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大蛇1 涼鱗視点
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私はベッドに半身を起こし、茫然として隣を見つめた。
一緒に寝ていたはずのカジャルがいない。
いつ頃いなくなったのか……私としたことが。
長い溜息をついて時計を見る。
まだ明け方だ、外はまだ暗い。
おとなしく自宅に帰ったとは思えない。
あの様子なのだ、もしかしてお嫁様をねら……いや、さすがにそれはないだろう。
そういう気持ちを潰すためにきちんと話したはずだ。
お嫁様がどれほど蘭紗にとって大事なのかということを。
だとすれば……
「……出奔か……最悪だねぇ」
私は目を閉じて昨夜の彼を思い出す。
震えるだけで何もできないカジャルを思い出して胸が痛くなる。
私はのろのろとベッドを出て鈴を鳴らした。
しばらくすると侍女が少し慌ててやってきた。
「ああ、早くからすまないね、蘭紗に会いに行かねばならなくなったのでね、報せてほしいんだ、それから私の準備を手伝ってくれるかい?」
侍女は一瞬ポケッとしたがハッとなって「もちろんでございます」と言いテキパキとした動きを見せた。
まずは護衛に触れを出し城に向かわせると、私の装束を着付けてくれ髪を結ってくれた。
私の長い髪は久しぶりに結われ、翡翠の珠が付いた紗の紐を付けた。
護衛達は私が外へ出ることに驚いた様子ではあるが、しっかりと準備を整え待機していた。
「陛下より即座に返答がございまして、お待ち申し上げていると」
「そう?まあ、返事なくても行くけどね」
フっと笑った私に護衛の緊張が解けたようだ。
「では、私が先でいい?」
私の後ろに続く護衛を見やり告げて、雨を避ける防御壁を展開しスッと飛び上がった。
久しぶりの飛翔は気持ちよく、魔力が数年前より上がっているのがわかる。
私はわざと大きな魔力を使わない生活をしているのだ。
蛇族は長寿で年を増すごとに魔力が増大していくのだが、魔力を使わず休んでいる時間が長ければその分強くなる。
ふと後ろを振り向き、さっと森を見下ろすが何も見つけられない。
それはそうだ。
うっそうとした森なのだから、人が歩いていても見えやしない。
だが一縷の願いを込めて私は街につながる森をじっと観察する。
「涼鱗様?」
強い雨脚の中、空中で止まり森を伺う私を不思議そうに見つめる護衛たち。
私は安心させるように微笑んだ。
「ああ、久しぶりなもので、ちょっとね」
そのうち巨大な城の最上階60階に到着した。
空の入場門が開き、触れを聞いて待っていてくれる侍従がいる。
私は軽く装束を直し、するりと門に入った。
「涼鱗様、お待ちしておりました。陛下はお部屋でございます」
「すまないね、こんな時間に。急用でね」
侍従は微笑みを絶やさず私を丁寧に案内していく。
奥の私室にいた国王は不機嫌な様子で私を迎えた。
感情を出してくるなんて、相変わらずかわいいじゃないか。
「涼鱗、どうした」
「蘭紗、カジャルが出奔したようだ」
「は?」
私は前置きを全部省いて伝えた。
早く捜索隊を放ってほしくて。
「お前、2年ぶりに会ったと思えばなにを」
「……昨日朝早く、私のところへ来たんだけどね、お嫁様のことを教えてほしいってね。で、私のわかることはすべて教えたんだ。まあ、案の定取り乱してしまってね、そのまま一日私のベッドに寝かせたんだ、ゆうべは添い寝した」
蘭紗は目を見開いて私を見つめる。
「お前のベッドに?」
私は眉を片方だけ上げて皮肉を言った。
「もう君のモノではないんじゃないの?」
蘭紗はツッと視線を外し、ドカっとソファに座って私にも座るよう促した。
「早く探してあげてよ」
「そうだな、それが事実ならだが、帰宅しただけではないのか?」
「ねえ、蘭紗さあ、私のカンを疑うの?」
蘭紗は厳しい横顔を見せた。
元から美しい男だが、今や輝かんばかりのオーラを放っているようだ。
……これがお嫁様効果なのか
「らんじゃさま……あ」
スッと障子が開き、小柄な少年が見えた。
少年は私を見て驚いてビクッと体を震わせ、困ったようにもう一度蘭紗を見る。
私がいるとは思わなかったのだろう。
「ああ、薫起きたのか?おいで。紹介するよ」
「あ……はい」
少年は細い体に薄い美しい生地の着物を着て腰にサッシュを巻いている。
サッシュの巻かれた腰の細さといったら……
肩まで伸びた艶のある美しい髪も潤う瞳も綺麗な漆黒だ。
色白な顔立ちは中性的で、凛とした強さを秘めた存在感が目を惹く。
これはこれは……手放せないですね。
「おや、時の人が登場ですね、私はラハーム王国の第4王子の涼鱗。あなたが薫様なのですね」
「え、様なんてやめてください」
薫は蘭紗の腕にからめとられ額に口づけを受け、隣にピタリと座らされ恥ずかしそうにしている。
「しかし、私は他国の王族だからね、他になんて呼べばいいのか」
「薫でいいですよ、ねえ蘭紗様」
蘭紗は一瞬嫌そうな顔をしたが、まあいいだろうと言った。
「それでは薫、よろしくね。仲良くしてくれたらうれしいよ」
「はい、よろしくお願いします……それと、お話のお邪魔してしまってごめんなさい」
「いいんだよ薫、蘭紗、このまま話すね」
「ああ、カジャルのことだが、お前の言うことが確かなら千里眼を使うしかないな、いつ出て行ったのかわからないんだから、今頃どこにいるのか検討もつかん」
「その通りだねえ、傍にいながら申し訳ないよ」
「だが、薫がここに来たことで城の衛兵は増やしているんだ。カジャルが飛翔を使ったなら、あれらが見つけているだろうし」
「私も徒歩だと思うよ、目立ちたくないだろうしね」
「うむ」
ふと窓を見た、叩きつけるように降る雨はまだ止みそうになかった。
一緒に寝ていたはずのカジャルがいない。
いつ頃いなくなったのか……私としたことが。
長い溜息をついて時計を見る。
まだ明け方だ、外はまだ暗い。
おとなしく自宅に帰ったとは思えない。
あの様子なのだ、もしかしてお嫁様をねら……いや、さすがにそれはないだろう。
そういう気持ちを潰すためにきちんと話したはずだ。
お嫁様がどれほど蘭紗にとって大事なのかということを。
だとすれば……
「……出奔か……最悪だねぇ」
私は目を閉じて昨夜の彼を思い出す。
震えるだけで何もできないカジャルを思い出して胸が痛くなる。
私はのろのろとベッドを出て鈴を鳴らした。
しばらくすると侍女が少し慌ててやってきた。
「ああ、早くからすまないね、蘭紗に会いに行かねばならなくなったのでね、報せてほしいんだ、それから私の準備を手伝ってくれるかい?」
侍女は一瞬ポケッとしたがハッとなって「もちろんでございます」と言いテキパキとした動きを見せた。
まずは護衛に触れを出し城に向かわせると、私の装束を着付けてくれ髪を結ってくれた。
私の長い髪は久しぶりに結われ、翡翠の珠が付いた紗の紐を付けた。
護衛達は私が外へ出ることに驚いた様子ではあるが、しっかりと準備を整え待機していた。
「陛下より即座に返答がございまして、お待ち申し上げていると」
「そう?まあ、返事なくても行くけどね」
フっと笑った私に護衛の緊張が解けたようだ。
「では、私が先でいい?」
私の後ろに続く護衛を見やり告げて、雨を避ける防御壁を展開しスッと飛び上がった。
久しぶりの飛翔は気持ちよく、魔力が数年前より上がっているのがわかる。
私はわざと大きな魔力を使わない生活をしているのだ。
蛇族は長寿で年を増すごとに魔力が増大していくのだが、魔力を使わず休んでいる時間が長ければその分強くなる。
ふと後ろを振り向き、さっと森を見下ろすが何も見つけられない。
それはそうだ。
うっそうとした森なのだから、人が歩いていても見えやしない。
だが一縷の願いを込めて私は街につながる森をじっと観察する。
「涼鱗様?」
強い雨脚の中、空中で止まり森を伺う私を不思議そうに見つめる護衛たち。
私は安心させるように微笑んだ。
「ああ、久しぶりなもので、ちょっとね」
そのうち巨大な城の最上階60階に到着した。
空の入場門が開き、触れを聞いて待っていてくれる侍従がいる。
私は軽く装束を直し、するりと門に入った。
「涼鱗様、お待ちしておりました。陛下はお部屋でございます」
「すまないね、こんな時間に。急用でね」
侍従は微笑みを絶やさず私を丁寧に案内していく。
奥の私室にいた国王は不機嫌な様子で私を迎えた。
感情を出してくるなんて、相変わらずかわいいじゃないか。
「涼鱗、どうした」
「蘭紗、カジャルが出奔したようだ」
「は?」
私は前置きを全部省いて伝えた。
早く捜索隊を放ってほしくて。
「お前、2年ぶりに会ったと思えばなにを」
「……昨日朝早く、私のところへ来たんだけどね、お嫁様のことを教えてほしいってね。で、私のわかることはすべて教えたんだ。まあ、案の定取り乱してしまってね、そのまま一日私のベッドに寝かせたんだ、ゆうべは添い寝した」
蘭紗は目を見開いて私を見つめる。
「お前のベッドに?」
私は眉を片方だけ上げて皮肉を言った。
「もう君のモノではないんじゃないの?」
蘭紗はツッと視線を外し、ドカっとソファに座って私にも座るよう促した。
「早く探してあげてよ」
「そうだな、それが事実ならだが、帰宅しただけではないのか?」
「ねえ、蘭紗さあ、私のカンを疑うの?」
蘭紗は厳しい横顔を見せた。
元から美しい男だが、今や輝かんばかりのオーラを放っているようだ。
……これがお嫁様効果なのか
「らんじゃさま……あ」
スッと障子が開き、小柄な少年が見えた。
少年は私を見て驚いてビクッと体を震わせ、困ったようにもう一度蘭紗を見る。
私がいるとは思わなかったのだろう。
「ああ、薫起きたのか?おいで。紹介するよ」
「あ……はい」
少年は細い体に薄い美しい生地の着物を着て腰にサッシュを巻いている。
サッシュの巻かれた腰の細さといったら……
肩まで伸びた艶のある美しい髪も潤う瞳も綺麗な漆黒だ。
色白な顔立ちは中性的で、凛とした強さを秘めた存在感が目を惹く。
これはこれは……手放せないですね。
「おや、時の人が登場ですね、私はラハーム王国の第4王子の涼鱗。あなたが薫様なのですね」
「え、様なんてやめてください」
薫は蘭紗の腕にからめとられ額に口づけを受け、隣にピタリと座らされ恥ずかしそうにしている。
「しかし、私は他国の王族だからね、他になんて呼べばいいのか」
「薫でいいですよ、ねえ蘭紗様」
蘭紗は一瞬嫌そうな顔をしたが、まあいいだろうと言った。
「それでは薫、よろしくね。仲良くしてくれたらうれしいよ」
「はい、よろしくお願いします……それと、お話のお邪魔してしまってごめんなさい」
「いいんだよ薫、蘭紗、このまま話すね」
「ああ、カジャルのことだが、お前の言うことが確かなら千里眼を使うしかないな、いつ出て行ったのかわからないんだから、今頃どこにいるのか検討もつかん」
「その通りだねえ、傍にいながら申し訳ないよ」
「だが、薫がここに来たことで城の衛兵は増やしているんだ。カジャルが飛翔を使ったなら、あれらが見つけているだろうし」
「私も徒歩だと思うよ、目立ちたくないだろうしね」
「うむ」
ふと窓を見た、叩きつけるように降る雨はまだ止みそうになかった。
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