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その6
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フラムに抱き上げられたまま、サシャは船を下りた。誰か一緒についてくると思っていたが、誰も一緒に行かない。ポートラムの姿すらない。船員たちはそれぞれ、好きな方向に向かっていった。
港町は活気づいていた。
船から魚でいっぱいの箱をおろす人たちもいれば、自分たちと同じように人々が何人降りていく船もある。魚を売る屋台のすぐ横ではネコがおこぼれを食べ、魚を買いに来た女性たちが笑いながら話をしている。
フラムが街中に進むにつれ、店の種類も人も増えた。いい匂いにつられて顔をむければ、魚や肉を焼いている屋台、肉や野菜をパンにはさんで売っている店、黄色いバターを大量に店頭に置いて売る店もある。色とりどりの服や装飾品、雑貨品を売る店もあった。飲食店の前には難しい顔を突き合わせて盤ゲームに熱中する年寄り、自分と同じ年ぐらいの若い男女が手をつないで見つめ合う姿もあった。
「この街って、いろんな声と匂いがする」
サシャは子供のようにフラムに抱えられていることを忘れて、驚きの声と素直な感想が漏らした。
「ここは、海の男たちが立ち寄る島だからな。航海に必要なものは何でもそろっている。その代わり、誰もこの島には手を出さないし、手を出せないんだ」
楽しげにフラムが語る。
「どうしてですか?どうして手を出さないのですか?」
不思議に思って訪ねると、フラムはお前は本当に何も知らないんだなと豪快に笑う。
「ここに手を出せば、ここを便利に使っている奴らから猛攻撃されるぞ。ここにいるのは元は海にいた男たちだ。元海賊もいる。腕っぷしが強いからこそ、この島にいて商売もできる。お前の国の兵士なら、この島の男20人ぐらいで全滅させれことができるだろう」
ははは、と笑って一つの店に立ち寄る。サシャはまだ、抱えられたままだ。
そこには、キラキラと光る石が美しい形に加工されたものがいくつも並んでいた。
「フラム様。いらっしゃいまし」
細身の男が親しげにあいさつする。
「ああ。部下の娘たちと、こいつに何かみつくろってくれ」
男は「お嬢様はいくつになられましたか」などといくつか質問し、女性用のアクセサリーをいくつか出し、フラムは手際よく愛らしいピンク色の石を使った花の形をした髪飾りと青色の石の首飾りを指さす。
「お前は…目の色に合わせてこれにしたらどうだ」
フラムが指さしたのは、緑色の石がつき、金で彩られた豪奢な首飾りだった。
「フラム様。この方は、お気に入りの方のようですね」
にこにこと店の男はサシャにその商品を差し出すが。
サシャは首を横に振った。
「そんなに豪華なものはいりません。私にはもったいない」
サシャにしてみれば粗末な自分のようなものにそんな豪華なものは分不相応だとしか思えなかった。
それから、男がどんな宝石を見せてもサシャは首を縦に振らなかった。
そのうち、「お前は欲がないな」とフラムがあきらめる。
「まあいい。先ほどの物だけで」
小さくため息をついて、「意外と頑固だな」とサシャを抱く腕の力を少しだけ強める。
そこでやっと、フラムに抱かれていることを思い出し、顔を真っ赤にして「そろそろ下してください」と小さな声で願う。
フラムはふっと笑って。「迷子になると困るからな」と、おろしてくれなかった。
金を男に手渡し、小さな包みになった宝石たちを受け取ると、フラムは再び歩き始める。
街中に行くとフラムに頭を下げるもの、声をかけるものも多くなっていったが、サシャのことは物珍しそうに眺めるだけで、誰も何も触れない。
フラムも声をかけてきた店主の店に立ち寄り、時にはサシャに「欲しいか」と尋ねて、そのたびに「高価なものはいらない」と首を振る。何しろフラムが手にするものは装飾品が中心で、サシャの目にも高価なものとして映らない。
「女はこういうものを欲しがったのだがな」
そうつぶやかれても、サシャには「美しいもの」とは思うが、どうしても自分に必要なものは欲しいと思えなかった。
最終的にはフラムも何か買い与えることをあきらめたようだった。それでも船に戻らないようだったので、「船に行かないのですか?」と聞くと、「2~3日は陸にいる。明日は祭りがあるぞ」という答えがあった。
「祭り…。すごいですね」
華やかなもので、みんなが楽しむものだということは鳥たちから聞いていた。おしゃべりな鳥は、空から人間が楽しんでいる姿を見て、自分たちも楽しくなるらしい。鳥たちから祭りの様子を聞くと、「行ってみたいな」とは思うけれど、塔の上にいた自分には叶えられな願いだった。
今も同じ。囚われの身であることは自覚している。逃げようとも思わない。だから、祭りなど行けるとは家らも思わなかった。
「行くか?」
そうフラムが気さくに言う言葉に、「え?」と聞き返してしまう。
「俺の傍にいれば、祭りのパレードを見るぐらいはいいぞ。女たちが薄い衣を着て腰を振って歩いてるがな。そんなのを喜ぶのはまだ早いか。子供用の菓子を投げて歩くパレードの方を見せてやる」
子供用の、と言われて少しむっとし、「子供ではありません」と言いながらも、楽しそうなパレードというものへの興味が勝った。
「楽しみです」
そう言って笑うと、フラムは少し驚いた顔をする。そして、いきなり「あまりかわいい顔をするな」と言って、顔を寄せてきた。唇を奪われ、サシャはぎゅっとフラムの服を握りしめる。
「あらやだ、うらやましいわ」
近くから女性の声がしてやっと、ここが街中だったと思い出す。
「だんな、その愛する方にこれ、いかがですかい」
からかうような声にフラムは「ははっ」と笑い返すが、サシャは恥ずかしさのあまり、抱き着いたフラムの肩口から顔を上げることができなかった。
抱き上げられたまま連れてこられたのは、街から少し離れた一軒家だった。
「邪魔するぞ」
扉を開けると、フラムを出迎えたのは年配の男性。
「また女をかどわかしてきたんか」
白鬚に額にしわが刻まれたその人は、しわがれた声でフラムをからかう。
「かどわかしてきたのは間違いない。しかしいつもではないぞ。いつもは勝手についてくるか、押し付けられるんだ」
その楽しげな声にサシャは首をかしげる。
その声色は船員やポートラムに向けるものと少し違った。いつもより砕けて、いつもより…甘えているみたいにも聞こえた。
「サシャ、挨拶しろ。俺の本当のじい様だ」
床に下され、向き合わされる。
「サシャと申します。おじいさま、よろしくお願いいたします」
ぺこりと頭を下げると、男性はしわだらけの顔をさらにしわくちゃにして笑い、サシャの頭を大きな手で撫でた。
「はは。愛らしい子だ。どこで見つけた。私はこれのじじいに当たる、ボナポルトという。よろしくな」
髪をくしゃくしゃにされながら、小さく「はい」と答えると、ますます顔をくしゃくしゃにした。
「ボナポルトは元庭師だ。母の父になる。現王に国を追い出されたが、ここに流れ着いた。ここで再会したときは驚いたものだ」
サシャはまたフラムのことをまた一つ知る。船員のように船に乗るまでのことや子供の頃のことなどは好んで語らないフラムの一面を知ることがうれしかった。
「パレードは明日だ」
そう言っている間に、ドアが2回、ノックされる。
ボナポルトの返事に顔を出したのはポートラムだった。
「王子。食料などを買ってきました。おお、ボナポルト、息災か」
「ポートラム。良い肉と酒を買ってきたか。相変わらず言葉がお堅いのぉ」
2人は抱き合いながら笑い合う。
「あの2人は子供の頃からの親友なんだ。ポートラムは兵士、ボナポルトは庭師で王宮に仕えてたんだしな。さあ、年寄り同士の久しぶりの再会の儀式は長いぞ。あいつらは放っておけ」
サシャは親友だという年老いた2人をじっと見つめる。2人は互いに肩をたたき合い、たがいに「じじいになったな」「お前もな」とまるで悪口の言い合いみたいに会話を続ける。それでも笑って、何も言わずにポートラムが酒瓶の口を開けると、さっとボナポルトが人数分のグラスを出し、その横でフラムが、ボナポルトが買ってきた肉をさばいていた。
本当の親子ってこんな風なのかもしれないなあ。
サシャには経験のない、人との接し方をするフラムがうらやましくも思う。
「何してる。お前もここに座れ」
ふと顔を挙げたフラムが、サシャを手招いた。
あの輪に、僕も入ることができる。
サシャの内側から、今まで経験したことがない喜びが湧く。
「ちびっちゃいのお。いくつだね」とボナポルトがサシャの頭をなでる。「サシャ様はとても賢い人だぞ。それに我々のような武骨な者や無頼者の船員たちにもお優しい。フラム様にはもったいないぐらいだ」とポートラムがサシャの肩をたたく。その両方の手をフラムが払いのけ、「これは、俺のだ。触るな」とサシャを抱きしめる。
からかいのネタになっていても、心がくすぐったかった。唇の端が跳ね上がり、頬が緩むのを抑えられなかった。
「あん?何を笑ってる。お前、俺以外の男に触らせるなよ」
フラムは少し怒ったように言いながらも、サシャを抱きしめたまま椅子に座り込み、さばいた肉をつまみに酒を飲みだす。
「あんたにはこっちのほうがいいかもしれんの」と言ってボナポルトが赤い液体を差し出す。
「うちの畑で取れたベリーをつけた果実酒だよ。甘いし酒もそんなに強くないからいいじゃろ」
ボナポルトは小さな子に諭すようにやさしい声でサシャに語り掛ける。
差し出された果実酒をこくりと一口飲み、「おいしいっ。初めてです。こんなおいしいもの」と笑うと、「そうか」と皆が笑った。
サシャはフラムの腕の中で、心も体も温まる瞬間をじっくりと味わっていた。
港町は活気づいていた。
船から魚でいっぱいの箱をおろす人たちもいれば、自分たちと同じように人々が何人降りていく船もある。魚を売る屋台のすぐ横ではネコがおこぼれを食べ、魚を買いに来た女性たちが笑いながら話をしている。
フラムが街中に進むにつれ、店の種類も人も増えた。いい匂いにつられて顔をむければ、魚や肉を焼いている屋台、肉や野菜をパンにはさんで売っている店、黄色いバターを大量に店頭に置いて売る店もある。色とりどりの服や装飾品、雑貨品を売る店もあった。飲食店の前には難しい顔を突き合わせて盤ゲームに熱中する年寄り、自分と同じ年ぐらいの若い男女が手をつないで見つめ合う姿もあった。
「この街って、いろんな声と匂いがする」
サシャは子供のようにフラムに抱えられていることを忘れて、驚きの声と素直な感想が漏らした。
「ここは、海の男たちが立ち寄る島だからな。航海に必要なものは何でもそろっている。その代わり、誰もこの島には手を出さないし、手を出せないんだ」
楽しげにフラムが語る。
「どうしてですか?どうして手を出さないのですか?」
不思議に思って訪ねると、フラムはお前は本当に何も知らないんだなと豪快に笑う。
「ここに手を出せば、ここを便利に使っている奴らから猛攻撃されるぞ。ここにいるのは元は海にいた男たちだ。元海賊もいる。腕っぷしが強いからこそ、この島にいて商売もできる。お前の国の兵士なら、この島の男20人ぐらいで全滅させれことができるだろう」
ははは、と笑って一つの店に立ち寄る。サシャはまだ、抱えられたままだ。
そこには、キラキラと光る石が美しい形に加工されたものがいくつも並んでいた。
「フラム様。いらっしゃいまし」
細身の男が親しげにあいさつする。
「ああ。部下の娘たちと、こいつに何かみつくろってくれ」
男は「お嬢様はいくつになられましたか」などといくつか質問し、女性用のアクセサリーをいくつか出し、フラムは手際よく愛らしいピンク色の石を使った花の形をした髪飾りと青色の石の首飾りを指さす。
「お前は…目の色に合わせてこれにしたらどうだ」
フラムが指さしたのは、緑色の石がつき、金で彩られた豪奢な首飾りだった。
「フラム様。この方は、お気に入りの方のようですね」
にこにこと店の男はサシャにその商品を差し出すが。
サシャは首を横に振った。
「そんなに豪華なものはいりません。私にはもったいない」
サシャにしてみれば粗末な自分のようなものにそんな豪華なものは分不相応だとしか思えなかった。
それから、男がどんな宝石を見せてもサシャは首を縦に振らなかった。
そのうち、「お前は欲がないな」とフラムがあきらめる。
「まあいい。先ほどの物だけで」
小さくため息をついて、「意外と頑固だな」とサシャを抱く腕の力を少しだけ強める。
そこでやっと、フラムに抱かれていることを思い出し、顔を真っ赤にして「そろそろ下してください」と小さな声で願う。
フラムはふっと笑って。「迷子になると困るからな」と、おろしてくれなかった。
金を男に手渡し、小さな包みになった宝石たちを受け取ると、フラムは再び歩き始める。
街中に行くとフラムに頭を下げるもの、声をかけるものも多くなっていったが、サシャのことは物珍しそうに眺めるだけで、誰も何も触れない。
フラムも声をかけてきた店主の店に立ち寄り、時にはサシャに「欲しいか」と尋ねて、そのたびに「高価なものはいらない」と首を振る。何しろフラムが手にするものは装飾品が中心で、サシャの目にも高価なものとして映らない。
「女はこういうものを欲しがったのだがな」
そうつぶやかれても、サシャには「美しいもの」とは思うが、どうしても自分に必要なものは欲しいと思えなかった。
最終的にはフラムも何か買い与えることをあきらめたようだった。それでも船に戻らないようだったので、「船に行かないのですか?」と聞くと、「2~3日は陸にいる。明日は祭りがあるぞ」という答えがあった。
「祭り…。すごいですね」
華やかなもので、みんなが楽しむものだということは鳥たちから聞いていた。おしゃべりな鳥は、空から人間が楽しんでいる姿を見て、自分たちも楽しくなるらしい。鳥たちから祭りの様子を聞くと、「行ってみたいな」とは思うけれど、塔の上にいた自分には叶えられな願いだった。
今も同じ。囚われの身であることは自覚している。逃げようとも思わない。だから、祭りなど行けるとは家らも思わなかった。
「行くか?」
そうフラムが気さくに言う言葉に、「え?」と聞き返してしまう。
「俺の傍にいれば、祭りのパレードを見るぐらいはいいぞ。女たちが薄い衣を着て腰を振って歩いてるがな。そんなのを喜ぶのはまだ早いか。子供用の菓子を投げて歩くパレードの方を見せてやる」
子供用の、と言われて少しむっとし、「子供ではありません」と言いながらも、楽しそうなパレードというものへの興味が勝った。
「楽しみです」
そう言って笑うと、フラムは少し驚いた顔をする。そして、いきなり「あまりかわいい顔をするな」と言って、顔を寄せてきた。唇を奪われ、サシャはぎゅっとフラムの服を握りしめる。
「あらやだ、うらやましいわ」
近くから女性の声がしてやっと、ここが街中だったと思い出す。
「だんな、その愛する方にこれ、いかがですかい」
からかうような声にフラムは「ははっ」と笑い返すが、サシャは恥ずかしさのあまり、抱き着いたフラムの肩口から顔を上げることができなかった。
抱き上げられたまま連れてこられたのは、街から少し離れた一軒家だった。
「邪魔するぞ」
扉を開けると、フラムを出迎えたのは年配の男性。
「また女をかどわかしてきたんか」
白鬚に額にしわが刻まれたその人は、しわがれた声でフラムをからかう。
「かどわかしてきたのは間違いない。しかしいつもではないぞ。いつもは勝手についてくるか、押し付けられるんだ」
その楽しげな声にサシャは首をかしげる。
その声色は船員やポートラムに向けるものと少し違った。いつもより砕けて、いつもより…甘えているみたいにも聞こえた。
「サシャ、挨拶しろ。俺の本当のじい様だ」
床に下され、向き合わされる。
「サシャと申します。おじいさま、よろしくお願いいたします」
ぺこりと頭を下げると、男性はしわだらけの顔をさらにしわくちゃにして笑い、サシャの頭を大きな手で撫でた。
「はは。愛らしい子だ。どこで見つけた。私はこれのじじいに当たる、ボナポルトという。よろしくな」
髪をくしゃくしゃにされながら、小さく「はい」と答えると、ますます顔をくしゃくしゃにした。
「ボナポルトは元庭師だ。母の父になる。現王に国を追い出されたが、ここに流れ着いた。ここで再会したときは驚いたものだ」
サシャはまたフラムのことをまた一つ知る。船員のように船に乗るまでのことや子供の頃のことなどは好んで語らないフラムの一面を知ることがうれしかった。
「パレードは明日だ」
そう言っている間に、ドアが2回、ノックされる。
ボナポルトの返事に顔を出したのはポートラムだった。
「王子。食料などを買ってきました。おお、ボナポルト、息災か」
「ポートラム。良い肉と酒を買ってきたか。相変わらず言葉がお堅いのぉ」
2人は抱き合いながら笑い合う。
「あの2人は子供の頃からの親友なんだ。ポートラムは兵士、ボナポルトは庭師で王宮に仕えてたんだしな。さあ、年寄り同士の久しぶりの再会の儀式は長いぞ。あいつらは放っておけ」
サシャは親友だという年老いた2人をじっと見つめる。2人は互いに肩をたたき合い、たがいに「じじいになったな」「お前もな」とまるで悪口の言い合いみたいに会話を続ける。それでも笑って、何も言わずにポートラムが酒瓶の口を開けると、さっとボナポルトが人数分のグラスを出し、その横でフラムが、ボナポルトが買ってきた肉をさばいていた。
本当の親子ってこんな風なのかもしれないなあ。
サシャには経験のない、人との接し方をするフラムがうらやましくも思う。
「何してる。お前もここに座れ」
ふと顔を挙げたフラムが、サシャを手招いた。
あの輪に、僕も入ることができる。
サシャの内側から、今まで経験したことがない喜びが湧く。
「ちびっちゃいのお。いくつだね」とボナポルトがサシャの頭をなでる。「サシャ様はとても賢い人だぞ。それに我々のような武骨な者や無頼者の船員たちにもお優しい。フラム様にはもったいないぐらいだ」とポートラムがサシャの肩をたたく。その両方の手をフラムが払いのけ、「これは、俺のだ。触るな」とサシャを抱きしめる。
からかいのネタになっていても、心がくすぐったかった。唇の端が跳ね上がり、頬が緩むのを抑えられなかった。
「あん?何を笑ってる。お前、俺以外の男に触らせるなよ」
フラムは少し怒ったように言いながらも、サシャを抱きしめたまま椅子に座り込み、さばいた肉をつまみに酒を飲みだす。
「あんたにはこっちのほうがいいかもしれんの」と言ってボナポルトが赤い液体を差し出す。
「うちの畑で取れたベリーをつけた果実酒だよ。甘いし酒もそんなに強くないからいいじゃろ」
ボナポルトは小さな子に諭すようにやさしい声でサシャに語り掛ける。
差し出された果実酒をこくりと一口飲み、「おいしいっ。初めてです。こんなおいしいもの」と笑うと、「そうか」と皆が笑った。
サシャはフラムの腕の中で、心も体も温まる瞬間をじっくりと味わっていた。
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