37 / 317
狐と蛇と獅子と1
しおりを挟む
「ほら、薫」
空の上で、後から抱きしめてくれていた蘭紗様が背中からゆっくり回り込んで、僕の横に来て手を取ってくれた。
「もう大丈夫か?慌ててはいけない、空では絶対にだ。いいか?」
僕はその声を聞いているだけで幸せになってしまって……なんだか今ここが空だということも忘れてしまいそうだった。
「はい、気を付けます」
じっと見ていた涼蘭王子とカジャルさんは「じゃあ、あっちね」と楽しげに2人同時に指をさした。
蘭紗様はククっと笑うと「ああいいよ」と僕を誘導してくれた。
僕たち4人は、スイーっと空を飛んでお城の敷地をぐるりと回った。
少し安定してきた僕を見て、「もう少し遠くも行けそうだな?」と蘭紗様が言い、「それなら」と二人も頷き、城から離れた山の方向へと移動しはじめた。
僕は必死についていく。
防護壁があるのはわかっていても、やっぱり怖さはあるんだよね!
小さなきれいな花の咲く丘を越え、しばらく行くと、水面がキラキラ光るきれいな湖が見えた。
「あれ?こんな湖がこんな近くにあったかな?」
「この湖は城からはちょうど死角になるんだ、あの森があるからな」
後を見ると、こんもり木々が生い茂る丘の向こうに、少しだけお城の先っぽが見える。
もしかしてあれ僕たちが住んでいるところ!
「すごいすごい!見えます!あれ僕たちのお部屋のところじゃ?!」
蘭紗様は嬉しそうに頷いてくれた。
「何か思い出すな、子供のころ」
「ああ、私たちも小さな頃は、こんな風にはしゃいだ気がするねえ」
「確かにな」
3人は僕が大はしゃぎなのを面白そうに観察して感想を言い合っていた。
でもね、この前まで普通の日本人だった僕からしたらね、空を飛ぶなんていうファンタジー、そりゃもう興奮して当たり前なんだからね!ありえないことなんだから!
「あの島だ、懐かしいな」
「ああ、まだあるかな?」
ん?
何があるんだろう?
不思議に思いながら湖の真ん中にある小さな島に4人で降りた。
僕は念のためということで、蘭紗様に抱っこされて降ろされた。
んと、一人でできるんだからね!
「この島はなんなの?」
涼鱗王子は不思議そうに見回している。
僕も同じ気持ちだ。
「こっちこっち!」
カジャルさんが大きな声で呼ぶので不思議顔の涼鱗王子と歩いていくと、そこに大きな木が生えていて、上の方に板が取り付けてあった。
「まだあったのか」
すぐ後から蘭紗様が笑いながら歩いてきた。
「薫、あそこまで上がれるか?」
何があるんだろう?
さっきみたいに、ピョンピョンしてから手で反動を付ける、さっきより控えめに。
そしたら良い具合にすうーっと上がれた。
「なんか上達してるし」
「薫いいぞ」
「うまいうまい!」
……はじめて歩けた赤ちゃんの気分ですよ!
もう少し上がろうとしたら、あとの3人も飛翔してきた。
そして4人で板に近づいて驚いた。
「えええ、ツリーハウスなの?」
「誰が作ったのこれ、まさか君ら?」
蘭紗様とカジャルさんは違う違うと言って、懐かしいなあと強度を確かめてから上に上がる。
板の上には、小さめのドールハウスみたいな小屋が作られていて、中に古いおもちゃも落ちていた。
……子供にしてもちょっと小さい家だな
「大丈夫そうだ、おいで薫」
床を確かめた蘭紗様の手を取り、そっと上がってみる。
気持ちの良い風がさらーっと吹いてきて、蘭紗様の髪の毛が僕の頬に触れた。
キラキラしていてきれい……
「これさ、俺のオヤジが作ったんだよ」
「はー?まさかサヌ羅殿?」
「そうそう、オヤジが小さい頃に友だちと作ったんだって、まだ小さい先代王も一緒にここでよく遊んだらしいんだ、子供の秘密基地だよ」
「うそ、老朽化してない?」
「してても大丈夫だろうが、お前なら」
蘭紗様は涼鱗王子の言葉に顔をゆがめてペシっと肩を叩いた。
「なんだよもう、私のことも心配してくれてもいいじゃないか」
「するわけないだろ、この大蛇め」
なるほどこの王子様は蛇の国の人だった。
「あの」
皆の顔がこっちを向いた。
「小さすぎません?この小屋」
僕はドールハウスめいた小屋を指さす。
「ああ、これは子供のころの私たちが獣化して遊んだのだ」
「ちょうどいいね」
「小さいところにぎゅうぎゅうに入るのが楽しいんだ」
「そうそう」
僕はドキドキしてきた、獣化!って、えーっと。
「あのどんな感じなんですか?その、狐や蛇になるってことなんですか? ほんとうに変化するんですか?どれぐらいの大きさなんでしょう?」
ポカンとした顔が3つ並んでいる。
「ああ、そうだな……そうか、知らないもんなあ、見たことないってことだよな」
「薫様の世界では、本当に獣人がいなかったってことなのかよ……」
「そうだよ、私は小さな美しい蛇になるし、蘭紗は大きな狐になるし、カジャルもかわいい獅子になるよ」
「どこが小さいんだよ!」
僕の目が丸くなった!
何それ見たい!
空の上で、後から抱きしめてくれていた蘭紗様が背中からゆっくり回り込んで、僕の横に来て手を取ってくれた。
「もう大丈夫か?慌ててはいけない、空では絶対にだ。いいか?」
僕はその声を聞いているだけで幸せになってしまって……なんだか今ここが空だということも忘れてしまいそうだった。
「はい、気を付けます」
じっと見ていた涼蘭王子とカジャルさんは「じゃあ、あっちね」と楽しげに2人同時に指をさした。
蘭紗様はククっと笑うと「ああいいよ」と僕を誘導してくれた。
僕たち4人は、スイーっと空を飛んでお城の敷地をぐるりと回った。
少し安定してきた僕を見て、「もう少し遠くも行けそうだな?」と蘭紗様が言い、「それなら」と二人も頷き、城から離れた山の方向へと移動しはじめた。
僕は必死についていく。
防護壁があるのはわかっていても、やっぱり怖さはあるんだよね!
小さなきれいな花の咲く丘を越え、しばらく行くと、水面がキラキラ光るきれいな湖が見えた。
「あれ?こんな湖がこんな近くにあったかな?」
「この湖は城からはちょうど死角になるんだ、あの森があるからな」
後を見ると、こんもり木々が生い茂る丘の向こうに、少しだけお城の先っぽが見える。
もしかしてあれ僕たちが住んでいるところ!
「すごいすごい!見えます!あれ僕たちのお部屋のところじゃ?!」
蘭紗様は嬉しそうに頷いてくれた。
「何か思い出すな、子供のころ」
「ああ、私たちも小さな頃は、こんな風にはしゃいだ気がするねえ」
「確かにな」
3人は僕が大はしゃぎなのを面白そうに観察して感想を言い合っていた。
でもね、この前まで普通の日本人だった僕からしたらね、空を飛ぶなんていうファンタジー、そりゃもう興奮して当たり前なんだからね!ありえないことなんだから!
「あの島だ、懐かしいな」
「ああ、まだあるかな?」
ん?
何があるんだろう?
不思議に思いながら湖の真ん中にある小さな島に4人で降りた。
僕は念のためということで、蘭紗様に抱っこされて降ろされた。
んと、一人でできるんだからね!
「この島はなんなの?」
涼鱗王子は不思議そうに見回している。
僕も同じ気持ちだ。
「こっちこっち!」
カジャルさんが大きな声で呼ぶので不思議顔の涼鱗王子と歩いていくと、そこに大きな木が生えていて、上の方に板が取り付けてあった。
「まだあったのか」
すぐ後から蘭紗様が笑いながら歩いてきた。
「薫、あそこまで上がれるか?」
何があるんだろう?
さっきみたいに、ピョンピョンしてから手で反動を付ける、さっきより控えめに。
そしたら良い具合にすうーっと上がれた。
「なんか上達してるし」
「薫いいぞ」
「うまいうまい!」
……はじめて歩けた赤ちゃんの気分ですよ!
もう少し上がろうとしたら、あとの3人も飛翔してきた。
そして4人で板に近づいて驚いた。
「えええ、ツリーハウスなの?」
「誰が作ったのこれ、まさか君ら?」
蘭紗様とカジャルさんは違う違うと言って、懐かしいなあと強度を確かめてから上に上がる。
板の上には、小さめのドールハウスみたいな小屋が作られていて、中に古いおもちゃも落ちていた。
……子供にしてもちょっと小さい家だな
「大丈夫そうだ、おいで薫」
床を確かめた蘭紗様の手を取り、そっと上がってみる。
気持ちの良い風がさらーっと吹いてきて、蘭紗様の髪の毛が僕の頬に触れた。
キラキラしていてきれい……
「これさ、俺のオヤジが作ったんだよ」
「はー?まさかサヌ羅殿?」
「そうそう、オヤジが小さい頃に友だちと作ったんだって、まだ小さい先代王も一緒にここでよく遊んだらしいんだ、子供の秘密基地だよ」
「うそ、老朽化してない?」
「してても大丈夫だろうが、お前なら」
蘭紗様は涼鱗王子の言葉に顔をゆがめてペシっと肩を叩いた。
「なんだよもう、私のことも心配してくれてもいいじゃないか」
「するわけないだろ、この大蛇め」
なるほどこの王子様は蛇の国の人だった。
「あの」
皆の顔がこっちを向いた。
「小さすぎません?この小屋」
僕はドールハウスめいた小屋を指さす。
「ああ、これは子供のころの私たちが獣化して遊んだのだ」
「ちょうどいいね」
「小さいところにぎゅうぎゅうに入るのが楽しいんだ」
「そうそう」
僕はドキドキしてきた、獣化!って、えーっと。
「あのどんな感じなんですか?その、狐や蛇になるってことなんですか? ほんとうに変化するんですか?どれぐらいの大きさなんでしょう?」
ポカンとした顔が3つ並んでいる。
「ああ、そうだな……そうか、知らないもんなあ、見たことないってことだよな」
「薫様の世界では、本当に獣人がいなかったってことなのかよ……」
「そうだよ、私は小さな美しい蛇になるし、蘭紗は大きな狐になるし、カジャルもかわいい獅子になるよ」
「どこが小さいんだよ!」
僕の目が丸くなった!
何それ見たい!
17
あなたにおすすめの小説
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる