がんじがらめの契約と狂愛〜聖女になれなかった異邦者の唯一〜

く〜いっ

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08 『約定の証書』という鎖

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 ――アラン様だ、アラン様が来てくれた。大きな手で背中を撫でられ、安堵のため息がでた。

「ひどいなぁ~これは合意のうえのことだよ」
「……それは、『約定の証書』か?」

 アラン様の言った言葉に、ビクリッと体が反応し、開かれた夜着の胸元をかきいだく。
 ジリオ様がひらひら振る紙――やだ、あれはダメだ。あれは見られたくない……意図したことではないけれど、あれはジリオ様に抱かれてもいい……と、私が了承した証拠……

「ふたりの時間を邪魔しないでほしいな」
「――――い、いやぁ……」ガクガクッと、体がふるえる。

 怖がる私の髪を、アラン様が優しい手つきで撫でてくれた。

「了承しかねる」
「?!」ジリオ様の目がすっと細められた。

「――ふーん、護衛、辞めてきたんだ。案外、早い対応だったね。今晩中にリオをトロットロに甘やかして、私の虜にする予定だったんだけれどなぁ。リオも濡れてきて、これから! ってときに邪魔されて、体が辛いよね。可愛がってあげるから、こっちへおいで」
「ち、違う! いや!」

 やだ……今の言いかただと、襲われてたんじゃなく、同意でHしていたように聞こえる……やだ、やだ、やだ……

「聖女の同意が得られないようだな。彼女は、こちらで保護させてもらう」
「いやだよ。今すぐ伴侶候補者として、ファリアーナ神の神議シンギを申し込む」

 ――伴侶候補者? 結婚相手ってこと? 勝手に決めないで! ――神議シンギ? また初めて聞く言葉……理解できないことが多すぎる。なんとなく、嫌な予感がする。
 ――この世界、私の価値観? そういうのと、ズレがある……

「伴侶の神議シンギは、彼女が成人してから正式に受ける」
「クックッ……してるよ。成人! そこはまだ知らなかったか! あははははっ!」

 ジリオ様が心底楽しそうに笑った。アラン様が驚きに目を見開いて、私を見下ろした。――その碧眼の瞳が……熱にうかされたように潤みだす。

「ア、アラン……さ、ま……」

 私をかばうように抱いていた手が熱い。――嘘……だよね? 一気に寒気が背筋を駆けあがった。――これは、この眼差しはダメなやつだ!
 自分から引き離すように、アラン様の胸を押す。――ダメ! ジリオ様より厚い体は、びくともしない。

「――承知した。リオ、生涯、愛すると誓う。俺の伴侶になってくれ」

 アラン様は、私の右手に口づけながら求婚した。

「リオ、魔力の多い者同士は相性がいいんだ。幸せにするよ」

 ジリオ様が顔をよせてくる。「婚姻を結んで私の花嫁になる? それともロズベルトの妻になりながら、私に抱かれる?」耳元で囁かれた、言葉の意味が――わからない……
 『約定の証書』を見せつけながら、彼はうっとりと笑った。アラン様と、ジリオ様――ふたり……と?

「――い、意味が! 意味がわかりません! 婚姻? ふたりって? なんで!!」
「リオの降臨に立ちあったからね。私たちふたりが、最初の伴侶の候補者になったんだよ」

 また、勝手なルールだ! ジリオ様が説明してくれたこの世界の説明、あれ、大切な根本がごそっと抜けていたんだ。くすくす笑うジリオ様を睨んだ。

「リオは、シャルナ王国か、シシーリア聖皇国、この2国のどちらかで『順応の義』をすることになる。儀式後、すぐ婚姻の申し込みが殺到するだろう。
 降臨に立ちあった者は、儀式前から婚姻の申し込みができる権利がある。どうか、俺を選んで」

 アラン様の視線が熱い。

「え、選べません。知りあったばかりだし……」
「ロズベルトが選ばれないのなら、私で決定だね! 嬉しいよリオ」
「違います!! お互いをもっと知ってからじゃないと、誰も選べません!」

 ジリオ様の勝手な言いぶんに、イラッとする。強姦まがいなことしたジリオ様は、絶対選びたくない! でも……『約定の証書』という鎖で、ジリオ様に繋がれてしまったみたい……
 アラン様の妻で、ジリオ様は不倫相手? そんなの、本当に無理……ほかのかたを選んだとしても、ジリオ様にはつきまとわれるの?

「なら、知りあおうか――教えてあげる……」

 アラン様に右手を取られたまま――ジリオ様にトスッとベッドに押し倒された。

「私には『約定の証書これ』があるからね」

 ジリオ様は、せっかく閉じた胸元を強引に引き裂く。ビッイィィッ! と、布が裂ける音がして、下腹部あたりまで夜着が裂けた。

「きゃああぁぁぁ!」

 必死で暴れ、ふたりから逃れようとしたが、まったく効果がない。反動で乳房がこぼれ落ち、恥ずかしさで涙があふれた。
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