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研究所にお勤めです! 4
しおりを挟むその後は3人で書付や記録を開いて分類してみた、侍女の毎日の日誌やお嫁様の体調管理、食事内容、就寝時間起床時間、王様とのあれこれ……。
いやこれ、ほんとキリがない!
僕たちは集中して読み進め、気になるところを話し合ったり書いたりしていたのだけど、いつの間にかお昼ご飯の時間がきたようだ。
「チリン」と涼しい鈴の音がして、侍女が入ってきた。
「テラスにお食事のご用意ができました」
侍女の案内で、僕たちは仕事場の部屋を出てすぐ裏手のテラスへ行った。
なんだかこう、小さな宮殿みたいな造りで西洋風なのだ。
この研究所だけ洋風なのがちょっと不思議。
「わあ、おいしそう!」
僕の言葉に侍女は嬉しそうに微笑んで席に案内してくれた。
おいしそうなオープンサンドが並んでいて、綺麗に切られて盛られたフルーツ、そしてクリームの添えられたスコーン。
その横にはトマトのパスタもある……パスタ!
しかも、僕がアイスティーを好むと聞いて、それもきちんと用意してくれたらしい。
どうぞと差し出された美しいカットグラスに琥珀色のアイスティーは外で見るとキラキラ光って本当にきれいだ。
「あら?薫も冷たいのがすきなの?」
「ほんとうは氷を浮かべてもっと冷たくして飲むのが好きなんですよね、こちらにはその文化はないでしょうか?」
「あんまり聞かないが……お茶に氷を入れるなんて……どれぐらいいれるんだ?涼鱗に出してもらえばいい」
「ああ、そうだね、出してあげるよ、このグラスに入れるのかい?」
「そうです、これくらいの大きさのものを2、3個浮かべたいです!」
僕は親指と人差し指で丸を作って大きさを伝えた。
「ふむ、では出すよ」
涼鱗王子は僕の席に近づいてきて、グラスに指を向け、紅茶を冷ます時のようにシュルシュルほわほわと白い霧を出した。
するとグラスの中に僕の思い描く冷凍庫にあるあのアイスキューブが一つできて、また一つできて、そして3つ目もできて、ころんと浮いた。
「すごい!!!すごいです涼鱗王子!」
涼鱗王子は満面の笑みで満足そうにうんうん頷く。
「しかし面白いなお茶に氷だなんて、涼鱗も入れてみたらいい」
「そうだな、そうしてみよう、私にもこのグラス入りのものをおねがいするよ」
涼鱗王子が頼むとすぐに用意されてきた、そこに先ほどのように氷を僕のよりたくさん浮かべ、もはやグラスより盛り上がるぐらい氷を出して大変満足そうにしている。
「おい、そんなに氷だらけだと、飲めないだろが」
「そんなことないよ、飲んで見せる」
涼鱗王子は上品な仕草でコクリと一口飲み、キランと目を輝かせた。
「ほんとうにすごくおいしい……これは……流行るよ」
「え……そんなにか?……んじゃ俺もくれ」
侍女は心得ておりすぐに出してくれた、そして、山のように氷がぼてぼて作られる。
「なんか俺のだけ氷がでかくないか??……いや、だがこれはすっきりする……冷やして飲むっていったって、常温が普通だったが、これは」
「あったかい季節にはいいねこれ」
「良すぎる」
「なんだか、お二人とも気に入ってもらえたみたいで良かった」
2人の様子がおかしくてつい笑ってしまう。
今度、蘭紗様にもアイスティーを紹介してあげよう……
ランチは本当においしくて、しかも楽しくて、さあお昼からのお仕事も頑張ろう!って思えたよ!
そして僕が立ち上がろうとしたら、涼鱗王子がテラスに置かれたふわふわソファーに身を沈め、眠そうにあくびをした。
「んーあったかいし、ほんと楽しいし、こまっちゃうねえ」
「何だよ、困るって」
「いや、だってさ2年もずっと一人でやってたんだからね……なのにいきなり仲間ができて私は今とても幸せで楽しい!」
「なるほど」
僕は深く頷いた。
涼鱗王子の気持ちがとってもよくわかる。
何をするにしても仲間がいるっていいよね。
「もうさ、今日は薫とカジャルの初日だし、昼からはお空の練習にしないかい?」
「あ、それもいいな」
「いいんですか?僕は嬉しいですけど」
2人はソファーでだらっとしながらうんうん頷いた。
「んじゃここで少しこうしてみろ」
カジャルさんがぴょんぴょん地面でジャンプしている。
それなら簡単だ。
僕もぴょんぴょんしてみるが、やけに体が軽く感じる。
なんだろう、魔力のおかげなのかな?
「ああ、それでいいそれでいい」
「そしてね、薫少し手をあげてごらん」
「手を?」
「こうやって」
涼鱗も一緒にぴょんぴょんと二回ほど跳ね、そして両手を万歳してビューと上空にすごい勢いで飛んで行った。
う、うるとらまん……
「へ?」
「ああ、体を浮く感じが想像しやすいかもな、やってみろ」
「なるほど、やってみます」
僕は緊張しながらもぴょんぴょん飛んでから思いっきり空に向けて手を伸ばしてみた。
ちょうどあれだ、高跳びするようなイメージで。
そしたら、ギューンと視界がいきなり変わり、気づくと足元に研究所の屋根が見えて驚いた。
え?一人で……と、とべてる……
慌ててしまって体勢が崩れ、うまく制御できず恐怖が押し寄せる。
足元に何もないことの恐ろしさに今更気づいて、僕はパニックになりかけた。
「……っ!」
「薫!」
一瞬花の匂いがして、そして後から抱きしめられハッと後ろを向くと蘭紗様がいた。
「え?ら、蘭紗様!」
「あぶないぞ薫……なぜ一人で飛んでいるんだ」
「カジャルさんと涼鱗王子に教えてもらって」
愛しい人の顔……涙が出そうになった。
朝まで一緒にいたのにこんなにも会えたら嬉しい。
視界の先にスーと2人がこちらに飛んでくるのが見えた。
「あれれ?蘭紗なんで来たの?薫よかった!うまく飛べてたよ!」
「薫様飛べたな!ちょっと不安定だけどすぐうまくなりそうだ」
2人は嬉しそうに喜んでくれた。
「ちょっとまてお前ら、薫に防御壁もつけずにいきなり飛び上がらせるとは何事だ」
「ちょっとー怖い顔しないでよ、近くに私がいるんだから大丈夫だよー」
「あーでもちょっと迂闊だったか、申し訳ありません蘭紗様……でもほめてあげてくださいよ、一回目でうまく飛んだんですから」
蘭紗様はものすごく怒って2人を責めたけど、二人のせいじゃないから怒らないでって気持ちを込めて蘭紗様の手を強く握った。
「違うの、怒らないで蘭紗様、僕が頼んだんだし、2人は良くしてくれてるから、ね?」
「……あぁ、そうだな。薫うまく飛べてよかった……」
蘭紗様は納得いかない感じだったけど、しぶしぶ怒りを収めてくれた。
「取りあえずさ、このまま少し飛ばない?せっかくだし!」
涼鱗王子はどこまでも陽気で何も気にしていない。
ここまで自由だと見ていてすがすがしい。
「でもどうして、ここにいるんですか?僕は、蘭紗様お忙しいと思ってたんですけど」
「ちょうど昼を食べた終えたところで気になって、なんとなくこちらを見ていたら……薫が急に共も付けずに飛び上がるのが見えたのだ、それで急行したのだ」
「はー!過保護!」
「おい涼鱗、お前は人の事いえねえからな」
「そう?」
涼鱗王子は嬉しそうにカジャルさんの頬を撫でた。
そんな2人を蘭紗様も優しいまなざしで見つめていた。
「ああ……まあ、少しなら散歩もよかろう」
「ほんとに!いいの?蘭紗様」
「ああ、ついでだ」
蘭紗様の優しい微笑みで僕は空の中で溶けてしまいそうだって思った。
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