がんじがらめの契約と狂愛〜聖女になれなかった異邦者の唯一〜

く〜いっ

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16 華やかな離宮生活

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 聖女はファリアーナ神の愛し子として神殿あずかりになるため、謁見後、シャルナ大神殿の離宮へ案内された。神殿の離宮が私の仮住まいになる。
 ちょっと豪華な客室生活かな? と思っていた私は、まるまるひとつ自由にしていいと案内された離宮の規模に驚いた。
 離宮内の聖堂には、唯一神ファリアーナ様の白亜の彫像が祀られ、天窓にはめこまれたステンドグラスから光がさしこみ、ファリアーナ神を虹色に輝かせていた。
 案内してくださった大司教猊下は、嬉しさをかくすことなく「他のどの国より、このファリアーナ神像は美しいのだ」と、自慢していた。
 確かに、ゆるく波打つ長い髪を持つ美しい女神像だった。

 シャルナ大神殿は、民が祈りを捧げにくる大聖堂。大司教猊下や司祭様たちが祈りを捧げる本殿。聖職者が生活する奥の院。修道士や修道女が生活する修道院。そして私が案内された離宮。そのほか衛兵や下働きの使用人が生活する建物や孤児院など、ちょっとした菜園などもあり、王宮とはまた違った、宗教共同国家の様相を呈していた。

 離宮は、いつか来臨してくれる来訪者を待ち、来訪者のためだけに建立された建物。シャルナ王国に来訪者が来臨したことはなかったため、このたび初めてその華麗な門を開いた。
 ――信仰心だけで磨きあげられた、主なき離宮は、つねに美しくととのえられていた。

「聖女様、シャルナ王国を選んでくださりありがとうございます」

 国王陛下から専属ハウスキーパー、メイド長を直接任命されたキャティが、うやうやしく礼をした。にこっと微笑んで、「『順応の義』まで時間がありません! さぁ、磨きますよ!」と、合図を送れば、城からつかわされたメイドたちと、神殿で用意されたお世話係の皆さんが、一糸乱れぬ連携をみせ私を浴槽にほおりこむ。
 髪にはよい匂いの香油がすりこまれ、浴槽は蜂蜜ミルク風呂! 彼女たちの魔法の手は、私を隅々までつるつるに磨きあげていく。

 「聖女様、寝てしまわれてもいいですよ」

 包帯をはずした手を慎重に揉みながら声をかけられたけれど……これは真剣にヤバイです。私だけが裸で、他人にお世話されるの、最初は抵抗があったのだけれど……高級エステみたい。……と、思ってしまったら、抵抗感が薄れました。人間、どこまでも堕落できる生き物なのですね……

 ――シャルナ王国の重鎮たちが議論し、『順応の義』の日程は、10日後に決まった。その頃には私の包帯も、「はずしても大丈夫そうだ……」と、城に住みこみの侍医が発言したからだ。
 おばぁ様と同じ薬師様。普段の仕事は、魔法の使いかたがまだ苦手な王族の子弟のために、念のためにいる閑職なのだそうだ。
 陛下や国の重鎮が集まる席に、初めて呼ばれた侍医は、可哀想なくらいブルブルふるえながら、私の診断結果を報告したと聞く。
 日付が決まっているから、メイドたちのやる気も最高潮なようで……磨きに、磨き、磨きつくされる日々がはじまった。

 怪我の完治は無理でも、包帯をはずせるぐらいまでには回復を! ……と、心をひとつにしたシャルナの重鎮たちは、治療時間もたっぷり取るよう! メイドたちに命令していた。

 円柱形に吊り下げられたレースの天蓋が、豪華なダブルベッドを薄くつつみこみ……甘い匂いの香が焚かれ、ランプの灯りは暗く、サイドテーブルには、ワイン? かな? と、レモナが入れられた冠水瓶と、用途不明のガラスの小瓶が置かれている。
 湯殿で磨かれ、脱ぎ着がしやすい夜着を着せられた私は、退室していくメイドたちを涙目で見送った。
 経験なくてもわかる。これは……きっと……初夜仕様ってやつ――――

 治癒魔法をかけに室内に通されたアラン様は、部屋の隅で膝を抱え座りこんでいた私を見つけ、眉をひそめた。――窓を開け、部屋の空気を入れ替えると香炉を持って出ていってしまった。廊下からキャティとなにやらもめている声が聞こえる。

「リオ様はなれていらっしゃらないのだから、今後こういうことはしないように! 俺が出て行くまでこの部屋には接近禁止だ!」

 そう、人の目が多いんだよね……この離宮……聞かれたら、は、恥ずかしいから……勇気をだしてアラン様にお願いしよう……

 戻ってきたアラン様は私を抱きあげると、寝台の上にそっと降ろした。

「リオ、治療をはじめよう」
「――ここは……」
「んっ?」
「――離宮ここは人が多いから……激しくしないで」

 そのままベッドに押し倒され、噛みつくような深い接吻で――わけがわからなくなった。
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