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お誘い
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侍女たちに勧められるままお昼をサンドイッチで済ませて、急いで研究所に向かう。
空の門には僕の近衛たちが待っていてくれて、侍従長も控えていた。
「ごめんなさい、お待たせしました。では行きましょ!」
僕は近衛の副隊長に防護壁を作ってもらってから自分でタンと飛び立った。
もう、うまく飛べるんだからね!
空を自分の一部みたいに感じながらふわふわ浮いて、そしたらもう研究所が見えてきた。
降りるのだけはいまだに怖いけど、頑張って踏ん張ってなるべくゆっくりと着陸した。
みんなのようにスタッとかっこよく着地できるには、あとどれぐらいかかるんでしょうね!
「こんにちは」
研究所の護衛に声をかけて、出迎えの侍女たちと仕事部屋に行く。
「お待たせしました!」
「ああ、薫来たね」
「おう」
2人は変わりなく、お嫁様「桜」の侍女日誌をめくっている。
「どうですか?」
「ああ、あんまりだなあ……侍女たちがその日のお世話のことをひたすら書いてるだけだからさ、これ」
カジャルは髪の毛をワシャっとした。
しても短髪男子なので影響があまりない……
丸めのちいさい三角ケモ耳がかわいいだけなんだけどね……ぴこってなって!
「でもねえ、そういう何気ないところにさ、重要な一言が添えられたりしてるものなんだよ。根気しかないの、この作業は」
涼鱗王子は侍女にアイスティーを頼んで巻物を広げようとしている。
「ああ、明日ね、薫おススメのお店に行くの、どう? 一緒に行ってみない?もちろん蘭紗も誘ってだよ」
僕はびっくりして羽ペンを取り出す手を止めて固まった。
「僕おススメのお店って……城下町のですか?」
「そうそう、あのカップケーキのお店だよ、なんだかね、夏の新作が出たんだって!」
「そ、それは、行きたいですね……」
「蘭紗様、お忙しいんじゃないのか?宰相がいないんじゃなあ」
カジャルさんが蘭紗様を心配してくれる。
うれしいことだよね。
「そのことを先ほど、喜紗さんと話したんですよ、余計なお世話かもしれませんが……やっぱり今のところ、宰相は喜紗さん以外に勤まる人はいないように思うんで、お互い意地を張らずにお仕事元通りにしてもらえないかな?って思って」
2人がへえっとこちらを向いた。
「それで喜紗殿はなんと?」
「喜んでくれました。……たぶんですけど、背中を押す人が必要だったんでしょうね」
「俺思うけど、喜紗さんは、すっごく現実的な人だから夢物語のお嫁様を信じてなかっただけで、何か裏をかいて悪さを企んでいたとかじゃないと思うんだよ」
「後あれです薫のことだから、、蘭紗が過剰反応したんでしょうよ」
「それだ」
「うん」
2人の会話に僕はあいまいに頷いた。
「それから、喜紗さんからしたら、僕と蘭紗様の寿命のことがありますから、留紗が王になる確率が0になったわけです、そういうのもあったのかなって」
「ああ……」
「先代王が亡くなった時だけど、蘭紗様の魔力がすごく不安定になったんだ、先代はあんな死に方だったし」
「あんなって、どんな?」
「伴侶に先立たれて、魔力暴走だよ」
「え」
「蘭紗様は先代以上に大きい魔力を持っているから、制御できなくて早く死ぬ運命だって、周りはどこかあきらめていたところあると思うんだよな。同じことを喜紗様が思っていたとしても不思議じゃないよ」
僕はそのことを知らなかった。
蘭紗様のお父様は魔力暴走?それは……。
「つまりあれか、喜紗殿は……早死にする甥の次は、自分の子・留紗が王だと心に勝手に絵図を描いていたのだな……」
「俺もそうなるんじゃないかって、しょっちゅう冷や冷やしてたからな、傍にいた皆その恐れを抱いていたと思うよ、それぐらい蘭紗様の調子は悪かったんだ」
涼鱗は立ち上がってカジャルを後から抱きしめた。
ゆっくりと頭を撫ででいる。
「そんな緊張知らなかった。私はここに閉じこもって、何の役にも立ってなかったね、ごめんね」
「仕方ないよ、それにお前は他国の王子だ」
「だけど、友だちだから、何かできることがあったかもしれないじゃないか」
僕はなんとなく、2人の間をそれとなく取り持つつもりだったけど、そんな深い理由があったとはちょっと考えが及んでなくて、もしかして悪手だったかな?と心がざわざわしてしまう。
「薫、そんな顔しない! 明日行けそうでしょ?この話の流れだと、ね?」
「ん、そうだといいなあ」
「どうして明日だと思う?薫は明日城下町で夏祭りがあるのを聞いてない?」
夏祭り!
それって盆踊りみたいなものかなあ?
「知らないですよお!早く言ってください!ああ、行きたい!」
「やけに張り切るな」
「僕は日本にいるころ、体が弱くてお祭りは危ないので避けていました。人ごみで倒れたら危ないですからね、だから明日行けたらそれ、生まれて初めてのお祭りです!」
2人は真剣な顔で頷いた。
「これは何としても」
「薫様がいけるように説得だな」
「うむ」
侍女の持ってきたアイスティーに、涼鱗王子が氷を作っていれてくれ、僕はまたアイスティー(ひえひえ)を飲むことができた!
ああ、明日いけたらいいなあ……
空の門には僕の近衛たちが待っていてくれて、侍従長も控えていた。
「ごめんなさい、お待たせしました。では行きましょ!」
僕は近衛の副隊長に防護壁を作ってもらってから自分でタンと飛び立った。
もう、うまく飛べるんだからね!
空を自分の一部みたいに感じながらふわふわ浮いて、そしたらもう研究所が見えてきた。
降りるのだけはいまだに怖いけど、頑張って踏ん張ってなるべくゆっくりと着陸した。
みんなのようにスタッとかっこよく着地できるには、あとどれぐらいかかるんでしょうね!
「こんにちは」
研究所の護衛に声をかけて、出迎えの侍女たちと仕事部屋に行く。
「お待たせしました!」
「ああ、薫来たね」
「おう」
2人は変わりなく、お嫁様「桜」の侍女日誌をめくっている。
「どうですか?」
「ああ、あんまりだなあ……侍女たちがその日のお世話のことをひたすら書いてるだけだからさ、これ」
カジャルは髪の毛をワシャっとした。
しても短髪男子なので影響があまりない……
丸めのちいさい三角ケモ耳がかわいいだけなんだけどね……ぴこってなって!
「でもねえ、そういう何気ないところにさ、重要な一言が添えられたりしてるものなんだよ。根気しかないの、この作業は」
涼鱗王子は侍女にアイスティーを頼んで巻物を広げようとしている。
「ああ、明日ね、薫おススメのお店に行くの、どう? 一緒に行ってみない?もちろん蘭紗も誘ってだよ」
僕はびっくりして羽ペンを取り出す手を止めて固まった。
「僕おススメのお店って……城下町のですか?」
「そうそう、あのカップケーキのお店だよ、なんだかね、夏の新作が出たんだって!」
「そ、それは、行きたいですね……」
「蘭紗様、お忙しいんじゃないのか?宰相がいないんじゃなあ」
カジャルさんが蘭紗様を心配してくれる。
うれしいことだよね。
「そのことを先ほど、喜紗さんと話したんですよ、余計なお世話かもしれませんが……やっぱり今のところ、宰相は喜紗さん以外に勤まる人はいないように思うんで、お互い意地を張らずにお仕事元通りにしてもらえないかな?って思って」
2人がへえっとこちらを向いた。
「それで喜紗殿はなんと?」
「喜んでくれました。……たぶんですけど、背中を押す人が必要だったんでしょうね」
「俺思うけど、喜紗さんは、すっごく現実的な人だから夢物語のお嫁様を信じてなかっただけで、何か裏をかいて悪さを企んでいたとかじゃないと思うんだよ」
「後あれです薫のことだから、、蘭紗が過剰反応したんでしょうよ」
「それだ」
「うん」
2人の会話に僕はあいまいに頷いた。
「それから、喜紗さんからしたら、僕と蘭紗様の寿命のことがありますから、留紗が王になる確率が0になったわけです、そういうのもあったのかなって」
「ああ……」
「先代王が亡くなった時だけど、蘭紗様の魔力がすごく不安定になったんだ、先代はあんな死に方だったし」
「あんなって、どんな?」
「伴侶に先立たれて、魔力暴走だよ」
「え」
「蘭紗様は先代以上に大きい魔力を持っているから、制御できなくて早く死ぬ運命だって、周りはどこかあきらめていたところあると思うんだよな。同じことを喜紗様が思っていたとしても不思議じゃないよ」
僕はそのことを知らなかった。
蘭紗様のお父様は魔力暴走?それは……。
「つまりあれか、喜紗殿は……早死にする甥の次は、自分の子・留紗が王だと心に勝手に絵図を描いていたのだな……」
「俺もそうなるんじゃないかって、しょっちゅう冷や冷やしてたからな、傍にいた皆その恐れを抱いていたと思うよ、それぐらい蘭紗様の調子は悪かったんだ」
涼鱗は立ち上がってカジャルを後から抱きしめた。
ゆっくりと頭を撫ででいる。
「そんな緊張知らなかった。私はここに閉じこもって、何の役にも立ってなかったね、ごめんね」
「仕方ないよ、それにお前は他国の王子だ」
「だけど、友だちだから、何かできることがあったかもしれないじゃないか」
僕はなんとなく、2人の間をそれとなく取り持つつもりだったけど、そんな深い理由があったとはちょっと考えが及んでなくて、もしかして悪手だったかな?と心がざわざわしてしまう。
「薫、そんな顔しない! 明日行けそうでしょ?この話の流れだと、ね?」
「ん、そうだといいなあ」
「どうして明日だと思う?薫は明日城下町で夏祭りがあるのを聞いてない?」
夏祭り!
それって盆踊りみたいなものかなあ?
「知らないですよお!早く言ってください!ああ、行きたい!」
「やけに張り切るな」
「僕は日本にいるころ、体が弱くてお祭りは危ないので避けていました。人ごみで倒れたら危ないですからね、だから明日行けたらそれ、生まれて初めてのお祭りです!」
2人は真剣な顔で頷いた。
「これは何としても」
「薫様がいけるように説得だな」
「うむ」
侍女の持ってきたアイスティーに、涼鱗王子が氷を作っていれてくれ、僕はまたアイスティー(ひえひえ)を飲むことができた!
ああ、明日いけたらいいなあ……
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