狐の国のお嫁様 ~紗国の愛の物語~

真白 桐羽

文字の大きさ
35 / 317

研究所にお勤めです! 3

しおりを挟む
 3人で並んで石造りの西洋風建築の研究所を歩いた。
二人とも背が高くってうらやましい。
スレンダーな涼鱗王子と一見細身なのにしっかりとした体格のカジャルさん。
どちらも長身だけど涼鱗王子のほうが少しだけ高いんだなあと二人に見惚れた。

ほんとに素敵なカップルだなって。

……こんなこと考えるのあれだけど、これはどっちがその……夜はどっちがその……

「薫様、赤い顔してるけど、どうかしたのか?」
「いえ!なんでもないです!」

カジャルさんに話しかけられてしまった!
このことを考えるのはよそう……

「ここなんだよ、少し待ってね」

涼鱗王子は、身長の二倍ほどもある巨大な扉の前に立つと、右側に置いてある彫刻のついたクリスタルの棒を操作し、扉を開けた。

扉はゴゥーンと重々しく開き、開いたとたんに中の明かりがパッと灯った。

「なんだその大袈裟な装置は……」
「今のところ私とここを管理する一家しか知らないんだけど、研究者の君たちにもそのうち教えておかないといけないねぇ、この彫刻に魔力を少し流すだけなんだけど、使うには登録が必要なんだよ」
「なるほど……ていうか、研究者……なのかな俺」

カジャルさんは腑に落ちないようだ。

私たちはひんやりした書庫に入り、涼鱗王子の案内に従って右側に歩いていく。
日本にある一般的な図書館よりもかなり天上が高く、書架も天上付近まであって高い、棚の上の方ははっきり見えないぐらいだ。
いくらなんでも高すぎる!
そして並んでいるものは年代別に並んでいるというが、背表紙に何のマークもないので、これはなかなかの難易度だ。

「どうやって取るんです?あんな上のほうの」
「飛翔するんだよ」
「え……ここでですか?」
「……そうか薫はまだ慣れていないのだったねえ、私が取るから心配しなくていいよ」

カジャルさんと私を置いて、涼鱗王子はスィーっと浮き上がり、空中でピタッと止まると、あれこれと本を選んでいる。

「す、すごい」
「薫様もあれぐらいできるようにならなきゃ」
「そ、そうだよね……あ、カジャルさん教えてもらえないですか?」
「お、おれが???」
「はい、蘭紗様も多忙ですし、どうでしょうか?……あ、まだ足が痛みますか?」
「あ、まあ、足は大丈夫だが、そうだなぁ、そろそろ動かないと体が鈍るし……まあちょうどいいかな……一応涼鱗に聞こう」
「そうですね……と、それから、薫様っていうのやめません?」
「……」
「違和感しかないんですよね」
「……俺も違和感はあるが、お前は蘭紗様のお嫁様だぞ、この国で2番目の人なんだ。臣下の俺が呼び捨てなんぞできんぞ」
「まあそう……ですよねえ」

その時ちょうど、涼鱗王子がスーッと降りてきて、いくつかの古い紙の束と、巻物、それから羊皮紙のような大きな本を両手いっぱいに抱えていた。

「んー全部は無理だが、とりあえずこのあたりから当たろう」
「そうですね、なんせこの量ですからね」

ため息と共に書架を見上げ、涼鱗王子から古い紙の束を受け取った。
よく見ると、そのどれもが薄い光を発していた。

「え?光ってる……」
「ああ、それは保存魔法だ」
「えええ?」
「この保存魔法をかけ、この整理を生業とする家があってね、代々それだけをしているんだよ。やってもやっても終わらないだろうし、凄く根気のいるお仕事だよねえ」
「どれぐらい持つのです?」
「一度掛けると20年から30年は持つと聞いてるけどねえ、つねに監視が必要なんだって絶対ではないらしいから」
「す、すばらしいですね」
「そうか……薫はまだ魔術のことを知らないのだったね、保存魔法でも2、3日持たせるくらいの軽いものならば、市井の者でも使える簡単な魔術なんだよ。だけどここまでの精度はなかなかないね」
「その方々はいつもこちらに?」
「そうだよ、常にどこかで作業しているから、そのうち会うこともあるだろうね、いずれ紹介するね。たぶん感動で泣きだすんじゃないの?本物のお嫁様を目の前にしたらさ」

涼鱗王子は穏やかな笑みで再び書庫を閉めた。
再び石造りの渡り廊下を3人で歩き出す、2人は背も高ければ足も長いので油断すると置いて行かれそうだ。

「それにしても今日は良い天気だねえ」
「あ、そうだ、さっき話したこと……」

僕はカジャルさんに視線を送った。

「そうそう、薫様が飛翔の練習を俺に見てほしいっていうんだ、どうかな?」

立ち止まった涼鱗王子が難しい顔で固まった。

「え?」
「いや、俺が薫様に」
「それは理解したけど、なんで2人きりになろうとするの?」
「ちょっとまて涼鱗、まさかお前……なんか変なこと考えてるんじゃ」

僕は慌てて涼鱗王子に近寄った。

「ごめんなさい、嫌な気持ちにさせてしまって、でも2人きりになろうだなんて考えていませんよ、それに、無理ならいいんです」

困ったなあと思って中途半端な笑顔になっちゃった。

「……いえ、私としたことが、取り乱しました。失礼」
「……お前なあ……」
「そういうことなら、3人でいかがです?おそらくだけどね、蘭紗が私と同じ反応すると思うんだけどどう思う?カジャル」
「た、確かに……」
「そ、そんなに問題でしょうか!」
「ああ、問題だねえ、私の大事な愛する人が他の人と2人きりなんて、問題以外ないですよ」

カジャルさんと僕は目を合わせて何とも言えない同じ気持ちを共有した。

「まあ、そこに私がいれば話は変わります。3人で練習しましょう、どうです?」
「はい、うれしいです! よろしくお願いします」

涼鱗王子は今度は爽やかな笑顔で笑ってくれた。

んーと……意外にこの王子さまは怖い……

しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。  ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

処理中です...