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透明な花1
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出発前のちょっとした合間にアイデン王に頼んで充電してもらったのは、桜さんの携帯電話だ。
桜さんとは、昔のお嫁様の名前。
お菓子職人だったのか、数多くのお菓子のレシピを残しているんだよ。
「なるほど、薫が持っているスマホよりも画面が小さいな」
「そうですね、これは少し前の形でしょう、電源は……これか」
僕は電源ボタンらしきものを長押ししてみた。
少し角に色が欠けたところがある以外、ほとんど痛みがないので、もしかして画面がつくかも……と期待したのだけど……
「ん……もしかして駄目かも……」
「そう、なのか……」
「残念だな」
研究所のメンバーは皆がっかりだ。
「中を検分して故障箇所を見つけられないだろうか?」
「ん……と、この中身をですか?ちょっと無理かな……」
「もうさ、このまま置いておいても仕方ないからさ、これを分解してもらうってのはどう?カメラ技師に」
「ああ、あの技師さんなら、何かつかめるかもしれませんね」
んーかなりのオーバーテクノロジーだと思うんだけど……理解できるんだろうか……
「とりあえず、そうするとして、その許可は誰に取るんです?」
「そんなの薫に決まってる」
「え?」
研究所のメンバーは僕を見つめてうんうんと頷く。
「うそおー」
「嘘ではない。実際に君は王妃だ、この国の2番手なのだからね……まあ蘭紗に許可を願うのもいいが、別に薫の好きにしろと言うだけだろうしな」
まあ、それはわかる……。
「どうしましょう?カメラ技師に連絡を取りましょうか?」
僕は窓の外を見た。
相変わらず降り続ける雨はいつしかまた雨脚が強くなっている。
「こういう機械は水に弱いんです、もう一度保存魔法をかけてもらえますか?それから雨の季節が終わってから、頼むとしましょう」
「そうだな」
そこでお昼ごはんの時間になったようで、チリンと鈴の音がした。
「本日の昼食は食堂でございます、皆様準備はできておりますので」
呼びに来てくれたのは、ラハーム王妃が涼鱗さんの結婚の際にこちらに寄越したという侍女だった。
よく見ると肌の色の白さや、背の高いところ、ケモ耳や尾がないなど僕にでも蛇族だなとわかる特徴がみられた。
独特の美しい佇まいと所作で、侍女だというのに姫のような優雅さだ。
「彼女は、王妃様がこちらへ寄越したって聞きましたよ?」
「おや、薫は早耳だね、そうだよ、彼女は私が赤子の頃から世話してくれているメイドだ」
「えええ?赤子ですって?年上なのです?」
「うむ……まあ蛇族は年齢がわかりにくいからな……元々私がラハームを出る時に一人だけ連れてきていたのだが、私が結婚したから侍女が一人では何かと困るだろうと母が気を利かせてくれたのだ」
「更に紗国からも2人派遣されたから、急に侍女が増えたんだよな……まぁ涼鱗の立場からしたらこれでも地味なくらいかな」
カジャルさんも少し声を落として話してくれた。
多分あれだ、人が増えてめんどくさいって思ってるんだね、カジャルさん……わかるよ。
「あれ?研究員の方たちは?」
「ああ、彼らは家から弁当を持参してくるのだ。我ら王族とは違うからな。あ、私はもう王族ではないのか……」
「いえ、涼鱗さんは紗国の王族でしょ、今は」
「なんか準王族とか言われてたね……なんだろうね、あれ」
カジャルさんも苦笑いだ。
「仕方ないでしょ、大国の王子さまだった人なんだから、単なる国民にはなれませんよ」
「そうなのかな?」
3人でごにょごにょ話しながら歩いていると、少し日が差してくることに気づいた。
「さっきも少し晴れ間があったし、そろそろ秋の嵐の時期も終わりでしょうか?」
「そうだな……んー……まだ油断はならないと思うが、ちょっとずつこうやって晴れ間がのぞくようにはなるさ」
「なるほどねえ」
僕と涼鱗さんはしげしげと庭を見やった。
食堂に入ると完全に晴れた日の日差しがきれいに食事を彩っていて、キラキラしている。
「あーすっごく気が晴れる!」
「わかります!」
カジャルさんは、雨ばかり続いて鬱々していた僕たちを笑った。
「あれ?子供たち?」
見るとテラスの向こうの道を子供達が15人ぐらい歩いているのが見えた。
雨に濡れた美しい森の脇道をぴょこぴょこしている。
年の頃は日本で言えば小学生低学年ぐらいかな、いろんな体格の子がいるので学年バラバラなのかもしれない。
先頭に立つ引率の先生は男性で、背の高い人だった。
「翠!」
僕はその中に翠を見つけて思わずテラスに飛び出て手を振る。
一番前をちょこちょこと小さな体で一生懸命歩く姿……あれ絶対に、翠!
「翠!」
大きな声で呼んだものだから行列は止まってしまった。
生徒たちは先生共々こちらをじっと見つめてきた。
翠もきょとんとしながら顔をこちらに向けた。
ああ、翠だ!こんなところから見てもかわいい……断然かわいい……
あ、隣にいるの、留紗?
留紗もかわいい!
「え、翠紗様なの?留紗様もいるじゃないか、校外授業かな?」
カジャルさんも観察している。
「そういえば毎年この時期に子供らがここを通るねえ、どこかに行くのかな」
この研究所に住んで3年目となる涼鱗さんが首を傾げた。
「ああ、そうか今の時期なら……」
カジャルさんが何かに気づいたようなので顔をみていると、後ろから声をかけられた。
「お初にお目にかかります、まさか薫様がこちらにおいでとは知らずに、目の前を横切るなど失礼をいたしました」
丁寧に頭を下げて挨拶してくれたのは、いつの間にか近くまで歩み寄っていた引率の教員だった。
「いえいえ!僕が勝手に授業の邪魔をしてしまったようで、申し訳ありません」
「邪魔だなんてそのようなことありません」
顔を上げた教員は褐色の肌に白い長髪の背の高い人だった。
切れ長の青い目がきれいだ。
「王妃様、お初にお目にかかります、城の学び舎で教師をしております、ラージでございます」
丁寧でキレイな礼をしてくれて見惚れてしまうようだ。
「あら?もしかしてあなた……まさかだけどエルフでは?」
涼鱗さんは目を見開いてラージ先生を凝視した。
桜さんとは、昔のお嫁様の名前。
お菓子職人だったのか、数多くのお菓子のレシピを残しているんだよ。
「なるほど、薫が持っているスマホよりも画面が小さいな」
「そうですね、これは少し前の形でしょう、電源は……これか」
僕は電源ボタンらしきものを長押ししてみた。
少し角に色が欠けたところがある以外、ほとんど痛みがないので、もしかして画面がつくかも……と期待したのだけど……
「ん……もしかして駄目かも……」
「そう、なのか……」
「残念だな」
研究所のメンバーは皆がっかりだ。
「中を検分して故障箇所を見つけられないだろうか?」
「ん……と、この中身をですか?ちょっと無理かな……」
「もうさ、このまま置いておいても仕方ないからさ、これを分解してもらうってのはどう?カメラ技師に」
「ああ、あの技師さんなら、何かつかめるかもしれませんね」
んーかなりのオーバーテクノロジーだと思うんだけど……理解できるんだろうか……
「とりあえず、そうするとして、その許可は誰に取るんです?」
「そんなの薫に決まってる」
「え?」
研究所のメンバーは僕を見つめてうんうんと頷く。
「うそおー」
「嘘ではない。実際に君は王妃だ、この国の2番手なのだからね……まあ蘭紗に許可を願うのもいいが、別に薫の好きにしろと言うだけだろうしな」
まあ、それはわかる……。
「どうしましょう?カメラ技師に連絡を取りましょうか?」
僕は窓の外を見た。
相変わらず降り続ける雨はいつしかまた雨脚が強くなっている。
「こういう機械は水に弱いんです、もう一度保存魔法をかけてもらえますか?それから雨の季節が終わってから、頼むとしましょう」
「そうだな」
そこでお昼ごはんの時間になったようで、チリンと鈴の音がした。
「本日の昼食は食堂でございます、皆様準備はできておりますので」
呼びに来てくれたのは、ラハーム王妃が涼鱗さんの結婚の際にこちらに寄越したという侍女だった。
よく見ると肌の色の白さや、背の高いところ、ケモ耳や尾がないなど僕にでも蛇族だなとわかる特徴がみられた。
独特の美しい佇まいと所作で、侍女だというのに姫のような優雅さだ。
「彼女は、王妃様がこちらへ寄越したって聞きましたよ?」
「おや、薫は早耳だね、そうだよ、彼女は私が赤子の頃から世話してくれているメイドだ」
「えええ?赤子ですって?年上なのです?」
「うむ……まあ蛇族は年齢がわかりにくいからな……元々私がラハームを出る時に一人だけ連れてきていたのだが、私が結婚したから侍女が一人では何かと困るだろうと母が気を利かせてくれたのだ」
「更に紗国からも2人派遣されたから、急に侍女が増えたんだよな……まぁ涼鱗の立場からしたらこれでも地味なくらいかな」
カジャルさんも少し声を落として話してくれた。
多分あれだ、人が増えてめんどくさいって思ってるんだね、カジャルさん……わかるよ。
「あれ?研究員の方たちは?」
「ああ、彼らは家から弁当を持参してくるのだ。我ら王族とは違うからな。あ、私はもう王族ではないのか……」
「いえ、涼鱗さんは紗国の王族でしょ、今は」
「なんか準王族とか言われてたね……なんだろうね、あれ」
カジャルさんも苦笑いだ。
「仕方ないでしょ、大国の王子さまだった人なんだから、単なる国民にはなれませんよ」
「そうなのかな?」
3人でごにょごにょ話しながら歩いていると、少し日が差してくることに気づいた。
「さっきも少し晴れ間があったし、そろそろ秋の嵐の時期も終わりでしょうか?」
「そうだな……んー……まだ油断はならないと思うが、ちょっとずつこうやって晴れ間がのぞくようにはなるさ」
「なるほどねえ」
僕と涼鱗さんはしげしげと庭を見やった。
食堂に入ると完全に晴れた日の日差しがきれいに食事を彩っていて、キラキラしている。
「あーすっごく気が晴れる!」
「わかります!」
カジャルさんは、雨ばかり続いて鬱々していた僕たちを笑った。
「あれ?子供たち?」
見るとテラスの向こうの道を子供達が15人ぐらい歩いているのが見えた。
雨に濡れた美しい森の脇道をぴょこぴょこしている。
年の頃は日本で言えば小学生低学年ぐらいかな、いろんな体格の子がいるので学年バラバラなのかもしれない。
先頭に立つ引率の先生は男性で、背の高い人だった。
「翠!」
僕はその中に翠を見つけて思わずテラスに飛び出て手を振る。
一番前をちょこちょこと小さな体で一生懸命歩く姿……あれ絶対に、翠!
「翠!」
大きな声で呼んだものだから行列は止まってしまった。
生徒たちは先生共々こちらをじっと見つめてきた。
翠もきょとんとしながら顔をこちらに向けた。
ああ、翠だ!こんなところから見てもかわいい……断然かわいい……
あ、隣にいるの、留紗?
留紗もかわいい!
「え、翠紗様なの?留紗様もいるじゃないか、校外授業かな?」
カジャルさんも観察している。
「そういえば毎年この時期に子供らがここを通るねえ、どこかに行くのかな」
この研究所に住んで3年目となる涼鱗さんが首を傾げた。
「ああ、そうか今の時期なら……」
カジャルさんが何かに気づいたようなので顔をみていると、後ろから声をかけられた。
「お初にお目にかかります、まさか薫様がこちらにおいでとは知らずに、目の前を横切るなど失礼をいたしました」
丁寧に頭を下げて挨拶してくれたのは、いつの間にか近くまで歩み寄っていた引率の教員だった。
「いえいえ!僕が勝手に授業の邪魔をしてしまったようで、申し訳ありません」
「邪魔だなんてそのようなことありません」
顔を上げた教員は褐色の肌に白い長髪の背の高い人だった。
切れ長の青い目がきれいだ。
「王妃様、お初にお目にかかります、城の学び舎で教師をしております、ラージでございます」
丁寧でキレイな礼をしてくれて見惚れてしまうようだ。
「あら?もしかしてあなた……まさかだけどエルフでは?」
涼鱗さんは目を見開いてラージ先生を凝視した。
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