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紺碧の海
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この世界には大小を含めおおよそ52の国がある。
そのうちの50国が盟約を交わし平和を約束している。
戦乱の世であったのはもう500年も昔のことらしい。
平和を約束していない残りの二つの国は龍族の国ヴァヴェルと、阿羅国だ。
ヴァヴェルが盟約を交わしていないのは、龍と人間がそもそもが生きる尺度が違いすぎて意思の疎通も難しく、関わることもほぼないので必要なしと判断されたらしいのだ……
龍族たちも人間の営みには全く興味がなくて、あちらからすればこちらの事などどうでもいいという具合らしい。
つまり、現在きな臭いのは『阿羅国』だけだったわけだ。
その阿羅国のことが片付いたことで、元々歴史が一番長くて尊敬されていた紗国への信頼はますます厚くなっている。
その阿羅彦討伐ともいえる一連のことを国際的な場で蘭紗様は話さなければならない。
一方的に紗国からの宣戦布告無しの戦争行為と取られないように、喜紗さんがきちんと色々手を回し国を動かしていたので、紗国に落ち度は全くない。
今僕たちの懸念は波羽彦さんのことだった。
彼が被害者だったという証拠集めは当初かなり難しかったが、阿羅彦の陰で力を吸い取りながら、およそ200年生きている影の支配者がいたことが分かった。
ここ150年ほどは阿羅彦の意識はまだらで、きちんとした思考が出来ない時間の方が多かった。
それを利用して時の王を操り、自分の私利私欲のために国を動かしていた影の支配者の摘発で、事態は大きく動いた。
僕を救出しに皆さんが来てくれた時に、僕と波羽彦さんのいる離れを爆撃したのが、その一軍だったというわけだ。
◆
人の寿命をはるかに超えた150才のその人は、始め阿羅彦の近くにいてお世話をする侍従だったそうだ。
だが懸命にお世話をしていく中でその人は気づいた……
それはたまたま失敗した時に起こったという。
阿羅彦から漏れ出る黒い液体を掃除したあと、阿羅彦の体もきれいにふき取り、そしてそれら汚物ともいえる液体の入った桶を持って捨てに行く途中、足元が滑りそれらを頭からかぶってしまったのだ。
その人はあまりの悪臭にむせ、一瞬気を失いそうになったが……それでも必死にまだきれいな布きれを取り出し必死に自分の体を拭き、そして廊下を拭いた。
上役が来てこれを見られれば怒られる、それだけは避けたくて必死にふき取った。
その場はうまくごまかせたが、城のお仕着せまでどっぷりと黒い液体のシミがついてしまっているので、人の目を盗んで水場に急いだ。
口の中に強烈な汚物の匂いとザラザラした舌触りが残り、粘つく感触が寒気を誘い、何度も体を震わせながら吐き気を押さえ、必死で水をかぶった。
そしてそばにあった桶を洗うタワシを手に取り、ガシガシと体を磨く、赤くなるのも構わず顔も何もかもタワシで。
口の中は何度うがいしてもその味はいつまでも残った。
そして次の日異変に気付いたのだ。
起きて手洗いに行って、鏡を見て驚いた。
自分の顔が若返っている。
今年24才のはずなのにどう見ても13才くらいになっている。
一瞬まだ夢を見ているのかと思って両手を見て、両足を見て、そして着物を脱いで体を見た。
どこもかしこも若返り、そして手に感じるこれはなんだ?
熱い塊を手のひらに感じた。
その人は何気なくその手を鏡に向けてブンと振ってみた。
鏡に向けて赤い炎が出て、そして鏡は砕け散った……砕け散った鏡はすごい勢いでこちらに飛んできて、瞬間恐ろしくて目を瞑ったが、いつまでも痛くならないことに気づいて目を開けた。
するとそこにあったのは、砕け散った鏡の残骸が自分の近くで止まってる姿だった。
破片だけが時が止まっているように宙に浮いていた。
焦って手で払うと、その鏡の破片は思い出したように下にバラバラっと落ちた。
能力……異能と呼ばれるなにかが、その人に宿った瞬間だった。
◆
「すっごい気持ちいいい!!!」
「んー!久しぶりの船だ!」
僕とカジャルさんは甲板の上でバンザイをして空気を吸った。
なにこれ気持ちいい!
見渡す限り青い海……凪いだ海はどこまでも広がって、空と溶け合っている。
アオアイ王国での国際会議に向けて出発した紗国の一行は、国が所有する一番大きな船と軍艦2隻で移動中なのだ。
僕は船は体調面が不安で乗ったことがなくて、ほぼこれが初めて。
しかもちょっと向こう岸に渡るとか、そういうのではなくて、ゆったり4日かけて向かうのだ。
船旅だなんて!!
「んーーーーーー!なんて気持ちいいの!」
「薫様は、そればかりじゃないか。違う感想言えないのか」
「いい笑顔で憎まれ口叩いても怖くないし」
「……は?」
僕とカジャルさんは2人で船を見学がてらぎゃーぎゃー言いながら走り回った。
ゆったりとした長椅子に寝そべる涼鱗さんがフルーツをつまみながらニコニコして見ている。
「ねえ、君たちってさ……なんだか、子供みたいだよねえ」
「は?」
立ち止まってカジャルさんが涼鱗さんを睨む。
僕はその隙にカジャルさんの持っていた飲み物を取り上げ全部飲み干した。
「あ、おい!それ俺だろ!」
「自分が悪いでしょう?よそ見したんだから」
「いいからこっちおいでよお、飲み物はまだまだあるんだからねえ」
涼鱗さんが嬉しそうに僕たちを呼ぶ。
カジャルさんも僕もはしゃぐのをやめて、南国風に設えた日よけ傘の下に向かう。
そして、籐の長椅子に腰掛けた。
僕は涼鱗さんと対面する形に、カジャルさんは当然のように涼鱗さんの隣に。
「ふふ」
「何だよ……」
「夫婦ってかんじ!」
「うるさいなあ、お前らだってそうだろうが……」
「まあまあ、ほんと君たち仲良しなんだから、妬けちゃうねえ」
涼鱗さんは笑顔のまま僕たちに飲み物とフルーツを勧めてくれた。
「これはさ、新婚旅行も兼ねているんだからね、ちょっとは夫を顧みてくれないと……」
カジャルさんはジュースをウっとのどに詰まらせそうになりながら、目を白黒させた。
「……なんだよ、別にないがしろにしてるわけじゃないだろ?」
「ん、わかってるけど、カジャルが足りないよ」
「……」
カジャルさんはもはや何も言わず、黙ってフルーツを食べ始めた。
僕は船室の方を見つめた。
そこに波羽彦さんはいて、今蘭紗様と喜紗さんと3人で打ちあわせ中なのだ。
波羽彦さんは紗国預かりのような形で証人として会議に出席する。
はじめは裁判所で裁かれるのだと思っていたらしいのだが、紗国調べで波羽彦さんの容疑はほぼ晴れた事により、各国からの同情も寄せられている。
阿羅国再建はほぼ確実に波羽彦さんに任せられることになるだろう。
「心配?」
涼鱗さんが声をかけてくれた。
白い肌を焼かないために美しい紗の長い羽織を着こんで、長椅子に座る姿はまるで天女のようにも見える。
「ん……心配ってことはないかな?僕は難しいことまではわからないけど、ほぼ無実は認められたんでしょ?」
「そうだな、それを正式に認める為だけに会議が開かれるようなものだな」
「蘭紗も早く来ればいいのに、これ」
涼鱗さんは美しいタイル貼りのプールを指さす。
円形に広がるプールは真水が張られ、涼し気に太陽の光に輝いている。
「うん、早く泳ぎたいなあ」
「でもまあ、今回の一番の目的なんだから、打ちあわせにはもうちょっと時間かかるんじゃ?」
「なら先にはいっちゃう?」
「それもありだねえ」
涼鱗さんとカジャルさんはニヤリと笑う。
僕は嫌な予感を感じてフルーツを取ろうと伸ばした手を引っ込めた。
「へ?」
「ふふ」
2人は僕の両脇に瞬間的に移動して、ふわっと僕を抱えて「えーーい」って僕をプールに投げた。
僕は宙に浮き慌てて何もできずにプールにそのままボチャンと落ちてしまった。
意外に深いプールは飛び込むにはちょうどいい感じで、落ちた体はずぶずぶ沈んでいく。
投げ入れられたために、鼻に水がはいってツーンと痛くて、もがきながら顔をプハーって水からやっとこさ出すと2人とも大笑いで僕を見ていた。
「ちょっと!!くー!鼻がいたい!」
「ぷははは!」
「いやあ、いい飛び込みでした!」
「だから!なんでこんなことするの!」
「んー普通に飛翔したらよかったのにさ」
「……あ、そうか」
僕の普通は飛ばないのが普通なんですよね、いつまでたっても……
「んじゃ皆で泳ごう!」
カジャルさんは素早く着物を脱いで水泳パンツになって、全身を包む紗羽織を来ている涼鱗さんを引っ張る。
涼鱗さんも羽織を脱いで侍女に預け、2人とも飛び込んできた。
ああ、この世界にもあるんですよ、水泳パンツ。
僕もこのままじゃ泳ぎにくいので、一旦出て、ついてきてくれた真野と仙に濡れた着物を預けた。
僕の貧相な体が太陽を浴びてのびのびと気持ちよくなる。
ああ、太陽の光の気持ちよさなんて……初めて感じるかも。
体の弱い僕にとって直射日光は避けるべきものだったからね。
「あーほんとにきもちいーね、泳ぐっていいね、しかも船の上で!」
「ほんとだねぇ、船はめったに乗らないし貴重だねえ」
涼鱗さんも船旅でご機嫌なのだ。
「おい、我を待たずにか……」
寂しそうな声がしたと思ったら、蘭紗様がプール脇に立って腕を組んで見下ろしていた。
「早くー蘭紗様も!」
僕が呼んだら嬉しそうに笑みをこぼしてすぐに着物を脱いで入ってくれた。
そして水の中で僕を抱きしめる。
頬と頬が当たって、男らしく美しい我が夫の肌触りにうっとりする。
「話し合いは終わりましたか?」
「ああ、波羽彦は休んでいる、……なんでも船に弱いらしい」
「えー」
「まあ、新婚旅行なんだからさ、私たち4人の。ゆっくりしよう、ね?」
涼鱗さんの言葉に蘭紗様はゆっくりと頷いた、嬉しそうに。
僕たちは侍女達が心配して陽避けの中で休憩してくれと言われても、そのまま遊んだ。
抜けるような青空に、美しい海、そして気持ちの良いプール。
僕たちは最高に幸せな瞬間を過ごしたんだ。
そのうちの50国が盟約を交わし平和を約束している。
戦乱の世であったのはもう500年も昔のことらしい。
平和を約束していない残りの二つの国は龍族の国ヴァヴェルと、阿羅国だ。
ヴァヴェルが盟約を交わしていないのは、龍と人間がそもそもが生きる尺度が違いすぎて意思の疎通も難しく、関わることもほぼないので必要なしと判断されたらしいのだ……
龍族たちも人間の営みには全く興味がなくて、あちらからすればこちらの事などどうでもいいという具合らしい。
つまり、現在きな臭いのは『阿羅国』だけだったわけだ。
その阿羅国のことが片付いたことで、元々歴史が一番長くて尊敬されていた紗国への信頼はますます厚くなっている。
その阿羅彦討伐ともいえる一連のことを国際的な場で蘭紗様は話さなければならない。
一方的に紗国からの宣戦布告無しの戦争行為と取られないように、喜紗さんがきちんと色々手を回し国を動かしていたので、紗国に落ち度は全くない。
今僕たちの懸念は波羽彦さんのことだった。
彼が被害者だったという証拠集めは当初かなり難しかったが、阿羅彦の陰で力を吸い取りながら、およそ200年生きている影の支配者がいたことが分かった。
ここ150年ほどは阿羅彦の意識はまだらで、きちんとした思考が出来ない時間の方が多かった。
それを利用して時の王を操り、自分の私利私欲のために国を動かしていた影の支配者の摘発で、事態は大きく動いた。
僕を救出しに皆さんが来てくれた時に、僕と波羽彦さんのいる離れを爆撃したのが、その一軍だったというわけだ。
◆
人の寿命をはるかに超えた150才のその人は、始め阿羅彦の近くにいてお世話をする侍従だったそうだ。
だが懸命にお世話をしていく中でその人は気づいた……
それはたまたま失敗した時に起こったという。
阿羅彦から漏れ出る黒い液体を掃除したあと、阿羅彦の体もきれいにふき取り、そしてそれら汚物ともいえる液体の入った桶を持って捨てに行く途中、足元が滑りそれらを頭からかぶってしまったのだ。
その人はあまりの悪臭にむせ、一瞬気を失いそうになったが……それでも必死にまだきれいな布きれを取り出し必死に自分の体を拭き、そして廊下を拭いた。
上役が来てこれを見られれば怒られる、それだけは避けたくて必死にふき取った。
その場はうまくごまかせたが、城のお仕着せまでどっぷりと黒い液体のシミがついてしまっているので、人の目を盗んで水場に急いだ。
口の中に強烈な汚物の匂いとザラザラした舌触りが残り、粘つく感触が寒気を誘い、何度も体を震わせながら吐き気を押さえ、必死で水をかぶった。
そしてそばにあった桶を洗うタワシを手に取り、ガシガシと体を磨く、赤くなるのも構わず顔も何もかもタワシで。
口の中は何度うがいしてもその味はいつまでも残った。
そして次の日異変に気付いたのだ。
起きて手洗いに行って、鏡を見て驚いた。
自分の顔が若返っている。
今年24才のはずなのにどう見ても13才くらいになっている。
一瞬まだ夢を見ているのかと思って両手を見て、両足を見て、そして着物を脱いで体を見た。
どこもかしこも若返り、そして手に感じるこれはなんだ?
熱い塊を手のひらに感じた。
その人は何気なくその手を鏡に向けてブンと振ってみた。
鏡に向けて赤い炎が出て、そして鏡は砕け散った……砕け散った鏡はすごい勢いでこちらに飛んできて、瞬間恐ろしくて目を瞑ったが、いつまでも痛くならないことに気づいて目を開けた。
するとそこにあったのは、砕け散った鏡の残骸が自分の近くで止まってる姿だった。
破片だけが時が止まっているように宙に浮いていた。
焦って手で払うと、その鏡の破片は思い出したように下にバラバラっと落ちた。
能力……異能と呼ばれるなにかが、その人に宿った瞬間だった。
◆
「すっごい気持ちいいい!!!」
「んー!久しぶりの船だ!」
僕とカジャルさんは甲板の上でバンザイをして空気を吸った。
なにこれ気持ちいい!
見渡す限り青い海……凪いだ海はどこまでも広がって、空と溶け合っている。
アオアイ王国での国際会議に向けて出発した紗国の一行は、国が所有する一番大きな船と軍艦2隻で移動中なのだ。
僕は船は体調面が不安で乗ったことがなくて、ほぼこれが初めて。
しかもちょっと向こう岸に渡るとか、そういうのではなくて、ゆったり4日かけて向かうのだ。
船旅だなんて!!
「んーーーーーー!なんて気持ちいいの!」
「薫様は、そればかりじゃないか。違う感想言えないのか」
「いい笑顔で憎まれ口叩いても怖くないし」
「……は?」
僕とカジャルさんは2人で船を見学がてらぎゃーぎゃー言いながら走り回った。
ゆったりとした長椅子に寝そべる涼鱗さんがフルーツをつまみながらニコニコして見ている。
「ねえ、君たちってさ……なんだか、子供みたいだよねえ」
「は?」
立ち止まってカジャルさんが涼鱗さんを睨む。
僕はその隙にカジャルさんの持っていた飲み物を取り上げ全部飲み干した。
「あ、おい!それ俺だろ!」
「自分が悪いでしょう?よそ見したんだから」
「いいからこっちおいでよお、飲み物はまだまだあるんだからねえ」
涼鱗さんが嬉しそうに僕たちを呼ぶ。
カジャルさんも僕もはしゃぐのをやめて、南国風に設えた日よけ傘の下に向かう。
そして、籐の長椅子に腰掛けた。
僕は涼鱗さんと対面する形に、カジャルさんは当然のように涼鱗さんの隣に。
「ふふ」
「何だよ……」
「夫婦ってかんじ!」
「うるさいなあ、お前らだってそうだろうが……」
「まあまあ、ほんと君たち仲良しなんだから、妬けちゃうねえ」
涼鱗さんは笑顔のまま僕たちに飲み物とフルーツを勧めてくれた。
「これはさ、新婚旅行も兼ねているんだからね、ちょっとは夫を顧みてくれないと……」
カジャルさんはジュースをウっとのどに詰まらせそうになりながら、目を白黒させた。
「……なんだよ、別にないがしろにしてるわけじゃないだろ?」
「ん、わかってるけど、カジャルが足りないよ」
「……」
カジャルさんはもはや何も言わず、黙ってフルーツを食べ始めた。
僕は船室の方を見つめた。
そこに波羽彦さんはいて、今蘭紗様と喜紗さんと3人で打ちあわせ中なのだ。
波羽彦さんは紗国預かりのような形で証人として会議に出席する。
はじめは裁判所で裁かれるのだと思っていたらしいのだが、紗国調べで波羽彦さんの容疑はほぼ晴れた事により、各国からの同情も寄せられている。
阿羅国再建はほぼ確実に波羽彦さんに任せられることになるだろう。
「心配?」
涼鱗さんが声をかけてくれた。
白い肌を焼かないために美しい紗の長い羽織を着こんで、長椅子に座る姿はまるで天女のようにも見える。
「ん……心配ってことはないかな?僕は難しいことまではわからないけど、ほぼ無実は認められたんでしょ?」
「そうだな、それを正式に認める為だけに会議が開かれるようなものだな」
「蘭紗も早く来ればいいのに、これ」
涼鱗さんは美しいタイル貼りのプールを指さす。
円形に広がるプールは真水が張られ、涼し気に太陽の光に輝いている。
「うん、早く泳ぎたいなあ」
「でもまあ、今回の一番の目的なんだから、打ちあわせにはもうちょっと時間かかるんじゃ?」
「なら先にはいっちゃう?」
「それもありだねえ」
涼鱗さんとカジャルさんはニヤリと笑う。
僕は嫌な予感を感じてフルーツを取ろうと伸ばした手を引っ込めた。
「へ?」
「ふふ」
2人は僕の両脇に瞬間的に移動して、ふわっと僕を抱えて「えーーい」って僕をプールに投げた。
僕は宙に浮き慌てて何もできずにプールにそのままボチャンと落ちてしまった。
意外に深いプールは飛び込むにはちょうどいい感じで、落ちた体はずぶずぶ沈んでいく。
投げ入れられたために、鼻に水がはいってツーンと痛くて、もがきながら顔をプハーって水からやっとこさ出すと2人とも大笑いで僕を見ていた。
「ちょっと!!くー!鼻がいたい!」
「ぷははは!」
「いやあ、いい飛び込みでした!」
「だから!なんでこんなことするの!」
「んー普通に飛翔したらよかったのにさ」
「……あ、そうか」
僕の普通は飛ばないのが普通なんですよね、いつまでたっても……
「んじゃ皆で泳ごう!」
カジャルさんは素早く着物を脱いで水泳パンツになって、全身を包む紗羽織を来ている涼鱗さんを引っ張る。
涼鱗さんも羽織を脱いで侍女に預け、2人とも飛び込んできた。
ああ、この世界にもあるんですよ、水泳パンツ。
僕もこのままじゃ泳ぎにくいので、一旦出て、ついてきてくれた真野と仙に濡れた着物を預けた。
僕の貧相な体が太陽を浴びてのびのびと気持ちよくなる。
ああ、太陽の光の気持ちよさなんて……初めて感じるかも。
体の弱い僕にとって直射日光は避けるべきものだったからね。
「あーほんとにきもちいーね、泳ぐっていいね、しかも船の上で!」
「ほんとだねぇ、船はめったに乗らないし貴重だねえ」
涼鱗さんも船旅でご機嫌なのだ。
「おい、我を待たずにか……」
寂しそうな声がしたと思ったら、蘭紗様がプール脇に立って腕を組んで見下ろしていた。
「早くー蘭紗様も!」
僕が呼んだら嬉しそうに笑みをこぼしてすぐに着物を脱いで入ってくれた。
そして水の中で僕を抱きしめる。
頬と頬が当たって、男らしく美しい我が夫の肌触りにうっとりする。
「話し合いは終わりましたか?」
「ああ、波羽彦は休んでいる、……なんでも船に弱いらしい」
「えー」
「まあ、新婚旅行なんだからさ、私たち4人の。ゆっくりしよう、ね?」
涼鱗さんの言葉に蘭紗様はゆっくりと頷いた、嬉しそうに。
僕たちは侍女達が心配して陽避けの中で休憩してくれと言われても、そのまま遊んだ。
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僕たちは最高に幸せな瞬間を過ごしたんだ。
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