がんじがらめの契約と狂愛〜聖女になれなかった異邦者の唯一〜

く〜いっ

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04 強大な魔力と使えない魔法

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「魔力と魔法の違いはわかる?」

 ――異世界らしい話題キター!

「物語りのなかにはありましたが、実際はそういった力は使えない世界だったので……」

 ジリオ様は、ふるふると首を横に振る私に、うん……と、うなずく。

「今まで来臨された聖者、聖女様たちと同じ世界のようだね。魔力は己の体内に内包する力。魔法は体内の魔力を利用して、体に現象をおこす方法。――こんなふうに」

 なにごとか小さくつぶやくと、ジリオ様の掌の上に小さな火の玉があらわれた。

 ――おおおお――――!! 魔法だ――――――!!

 思わず前のめりになった私を、ジリオ様は、ふっ……と笑い、手を握りこむようにして火の玉を消してしまった。
 ――残念。もう少しじっくり見たかった。

「リオの魔力は、この世界のすべての人類を凌駕する」

 ――え!? だから聖女!? 異世界召喚あるあるのチート!?

「ただ、魔法として使えないだけで」

 使えないのか――――!! 一瞬の夢だったな、私TUEEE伝説……

「――では、魔法を使えるように修行したり、勉強すれば使えるようになるのでしょうか? 魔法学園とかにかよって……」
「学園? ――さすがに未成年もいる学園で、その勉強は……ダメだろ。いや、でも高学年のときには自然に魔力を高める方法を知っていたような……」

 ジリオ様がぶつぶつ考えこみ、書記官と護衛のかたには視線をそらされてしまった。後ろの騎士様も、なにやらもぞもぞ動いているし……

 ――なに? ――この空気? ――魔力や魔法って勉強しちゃダメなものなの?
 魔法で対応しなくちゃいけない脅威、魔王とか魔獣とかいない平和な世界なのかな? だったらいいな……

「魔力を高める方法はあるけれど、子供の体には負担がかかるから、成人まで禁止されているんだ。破れば神の怒りにふれる。
 体内に内包する魔力だけでは、たいしたことはできない。せいぜい自分の体を清潔にたもったり、よく眠れるようにしたり、病気や怪我の治りをはやめたり。
 健康に成人するための女神の加護――それが未成年が使える魔法なんだ」

 生活魔法? ……思っていた魔法とぜんぜん違う。

「16歳の『成人の義』が終われば、大人の仲間入りだ。魔力を高めることもでき、身体強化ができるようになればいろいろと便利だ。
 先ほど見せた火の魔法は、ちょっと難しいかな。暖炉の火種に便利なんだ。メイドたちにモテるから、成人したてのころ、必死で練習したよ。
 聖女が魔力を高める勉強をしたら、喜ぶ者が多いだろうね。私も嬉しいよ」

「んっ――んっ――――」書記官が咳払いをして、ジリオ様の脇をつついてきた。

 長くお話してもらったから、時間がないのかな? かなり地味な魔法世界なのはわかった。でもまだ、私がどうやったら魔法を使えるようになるのか? その方法がわからない……

「リオはあせらなくて大丈夫だよ。神殿での『順応の義』で魔法が使えるからね」
「え? 『順応の義』? すぐ魔法が使えるようになるのですか? 魔力を高める勉強も一緒に教えてもらえますか?」

 「ぶはっ!!」盛大にジリオ様がふきだした。無双できるかどうかの瀬戸際なのに、ひどくないですか?

「――いや、失礼。――あなたの百面相が……クッ、クックッ……」

 横を向き肩をふるわせて、笑いをこらえきれていないジリオ様。うっすら涙もうかべている……

 ――ひどい。

「聖女様なんて呼ばれて、なにもできないのは辛いじゃないですか! この世界に来たの、なにか意味があるんだって! ただ、迷子のように保護されるより、なにかお役にたてる方法を探したくって!」

 たぶん、大層な責任感があっての言葉じゃない。聖女様なんて呼ばれて、アラン様やジリオ様のようなイケメンに大切にあつかわれて、ほんの少し社会に埋没した喪女じゃなくって、この異世界では特別になれるかも……なんて……そんな、かすかな期待と優越感。
 帰れるかどうかは、まだわからないけれど、戻れたら以前より自分を好きになれるような……疲れたOLが、世界に愛される聖女様になれるチャンスがきたんだって……

 ――期待しちゃったんだもの……

 強大な魔力を持っているって言われてうかれて……魔法は使えないって言われて落ちこみ……魔法を使えるようになる方法を聞き心がはずみ……
 ならば強大な魔力をさらに高め、偽りのない聖女になりたい……と、ちょこっと思っただけ……

 立ちあがり、大きな声をだした私をジリオ様が、ぽかんと、見つめている。急に熱弁したことが恥ずかしくなってきた。
 顔がカーッと熱くなってくる。絶対、赤くなっている~

 くらりっと世界が暗転した。

 膝からくずれた私を、ジリオ様が抱きとめてくれた。テーブルのお菓子がバラバラと床に落ちてしまった。――おいしそうだったのに……ごめんなさい。

「失礼したリオ。けっしてあなたのことを揶揄ったわけじゃあないんだ。コロコロ変わる表情が、あまりにも可愛らしくって……」

 ジリオ様の紫の瞳が優しく細められた。つーっと彼の指が頬を撫でる――ヤダ~、絶対、絶対、赤面確定だよ~

「『順応の義』は神の愛し子になる契約の儀式のこと。儀式で魔法が使えるから。魔力を高める方法もいずれ私がお教えしよう」
「本当ですか「セフィロース卿!!」」

 ――なに?! シャルナ王国の騎士様の顔が怖い?! ものすごく怒っている?

「シシーリア大聖堂で『順応の義』をおこなうリオは、愛らしく美しい聖女になるだろうね」
「セフィロース卿! それ以上は!」

 騎士様を気にすることなく、ジリオ様は微笑んだ。

「聖女様はまだこの世界に降臨されたばかりです。ロズベルト隊長が戻るまで、『聖者・聖女条約』にもとづき、そういう言動はおひかえください」
「まぁ、あせらないことだ。成人しなければ魔力は高められないのだから」
「――私、成人しています」

 室内の全員の視線がつきささる。やっぱり子供って思われていたかぁ~

「――私……21歳です……小柄な人種の世界なんです!」

 ちょこっとウソつきました。彩雲の出現が、数百年に1度の割合なら、次の聖者や聖女がきてもバレないよね。

 「ほぉ~」ジリオ様がおもしろそうに目を細め、騎士様は苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
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