちに流されていく――――
とにかくこんな場所に留まっていても仕方ないので3人で歩き始めた。
なんだよ、これ……高校に入ってこんな日が来るとは思わなかった。
淡々と過ぎていた日常に、亮が加わっただけで何もかもが彩られていく……相当頭がお花畑になっていたのか、前から通行人が来ている事にも気付いていなかった俺は、端を歩いている亮がぶつかるのを回避してやれなかったのだった。
ぶつかった相手はクラブでよく顔を合わせるヤツらで、向こうも俺らだと気付き、その場で話し込む事に。
名前も覚えていないが、何となくクラブで会話していたのは覚えているぐらいの顔見知りだ。
彼らの中に女もいて、許可もしてないのに腕に絡みついて離れない。
図々しいな……親父が連れてきたあの女みたいだな。
「結人ぉ~~最近クラブで見ないから寂しいんだけど」
「知らねーし」
「もう!冷たぁい」
自分の性の対象が同性なのもあり、女に絡まれる事が苦手なので余計に嫌悪感を抱いてしまう。
コイツらもぶつかったのが俺の友人だと分かれば、亮を見逃すだろうと考えていた。
しかしすぐに自分の考えが甘かったと気付く――――
「おいおいおい、どこ行こうとしちゃってるわけ?オレにぶつかっておきながら」
俺と同じくらいの背丈で俺よりも体格のいい男に、幼馴染が制服の襟を鷲掴みにされて引っ張られてしまったのだ。
「亮!!!!」
苦しそうな幼馴染の表情を見て、血の気が引き、頭が真っ白になった。
「おい!!そいつは俺たちの連れだ!!!」
「え――こんなのが?ウソでしょ~~全然結人と合わないじゃん」
腕に絡み付く女に殺気を覚える。
こんなの?
女から腕を払い退け、じりじりと距離を詰めていく。
「お前みたいな女と亮を一緒にするな」
「なっ!超失礼だし!!」
こんな女の相手をしてる場合じゃねぇ……!
すぐに亮を締め上げている男ににじり寄り、そいつの腕を片手で掴み、力を込めていく。
「おい、その手を離せって言ってんだろ……っ!!」
「…………っぐ……なんだよ……ただのお遊びだろ!分かったよ!」
男の言葉にホッとしたのも束の間、亮を締め上げていた腕は、幼馴染を乱暴に放りだしたのだ。
「亮クン!!」
咄嗟に駆流が腕を伸ばし、細い体を受け止めていた。
「亮!!大丈夫か?!」
駆流の腕の中にいる幼馴染に触れると、顔に擦り傷が付いているしグッタリしていて、壊れてしまったのではと全身から血の気が引いた。
巻き込んだ……俺が…………こんな目に遭わせたかったわけじゃない。
それでも亮は、自分を傷つけた連中に対しても律儀に謝り、思いやりのある態度を見せ、事態を大きくしないように努める。
そして眼鏡をしていない亮に謝られた男が、顔を真っ赤にしている姿に苦笑いするしかなかった。
相変わらず自分の魅力に全く気付いていないんだろうな……。
「結人も駆流クンも迷惑かけてごめんね。僕の為にお友達と仲悪くなったらごめん……」
こんな時でも俺たちを気遣う幼馴染の姿に、変な意地を張り続けている自分が堪らなく恥ずかしくなっていった。
「気にするな」
擦り傷がついている亮の白い頬をそっと撫でた。
綺麗な肌なのに傷をつけちまった…………地面に打ち付ける前に駆流が受け止めてくれたから大怪我しなくて済んだが……。
眼鏡をしていないのでよく見えないのか、大きく綺麗な目をパチパチと瞬きをしている。
可愛いな。
その綺麗な瞳に映るのが俺だけになればいいのに。
物心ついた時からそう思っていたけど、中学時代に拗れたせいでその気持ちを封印してしまっていた。
でももう無理だな……誤魔化すのは。
一度自分の気持ちを認めてしまえばスッキリするもので、目の前の存在が愛おしくて仕方ない。
どうして今まで冷たく出来たんだろう。
あんな風に傷つけられて苦しそうな亮を見ただけで、心臓が止まりそうだったのに。
もう二度とあんな目には遭わせねぇから。
今はただ傷ついた彼を優しく労り、無事に送り届けなければ。
しかしその帰り道、思いもよらないライバルが俺の前に立ちはだかったのだった。
10
あなたにおすすめの小説
溺愛系とまではいかないけど…過保護系カレシと言った方が 良いじゃねぇ? って親友に言われる僕のカレシさん
315 サイコ
BL
潔癖症で対人恐怖症の汐織は、一目惚れした1つ上の三波 道也に告白する。
が、案の定…
対人恐怖症と潔癖症が、災いして号泣した汐織を心配して手を貸そうとした三波の手を叩いてしまう。
そんな事が、あったのにも関わらず仮の恋人から本当の恋人までなるのだが…
三波もまた、汐織の対応をどうしたらいいのか、戸惑っていた。
そこに汐織の幼馴染みで、隣に住んでいる汐織の姉と付き合っていると言う戸室 久貴が、汐織の頭をポンポンしている場面に遭遇してしまう…
表紙のイラストは、Days AIさんで作らせていただきました。
幼馴染が「お願い」って言うから
尾高志咲/しさ
BL
高2の月宮蒼斗(つきみやあおと)は幼馴染に弱い。美形で何でもできる幼馴染、上橋清良(うえはしきよら)の「お願い」に弱い。
「…だからってこの真夏の暑いさなかに、ふっかふかのパンダの着ぐるみを着ろってのは無理じゃないか?」
里見高校着ぐるみ同好会にはメンバーが3人しかいない。2年生が二人、1年生が一人だ。商店街の夏祭りに参加直前、1年生が発熱して人気のパンダ役がいなくなってしまった。あせった同好会会長の清良は蒼斗にパンダの着ぐるみを着てほしいと泣きつく。清良の「お願い」にしぶしぶ頷いた蒼斗だったが…。
★上橋清良(高2)×月宮蒼斗(高2)
☆同級生の幼馴染同士が部活(?)でわちゃわちゃしながら少しずつ近づいていきます。
☆第1回青春×BL小説カップに参加。最終45位でした。応援していただきありがとうございました!
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
陰キャ幼馴染がミスターコン代表に選ばれたので、俺が世界一イケメンにしてやります
あと
BL
「俺が!お前を生まれ変わらせる!」
自己肯定感低めの陰キャ一途攻め×世話焼きなお人好し平凡受け
いじられキャラで陰キャな攻めが数合わせでノミネートされ、2ヶ月後の大学の学園祭のミスターコンの学部代表になる。誰もが優勝するわけないと思う中、攻めの幼馴染である受けは周囲を見返すために、攻めを大幅にイメチェンさせることを決意する。そして、隠れイケメンな攻めはどんどん垢抜けていき……?
攻め:逸見悠里
受け:佐々木歩
⚠️途中でファッションの話になりますが、作者は服に詳しくないので、ダサいじゃん!とか思ってもスルーでお願いします。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる