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断罪編
介錯人という参謀側近
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イグザムがテラスから飛び出した後。
直ぐ様ウイルザードも、エリオットと共にイグザムの後を追おうとした。
しかし眼下に広がる森林に視界を阻まれ、飛び出す事は叶わなかった。
「殿下!!あ、あれは一体何でしょうか!?」
仕方なく佇むウイルザードを呼びながら、エリオットがエンルーダ領の上空を俄に覆い始めた、見慣れぬ『雲』を指で示す。
「な、あ、!!」
見る間に上空を覆い尽くす規模で、『光輝く雲』が地上から吹き上がり広がる。
其の雲が、まるで大地から伸び逝く大樹の様にもみえる光景だ。
ウイルザードとエリオットは突然現れた物体に、テラスに縫いつ行けられた如く空を見つめた。
「核石雲ですぞ。初めて見られたでしょうな。先代領主が戦で死した時は、まだ殿下とてお生まれになっておらんのですから。」
「核石雲、、あれが。」
2人の後ろからアースロがテラスに出て来、其の雲を悲し気に見上げながら語る。
気が付けば先程部屋に入って来た参謀側近も、テラスに出ると胸に片手を当てた。
エンルーダ式の敬礼のポーズに、ウイルザードも同じポーズをする。
「領主の核石とは、、?」
眼下に広がる森の先。
エンルーダ領の城下から、幾筋もの火の手が見え始める中、4人が並んで雲を見る形でウイルザードがアースロに問う。
「厳密にいえば歴代領主の核石に刻まれし記憶や情報を、隠匿した果てに立ち上がる命の雲というのでしょうな。」
ウイルザードを見る事無くアースロが答えた言葉は、暗に自分の兄が戦士したのだと示す。
辺境とはいえ貴族の系譜を頭に入れているウイルザードが、拳を握りしめた。其のウイルザードの姿から察したエリオットが思わずアースロに聞き返す。
「戦場で上がれば、、領主が落ちたという事ですか、、、」
けれどもエリオットの言葉に返事をするは、不躾な視線を始終ウイルザードに向けていたアースロの参謀側近だった。
「本来ならば墓守りの儀式で逝かせるが筋。しかし、戦で儀式は送れんでしょ。其の際はエンルーダ家の縁者が介錯を行い、あのように核石を消滅させるしかない。」
冷ややかに言い返すと、彼は耳に付けた魔道通信で報告を受け始めた。
まるで二度と会話をしたくないとも取れる態度に、アースロが続きを請け負う。
「ですから当主になる運命を背負う者は、幼少期から参謀側近を付けるのですよ。前線に相対して戦い、最期も介錯を委ねる故に。」
「それは、、」
ウイルザードがアースロの言葉から、参謀側近を見た。きっとアースロの介錯人は此の人物なのだろうという様に。
するとアースロが目を細めてウイルザードを揶揄する。
「まあ、殿下には其の従者になりますかな?」
「「・・・・」」
領主となったアースロ程になれば、ウイルザードとエリオットが急拵えの従者関係だと見抜いているはず。2人はアースロ―に返す言葉無く、ただ黙るしか無い。
テラスから見える火の手は、ますます延焼範囲を広げていく。このままではエンルーダ全体が火の海に包まれる勢い。
ウイルザードとエリオットが、緊張した面持ちでテラスから階下を見ていると、開け放たれた応接室の入口に人影が立った。
「お館様、メーラにございます。」
「入れ。」
そうして現れた人物は意外にも女性で、落ち着いた物腰。
けれどもウイルザードは一目見た瞬間に相手を理解した。アースロの後妻。
とはいえ、イグザム達の元乳母であり、タニアの実母だとまでは思いつかない。
「お客人の前にて失礼致します。緊急時でございます故、挨拶は、、」
「よい。続けられよ。」
皇族を前に正式な礼儀を、今は取れない事を詫びる相手に、ウイルザードは気不味気な表情を見せるも、片手を上げて許しの言葉を言い渡した。
肝が据わった女性。
そんな印象をウイルザードは持った。そして決して華がある雰囲気では無いが、人好きする顔立ちを何処かで見たがする。
本来はタニアに似ていると思うのだろうが、ウイルザードの記憶にタニアの面影は薄い。
それも其のはず。そもそもウイルザード自身は、パメラの進言を酔った様に鵜呑みにし、タニア・エンルーダとは学園で接点など無かったのだから。
アースロはウイルザード達を室内に戻る様に促しながら、入って来たメーラに言葉少なく単語を紡ぐ。
「メーラ、結界を頼む。後で。出る。」
「、、かしこまりました。、、御武運を。失礼致しました。」
そうすればメーラも短く答えを返し、踵を返す。
後妻とはいえ、乳母というなれば完全に政略的婚姻で、夫婦には到底見えないとウイルザードとエリオットは、遣り取りから感じた。
其の証拠に、夫が前線に出るといっているにも関わらず、メーラの表情は驚くほど凪いでいたのだ。
「アミカス、酋長達はどうだ。」
メーラが応接室から退出をすると、アースロが険しい目つきで参謀側近の名を呼んだ。
「間もなく狼煙が上がると。」
耳の魔道通信に片手を当てて聞いていたアミカスがアースロに頷いて答える。
奇襲を掛けられ正に領土が落ち逝かんとする割には、緊急招聘をするわけでも無く、作戦会議をする姿も無い。
戦闘中というには、背景に火の手が上がる光景を除くならば、考えられない程冷静な雰囲気がある。
「すまんが伴侶殿に会ってこい。」
が、アースロがアミカスに放った台詞に自体は深刻だとウイルザードは悟った。
「は?今更ですな。出られますか。」
更に呆気にとられるウイルザード達に、アースロが次に下した言葉が、なけなしの騎士道心を折ってきた。
「殿下、皇帝隊を城から出さない様に願いたい、勿論貴殿方もだ。」
戦力外通告。
自分たちを非戦闘員扱いをしてきたアースロに、ウイルザードどころか、思わずエリオットでさえ叫ぶ。
「いや、搬送をする隊が墓守りの建屋に!彼等も戦闘中です!!隊の陣形を確認しなければなりません!ですよね殿下!!」
「残念だが其方の隊は無理でしょう?あの雲が上がったのならば、もう全滅していると見ていいんですよ。」
アミカスが眉間に皺をよせつつも、わざとらしい笑顔でエリオットに宣言した。
「そんな、分からないでしょう!!」
「次の段階に移ったという事です!従者殿。」
アースロやアミカスも、普段から幾筋もの戦闘展開をしてきているが故に、決断が速いだけなのだと聞かされた言葉でウイルザードは理解した。
そこで敢えてアースロに確認をする。
「、、エンルーダ当主、何をされるつもりか。」
静かに問うウイルザードに、真意が読めない無表情な台詞を、アースロが寄越した。
「魔獣戦に入るだけですな。」
反面、言い放たれた言葉にウイルザードが絶句する。
「は?本気か?」
応接室に腰を据えていたウイルザードが、両の手でテーブルを激しく一撃した。
其の瞬間アミカスがウイルザードが叩いた両手の真ん中を拳で撃ち抜き、激情を打ち返す!
「じゃあ、貴方方は何を此の地に呼び込んだか!!見ろ、もう奇襲などの話では無い。」
アミカスが振り返りテラスの向こうで赤く染まるエンルーダの空を示した。
「く。」
「殿下。」
『ポーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンン』
直後、エンルーダ領全域に高く響く狼煙が幾つも打ちあがる!!
其の白い煙を窓越しに見ながらアースロがウイルザードに諭す様に、静かに告げた。
「これより自領戦で、魔獣戦を展開。」
「や、そ、それはっ!!」
事態を呑み込み、顔面を蒼白にしたエリオットが否を返すが、
「我が地が焼土と化した今、最善の策を打つだけ。」
アースロに続いてアミカスが、即座にエリオットの言葉を退ける。
「城はこれから我が伴侶が結界の切り替えを行います故、我々は失礼する。」
徐に2人は立ち上がると、応接室の外へと歩みを進めた。
もう、ウイルザードとエリオットなぞ眼中に入れもしない素振りだ。それでもウイルザードが立ち上がり、2人に詰め寄った。
「じゃあ、こんな時に何処へいかれるのか!!」
もう最初から最後まで招かざる客扱いは想定済。其の証拠に、もとより茶の一つも出されていないのだ。しかもウイルザードが王都シャルドーネから連れて来た皇帝部隊も、意味が無いと捨て置かれている。
墓守りの建屋に差し向けた部隊の、生存者確認さえ必要なしと判断された。
「知れた事。後に戦闘へ。切り替えになれば城から出る事は叶いませぬから。」
ならばもう一つ食い下がらねばならない事がウイルザードにはある!!
「待ってくれ!!本当に貴殿の令嬢は死んだのか!!」
ウイルザードは取り繕うのも辞めて、アースロの背中に向かって叫んだ!!
「殿下!!やめてください。」
エリオットがウイルザードの言葉を止めようとするのを搔い潜って、アースロの肩をウイルザードが掴む。
例え皇族であっても、年長者への礼着に反する。
其の証拠に、肩に掛けたウイル―ザードの手をアースロは無下に払いのけ、さっきまでの冷静さを忘れたかの形相で、睨んできた。
「戯言を。殿下、血迷い過ぎでは?」
「!!痣だ、薔薇の痣が付いてなかったか?!」
「そもそも痣がどうされた!!」
それでもウイルザードは引かない。落とされた絶対零度の声色に気圧されつつも、更に重ね聞く。
「薔薇の痣を持つ乙女が、私の想い人なのだ。」
パメラだと思って抱いた女の足付け根にあった痣。ウイルザードは興奮をしてか、顔を赤らめ言い切るが、エリオットは
「それが婚約者の令嬢なのではないですか?!!意味が分かりませんよ殿下!!やめましょう!」
パメラ嬢の恥ずかしい秘密だと考えてウイルザードを椅子に抑え込んだ。が、アースロの言葉が更にウイルザードへと投げられた。
「じゃあ、間違われて聖紋など禁忌を刻まれましたか。ならば殿下は聖女と契りを交わされたのでしょうな。それはもうこの世の者では無いという事でしょう。」
直ぐ様ウイルザードも、エリオットと共にイグザムの後を追おうとした。
しかし眼下に広がる森林に視界を阻まれ、飛び出す事は叶わなかった。
「殿下!!あ、あれは一体何でしょうか!?」
仕方なく佇むウイルザードを呼びながら、エリオットがエンルーダ領の上空を俄に覆い始めた、見慣れぬ『雲』を指で示す。
「な、あ、!!」
見る間に上空を覆い尽くす規模で、『光輝く雲』が地上から吹き上がり広がる。
其の雲が、まるで大地から伸び逝く大樹の様にもみえる光景だ。
ウイルザードとエリオットは突然現れた物体に、テラスに縫いつ行けられた如く空を見つめた。
「核石雲ですぞ。初めて見られたでしょうな。先代領主が戦で死した時は、まだ殿下とてお生まれになっておらんのですから。」
「核石雲、、あれが。」
2人の後ろからアースロがテラスに出て来、其の雲を悲し気に見上げながら語る。
気が付けば先程部屋に入って来た参謀側近も、テラスに出ると胸に片手を当てた。
エンルーダ式の敬礼のポーズに、ウイルザードも同じポーズをする。
「領主の核石とは、、?」
眼下に広がる森の先。
エンルーダ領の城下から、幾筋もの火の手が見え始める中、4人が並んで雲を見る形でウイルザードがアースロに問う。
「厳密にいえば歴代領主の核石に刻まれし記憶や情報を、隠匿した果てに立ち上がる命の雲というのでしょうな。」
ウイルザードを見る事無くアースロが答えた言葉は、暗に自分の兄が戦士したのだと示す。
辺境とはいえ貴族の系譜を頭に入れているウイルザードが、拳を握りしめた。其のウイルザードの姿から察したエリオットが思わずアースロに聞き返す。
「戦場で上がれば、、領主が落ちたという事ですか、、、」
けれどもエリオットの言葉に返事をするは、不躾な視線を始終ウイルザードに向けていたアースロの参謀側近だった。
「本来ならば墓守りの儀式で逝かせるが筋。しかし、戦で儀式は送れんでしょ。其の際はエンルーダ家の縁者が介錯を行い、あのように核石を消滅させるしかない。」
冷ややかに言い返すと、彼は耳に付けた魔道通信で報告を受け始めた。
まるで二度と会話をしたくないとも取れる態度に、アースロが続きを請け負う。
「ですから当主になる運命を背負う者は、幼少期から参謀側近を付けるのですよ。前線に相対して戦い、最期も介錯を委ねる故に。」
「それは、、」
ウイルザードがアースロの言葉から、参謀側近を見た。きっとアースロの介錯人は此の人物なのだろうという様に。
するとアースロが目を細めてウイルザードを揶揄する。
「まあ、殿下には其の従者になりますかな?」
「「・・・・」」
領主となったアースロ程になれば、ウイルザードとエリオットが急拵えの従者関係だと見抜いているはず。2人はアースロ―に返す言葉無く、ただ黙るしか無い。
テラスから見える火の手は、ますます延焼範囲を広げていく。このままではエンルーダ全体が火の海に包まれる勢い。
ウイルザードとエリオットが、緊張した面持ちでテラスから階下を見ていると、開け放たれた応接室の入口に人影が立った。
「お館様、メーラにございます。」
「入れ。」
そうして現れた人物は意外にも女性で、落ち着いた物腰。
けれどもウイルザードは一目見た瞬間に相手を理解した。アースロの後妻。
とはいえ、イグザム達の元乳母であり、タニアの実母だとまでは思いつかない。
「お客人の前にて失礼致します。緊急時でございます故、挨拶は、、」
「よい。続けられよ。」
皇族を前に正式な礼儀を、今は取れない事を詫びる相手に、ウイルザードは気不味気な表情を見せるも、片手を上げて許しの言葉を言い渡した。
肝が据わった女性。
そんな印象をウイルザードは持った。そして決して華がある雰囲気では無いが、人好きする顔立ちを何処かで見たがする。
本来はタニアに似ていると思うのだろうが、ウイルザードの記憶にタニアの面影は薄い。
それも其のはず。そもそもウイルザード自身は、パメラの進言を酔った様に鵜呑みにし、タニア・エンルーダとは学園で接点など無かったのだから。
アースロはウイルザード達を室内に戻る様に促しながら、入って来たメーラに言葉少なく単語を紡ぐ。
「メーラ、結界を頼む。後で。出る。」
「、、かしこまりました。、、御武運を。失礼致しました。」
そうすればメーラも短く答えを返し、踵を返す。
後妻とはいえ、乳母というなれば完全に政略的婚姻で、夫婦には到底見えないとウイルザードとエリオットは、遣り取りから感じた。
其の証拠に、夫が前線に出るといっているにも関わらず、メーラの表情は驚くほど凪いでいたのだ。
「アミカス、酋長達はどうだ。」
メーラが応接室から退出をすると、アースロが険しい目つきで参謀側近の名を呼んだ。
「間もなく狼煙が上がると。」
耳の魔道通信に片手を当てて聞いていたアミカスがアースロに頷いて答える。
奇襲を掛けられ正に領土が落ち逝かんとする割には、緊急招聘をするわけでも無く、作戦会議をする姿も無い。
戦闘中というには、背景に火の手が上がる光景を除くならば、考えられない程冷静な雰囲気がある。
「すまんが伴侶殿に会ってこい。」
が、アースロがアミカスに放った台詞に自体は深刻だとウイルザードは悟った。
「は?今更ですな。出られますか。」
更に呆気にとられるウイルザード達に、アースロが次に下した言葉が、なけなしの騎士道心を折ってきた。
「殿下、皇帝隊を城から出さない様に願いたい、勿論貴殿方もだ。」
戦力外通告。
自分たちを非戦闘員扱いをしてきたアースロに、ウイルザードどころか、思わずエリオットでさえ叫ぶ。
「いや、搬送をする隊が墓守りの建屋に!彼等も戦闘中です!!隊の陣形を確認しなければなりません!ですよね殿下!!」
「残念だが其方の隊は無理でしょう?あの雲が上がったのならば、もう全滅していると見ていいんですよ。」
アミカスが眉間に皺をよせつつも、わざとらしい笑顔でエリオットに宣言した。
「そんな、分からないでしょう!!」
「次の段階に移ったという事です!従者殿。」
アースロやアミカスも、普段から幾筋もの戦闘展開をしてきているが故に、決断が速いだけなのだと聞かされた言葉でウイルザードは理解した。
そこで敢えてアースロに確認をする。
「、、エンルーダ当主、何をされるつもりか。」
静かに問うウイルザードに、真意が読めない無表情な台詞を、アースロが寄越した。
「魔獣戦に入るだけですな。」
反面、言い放たれた言葉にウイルザードが絶句する。
「は?本気か?」
応接室に腰を据えていたウイルザードが、両の手でテーブルを激しく一撃した。
其の瞬間アミカスがウイルザードが叩いた両手の真ん中を拳で撃ち抜き、激情を打ち返す!
「じゃあ、貴方方は何を此の地に呼び込んだか!!見ろ、もう奇襲などの話では無い。」
アミカスが振り返りテラスの向こうで赤く染まるエンルーダの空を示した。
「く。」
「殿下。」
『ポーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンン』
直後、エンルーダ領全域に高く響く狼煙が幾つも打ちあがる!!
其の白い煙を窓越しに見ながらアースロがウイルザードに諭す様に、静かに告げた。
「これより自領戦で、魔獣戦を展開。」
「や、そ、それはっ!!」
事態を呑み込み、顔面を蒼白にしたエリオットが否を返すが、
「我が地が焼土と化した今、最善の策を打つだけ。」
アースロに続いてアミカスが、即座にエリオットの言葉を退ける。
「城はこれから我が伴侶が結界の切り替えを行います故、我々は失礼する。」
徐に2人は立ち上がると、応接室の外へと歩みを進めた。
もう、ウイルザードとエリオットなぞ眼中に入れもしない素振りだ。それでもウイルザードが立ち上がり、2人に詰め寄った。
「じゃあ、こんな時に何処へいかれるのか!!」
もう最初から最後まで招かざる客扱いは想定済。其の証拠に、もとより茶の一つも出されていないのだ。しかもウイルザードが王都シャルドーネから連れて来た皇帝部隊も、意味が無いと捨て置かれている。
墓守りの建屋に差し向けた部隊の、生存者確認さえ必要なしと判断された。
「知れた事。後に戦闘へ。切り替えになれば城から出る事は叶いませぬから。」
ならばもう一つ食い下がらねばならない事がウイルザードにはある!!
「待ってくれ!!本当に貴殿の令嬢は死んだのか!!」
ウイルザードは取り繕うのも辞めて、アースロの背中に向かって叫んだ!!
「殿下!!やめてください。」
エリオットがウイルザードの言葉を止めようとするのを搔い潜って、アースロの肩をウイルザードが掴む。
例え皇族であっても、年長者への礼着に反する。
其の証拠に、肩に掛けたウイル―ザードの手をアースロは無下に払いのけ、さっきまでの冷静さを忘れたかの形相で、睨んできた。
「戯言を。殿下、血迷い過ぎでは?」
「!!痣だ、薔薇の痣が付いてなかったか?!」
「そもそも痣がどうされた!!」
それでもウイルザードは引かない。落とされた絶対零度の声色に気圧されつつも、更に重ね聞く。
「薔薇の痣を持つ乙女が、私の想い人なのだ。」
パメラだと思って抱いた女の足付け根にあった痣。ウイルザードは興奮をしてか、顔を赤らめ言い切るが、エリオットは
「それが婚約者の令嬢なのではないですか?!!意味が分かりませんよ殿下!!やめましょう!」
パメラ嬢の恥ずかしい秘密だと考えてウイルザードを椅子に抑え込んだ。が、アースロの言葉が更にウイルザードへと投げられた。
「じゃあ、間違われて聖紋など禁忌を刻まれましたか。ならば殿下は聖女と契りを交わされたのでしょうな。それはもうこの世の者では無いという事でしょう。」
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