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狐と蛇と獅子と1
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「ほら、薫」
空の上で、後から抱きしめてくれていた蘭紗様が背中からゆっくり回り込んで、僕の横に来て手を取ってくれた。
「もう大丈夫か?慌ててはいけない、空では絶対にだ。いいか?」
僕はその声を聞いているだけで幸せになってしまって……なんだか今ここが空だということも忘れてしまいそうだった。
「はい、気を付けます」
じっと見ていた涼蘭王子とカジャルさんは「じゃあ、あっちね」と楽しげに2人同時に指をさした。
蘭紗様はククっと笑うと「ああいいよ」と僕を誘導してくれた。
僕たち4人は、スイーっと空を飛んでお城の敷地をぐるりと回った。
少し安定してきた僕を見て、「もう少し遠くも行けそうだな?」と蘭紗様が言い、「それなら」と二人も頷き、城から離れた山の方向へと移動しはじめた。
僕は必死についていく。
防護壁があるのはわかっていても、やっぱり怖さはあるんだよね!
小さなきれいな花の咲く丘を越え、しばらく行くと、水面がキラキラ光るきれいな湖が見えた。
「あれ?こんな湖がこんな近くにあったかな?」
「この湖は城からはちょうど死角になるんだ、あの森があるからな」
後を見ると、こんもり木々が生い茂る丘の向こうに、少しだけお城の先っぽが見える。
もしかしてあれ僕たちが住んでいるところ!
「すごいすごい!見えます!あれ僕たちのお部屋のところじゃ?!」
蘭紗様は嬉しそうに頷いてくれた。
「何か思い出すな、子供のころ」
「ああ、私たちも小さな頃は、こんな風にはしゃいだ気がするねえ」
「確かにな」
3人は僕が大はしゃぎなのを面白そうに観察して感想を言い合っていた。
でもね、この前まで普通の日本人だった僕からしたらね、空を飛ぶなんていうファンタジー、そりゃもう興奮して当たり前なんだからね!ありえないことなんだから!
「あの島だ、懐かしいな」
「ああ、まだあるかな?」
ん?
何があるんだろう?
不思議に思いながら湖の真ん中にある小さな島に4人で降りた。
僕は念のためということで、蘭紗様に抱っこされて降ろされた。
んと、一人でできるんだからね!
「この島はなんなの?」
涼鱗王子は不思議そうに見回している。
僕も同じ気持ちだ。
「こっちこっち!」
カジャルさんが大きな声で呼ぶので不思議顔の涼鱗王子と歩いていくと、そこに大きな木が生えていて、上の方に板が取り付けてあった。
「まだあったのか」
すぐ後から蘭紗様が笑いながら歩いてきた。
「薫、あそこまで上がれるか?」
何があるんだろう?
さっきみたいに、ピョンピョンしてから手で反動を付ける、さっきより控えめに。
そしたら良い具合にすうーっと上がれた。
「なんか上達してるし」
「薫いいぞ」
「うまいうまい!」
……はじめて歩けた赤ちゃんの気分ですよ!
もう少し上がろうとしたら、あとの3人も飛翔してきた。
そして4人で板に近づいて驚いた。
「えええ、ツリーハウスなの?」
「誰が作ったのこれ、まさか君ら?」
蘭紗様とカジャルさんは違う違うと言って、懐かしいなあと強度を確かめてから上に上がる。
板の上には、小さめのドールハウスみたいな小屋が作られていて、中に古いおもちゃも落ちていた。
……子供にしてもちょっと小さい家だな
「大丈夫そうだ、おいで薫」
床を確かめた蘭紗様の手を取り、そっと上がってみる。
気持ちの良い風がさらーっと吹いてきて、蘭紗様の髪の毛が僕の頬に触れた。
キラキラしていてきれい……
「これさ、俺のオヤジが作ったんだよ」
「はー?まさかサヌ羅殿?」
「そうそう、オヤジが小さい頃に友だちと作ったんだって、まだ小さい先代王も一緒にここでよく遊んだらしいんだ、子供の秘密基地だよ」
「うそ、老朽化してない?」
「してても大丈夫だろうが、お前なら」
蘭紗様は涼鱗王子の言葉に顔をゆがめてペシっと肩を叩いた。
「なんだよもう、私のことも心配してくれてもいいじゃないか」
「するわけないだろ、この大蛇め」
なるほどこの王子様は蛇の国の人だった。
「あの」
皆の顔がこっちを向いた。
「小さすぎません?この小屋」
僕はドールハウスめいた小屋を指さす。
「ああ、これは子供のころの私たちが獣化して遊んだのだ」
「ちょうどいいね」
「小さいところにぎゅうぎゅうに入るのが楽しいんだ」
「そうそう」
僕はドキドキしてきた、獣化!って、えーっと。
「あのどんな感じなんですか?その、狐や蛇になるってことなんですか? ほんとうに変化するんですか?どれぐらいの大きさなんでしょう?」
ポカンとした顔が3つ並んでいる。
「ああ、そうだな……そうか、知らないもんなあ、見たことないってことだよな」
「薫様の世界では、本当に獣人がいなかったってことなのかよ……」
「そうだよ、私は小さな美しい蛇になるし、蘭紗は大きな狐になるし、カジャルもかわいい獅子になるよ」
「どこが小さいんだよ!」
僕の目が丸くなった!
何それ見たい!
空の上で、後から抱きしめてくれていた蘭紗様が背中からゆっくり回り込んで、僕の横に来て手を取ってくれた。
「もう大丈夫か?慌ててはいけない、空では絶対にだ。いいか?」
僕はその声を聞いているだけで幸せになってしまって……なんだか今ここが空だということも忘れてしまいそうだった。
「はい、気を付けます」
じっと見ていた涼蘭王子とカジャルさんは「じゃあ、あっちね」と楽しげに2人同時に指をさした。
蘭紗様はククっと笑うと「ああいいよ」と僕を誘導してくれた。
僕たち4人は、スイーっと空を飛んでお城の敷地をぐるりと回った。
少し安定してきた僕を見て、「もう少し遠くも行けそうだな?」と蘭紗様が言い、「それなら」と二人も頷き、城から離れた山の方向へと移動しはじめた。
僕は必死についていく。
防護壁があるのはわかっていても、やっぱり怖さはあるんだよね!
小さなきれいな花の咲く丘を越え、しばらく行くと、水面がキラキラ光るきれいな湖が見えた。
「あれ?こんな湖がこんな近くにあったかな?」
「この湖は城からはちょうど死角になるんだ、あの森があるからな」
後を見ると、こんもり木々が生い茂る丘の向こうに、少しだけお城の先っぽが見える。
もしかしてあれ僕たちが住んでいるところ!
「すごいすごい!見えます!あれ僕たちのお部屋のところじゃ?!」
蘭紗様は嬉しそうに頷いてくれた。
「何か思い出すな、子供のころ」
「ああ、私たちも小さな頃は、こんな風にはしゃいだ気がするねえ」
「確かにな」
3人は僕が大はしゃぎなのを面白そうに観察して感想を言い合っていた。
でもね、この前まで普通の日本人だった僕からしたらね、空を飛ぶなんていうファンタジー、そりゃもう興奮して当たり前なんだからね!ありえないことなんだから!
「あの島だ、懐かしいな」
「ああ、まだあるかな?」
ん?
何があるんだろう?
不思議に思いながら湖の真ん中にある小さな島に4人で降りた。
僕は念のためということで、蘭紗様に抱っこされて降ろされた。
んと、一人でできるんだからね!
「この島はなんなの?」
涼鱗王子は不思議そうに見回している。
僕も同じ気持ちだ。
「こっちこっち!」
カジャルさんが大きな声で呼ぶので不思議顔の涼鱗王子と歩いていくと、そこに大きな木が生えていて、上の方に板が取り付けてあった。
「まだあったのか」
すぐ後から蘭紗様が笑いながら歩いてきた。
「薫、あそこまで上がれるか?」
何があるんだろう?
さっきみたいに、ピョンピョンしてから手で反動を付ける、さっきより控えめに。
そしたら良い具合にすうーっと上がれた。
「なんか上達してるし」
「薫いいぞ」
「うまいうまい!」
……はじめて歩けた赤ちゃんの気分ですよ!
もう少し上がろうとしたら、あとの3人も飛翔してきた。
そして4人で板に近づいて驚いた。
「えええ、ツリーハウスなの?」
「誰が作ったのこれ、まさか君ら?」
蘭紗様とカジャルさんは違う違うと言って、懐かしいなあと強度を確かめてから上に上がる。
板の上には、小さめのドールハウスみたいな小屋が作られていて、中に古いおもちゃも落ちていた。
……子供にしてもちょっと小さい家だな
「大丈夫そうだ、おいで薫」
床を確かめた蘭紗様の手を取り、そっと上がってみる。
気持ちの良い風がさらーっと吹いてきて、蘭紗様の髪の毛が僕の頬に触れた。
キラキラしていてきれい……
「これさ、俺のオヤジが作ったんだよ」
「はー?まさかサヌ羅殿?」
「そうそう、オヤジが小さい頃に友だちと作ったんだって、まだ小さい先代王も一緒にここでよく遊んだらしいんだ、子供の秘密基地だよ」
「うそ、老朽化してない?」
「してても大丈夫だろうが、お前なら」
蘭紗様は涼鱗王子の言葉に顔をゆがめてペシっと肩を叩いた。
「なんだよもう、私のことも心配してくれてもいいじゃないか」
「するわけないだろ、この大蛇め」
なるほどこの王子様は蛇の国の人だった。
「あの」
皆の顔がこっちを向いた。
「小さすぎません?この小屋」
僕はドールハウスめいた小屋を指さす。
「ああ、これは子供のころの私たちが獣化して遊んだのだ」
「ちょうどいいね」
「小さいところにぎゅうぎゅうに入るのが楽しいんだ」
「そうそう」
僕はドキドキしてきた、獣化!って、えーっと。
「あのどんな感じなんですか?その、狐や蛇になるってことなんですか? ほんとうに変化するんですか?どれぐらいの大きさなんでしょう?」
ポカンとした顔が3つ並んでいる。
「ああ、そうだな……そうか、知らないもんなあ、見たことないってことだよな」
「薫様の世界では、本当に獣人がいなかったってことなのかよ……」
「そうだよ、私は小さな美しい蛇になるし、蘭紗は大きな狐になるし、カジャルもかわいい獅子になるよ」
「どこが小さいんだよ!」
僕の目が丸くなった!
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