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スチュワートは家令

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聡明なる、お嬢様ならば
覚えていらっしゃいますでしょう
そうでございます。

舞踏ホールの壁にズラリと
並びました肖像画。
歴代のカリスマバトラー様々に
ございます。

『モーリス様は、肖像画の
   方々が、おしゃべりになるのを
   ご存じですか?あの、こちらの
   方々も意識体ではないかと。』

わたくしは、
モーリス様に
提案したのでございます。

『リドランス!絵がしゃべる
   っていうのか?ほんとかよ!』

マキャルナは初耳のようです。
が、

『おや?いつの間に、そんな
  珍しい絵が飾られたんだ?私
  の時代には、なかったものだ。』

意外にもモーリス様も
御存じなかったのでございます。
では、
あの肖像画の先輩方も
最近お越しになったのでしょうか

『間違いなく、あの肖像画
   は、おしゃべりされます。彼ら 
   にモーリス様が探される方の
   意識体を聞いてはどうかと。』

『同じ意識体ならば、何か知って
   いるのかもしれない、という
   ことだな。ならば、試してみる
   に決まっている。行こうか。』

モーリス様について、
マキャルナとホールを抜けて
控えの間を抜けて
奥へ進んで参ります。

お嬢様、
ホールはエントランスで
ございまして
クロークや
わたくしどもの宿舎になります
元は騎士や従僕、女官の部屋の
棟に続く通路も
こちらの壁面より
続いております。

一体、どのような王族が
この城にかつて
いらっしゃったので
ございましょうか?

まだ入学して2日の
わたくしには、
皆目検討がつきません。

『確かに、額が並んでいる。
   私の時は、舞踏ホールらしく、
   神話のレリーフだったが。
   まあ、方針が変わったのか。
   いい。マキャルナ、灯火を!』

『え?!オレ?もう。はい、はい
   わかりましたよ、先輩。
   ᛏᛖᚱᚨᛋᛖ →
   ティエラアンスシゲエー!』

さすが
マキャルナ。

舞踏会ホール全体に
キャンドルファイアーを飛ばして
壁に並ぶ肖像画を
照らしたのでございます。

ところが、お嬢様!!
肖像画を見ますと、
中に人がいらっしゃらないので
ございます!

『リドランスー、誰もいない
  じゃないかー。どーなってんの』

『そんな事言われても。
   僕にもわからないよ。寝てる
   のかなあ?呼んでみますか?』

マキャルナが非難めいた
眼差しを
わたくしめにしますが、
お嬢様!わたくしリドランスにも
訳がわかりません!
モーリス様に
伺ってみますと、

『これで、この肖像画が、
   なんらかの意識体である可能性
   は、出てきたが、誰もいない
   とはな。さてどうしたものか』

これは手詰まりでございます。
モーリス様も顎に片手を
当てられ考えて
いらっしゃいます。

『おーーい!肖像画の皆さんー』

突然マキャルナがホールに
叫びます!

『ちょ!マキャルナ!』

『全然誰も出てこないなあ、
   これは、あれですよ!予定
   どおり新しい3つの七不思議を
   しらみ潰しに当たるって事
   だよな!あ、ですよね!』

『もう、マキャルナは、突然
   なんだから。ああ、ベルとか
   あればいいのになあ。って、
   僕たちがベルなんかで呼んだら
   肖像画先生たちは、怒るかな』

『そんな事言っても、アカデミー
   は、バトラーばっかだろ?
   それに、オレ達よりも先生に
   お願いすんのか?そんな事も
    出来るわけがないだろ?』

『うーん。マキャルナ、先生も
   みんなバトラーだよ。やっぱり
   ここは『スチュワードか。』』

う、モーリス様が
わたくしに被せてこられました。
お嬢様、、

『という事は、ケイマンか。
   今頃ナイトキャップも回って
   夢心地だろう。丁度いい。』

さっきまで考え事をされて
いたモーリス様が
突然、映像通話を
始められました。

一応、マキャルナとわたくしは
モーリス様の反対側へ
移動いたします。

通話のお相手に、
わたくし達が見えないように
ございます。

『ケイマンって誰だよ?』

『僕に聞かないでよ。』

モーリス様の映像通話機は
お嬢様と同じ
コンパクト型でございましたよ。

『ケイマン様、お久しぶりに
   ございます。モーリスです。』

開かれたお相手、
だいぶお年をめして見えます
ホログラムを
マキャルナが見まして
驚いております。
なんと!

『あれ?寮管さんだよね。』

『ケイマンって、寮管さんだ!
   ってことは元スチュワード
   って事だよなリドランス!』

そうなのでございます。
ケイマンなる人物は
わたくし達宿舎の寮管さんなので
ございます!

『うんが?おまえさんは、
   モーリスかい? でぇした?
   まぁた、ガラス割ったのか?』

ただ、寮管さんこと、
ケイマン様は、かなり酔って
いらっしゃいますね。

『いや、ガラスは割ってないんだ
   けど、ケイマン様に、バトラー
   ベルでフットマン達を呼んで、
   ある方を探してもらいたいん
   ですよ。このまま、通信でも
   かまいませんから、号令を。』

『面倒じゃなぁ。号令かけるから
  あとは、モーリスが整えりゃあ
  ええだろう。じゃあ、ええか。』

そうケイマン様がおっしゃり、
モーリス様が、
通信機のコンパクトを
床に置きますと、
映像のケイマン様は等身大の
大きさで空中に投影されます!
こんな事もできるのは
リドランスは、全く知りません!

等身大にホログラムされた
ケイマン様は、
酔ってらっしゃいますが、
バトラーベルを片手にされますと
たちまち
凛とした佇まいと
伸びた姿勢をされてました。

『チリンチリン♪』

軽やかなシルバーチャイムが
ケイマン様の掌の中で
鳴りまして、

『スチュワード、ケイマン・
   ドルガーが、号令する!!
   全員、今すぐ、集合!!』
  
そうしましたら、
さっきまで誰もいないホールで
額だけ並んでいました
舞踏会場に

途端!

『『『『Yes now!!』』』』

応えの声と

肖像画先生達が並んでいらした
のでございます。


         
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