がんじがらめの契約と狂愛〜聖女になれなかった異邦者の唯一〜

く〜いっ

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14 王都へのパレード

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「謁見用のドレス……ですか?」

 「聖女様と同年代のほうが、話し相手にもよいだろう……」と、ラキア領主ガラナミア伯爵が領主館から世話役としておくってくれた、レディースメイドのキャティ。彼女はもともと伯爵家のハウスメイドで下働きの経験もあるため、着替えやお風呂、私の生活のすべてを手伝うのも問題なくこなしてくれた。

「聖女様の黒髪にはえるよう、白がいいと思うのですが……むしろ思いきって金糸と銀糸で刺繍をほどこした、光沢のある黒とか?」
「――派手すぎるのは、ちょっと……」

 私の髪を器用にクルクルと編みこみながら、キャティは楽しそうにドレスのことを話しつづけた。王都での流行とか本当にくわしくって、女子力高いなぁ~

「聖女様が領主館へ移ってくだされば、もっとちゃんとお世話できましたのに……」

 キャティは、私を隅々まで磨けないことを日々悔しがっている。
 でも、ごめんなさい――へらっと、愛想笑いしてごまかした。安心する場所――おばぁ様のそばを離れたくなくないの……

 「隊員の館から、領主館へ移ってください!」と、言いにきた、ガラナミア伯爵に「ここがいい……」と泣きついた。
 今も「……しかたがないねぇ」と、あきらめ顔の、おばぁ様の治療用のお部屋を独占させてもらっている。
 後ろに控えるアラン様の鬼の形相も手伝ったのか? ちょっと気弱な領主様も、隊員の館での療養をしぶしぶ認めてくれた。

 手の怪我は、右手の骨が細かく砕けてしまっていたので、時間がかかっているものの、おおむね順調。左手のほうは、捻ったりすると少し痛みはでるが、内出血もおさまり動かせるようになってきていた。

 ――痛みがやわらいだことで、日に数時間、神殿の司祭様が唯一神ファリアーナ様のこと、この世界のことを教えにかよってきてくださっている。
 ガラナミア伯爵の奥様からは、行儀作法などの実地訓練が頻繁にはいる。
 ――聖女らしい言葉づかいのチェック……厳しいです……
 ほかにも王都からやってきた王太子殿下……とのお茶会。シシーリア聖皇国から駆けつけた皇子殿下……との昼食会。など、など、なにかと忙しい。

 お茶会や昼食会は――キャティに食べさせてもらっわないと、まだ無理なわけで……だから……本当に、恥ずかしい。食事ぬきで、お話だけ……って、できないものなの? 『あーん』してもらっている、私を見つめるお客様たちの視線が……ツライ。

 お茶は西翼城壁部隊の騎士様たちが訓練しているのを横目に、訓練所の片隅の塗装が剥げかけたテーブルで楽しみ――昼食は騎士様たちも一緒の食堂で楽しんで――う~ん、楽しめているのかな? 王太子殿下と皇子殿下の顔が微妙にひきつっていたような……でも、大勢の目があるところのほうが、安心できたのです。
 王族の護衛もいるから、アラン様はお茶会のときは訓練に参加されていて、ときどきものすごい風圧で剣を振りまわしています。風が、ばさぁ~! とくるの、ビックリして、たびたび王太子殿下との会話が途切れちゃいました。
 昼食会は、私と皇子殿下の料理だけ、領主館の料理長がつくりにきたコース料理。隣の長テーブルでは、アラン様たち西翼城壁部隊の騎士様たちがガッツリ大盛りの食事をとっていて……その量の多さに、食べっぷりの迫力に、目を見開いて凝視しちゃいます。骨つき肉の塊なんて、漫画のなかだけでしか見たことなかったよ~

 ――貿易開発会議を終わらせたシシーリア聖皇国使節団の皆様も、帰国のさい立ちよってくださった。使節団の到着を聞いたときは、ジリオ様もいるのか? と、びくついてしまったが、彼は王城で私の到着を待っているそうで……会うの、まだ怖い。
 ――会いたくないなぁ~





「王太子殿下やシシーリア聖皇国の皇子殿下も同行されるので、華やかなパレードみたいになりますよ」
「……うっ、それは少し恥ずかしい……です」

 キャティとそんな会話をした数日後、王都へ向け出発する準備がととのった。
 シャルナ王国、王太子殿下が乗った馬車を先頭に、私とキャティが乗った馬車がつづき、最後にシシーリア聖皇国の皇子殿下の馬車が一列に並んで進む。
 近衛騎士団、アラン様率いる西翼城壁部隊、シシーリア聖皇国の護衛騎士団が、前後、左右に展開して馬車を守っている。

 私のドレスは、白を基調に裾のほうにいくほど青が深くなるグラデーションのローブだ。聖女っぽい――はげしく右手の包帯が違和感をかもしだしているけれど……
 キャティも、いつものお仕着せでなく黄色が華やかなスレンダータイプのドレスを着ている。背が高い彼女にとてもよくにあっている。オフショルダーの胸元には、共布で作られたバラのコサージュが揺れていた。

「キャティ、あなたがついてきてくれて、嬉しいわ。おばぁ様には、ことわられちゃったから、心細かったの」
「あたり前じゃないですか! 聖女様の道中のお世話、誰ができるっていうんですか! それに一度、王都に行ってみたかったんです。聖女様のお世話係に立候補してよかったです」

 イタズラっぽくウインクした彼女につられて、一緒に笑った。
 怪我の治りが悪かったこともあるのだけれど、隊員の館に籠りっきりだった私は、見るものすべて物珍しかった。
 道すがら「あれはなに?」と、キャティに質問しまくり、呆れられてしまった。
 だって、前回の馬車のときは、酔って景色を楽しむことなんてできなかったんだもの。今回、大丈夫なのは、出発前アラン様がしてくれた身体強化のおかげ……あ~ダメ! ダメ! 思いだしたら赤面しちゃう! ――考えない。考えない。

 王都に近づくにつれ、歓迎ムードが高まる。街道を人びとが埋めつくし、手を振り、歓声をあげる。王都の門をくぐると、市井の人びとが、花びらを馬車に向かって撒き、馬車は幻想的な花吹雪のなかを城門まで進んでいった。

 城門のなかは、城下の喧騒が嘘のように静寂につつまれている。騎士がずらりと整列した前で、馬車が静かにとまった。扉が開き、アラン様がすっと手をさしだしてきた。エスコート? ――本当に、こういう所、騎士らしい……
 アラン様の大きな手に左手をちょこんと乗せ、馬車から降りると……

「待ってたよ。私の聖女リオ」

 整列した騎士の先頭に、ジリオ様が立っていた。
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