狐の国のお嫁様 ~紗国の愛の物語~

真白 桐羽

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大蛇4 涼鱗視点

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 屋根まで降下し、尾の方からグルリと小屋に巻き付き、ぎゅうぎゅうと絞めていく。
小屋はギシっときしんだ音を立て、今にも崩壊しそうだが、まだそうはならない、なる寸前で止めている。

中の阿羅人たちが慌てた声を上げている。
わけがわからなくて当たり前だ、地が震えているかと思うよね。

そうじゃないんだ、きしませているのは……私だよ。

『そなたら、私が窓を割ったら即座に彼らを捉えろ』

隊長にそう指示をすると、私は少し力を強めた。
硝子なんて脆いものだ、パリンと軽い音が鳴り破片が飛び散る。
そこへ近衛部隊が素早く入っていくのを確認して、私は体をねじり、小屋の屋根付近をふっとばした。

あっけにとられた男達が間抜けな顔をこちらを見上げている。

……この阿呆共が……

近衛が一気に阿羅人達を捕縛しようとしているが、一人だけ小屋を飛び出し駆け出す影があった。

私はすかさずその男を追い、シュルシュルと地を這う。
この臭いは……カジャル。
やつは背にカジャルを背負っているのか。

相手も手練れの魔術師のようだ。
身体強化をし、かなりのスピードで疾走している。

彼にとっては知らない森のはずなのに、縦横無尽に動き回り私を翻弄しようとする。
木々が私の体が当たるたび折れ、バキバキと音を立てながらはじけ飛び崩れ落ちる。

その衝撃は私にはかゆみ程度だが、これが人に当たれば大けがを負うだろう。

相手の魔術師の手元が光り出した。
走りながら魔法陣を展開しているようだ。

一気にどこかへ飛ぶかもしれないと感じ、私は賭けに出た。

体を大きく捩じり、回転しながら尾をヤツに当てたのだ、魔術師は横に吹っ飛び、カジャルが勢いで地にずさりと落ちる。
私になぎ倒された木々が吹っ飛び、円状に土地が開けた。

魔術師は即座に立ち上がり、ギラっと光る目で睨みつけてきた。

「っクソが! このバケモン……何だお前は! なんで狐のところに蛇がいる!」

答えてあげる義理はない。

私は一気にヤツと距離を詰め、覆いかぶさり動きを止める。
体の大きさは段違いで私の方が上なのだ、力で押す方が早いからね。

とぐろを巻き、そいつを体の真ん中に閉じ込めギリギリと捩じりあげる。
やつは何発か魔法攻撃を仕掛けてきたが、やがて男は胃のモノを出し気を失った。

私はそれを確かめ慎重に人化した。

人になって肩をこりこり回し、夜が明けそうな空を見上げてハァとため息をついた。

なんだか久しぶりに楽しかった気がしないでもない。
フッと笑ってから、魔石を口から取り出した。

そして、だらしなく地に伏せた魔術師の腰から小刀を取り、ヤツの両足の腱をザクリと切り、両肩を脱臼させ傍にあった木のツルで縛りあげた。

魔石で通信を使う。

『やつを捕まえた、急行せよ』

それから空に向けて魔力の塊を発射させ光らせた。
これで場所はわかるだろう。

それよりもカジャルだ。
私は男の吐しゃ物を水魔法できれいにして身を清め、地に放り出されたカジャルに駆け寄った。
目を開いていないので、頬を叩いた。

「……っ痛えよ涼鱗……お前まさか人化を解くなんて……なんでそこまで……」
「気づいていたの?」
「見てたし、すぐわかったよ、気配で」

私は胸が熱くなってカジャルの顔を凝視した。

「……カジャル生きていてくれてよかった」
「……ああ、最高にかっこ悪いが生きてるよ……」
「カッコイイとか悪いとか今関係あるの?」
「てか、お前全裸……」
「ん」

その時、ゴウと一瞬つむじ風が起き、顔を上げると蘭紗が空から現れた。
後ろには黒い装束の暗殺部隊が従っていて、彼らは敵数名を魔力の縄で縛りあげ繋いでいた。

一瞬の間の後、暗殺部隊の一人が、音もなくスタと地におり、地面に落ちている先ほどの魔術師を魔力で締め上げている。

蘭紗は宙に浮いたまま飽きれた顔でこちらを見てきた。

「あのねえ、涼鱗」
「なあに?ちゃんと助けただろう?ねえ、あとね殺してないからね」
「早く着ろよ……」

そうやって衣を投げてきたので、紗国の着物をサラッと着て腰に帯を巻いた。

「……っ!」

見ると、カジャルが立とうとしているのだが、足を負傷しているらしく立ち上がれない。
私はそっとカジャルを横抱きにし、もう一度飛翔する。

「先に帰って医者に見せるね、あとはよろしく」
「ああ」

捕縛した阿羅人は蘭紗と近衛に任せるのが正解だ、私は紗国人じゃないからね。

私はカジャルをもう一度抱きしめられた。
……それだけで幸せだった。

カジャルの方は抵抗感丸出しで嫌な目で見てくるけど、まあいいよ。
君が生きているだけでそれでいいんだ。


私は城に向けてゆっくりと空を飛んだ。


微笑みながら。

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