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冷酷無残な国3……誓い
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「それほどの強力な魔力残滓はなかったぞ、私はすぐに周りをこの目で確認した」
「たいして残らないんだよ、術者が遠くにいるから」
「術者って?術者が遠くとはどういう意味だ?あのあたりにいたはずだぞ?そんなに遠くからあれほどの魔術が成功するものか!」
「あれは本国から発せられた魔術なんだ……おそらく」
「は?ありえない! 本国って……阿羅国はここからどれだけ離れていると思っているんだ!」
涼鱗に責め立てられた我はデスクに腰をかけ、ため息をついた。
このことは我しか知らないことなのだ。
このように聞き返されて当たり前だ。
「そなたにも話していないことだが……学園時代、我は波羽彦と一度だけ2人で組んだことがある」
「え?いきなりなんだそれ?」
涼鱗が面喰い眉を寄せた。
「……お前、ちょうど風邪で寝ていたんだ。普通ならば同級で力も拮抗しているお前と組むはずだったのだが、お前がいなかったので同じく相方が欠席していた2つ上の波羽彦と組むように教師に言われたのだ」
「……もしかして、全学年合同の斥候の授業のときか?」
我は頷き、そばにあった羽ペンを手に取って弄んだ。
そしてかつて学んだ学園の広大な敷地を思い出す。
切り立った崖や天高くそびえる渓谷、どこまでも続く草原に、岩石しかない地帯。
想定できうる限りの色々な条件がそこには揃っていた。
「魔力を使ってはならないのが前提で、二日かけるという長い授業だ、そしてこの授業に従者は付けられない、王子といえども一人でなさねばということで、我は波羽彦と一晩一緒に過ごした」
険しい赤い視線が我を貫く。
「なにがあった?」
「簡単に言うと、その時に波羽彦の秘密を我は知った。あいつはわざと皆に嫌われるように自分を偽っていた」
「……どういうこと」
「あの夜、峡谷で俺と波羽彦はお互いの腰を縄で結び、頂上を目指したのだ、そこから見張るつもりで」
「……あの天を衝く峡谷を登ろうだなんて……お前にしか考え付かない」
涼鱗は遠い目をした。
「ちょうど良い足場を見つけ、我らはそこで一時休憩としたのだが、その時急に波羽彦がドンと我を押したのだ……我は体勢を崩したがなんとか落ちずに踏ん張った……が、下は崖だ。なぜそんなことをすると言いかけ、そしてハッとした。我がそれまで休んでいたところに白い光の魔法陣が出現し、そこに置いてあった我のマントだけがスッと魔法陣とともに消えたのだ」
「は?え?……ちょっとまてその魔法陣ってあれか、さっき街で見たのと同じというのか?」
「同じだと思う」
涼鱗はあきれたようなため息をついた。
「どういうことだ、それはお前を狙ってとのことなのか?」
「我は波羽彦にどういうことか聞いた、するとこの魔法陣は『父が出したものだ』と言った。『父は本国から座標を的確につかみ、どんなに長距離であろうと転移の魔法陣を出せる、父は紗国の王子を手元に置こうとしている』と、そして『今日は自分が近くにいて座標を出しやすいので、こうなるとわかっていたので助けた』と」
「……ちょっとまて、なぜ波羽彦がお前を助ける」
我は苦しくなって一呼吸置き、そばにあった水差しに手を伸ばし、グラスに水を注ぎ一気に飲み干した。
「2人の腰は縄で繋いでいたんだ、そこで我が崖を落ちればあいつだって落ちる……まあそこまでの事が起これば普通は飛翔するだろうが、そうなれば失格で単位を落としてしまう……まあ、それはともかく……あいつは自分の命をかけて俺を守った。そして言ったんだ」
「なにを」
「蘭紗、お前が俺の国を潰してくれと……な」
「は?」
「悲しそうに……とういうか泣いていたが、はっきりとそういった。そして波羽彦は『お前が阿羅国を潰したとしても国際的に非難されないよう、これからも嫌なやつを演じて嫌われ続けてやる。だからきっと潰してくれ』と……なぜ自分でやらないのか?と問うと、『私は力を封じられており、近づくと何もできない』と」
涼鱗は眉間に盛大にしわを寄せ、口を一文字に結んでいる。
「しかしお前はすでにかなり強かったぞ、なぜその時に一緒に攻め入ろうとならなかった」
「波羽彦は言ったんだ『蘭紗の力が本当に覚醒しないと我が父には勝てない、だからお嫁様が来るのを待って決行してくれ』と」
盛大なため息をついて涼鱗も俺からグラスを奪い水を飲み、そして一気にまくし立てた。
「なんだよそれ、そんなお伽噺を当てにしての約束なんて……その頃にはまだ誰にも知りえなかっただろうが、薫がこちらに渡ってくることなんて」
「まあ、確かにな……しかし、その波羽彦の言葉が我に確信させたのだ。やはり我のお嫁様は我の元に来るとな……しかし当時の我らはまだ子供だった……お嫁様うんぬんの前に、やはり阿羅彦に相対するのは到底無理だっただろう」
「……まぁ、そうかもしれないが……」
「つまり……狙われているとわかっていながら薫を守り切れず……おそらく薫は阿羅国に転移されてしまった。……我はほんとうに愚かな男だ……だが、あちらには波羽彦がいる。薫はおそらく無事だ」
「それは……なんといっていいのか、私だって薫はまだ生きているとは私も思うよ……なんだかわからないが、波羽彦が私の思うあいつと違って本当にそういう人物ならば……余計に」
「とにかく今だ……今我らは攻める」
涼鱗は厳しい目を向けてきた。
その赤い目は燃えているようにも、凍っているようにも見えた。
「蘭紗……私は、ラハーム王国の王子だ。私が一緒に出陣すると……」
「ああ、わかっている。これは我が国の戦いだ、お前の国を巻き込むわけにはいかぬ、お前はここに残り……」
「つまりあれだ、蘭紗」
「ん?」
涼鱗は美しい品のある動作でスッと床に片膝を付け頭を垂れた。
「私をこの国の者に、蘭紗の臣下にしてくれ……私は蘭紗、おまえとこの国に永遠の忠誠を誓う」
「……っ! 涼鱗!」
「私は蛇族だ、寿命はかなり長いぞ、この先ずっとお前らの元にいて支えると誓う」
「だが、そなたの祖国に伺いを立てねば」
「立てずとも良い、こんなこともあろうかと、すでに父には許しを得ている。いつでもこの国の者になれるよう下準備をしていた。あとあれだ、私を側近に置くと、もれなく私の伴侶となる獅子も側近になるよ」
フッと挑戦的に笑う妖しく美しい友の顔を見た。
体から力が抜けた。
たった一人でどんなモノかもわからないものに立ち向かう……その事に不安を覚えていたと急に実感した。
そうか、こうやってお前らが側近として我を支えてくれるのなら、やれるかもしれないな。
わたしは涼鱗の差し出す優美なシャムシールを受け取り、それを彼のほっそりとした肩にあて誓いを受けた。
「たいして残らないんだよ、術者が遠くにいるから」
「術者って?術者が遠くとはどういう意味だ?あのあたりにいたはずだぞ?そんなに遠くからあれほどの魔術が成功するものか!」
「あれは本国から発せられた魔術なんだ……おそらく」
「は?ありえない! 本国って……阿羅国はここからどれだけ離れていると思っているんだ!」
涼鱗に責め立てられた我はデスクに腰をかけ、ため息をついた。
このことは我しか知らないことなのだ。
このように聞き返されて当たり前だ。
「そなたにも話していないことだが……学園時代、我は波羽彦と一度だけ2人で組んだことがある」
「え?いきなりなんだそれ?」
涼鱗が面喰い眉を寄せた。
「……お前、ちょうど風邪で寝ていたんだ。普通ならば同級で力も拮抗しているお前と組むはずだったのだが、お前がいなかったので同じく相方が欠席していた2つ上の波羽彦と組むように教師に言われたのだ」
「……もしかして、全学年合同の斥候の授業のときか?」
我は頷き、そばにあった羽ペンを手に取って弄んだ。
そしてかつて学んだ学園の広大な敷地を思い出す。
切り立った崖や天高くそびえる渓谷、どこまでも続く草原に、岩石しかない地帯。
想定できうる限りの色々な条件がそこには揃っていた。
「魔力を使ってはならないのが前提で、二日かけるという長い授業だ、そしてこの授業に従者は付けられない、王子といえども一人でなさねばということで、我は波羽彦と一晩一緒に過ごした」
険しい赤い視線が我を貫く。
「なにがあった?」
「簡単に言うと、その時に波羽彦の秘密を我は知った。あいつはわざと皆に嫌われるように自分を偽っていた」
「……どういうこと」
「あの夜、峡谷で俺と波羽彦はお互いの腰を縄で結び、頂上を目指したのだ、そこから見張るつもりで」
「……あの天を衝く峡谷を登ろうだなんて……お前にしか考え付かない」
涼鱗は遠い目をした。
「ちょうど良い足場を見つけ、我らはそこで一時休憩としたのだが、その時急に波羽彦がドンと我を押したのだ……我は体勢を崩したがなんとか落ちずに踏ん張った……が、下は崖だ。なぜそんなことをすると言いかけ、そしてハッとした。我がそれまで休んでいたところに白い光の魔法陣が出現し、そこに置いてあった我のマントだけがスッと魔法陣とともに消えたのだ」
「は?え?……ちょっとまてその魔法陣ってあれか、さっき街で見たのと同じというのか?」
「同じだと思う」
涼鱗はあきれたようなため息をついた。
「どういうことだ、それはお前を狙ってとのことなのか?」
「我は波羽彦にどういうことか聞いた、するとこの魔法陣は『父が出したものだ』と言った。『父は本国から座標を的確につかみ、どんなに長距離であろうと転移の魔法陣を出せる、父は紗国の王子を手元に置こうとしている』と、そして『今日は自分が近くにいて座標を出しやすいので、こうなるとわかっていたので助けた』と」
「……ちょっとまて、なぜ波羽彦がお前を助ける」
我は苦しくなって一呼吸置き、そばにあった水差しに手を伸ばし、グラスに水を注ぎ一気に飲み干した。
「2人の腰は縄で繋いでいたんだ、そこで我が崖を落ちればあいつだって落ちる……まあそこまでの事が起これば普通は飛翔するだろうが、そうなれば失格で単位を落としてしまう……まあ、それはともかく……あいつは自分の命をかけて俺を守った。そして言ったんだ」
「なにを」
「蘭紗、お前が俺の国を潰してくれと……な」
「は?」
「悲しそうに……とういうか泣いていたが、はっきりとそういった。そして波羽彦は『お前が阿羅国を潰したとしても国際的に非難されないよう、これからも嫌なやつを演じて嫌われ続けてやる。だからきっと潰してくれ』と……なぜ自分でやらないのか?と問うと、『私は力を封じられており、近づくと何もできない』と」
涼鱗は眉間に盛大にしわを寄せ、口を一文字に結んでいる。
「しかしお前はすでにかなり強かったぞ、なぜその時に一緒に攻め入ろうとならなかった」
「波羽彦は言ったんだ『蘭紗の力が本当に覚醒しないと我が父には勝てない、だからお嫁様が来るのを待って決行してくれ』と」
盛大なため息をついて涼鱗も俺からグラスを奪い水を飲み、そして一気にまくし立てた。
「なんだよそれ、そんなお伽噺を当てにしての約束なんて……その頃にはまだ誰にも知りえなかっただろうが、薫がこちらに渡ってくることなんて」
「まあ、確かにな……しかし、その波羽彦の言葉が我に確信させたのだ。やはり我のお嫁様は我の元に来るとな……しかし当時の我らはまだ子供だった……お嫁様うんぬんの前に、やはり阿羅彦に相対するのは到底無理だっただろう」
「……まぁ、そうかもしれないが……」
「つまり……狙われているとわかっていながら薫を守り切れず……おそらく薫は阿羅国に転移されてしまった。……我はほんとうに愚かな男だ……だが、あちらには波羽彦がいる。薫はおそらく無事だ」
「それは……なんといっていいのか、私だって薫はまだ生きているとは私も思うよ……なんだかわからないが、波羽彦が私の思うあいつと違って本当にそういう人物ならば……余計に」
「とにかく今だ……今我らは攻める」
涼鱗は厳しい目を向けてきた。
その赤い目は燃えているようにも、凍っているようにも見えた。
「蘭紗……私は、ラハーム王国の王子だ。私が一緒に出陣すると……」
「ああ、わかっている。これは我が国の戦いだ、お前の国を巻き込むわけにはいかぬ、お前はここに残り……」
「つまりあれだ、蘭紗」
「ん?」
涼鱗は美しい品のある動作でスッと床に片膝を付け頭を垂れた。
「私をこの国の者に、蘭紗の臣下にしてくれ……私は蘭紗、おまえとこの国に永遠の忠誠を誓う」
「……っ! 涼鱗!」
「私は蛇族だ、寿命はかなり長いぞ、この先ずっとお前らの元にいて支えると誓う」
「だが、そなたの祖国に伺いを立てねば」
「立てずとも良い、こんなこともあろうかと、すでに父には許しを得ている。いつでもこの国の者になれるよう下準備をしていた。あとあれだ、私を側近に置くと、もれなく私の伴侶となる獅子も側近になるよ」
フッと挑戦的に笑う妖しく美しい友の顔を見た。
体から力が抜けた。
たった一人でどんなモノかもわからないものに立ち向かう……その事に不安を覚えていたと急に実感した。
そうか、こうやってお前らが側近として我を支えてくれるのなら、やれるかもしれないな。
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