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26 アランの限界
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離宮のようすは異常だった。門を守っていた衛兵がいない。館内にメイドの姿が見えなく、どこか薄汚れている。ひどく散らかって見えるのは、床に脱ぎ捨てられた服がいたるところに散乱しているせいか?
どんよりと、濁った空気はひどく甘く、吐き気がするほどだ。――この甘い匂いは、幻惑の香か? 閨で気分を盛りあげるときに使う香を、なぜこんなに焚しめている?
飛び込んだリオの寝室の惨状に、思考が停止する。
――なんだこれは? なにをしている? こいつらは、なんだ?
「なんじゃこれは……どういうことじゃ……聖女様は? 聖女様の意向か?」
大司教猊下が、腰を抜かして座りこんだ。その言葉に返答する者は、誰もいない……
そもそも、奴らは、己の行為に夢中になっている。室内に飛び込んできた、俺たちに気づく者はいなかった。
――裸の女と数人の男が笑いながら円陣を組んでいる。男達はみずからの肉棒をしごき、己の欲を円陣に向かって吐き出していた。
「――はっ…………あっ……あっ…………んっ」
甘いこの声は、リオ? リオの姿を探し、視線を下げた。男たちの白濁で汚されているのは――リオ?
うつむいているリオの表情は見えない。乱れまくった黒い服は、かろうじてリオの体に巻きついているただの布のように見えた。リオは豊かな胸を惜しみなく揺らし、右手で桃色に色づいた突起を押しつぶしている。
ショーツは足先に引っかかっているだけの状態なのに、ストッキングとガーターベルトだけはしっかりとつけたままの扇情的な姿で、左手で密口を必死にこすっていた。
俺の聖女が、男の前で自慰している。密壷から垂れる愛液が尻をつたい、床に大きなシミをつくっていた。そして容赦なくかけられる男たちの欲望……髪に、胸に、腹に、密口に……あますところなく汚されていく。
やめろ! やめろ! やめろ! 俺の聖女を! リオを穢すな!!
「うおおおおぉぉぉぉぉ――――――――!」
叫び声と同時に、ひとりの男の肩をつかみ、後ろへ投げ飛ばした。
「リオ!」
つっ……と、リオが顔をあげる。なんだ? ひどく痩せた腫れた顔、切れた口元には広範囲に青あざができ、鼻血がそのまま乾いたようなあとがある。白濁に汚れた体にも、無数に残る暴行のあと。完治間際だったはずの右手も腫れあがっている。
――そして、その瞳に生気はなかった。
顔をあげたのは、たまたまか? 彼女は、甘い吐息を吐きながら、自慰行為に没頭していた。つたない動きで、腫れあがった手を必死に動かす。
「リオ!」
「きゃあ~ん! アラン様だ――!」
リオをマントでつつむのと、女が抱きついてくるのは同時だった。
「はなせ! これはどういうことだ! リオを拷問したのか!」
「アラン様! 抱いて! 抱いて~」
「ああ……なんたることか、その女が聖女様じゃと?」
うるさい女にも、うるさい猊下にも、いらつく。片手でリオを抱きかかえ、女を払う。尻餅をついた女のそばでカラン……っと、小瓶が音を立てた。
「こ、これは? 媚薬か? これを使ったのか!」
「……ん~、そう飲ませたの。ぜ~んぶ飲ませたの! この澄ました女が落ちるところを見たかったの。だってこいつ、アラン様を聖女だって騙した悪い奴なんだもの。役立たずの異邦者には、罰をあたえないとね」
なにを言ってる? 役立たずの異邦者? 確かほかにもそう言っていた奴がいた……
「異邦者? 誰のことじゃあ?」
猊下がわめき散らしている。うるさい、うるさい、思考が上手くまとまらない。少し黙っていてくれ……
それよりも媚薬を飲ませた? これは処女でも痛みがないように、密壷をほぐすときに使う塗り薬だ。これを飲ませた? リオのこの状態はこれのせいか! 早く薬を抜かないと!
リオを抱きあげ、立ちあがる。女がまた足にしがみついてきた。
「こいつはアラン様が気にする価値ない女よ~、修練館で下男に犯されまくった汚れた女! くっくっくっ……」
「修練館じゃと!」
猊下の怯えたような声に、違和感を覚えた。
「なんだ? その修練館というのは」
「…………」
猊下はブルブルふるえて答えない。視線を大司教猊下の登場で、全裸のまま平伏している男たちに向けた。
「修練館というのはなんだ」
「――し、使用人用の……閨……部屋です。メイド長様のご命令で、この女、あ、いえ、聖女様の部屋をそこへ移しました」
「そうよ。修練館にいる女は誰が抱いてもいいの。合意のうえのことだから。魔力を高めあう場所……」
パァアアアァァァンンン――――――――!
右手に光る結界石の腕輪が、払いのけた女の鼻の骨を砕くのと同時に、砕け散った。手の甲から女の血が、滴り落ちる。
「ギャアアアアアアアアァァァ! 痛い! 痛い! 私の、顔が! 鼻が! 治癒魔法! ち、治癒……痛い、効かない……痛い……治癒魔法!」
そうだ、こいつはメイド長だ。ラキアから一緒にやってきた、リオの世話係。痛みで治療が上手くいかず、のたうちまわる女を見下ろす。
「おまえ、リオの世話係がリオになにをした。全部話せ」
菓子を希望していたのは誰だ? ワインの注文をしたのは誰だ? 針子を呼んだのは一体誰だ? リオがこんなにやせ細り、暴行を受けているあいだに、リオの寝所に男を引きこんでいたのは誰だ?
わんわん泣きつづける女を睨む。
「……んっ」
ぐったりと俺に体を預けていたリオが、身じろぎした。
「んっ、あっ……」
甘い吐息を吐き、二の腕に乗せている尻をもぞもぞ動かす。太腿を少し開き、股のあいだから俺の手を引き出すと、ちょうどリオの秘部を掌でつつむような格好になった。そのまま俺の手を使いリオは自慰をはじめた。
節くれ立った男の指が気持ちいいのか? リオは甘い声をあげる。ぬかるんだ密壷が、指をするりと飲みこんだ。
っ! ……小さく息を飲む気配がして、リオの動きがとまる。どうしていいのかわからないように、呆然と自分の秘部を見下ろしている。きゅぅっ! と、密壷が指を締め出すと、リオはぽろぽろと泣き出した。
ダメだ、このままでは! リオの体から媚薬の効果を抜かなくては!
「猊下! その女の尋問はまかせます。おまえ! 湯殿の準備は!」
「あっ、湯殿は……その……」
ちっ、この離宮の惨状からいって湯殿もひどい有様だろう。
「聖女の体を清める! 一番近い、水場へ連れて行け! 速く!」
どんよりと、濁った空気はひどく甘く、吐き気がするほどだ。――この甘い匂いは、幻惑の香か? 閨で気分を盛りあげるときに使う香を、なぜこんなに焚しめている?
飛び込んだリオの寝室の惨状に、思考が停止する。
――なんだこれは? なにをしている? こいつらは、なんだ?
「なんじゃこれは……どういうことじゃ……聖女様は? 聖女様の意向か?」
大司教猊下が、腰を抜かして座りこんだ。その言葉に返答する者は、誰もいない……
そもそも、奴らは、己の行為に夢中になっている。室内に飛び込んできた、俺たちに気づく者はいなかった。
――裸の女と数人の男が笑いながら円陣を組んでいる。男達はみずからの肉棒をしごき、己の欲を円陣に向かって吐き出していた。
「――はっ…………あっ……あっ…………んっ」
甘いこの声は、リオ? リオの姿を探し、視線を下げた。男たちの白濁で汚されているのは――リオ?
うつむいているリオの表情は見えない。乱れまくった黒い服は、かろうじてリオの体に巻きついているただの布のように見えた。リオは豊かな胸を惜しみなく揺らし、右手で桃色に色づいた突起を押しつぶしている。
ショーツは足先に引っかかっているだけの状態なのに、ストッキングとガーターベルトだけはしっかりとつけたままの扇情的な姿で、左手で密口を必死にこすっていた。
俺の聖女が、男の前で自慰している。密壷から垂れる愛液が尻をつたい、床に大きなシミをつくっていた。そして容赦なくかけられる男たちの欲望……髪に、胸に、腹に、密口に……あますところなく汚されていく。
やめろ! やめろ! やめろ! 俺の聖女を! リオを穢すな!!
「うおおおおぉぉぉぉぉ――――――――!」
叫び声と同時に、ひとりの男の肩をつかみ、後ろへ投げ飛ばした。
「リオ!」
つっ……と、リオが顔をあげる。なんだ? ひどく痩せた腫れた顔、切れた口元には広範囲に青あざができ、鼻血がそのまま乾いたようなあとがある。白濁に汚れた体にも、無数に残る暴行のあと。完治間際だったはずの右手も腫れあがっている。
――そして、その瞳に生気はなかった。
顔をあげたのは、たまたまか? 彼女は、甘い吐息を吐きながら、自慰行為に没頭していた。つたない動きで、腫れあがった手を必死に動かす。
「リオ!」
「きゃあ~ん! アラン様だ――!」
リオをマントでつつむのと、女が抱きついてくるのは同時だった。
「はなせ! これはどういうことだ! リオを拷問したのか!」
「アラン様! 抱いて! 抱いて~」
「ああ……なんたることか、その女が聖女様じゃと?」
うるさい女にも、うるさい猊下にも、いらつく。片手でリオを抱きかかえ、女を払う。尻餅をついた女のそばでカラン……っと、小瓶が音を立てた。
「こ、これは? 媚薬か? これを使ったのか!」
「……ん~、そう飲ませたの。ぜ~んぶ飲ませたの! この澄ました女が落ちるところを見たかったの。だってこいつ、アラン様を聖女だって騙した悪い奴なんだもの。役立たずの異邦者には、罰をあたえないとね」
なにを言ってる? 役立たずの異邦者? 確かほかにもそう言っていた奴がいた……
「異邦者? 誰のことじゃあ?」
猊下がわめき散らしている。うるさい、うるさい、思考が上手くまとまらない。少し黙っていてくれ……
それよりも媚薬を飲ませた? これは処女でも痛みがないように、密壷をほぐすときに使う塗り薬だ。これを飲ませた? リオのこの状態はこれのせいか! 早く薬を抜かないと!
リオを抱きあげ、立ちあがる。女がまた足にしがみついてきた。
「こいつはアラン様が気にする価値ない女よ~、修練館で下男に犯されまくった汚れた女! くっくっくっ……」
「修練館じゃと!」
猊下の怯えたような声に、違和感を覚えた。
「なんだ? その修練館というのは」
「…………」
猊下はブルブルふるえて答えない。視線を大司教猊下の登場で、全裸のまま平伏している男たちに向けた。
「修練館というのはなんだ」
「――し、使用人用の……閨……部屋です。メイド長様のご命令で、この女、あ、いえ、聖女様の部屋をそこへ移しました」
「そうよ。修練館にいる女は誰が抱いてもいいの。合意のうえのことだから。魔力を高めあう場所……」
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右手に光る結界石の腕輪が、払いのけた女の鼻の骨を砕くのと同時に、砕け散った。手の甲から女の血が、滴り落ちる。
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菓子を希望していたのは誰だ? ワインの注文をしたのは誰だ? 針子を呼んだのは一体誰だ? リオがこんなにやせ細り、暴行を受けているあいだに、リオの寝所に男を引きこんでいたのは誰だ?
わんわん泣きつづける女を睨む。
「……んっ」
ぐったりと俺に体を預けていたリオが、身じろぎした。
「んっ、あっ……」
甘い吐息を吐き、二の腕に乗せている尻をもぞもぞ動かす。太腿を少し開き、股のあいだから俺の手を引き出すと、ちょうどリオの秘部を掌でつつむような格好になった。そのまま俺の手を使いリオは自慰をはじめた。
節くれ立った男の指が気持ちいいのか? リオは甘い声をあげる。ぬかるんだ密壷が、指をするりと飲みこんだ。
っ! ……小さく息を飲む気配がして、リオの動きがとまる。どうしていいのかわからないように、呆然と自分の秘部を見下ろしている。きゅぅっ! と、密壷が指を締め出すと、リオはぽろぽろと泣き出した。
ダメだ、このままでは! リオの体から媚薬の効果を抜かなくては!
「猊下! その女の尋問はまかせます。おまえ! 湯殿の準備は!」
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