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朱色の鳳凰
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紗国では夏にほとんど雨が降らない、そして秋になったら急に嵐が増えるというので、ほとんどの行事を夏の間にしてしまうのが恒例なのだ。
そして今、僕の目の前で朱色のとても立派な衣装で椅子に座っているのは……カジャルさん……
だめ、笑っちゃダメ、断じてダメなんだからね!
「ん……似合ってる」
「嘘つけ……」
「んや、思ったよりいい感じですってば」
「あのな」
胡乱な目で見つめられて僕は苦笑する。
この国で同性婚はわりと普通にあるのだが、その場合でもどちらかが必ず夫になりそしてもう一方が妻となる。
カジャルさんは「妻」なのだ。
なんというか……部活に命を燃やす高校野球の選手のような外見で、朱色の花嫁衣裳を纏われると、一見して違和感がすごい。
だけど、なぜか本当に変ではないのだ……不思議だけど、似合っている。
元々黙っていれば御曹司然とした品の良さを感じさせる整った顔立ちなので、儀式用の衣装を着れば、それがなんだろうとこのように着こなしてしまうんだ。
本人は……どうやら心底嫌がっているようで、短めの耳が元気なくヘナヘナしているし、尾も垂れさがったままだ。
この朱色の花嫁衣裳はサヌ羅さんがこの日の為に特注した品で、とても上質なのだという。
だけどねサヌ羅さん、本人の意見ってものもあるでしょう。色柄ぐらい聞いてあげてよ……
「薫様は……あれだな、元々こういうのが似合う質だから本当に綺麗だったが……俺は、こういうのはちょっと……」
んーとドサクサに紛れてなんか褒められた気がしないでもありません。
「似合う似合わないで言えと言われたら、似合ってますよ、これは本心です。……ただ、カジャルさんはあれなんでしょう?こういう色が好きじゃないってことでしょう?」
カジャルさんは溜息をつきながら全身朱色の着物や袴、そして長い裾の紗羽織を見やる。
美しい地模様が花とかでなく文様なのが唯一の救いとは言えない?……かな。
「あと、やらされるのが嫌いとか、そういう性格でもありますもんね」
カジャルさんはハッとして顔を上げて嫌なものを見るように見つめてきた。
「なんだよ、……俺の頭覗くんじゃねえよ……」
「でも、腹をくくるしかないですよ、僕の時みたいに各国の王侯貴族が列席しているわけでもなく、家族と知り合いばかりです、それに皆お祝いしたくて集まってるんですからね」
僕は、もう一度長い長い溜息をつくカジャルさんの手を引いて立たせた。
僕よりも数段背が高いカジャルさんに見下ろされる。
光源氏とか……そういうのが具体化したらこんなだったのかもな。
ほんとに綺麗なんだよなあ、喋らなければ。
「それから、衣装が朱色だからって、女に変装してるようには見えませんよ、僕の国では赤色はヒーローの色でした、ヒーローってのは英雄とかそういう意味ですよ」
「おい、うそだろ?ほんとか?」
「はい、嘘じゃないですよ、昔から赤色が真ん中に立つって決まってるんですからね」
僕の頭に戦隊モノシリーズが浮かんでいたのは内緒だ。
「それにほら、カジャルさんは背も高くて体もがっしりしてるし、かっこいいんですから、とっても見栄えがしますよ……自信もって!」
僕はそのままカジャルさんを先導して歩き出した。
もちろん手を取ったままだ。
どうしてって?
これは花嫁の付添人に僕がなっているから!
この風習はラハーム王国のものなのだそうで、花嫁の一番の理解者となる同性が当日仕度の終えた花嫁を呼びに行き、花婿のところまで案内するのだ。
なんだか光栄な役割である。
そしてその僕が着ているのは白い着物に水色の袴、そして紗羽織は紺色だ。
すっかりこの寒色が僕カラーになっちゃって侍女たちはこの色を集めているみたい。
「……まあ、そうだな」
憂い顔で渋々ながら歩き出すカジャルさんを元気づけながら僕は手を引く。
そして森の神殿に続く美しい並木道のところまで来ると、2人の美丈夫が見えた。
一人は光り輝く白銀の麗しい僕の夫!蘭紗様も今日は僕とお揃いの青系でまとめた衣装だ。
そしてもう一人は涼鱗さん……なんだけど。
僕はふふっと笑う。
「ほらね……心配ないでしょ?朱色がその人の魅力を更に引き出すこともあるんだってことですよ、さあ」
僕はカジャルさんをうっとりと眺める涼鱗さんにカジャルさんの手を引き渡す。
「……なんでだよ、涼鱗までそんな色にしなくても……」
「ん、そう?私はこの色好きなんだよ、せっかく紗国の人になったんだからこっちの衣装をって母にも言われていてね、それで色々悩んでこの色にしたんだよ、似合う?」
カジャルさんは呆然としていたが、真っ赤な顔をしてうつむいてしまった。
「似合うよ……涼鱗は何着ても似合うにきまってるだろ?」
「ありがとうカジャル、君もきれいだ。僕の花嫁」
僕は蘭紗様と並んで並木道に並ぶ2人を見つめた。
2人とも、同じ生地で作られたお揃いの晴れ着姿だ。
生地は涼鱗さんのお母様から打診があって、サヌ羅さんからラハーム王国に献上したのだそうだ。
だから同じ織り柄に同じ染め色……なのだ。
涼鱗さんは色白で髪は長く白い、それが朱色に映えて素晴らしく美しかった。
二匹の鳳凰がいるようなのだ。
鮮やかで美しい光景で、そして、日本人から見たら、とってもおめでたい紅白!
蘭紗様を見上げると、フッと笑顔で目を合わせてくれた。
「さあ、2人とも、さっさと神殿に迎え」
「ちょっと……新郎新婦にその声掛けはないんじゃない?」
涼鱗さんは不満気に口をとがらせながらもカジャルさんとゆっくりと歩き出した。
僕たちも2人でゆっくりとその後ろを付き添う。
さらに、その後に近衛がいるのは仕方ない……ゆるしてね。
でも誰がいようと2人の世界は邪魔できそうにない。
先日聞かされたのは、カジャルさんの寿命は約100年として、涼鱗さんたち蛇族は200年以上……人によってはそれ以上の寿命があるのだと。
涼鱗さんにとって、カジャルさんを亡くしてからの人生の方が長くなってしまうのだ。
長命で知られるエルフ族や龍族、そして蛇族たちは他の種族とほぼ混じり合わない。
伴侶に先立たれるのが耐えられないからだと言われている。
だが、それを知りつつそれでもと望んだ二人の気持ちを双方の親は笑顔で受け止めたという。
残される方の悲しみと苦しみに僕たちは友人として寄り添ってあげたい。
だけどそれまでは、4人でたくさん楽しい思い出を作ろうね。
僕たちの人生は始まったばかりなんだから。
そして今、僕の目の前で朱色のとても立派な衣装で椅子に座っているのは……カジャルさん……
だめ、笑っちゃダメ、断じてダメなんだからね!
「ん……似合ってる」
「嘘つけ……」
「んや、思ったよりいい感じですってば」
「あのな」
胡乱な目で見つめられて僕は苦笑する。
この国で同性婚はわりと普通にあるのだが、その場合でもどちらかが必ず夫になりそしてもう一方が妻となる。
カジャルさんは「妻」なのだ。
なんというか……部活に命を燃やす高校野球の選手のような外見で、朱色の花嫁衣裳を纏われると、一見して違和感がすごい。
だけど、なぜか本当に変ではないのだ……不思議だけど、似合っている。
元々黙っていれば御曹司然とした品の良さを感じさせる整った顔立ちなので、儀式用の衣装を着れば、それがなんだろうとこのように着こなしてしまうんだ。
本人は……どうやら心底嫌がっているようで、短めの耳が元気なくヘナヘナしているし、尾も垂れさがったままだ。
この朱色の花嫁衣裳はサヌ羅さんがこの日の為に特注した品で、とても上質なのだという。
だけどねサヌ羅さん、本人の意見ってものもあるでしょう。色柄ぐらい聞いてあげてよ……
「薫様は……あれだな、元々こういうのが似合う質だから本当に綺麗だったが……俺は、こういうのはちょっと……」
んーとドサクサに紛れてなんか褒められた気がしないでもありません。
「似合う似合わないで言えと言われたら、似合ってますよ、これは本心です。……ただ、カジャルさんはあれなんでしょう?こういう色が好きじゃないってことでしょう?」
カジャルさんは溜息をつきながら全身朱色の着物や袴、そして長い裾の紗羽織を見やる。
美しい地模様が花とかでなく文様なのが唯一の救いとは言えない?……かな。
「あと、やらされるのが嫌いとか、そういう性格でもありますもんね」
カジャルさんはハッとして顔を上げて嫌なものを見るように見つめてきた。
「なんだよ、……俺の頭覗くんじゃねえよ……」
「でも、腹をくくるしかないですよ、僕の時みたいに各国の王侯貴族が列席しているわけでもなく、家族と知り合いばかりです、それに皆お祝いしたくて集まってるんですからね」
僕は、もう一度長い長い溜息をつくカジャルさんの手を引いて立たせた。
僕よりも数段背が高いカジャルさんに見下ろされる。
光源氏とか……そういうのが具体化したらこんなだったのかもな。
ほんとに綺麗なんだよなあ、喋らなければ。
「それから、衣装が朱色だからって、女に変装してるようには見えませんよ、僕の国では赤色はヒーローの色でした、ヒーローってのは英雄とかそういう意味ですよ」
「おい、うそだろ?ほんとか?」
「はい、嘘じゃないですよ、昔から赤色が真ん中に立つって決まってるんですからね」
僕の頭に戦隊モノシリーズが浮かんでいたのは内緒だ。
「それにほら、カジャルさんは背も高くて体もがっしりしてるし、かっこいいんですから、とっても見栄えがしますよ……自信もって!」
僕はそのままカジャルさんを先導して歩き出した。
もちろん手を取ったままだ。
どうしてって?
これは花嫁の付添人に僕がなっているから!
この風習はラハーム王国のものなのだそうで、花嫁の一番の理解者となる同性が当日仕度の終えた花嫁を呼びに行き、花婿のところまで案内するのだ。
なんだか光栄な役割である。
そしてその僕が着ているのは白い着物に水色の袴、そして紗羽織は紺色だ。
すっかりこの寒色が僕カラーになっちゃって侍女たちはこの色を集めているみたい。
「……まあ、そうだな」
憂い顔で渋々ながら歩き出すカジャルさんを元気づけながら僕は手を引く。
そして森の神殿に続く美しい並木道のところまで来ると、2人の美丈夫が見えた。
一人は光り輝く白銀の麗しい僕の夫!蘭紗様も今日は僕とお揃いの青系でまとめた衣装だ。
そしてもう一人は涼鱗さん……なんだけど。
僕はふふっと笑う。
「ほらね……心配ないでしょ?朱色がその人の魅力を更に引き出すこともあるんだってことですよ、さあ」
僕はカジャルさんをうっとりと眺める涼鱗さんにカジャルさんの手を引き渡す。
「……なんでだよ、涼鱗までそんな色にしなくても……」
「ん、そう?私はこの色好きなんだよ、せっかく紗国の人になったんだからこっちの衣装をって母にも言われていてね、それで色々悩んでこの色にしたんだよ、似合う?」
カジャルさんは呆然としていたが、真っ赤な顔をしてうつむいてしまった。
「似合うよ……涼鱗は何着ても似合うにきまってるだろ?」
「ありがとうカジャル、君もきれいだ。僕の花嫁」
僕は蘭紗様と並んで並木道に並ぶ2人を見つめた。
2人とも、同じ生地で作られたお揃いの晴れ着姿だ。
生地は涼鱗さんのお母様から打診があって、サヌ羅さんからラハーム王国に献上したのだそうだ。
だから同じ織り柄に同じ染め色……なのだ。
涼鱗さんは色白で髪は長く白い、それが朱色に映えて素晴らしく美しかった。
二匹の鳳凰がいるようなのだ。
鮮やかで美しい光景で、そして、日本人から見たら、とってもおめでたい紅白!
蘭紗様を見上げると、フッと笑顔で目を合わせてくれた。
「さあ、2人とも、さっさと神殿に迎え」
「ちょっと……新郎新婦にその声掛けはないんじゃない?」
涼鱗さんは不満気に口をとがらせながらもカジャルさんとゆっくりと歩き出した。
僕たちも2人でゆっくりとその後ろを付き添う。
さらに、その後に近衛がいるのは仕方ない……ゆるしてね。
でも誰がいようと2人の世界は邪魔できそうにない。
先日聞かされたのは、カジャルさんの寿命は約100年として、涼鱗さんたち蛇族は200年以上……人によってはそれ以上の寿命があるのだと。
涼鱗さんにとって、カジャルさんを亡くしてからの人生の方が長くなってしまうのだ。
長命で知られるエルフ族や龍族、そして蛇族たちは他の種族とほぼ混じり合わない。
伴侶に先立たれるのが耐えられないからだと言われている。
だが、それを知りつつそれでもと望んだ二人の気持ちを双方の親は笑顔で受け止めたという。
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