9 / 71
08 『約定の証書』という鎖
しおりを挟む
――アラン様だ、アラン様が来てくれた。大きな手で背中を撫でられ、安堵のため息がでた。
「ひどいなぁ~これは合意のうえのことだよ」
「……それは、『約定の証書』か?」
アラン様の言った言葉に、ビクリッと体が反応し、開かれた夜着の胸元をかきいだく。
ジリオ様がひらひら振る紙――やだ、あれはダメだ。あれは見られたくない……意図したことではないけれど、あれはジリオ様に抱かれてもいい……と、私が了承した証拠……
「ふたりの時間を邪魔しないでほしいな」
「――――い、いやぁ……」ガクガクッと、体がふるえる。
怖がる私の髪を、アラン様が優しい手つきで撫でてくれた。
「了承しかねる」
「?!」ジリオ様の目がすっと細められた。
「――ふーん、護衛、辞めてきたんだ。案外、早い対応だったね。今晩中にリオをトロットロに甘やかして、私の虜にする予定だったんだけれどなぁ。リオも濡れてきて、これから! ってときに邪魔されて、体が辛いよね。可愛がってあげるから、こっちへおいで」
「ち、違う! いや!」
やだ……今の言いかただと、襲われてたんじゃなく、同意でHしていたように聞こえる……やだ、やだ、やだ……
「聖女の同意が得られないようだな。彼女は、こちらで保護させてもらう」
「いやだよ。今すぐ伴侶候補者として、ファリアーナ神の神議を申し込む」
――伴侶候補者? 結婚相手ってこと? 勝手に決めないで! ――神議? また初めて聞く言葉……理解できないことが多すぎる。なんとなく、嫌な予感がする。
――この世界、私の価値観? そういうのと、ズレがある……
「伴侶の神議は、彼女が成人してから正式に受ける」
「クックッ……してるよ。成人! そこはまだ知らなかったか! あははははっ!」
ジリオ様が心底楽しそうに笑った。アラン様が驚きに目を見開いて、私を見下ろした。――その碧眼の瞳が……熱にうかされたように潤みだす。
「ア、アラン……さ、ま……」
私をかばうように抱いていた手が熱い。――嘘……だよね? 一気に寒気が背筋を駆けあがった。――これは、この眼差しはダメなやつだ!
自分から引き離すように、アラン様の胸を押す。――ダメ! ジリオ様より厚い体は、びくともしない。
「――承知した。リオ、生涯、愛すると誓う。俺の伴侶になってくれ」
アラン様は、私の右手に口づけながら求婚した。
「リオ、魔力の多い者同士は相性がいいんだ。幸せにするよ」
ジリオ様が顔をよせてくる。「婚姻を結んで私の花嫁になる? それともロズベルトの妻になりながら、私に抱かれる?」耳元で囁かれた、言葉の意味が――わからない……
『約定の証書』を見せつけながら、彼はうっとりと笑った。アラン様と、ジリオ様――ふたり……と?
「――い、意味が! 意味がわかりません! 婚姻? ふたりって? なんで!!」
「リオの降臨に立ちあったからね。私たちふたりが、最初の伴侶の候補者になったんだよ」
また、勝手なルールだ! ジリオ様が説明してくれたこの世界の説明、あれ、大切な根本がごそっと抜けていたんだ。くすくす笑うジリオ様を睨んだ。
「リオは、シャルナ王国か、シシーリア聖皇国、この2国のどちらかで『順応の義』をすることになる。儀式後、すぐ婚姻の申し込みが殺到するだろう。
降臨に立ちあった者は、儀式前から婚姻の申し込みができる権利がある。どうか、俺を選んで」
アラン様の視線が熱い。
「え、選べません。知りあったばかりだし……」
「ロズベルトが選ばれないのなら、私で決定だね! 嬉しいよリオ」
「違います!! お互いをもっと知ってからじゃないと、誰も選べません!」
ジリオ様の勝手な言いぶんに、イラッとする。強姦まがいなことしたジリオ様は、絶対選びたくない! でも……『約定の証書』という鎖で、ジリオ様に繋がれてしまったみたい……
アラン様の妻で、ジリオ様は不倫相手? そんなの、本当に無理……ほかのかたを選んだとしても、ジリオ様にはつきまとわれるの?
「なら、知りあおうか――教えてあげる……」
アラン様に右手を取られたまま――ジリオ様にトスッとベッドに押し倒された。
「私には『約定の証書』があるからね」
ジリオ様は、せっかく閉じた胸元を強引に引き裂く。ビッイィィッ! と、布が裂ける音がして、下腹部あたりまで夜着が裂けた。
「きゃああぁぁぁ!」
必死で暴れ、ふたりから逃れようとしたが、まったく効果がない。反動で乳房がこぼれ落ち、恥ずかしさで涙があふれた。
「ひどいなぁ~これは合意のうえのことだよ」
「……それは、『約定の証書』か?」
アラン様の言った言葉に、ビクリッと体が反応し、開かれた夜着の胸元をかきいだく。
ジリオ様がひらひら振る紙――やだ、あれはダメだ。あれは見られたくない……意図したことではないけれど、あれはジリオ様に抱かれてもいい……と、私が了承した証拠……
「ふたりの時間を邪魔しないでほしいな」
「――――い、いやぁ……」ガクガクッと、体がふるえる。
怖がる私の髪を、アラン様が優しい手つきで撫でてくれた。
「了承しかねる」
「?!」ジリオ様の目がすっと細められた。
「――ふーん、護衛、辞めてきたんだ。案外、早い対応だったね。今晩中にリオをトロットロに甘やかして、私の虜にする予定だったんだけれどなぁ。リオも濡れてきて、これから! ってときに邪魔されて、体が辛いよね。可愛がってあげるから、こっちへおいで」
「ち、違う! いや!」
やだ……今の言いかただと、襲われてたんじゃなく、同意でHしていたように聞こえる……やだ、やだ、やだ……
「聖女の同意が得られないようだな。彼女は、こちらで保護させてもらう」
「いやだよ。今すぐ伴侶候補者として、ファリアーナ神の神議を申し込む」
――伴侶候補者? 結婚相手ってこと? 勝手に決めないで! ――神議? また初めて聞く言葉……理解できないことが多すぎる。なんとなく、嫌な予感がする。
――この世界、私の価値観? そういうのと、ズレがある……
「伴侶の神議は、彼女が成人してから正式に受ける」
「クックッ……してるよ。成人! そこはまだ知らなかったか! あははははっ!」
ジリオ様が心底楽しそうに笑った。アラン様が驚きに目を見開いて、私を見下ろした。――その碧眼の瞳が……熱にうかされたように潤みだす。
「ア、アラン……さ、ま……」
私をかばうように抱いていた手が熱い。――嘘……だよね? 一気に寒気が背筋を駆けあがった。――これは、この眼差しはダメなやつだ!
自分から引き離すように、アラン様の胸を押す。――ダメ! ジリオ様より厚い体は、びくともしない。
「――承知した。リオ、生涯、愛すると誓う。俺の伴侶になってくれ」
アラン様は、私の右手に口づけながら求婚した。
「リオ、魔力の多い者同士は相性がいいんだ。幸せにするよ」
ジリオ様が顔をよせてくる。「婚姻を結んで私の花嫁になる? それともロズベルトの妻になりながら、私に抱かれる?」耳元で囁かれた、言葉の意味が――わからない……
『約定の証書』を見せつけながら、彼はうっとりと笑った。アラン様と、ジリオ様――ふたり……と?
「――い、意味が! 意味がわかりません! 婚姻? ふたりって? なんで!!」
「リオの降臨に立ちあったからね。私たちふたりが、最初の伴侶の候補者になったんだよ」
また、勝手なルールだ! ジリオ様が説明してくれたこの世界の説明、あれ、大切な根本がごそっと抜けていたんだ。くすくす笑うジリオ様を睨んだ。
「リオは、シャルナ王国か、シシーリア聖皇国、この2国のどちらかで『順応の義』をすることになる。儀式後、すぐ婚姻の申し込みが殺到するだろう。
降臨に立ちあった者は、儀式前から婚姻の申し込みができる権利がある。どうか、俺を選んで」
アラン様の視線が熱い。
「え、選べません。知りあったばかりだし……」
「ロズベルトが選ばれないのなら、私で決定だね! 嬉しいよリオ」
「違います!! お互いをもっと知ってからじゃないと、誰も選べません!」
ジリオ様の勝手な言いぶんに、イラッとする。強姦まがいなことしたジリオ様は、絶対選びたくない! でも……『約定の証書』という鎖で、ジリオ様に繋がれてしまったみたい……
アラン様の妻で、ジリオ様は不倫相手? そんなの、本当に無理……ほかのかたを選んだとしても、ジリオ様にはつきまとわれるの?
「なら、知りあおうか――教えてあげる……」
アラン様に右手を取られたまま――ジリオ様にトスッとベッドに押し倒された。
「私には『約定の証書』があるからね」
ジリオ様は、せっかく閉じた胸元を強引に引き裂く。ビッイィィッ! と、布が裂ける音がして、下腹部あたりまで夜着が裂けた。
「きゃああぁぁぁ!」
必死で暴れ、ふたりから逃れようとしたが、まったく効果がない。反動で乳房がこぼれ落ち、恥ずかしさで涙があふれた。
20
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる