27 / 35
心は自由
しおりを挟むこっそり後をつけると、結人と女子が向かった先は――――校舎裏の大きな木が何本か生えている木陰だった。
こんなの絶対に告白現場だよね。
(ねぇ……やっぱりこんなのダメだよ)
(大丈夫だ。久楽に見つかってもおめでとうって言ってやりゃいいじゃん)
雫は本当に悪気もなく笑いながらそう言ってきた。
きっと結人が女子と付き合う前提で言っているんだろうな……そうだよね、男子なら可愛い女子に告白されたら付き合いたいってなるよね…………結人もそうなのかな。
でも僕は……もし二人が付き合ってしまったら、どうしようって思っちゃってる。
幼馴染の幸せを祝福出来ないなんて最低だ。
でも嫌だ、OKしないで――――
祈るような気持ちで二人を遠目から見ていると、告白をしている女子が結人の胸に飛び込み、縋り付いているように見える。
(あ――こりゃ付き合うんかな)
(…………っ!)
雫の言葉にこの場にいる事に耐えられなくなり、走り去ってしまったのだった。
もう嫌だ――――自分の気持ちに気付いた瞬間にこんな事が起きるなんて――――もっと早くに気付いていれば――
いや、気付いていたとしても同性である僕が、あの女子生徒のように自分の気持ちを正直に伝える事なんて、到底出来ない。
最初から勝てる要素なんてなかったんだ。
そう思うと、走っていた足が止まり、自然と涙が溢れてくる。
眼鏡を取りたくない……こんな顔、誰にも見せられない。
「亮!!」
後ろから雫の声が聞こえて振り返ると、僕を追いかけてきたのか心配そうな表情で僕の顔を覗き込んでくる。
「どうしたんだよ?!突然走って行っちゃうからビックリして……」
「雫……どうしよう。僕…………どうしたら……」
溢れ出る想いをどうやって隠せばいいか分からず、雫の肩に顔を埋め、思い切り泣いてしまったのだった。
校舎の影で、僕の頭を撫でながら落ち着くまでずっと寄り添ってくれた雫は、僕が泣いている間、何も聞いてくる事はなかった。
そしてようやく顔を上げた僕の顔を見て、眼鏡を取ってハンカチで顔を拭いてくれる。
「ふはっ、なんて顔してんだよ」
「だって……」
「はいはい。推しの幸せが俺の幸せだって言っただろ?亮をそんな顔にさせてるのは何なんだ?」
言ってる事が男前すぎる。
「好きな人が出来たんだ……凄く好きで、好き過ぎて、苦しい…………」
ようやく涙がおさまっていたのに、また思い出すと苦しくて泣けてくる。
人を好きになるってこんなに苦しいものなの?
また雫のハンカチに顔を埋めていると、雫からズバリ好きな人を当てられてしまう。
「その好きな相手って、久楽?」
「………………え……」
「だって、そうとしか思えなくて。さっきのも……だから苦しいんだろ?」
「あ……う…………っ」
なんて答えればいいのか分からない。
正直に答えたら雫は気持ち悪がって離れていってしまう?
せっかく眼鏡を外しても大丈夫な友達が出来たのに、同性を好きな事で雫までいなくなってしまったら耐えられない。
どうしよう……だからと言って否定する言葉も言いたくない。
「大丈夫だよ、亮。そんな事で俺たちの関係が終わるわけないだろ?」
「…………っ、う――――っ」
またしても雫に泣かされ、嗚咽しか出てこない。
僕の悩みも「そんな事」で一蹴してしまう雫なら……大丈夫。
そう思えたから。
「結人が好きだって気付いちゃって……どうしたらいいか分からなくて…………っ」
「うんうん。まぁそうかなとは思ってたんだけど」
「?!」
「そうじゃなくても久楽の事大好きだったもんな!アイツの後追っかけてバイト先までこっそり見に行っちゃて」
雫は笑いながら話しているけど、僕にとってはとても恥ずかしい話で、全身が発火するのではと思うくらい熱が集まってくる。
「そ、そんなに分かりやすかった……?」
「そりゃな……本人たちだけじゃね?意識してないの」
「…………恥ずかしすぎる」
「さっき走り去る亮を見て確信したっつーか。俺たち乙女ゲー好きじゃん?海人も久楽そっくりだしな!」
雫に指摘されて今更気付くなんて……確かに言われてみれば海人は結人に似ていた。
小学生の頃の結人を大きくした感じ。
そう考えると僕って、物凄く重いのでは?!
自分の執着気質に衝撃を受け、違う意味で愕然としてしまう。
「どうしよう……気持ちを知られて結人に拒絶されたら……」
「それは大丈夫だと思うけどな!逆の立場だったら、絶対拒絶しないだろ?」
確かに……それは絶対にない。
そうか、そう考えると少し気持ちが楽になってきた気がする。
雫は凄いな……彼の言葉には嘘がなく、真っすぐな言葉がスッと心に入ってくる。
「雫を好きになってたら、こんな気持ちにならずに済んだのかな」
「ん――それは分からないけど、そんだけ想える相手に出会えたのは幸せな事じゃね?俺にはまだいないから羨ましいっつーか……」
この恋は叶わない可能性が高いけれど、確かにこんな風に誰かをとても好きになれるというのは、凄く幸せな事かもしれない。
それも相手は幼い頃から大好きだった幼馴染なんだから。
「ま、心は自由だ。誰を想うのもどうしていくのかも。お前が幸せならそれでいいよ」
「そうだよね。うん、そうかもしれない……ありがとう、雫」
「調子が戻って良かったよ。でもやっぱり眼鏡はしておいた方がいいな。俺はいいんだけどさ……色々と大変だと思うから」
「? あ、そうか。そうだよね!」
すっかり泣き腫らして目が真っ赤だった事に気付き、すぐに眼鏡をかけなおした。
雫は気が利くし、男前だし、すぐに彼女が出来る気がするな。
そしてその相手は絶対に幸せになれるだろう。
こんな男前な友達が出来て、本当に幸せな気持ちになれた僕は、さっきまでの沈んだ気持ちが嘘のように晴々としていたのだった。
「そろそろ帰っか~」
「うん!」
校舎の影からこっそり出てきた僕たちは、そのまま帰ろうと駅の方へ歩いて行こうとしたところで、雫がしみじみとさっきの話を蒸し返してきたのだった。
「そっか~~亮の好きなヤツがな~~」
「えっ……と…………」
「親戚のおじさんみたいな気持ちになるな!もっと亮のコイバナ、おじさんに聞かせてくれ」
「もう!面白がってるでしょ」
僕たちが笑い合っていたところに、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「え!亮クンの好きな子の話?!!」
「?!」
突然の声に雫と二人で振り返ると、そこには駆流クンと結人が立っていて、二人とも驚いた表情でこちらを見つめていた。
まさか今の話、二人に聞かれてた?!
それよりも結人の隣にあの女子がいない……という事は付き合ってないんだろうか。
僕は知られてしまった事よりもあの告白がどうなったかが気になって、幼馴染の顔を見る事が出来ない。
でもそんな雰囲気を一気に壊すような雫のツッコミが炸裂する。
「まったく……声がデカい!うるさい!大きな声でする話じゃねーだろ!」
「そっちだってうるさい!声でかい~~」
雫と駆流クンは相変わらずの押収で、さっきまでの緊張感が一気にほぐれていった。
「あははっ」
今はこの気持ちに触れてほしくなかった僕は、二人の喧騒に乗っかる事にした。
そうして騒がしくしている内に電車が来て雫とは別れ、電車は最寄り駅に着き、自宅までの帰り道も結人と二人きりだったけれど、告白の話などは出なかった。
正直その話をされたところで何を返していいか分からなかった僕は、何も言われなかった事にホッとしながら、他愛ない会話を交わして自宅へと帰宅したのだった。
20
あなたにおすすめの小説
溺愛系とまではいかないけど…過保護系カレシと言った方が 良いじゃねぇ? って親友に言われる僕のカレシさん
315 サイコ
BL
潔癖症で対人恐怖症の汐織は、一目惚れした1つ上の三波 道也に告白する。
が、案の定…
対人恐怖症と潔癖症が、災いして号泣した汐織を心配して手を貸そうとした三波の手を叩いてしまう。
そんな事が、あったのにも関わらず仮の恋人から本当の恋人までなるのだが…
三波もまた、汐織の対応をどうしたらいいのか、戸惑っていた。
そこに汐織の幼馴染みで、隣に住んでいる汐織の姉と付き合っていると言う戸室 久貴が、汐織の頭をポンポンしている場面に遭遇してしまう…
表紙のイラストは、Days AIさんで作らせていただきました。
幼馴染が「お願い」って言うから
尾高志咲/しさ
BL
高2の月宮蒼斗(つきみやあおと)は幼馴染に弱い。美形で何でもできる幼馴染、上橋清良(うえはしきよら)の「お願い」に弱い。
「…だからってこの真夏の暑いさなかに、ふっかふかのパンダの着ぐるみを着ろってのは無理じゃないか?」
里見高校着ぐるみ同好会にはメンバーが3人しかいない。2年生が二人、1年生が一人だ。商店街の夏祭りに参加直前、1年生が発熱して人気のパンダ役がいなくなってしまった。あせった同好会会長の清良は蒼斗にパンダの着ぐるみを着てほしいと泣きつく。清良の「お願い」にしぶしぶ頷いた蒼斗だったが…。
★上橋清良(高2)×月宮蒼斗(高2)
☆同級生の幼馴染同士が部活(?)でわちゃわちゃしながら少しずつ近づいていきます。
☆第1回青春×BL小説カップに参加。最終45位でした。応援していただきありがとうございました!
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
陰キャ幼馴染がミスターコン代表に選ばれたので、俺が世界一イケメンにしてやります
あと
BL
「俺が!お前を生まれ変わらせる!」
自己肯定感低めの陰キャ一途攻め×世話焼きなお人好し平凡受け
いじられキャラで陰キャな攻めが数合わせでノミネートされ、2ヶ月後の大学の学園祭のミスターコンの学部代表になる。誰もが優勝するわけないと思う中、攻めの幼馴染である受けは周囲を見返すために、攻めを大幅にイメチェンさせることを決意する。そして、隠れイケメンな攻めはどんどん垢抜けていき……?
攻め:逸見悠里
受け:佐々木歩
⚠️途中でファッションの話になりますが、作者は服に詳しくないので、ダサいじゃん!とか思ってもスルーでお願いします。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる