【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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心は自由

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 こっそり後をつけると、結人と女子が向かった先は――――校舎裏の大きな木が何本か生えている木陰だった。

 こんなの絶対に告白現場だよね。

 (ねぇ……やっぱりこんなのダメだよ)
 (大丈夫だ。久楽に見つかってもおめでとうって言ってやりゃいいじゃん)

 雫は本当に悪気もなく笑いながらそう言ってきた。
 
 きっと結人が女子と付き合う前提で言っているんだろうな……そうだよね、男子なら可愛い女子に告白されたら付き合いたいってなるよね…………結人もそうなのかな。

 でも僕は……もし二人が付き合ってしまったら、どうしようって思っちゃってる。
 
 幼馴染の幸せを祝福出来ないなんて最低だ。

 でも嫌だ、OKしないで――――

 祈るような気持ちで二人を遠目から見ていると、告白をしている女子が結人の胸に飛び込み、縋り付いているように見える。

 (あ――こりゃ付き合うんかな)
 (…………っ!)
 
 雫の言葉にこの場にいる事に耐えられなくなり、走り去ってしまったのだった。

 もう嫌だ――――自分の気持ちに気付いた瞬間にこんな事が起きるなんて――――もっと早くに気付いていれば――

 いや、気付いていたとしても同性である僕が、あの女子生徒のように自分の気持ちを正直に伝える事なんて、到底出来ない。

 最初から勝てる要素なんてなかったんだ。

 そう思うと、走っていた足が止まり、自然と涙が溢れてくる。

 眼鏡を取りたくない……こんな顔、誰にも見せられない。


 「亮!!」


 後ろから雫の声が聞こえて振り返ると、僕を追いかけてきたのか心配そうな表情で僕の顔を覗き込んでくる。


 「どうしたんだよ?!突然走って行っちゃうからビックリして……」

 「雫……どうしよう。僕…………どうしたら……」


 溢れ出る想いをどうやって隠せばいいか分からず、雫の肩に顔を埋め、思い切り泣いてしまったのだった。

 校舎の影で、僕の頭を撫でながら落ち着くまでずっと寄り添ってくれた雫は、僕が泣いている間、何も聞いてくる事はなかった。
 
 そしてようやく顔を上げた僕の顔を見て、眼鏡を取ってハンカチで顔を拭いてくれる。


 「ふはっ、なんて顔してんだよ」

 「だって……」

 「はいはい。推しの幸せが俺の幸せだって言っただろ?亮をそんな顔にさせてるのは何なんだ?」


 言ってる事が男前すぎる。


 「好きな人が出来たんだ……凄く好きで、好き過ぎて、苦しい…………」


 ようやく涙がおさまっていたのに、また思い出すと苦しくて泣けてくる。

 人を好きになるってこんなに苦しいものなの?

 また雫のハンカチに顔を埋めていると、雫からズバリ好きな人を当てられてしまう。


 「その好きな相手って、久楽?」

 「………………え……」

 「だって、そうとしか思えなくて。さっきのも……だから苦しいんだろ?」

 「あ……う…………っ」


 なんて答えればいいのか分からない。

 正直に答えたら雫は気持ち悪がって離れていってしまう?

 せっかく眼鏡を外しても大丈夫な友達が出来たのに、同性を好きな事で雫までいなくなってしまったら耐えられない。

 どうしよう……だからと言って否定する言葉も言いたくない。

 
 「大丈夫だよ、亮。そんな事で俺たちの関係が終わるわけないだろ?」

 「…………っ、う――――っ」


 またしても雫に泣かされ、嗚咽しか出てこない。

 僕の悩みも「そんな事」で一蹴してしまう雫なら……大丈夫。

 そう思えたから。

 
 「結人が好きだって気付いちゃって……どうしたらいいか分からなくて…………っ」

 「うんうん。まぁそうかなとは思ってたんだけど」

 「?!」

 「そうじゃなくても久楽の事大好きだったもんな!アイツの後追っかけてバイト先までこっそり見に行っちゃて」


 雫は笑いながら話しているけど、僕にとってはとても恥ずかしい話で、全身が発火するのではと思うくらい熱が集まってくる。


 「そ、そんなに分かりやすかった……?」

 「そりゃな……本人たちだけじゃね?意識してないの」

 「…………恥ずかしすぎる」

 「さっき走り去る亮を見て確信したっつーか。俺たち乙女ゲー好きじゃん?海人も久楽そっくりだしな!」


 雫に指摘されて今更気付くなんて……確かに言われてみれば海人は結人に似ていた。

 小学生の頃の結人を大きくした感じ。

 そう考えると僕って、物凄く重いのでは?!

 自分の執着気質に衝撃を受け、違う意味で愕然としてしまう。


 「どうしよう……気持ちを知られて結人に拒絶されたら……」

 「それは大丈夫だと思うけどな!逆の立場だったら、絶対拒絶しないだろ?」


 確かに……それは絶対にない。

 そうか、そう考えると少し気持ちが楽になってきた気がする。

 雫は凄いな……彼の言葉には嘘がなく、真っすぐな言葉がスッと心に入ってくる。
 
 
 「雫を好きになってたら、こんな気持ちにならずに済んだのかな」

 「ん――それは分からないけど、そんだけ想える相手に出会えたのは幸せな事じゃね?俺にはまだいないから羨ましいっつーか……」


 この恋は叶わない可能性が高いけれど、確かにこんな風に誰かをとても好きになれるというのは、凄く幸せな事かもしれない。

 それも相手は幼い頃から大好きだった幼馴染なんだから。
 

 「ま、心は自由だ。誰を想うのもどうしていくのかも。お前が幸せならそれでいいよ」

 「そうだよね。うん、そうかもしれない……ありがとう、雫」

 「調子が戻って良かったよ。でもやっぱり眼鏡はしておいた方がいいな。俺はいいんだけどさ……色々と大変だと思うから」

 「? あ、そうか。そうだよね!」


 すっかり泣き腫らして目が真っ赤だった事に気付き、すぐに眼鏡をかけなおした。

 雫は気が利くし、男前だし、すぐに彼女が出来る気がするな。

 そしてその相手は絶対に幸せになれるだろう。

 こんな男前な友達が出来て、本当に幸せな気持ちになれた僕は、さっきまでの沈んだ気持ちが嘘のように晴々としていたのだった。


 「そろそろ帰っか~」

 「うん!」


 校舎の影からこっそり出てきた僕たちは、そのまま帰ろうと駅の方へ歩いて行こうとしたところで、雫がしみじみとさっきの話を蒸し返してきたのだった。
 

 「そっか~~亮の好きなヤツがな~~」

 「えっ……と…………」

 「親戚のおじさんみたいな気持ちになるな!もっと亮のコイバナ、おじさんに聞かせてくれ」

 「もう!面白がってるでしょ」


 僕たちが笑い合っていたところに、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。


 「え!亮クンの好きな子の話?!!」

 「?!」


 突然の声に雫と二人で振り返ると、そこには駆流クンと結人が立っていて、二人とも驚いた表情でこちらを見つめていた。

 まさか今の話、二人に聞かれてた?!

 それよりも結人の隣にあの女子がいない……という事は付き合ってないんだろうか。

 僕は知られてしまった事よりもあの告白がどうなったかが気になって、幼馴染の顔を見る事が出来ない。

 でもそんな雰囲気を一気に壊すような雫のツッコミが炸裂する。


 「まったく……声がデカい!うるさい!大きな声でする話じゃねーだろ!」

 「そっちだってうるさい!声でかい~~」


 雫と駆流クンは相変わらずの押収で、さっきまでの緊張感が一気にほぐれていった。

 
 「あははっ」


 今はこの気持ちに触れてほしくなかった僕は、二人の喧騒に乗っかる事にした。

 そうして騒がしくしている内に電車が来て雫とは別れ、電車は最寄り駅に着き、自宅までの帰り道も結人と二人きりだったけれど、告白の話などは出なかった。

 正直その話をされたところで何を返していいか分からなかった僕は、何も言われなかった事にホッとしながら、他愛ない会話を交わして自宅へと帰宅したのだった。

 
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