159 / 317
僕たちの気持ち1
しおりを挟む
あれから10日経った……紗国の秋はそろそろ終わりを迎えようとしている、そんな時期だ。
「先代のお嫁様はまだ、名前も教えてくれないの?」
僕の質問に仙は困ったように微笑んだ。
仙のお母さん達は呼び出しを受けた翌日、里を飛び出るようにして城に戻ってきてお嫁様のお世話しているという。
とっくに侍女を引退していて、里でゆっくりと暮らしていたというのに、人生設計が無茶苦茶になったよね。
彼女達は普通の侍女達にはない知識が詰め込まれているため、どんな世界から来ても、言葉や文化などある程度は対応できるというけど……
と、聞いてそういえばと思った。
僕は言葉に対して何の支障もなかったなあって……
これは特殊能力でこの様に普通に喋れているのか、それとも元々こちらの言語が日本語と同じだったのか……
考えても答えは出ないけど、漢字が使われていることからも日本語と同じか似ていると考えて良さそうだな……とは思う。
都合が良すぎる気はするけど、そこで躓くのはきついから本当に良かった……
「母たちはまだ、何かをお聞きするような段階ではないと思っているようです」
「そうなんだね……」
今日は研究所のお休みの日で、涼鱗さんとカジャルさんは夫婦でカジャルさんのご実家に行っている。
そして翠は学び舎なので……自動的に僕は暇なのだ。
なので、各地からの嘆願書などに目を通している。
王妃である僕の元には各地から様々なお願いが舞い込むのだ。
「侍女長、よろしいでしょうか? 先代のお嫁様付きの侍女方が、薫様にお会いしたいと」
「え……」
里亜の言葉に、仙の眉間に皺が寄った。
「うん、わかったよ」
僕は仙の変化に気づかないふりをして彼女たちを部屋に通した。
流れるように美しい動作で4人が入室してきて、丁寧な自己紹介と礼を受けた。
「わざわざ会いにきてくれてありがとう。そちらのお嫁様はどうかな?」
「はい……それが……さきほどこの世界の事や、成り行きなどの告知を受けられまして。ようやく異世界にいることを認識されました……」
「そうなの?」
仙の母親が娘とよく似た顔をあげて、困ったように笑顔になった。
「なんでも、薫様となら話してみたいと呟いておられたのです」
「え……ほんとう?」
僕は身を乗り出して仙の母親をじっと見た。
「はい。ですので、薫様さえよろしければ……ということになりますが。少しお時間をいただけたらと思いまして」
「うん、もちろんだよ。僕も話したいと思っていたんだ」
「ああ、よかった」
4人の侍女たちは顔を見合わせて喜んだ。
「今からでもいいのかな?」
「はい、今なら起きておいでです」
「じゃあ、いこうか」
僕は立ち上がって仙を見た。
仙はじっと自分の母を見ていたが、すっと動いて僕に羽織を持ってきた。
このところ随分と気温が下がってきて部屋から出るときには羽織が手放せないのだ。
「では、お供いたしますね」
仙が静かにささいた。
「うん、お願いするよ」
僕は仙だけを連れて明かりの灯された廊下を歩く、その後ろには4人の先代の侍女たちが静かに続いた。
雨の降る音が響き、昼間なのに日も差さず、ひんやりとして……心の重さを現しているかのような陰鬱さだ。
「薫様がいらっしゃいました」
次の間から寝室に向けて、仙の母はしずかに障子の向こうに声をかけた。
「うん、どうぞ」
はっきりとした男の人の声が聞こえて、僕だけが中に入るよう促された。
仙は自分もと入りかけたが、母に制され押し黙った。
僕は仙に「大丈夫だよ」と頷いてから、一人で入室していく。
「失礼します……お初にお目にかかります、紗国王妃の薫と申します」
部屋の中は薄暗くて明かりもベッドから遠くに一つ置いてあるだけだった。
「ああ……君」
ベッドには大きなクッションを背に座っている痩せた男の姿があった。
気だるげに背をもたれさせ、今起きたばかりのような表情でこちらを見ている。
「君も、そうなんだって?こっちに連れてこられたって聞いたけどさ」
「連れてこられたというか……運命ですね。誰かの仕業ではなくて、世界を渡ってきました」
痩せた男は、フッとさもおかしそうに笑って首を弱々しく振った。
「日本とか言うところから来たんだって?そんな名前聞いたこともないんだけど」
「では……あなたはどこから?」
「僕は、ウルってところに住んでいたよ」
「では、地球ではないところなんですね……」
「ちきゅう?」
不思議そうな顔をして聞き返された。
「先代のお嫁様はまだ、名前も教えてくれないの?」
僕の質問に仙は困ったように微笑んだ。
仙のお母さん達は呼び出しを受けた翌日、里を飛び出るようにして城に戻ってきてお嫁様のお世話しているという。
とっくに侍女を引退していて、里でゆっくりと暮らしていたというのに、人生設計が無茶苦茶になったよね。
彼女達は普通の侍女達にはない知識が詰め込まれているため、どんな世界から来ても、言葉や文化などある程度は対応できるというけど……
と、聞いてそういえばと思った。
僕は言葉に対して何の支障もなかったなあって……
これは特殊能力でこの様に普通に喋れているのか、それとも元々こちらの言語が日本語と同じだったのか……
考えても答えは出ないけど、漢字が使われていることからも日本語と同じか似ていると考えて良さそうだな……とは思う。
都合が良すぎる気はするけど、そこで躓くのはきついから本当に良かった……
「母たちはまだ、何かをお聞きするような段階ではないと思っているようです」
「そうなんだね……」
今日は研究所のお休みの日で、涼鱗さんとカジャルさんは夫婦でカジャルさんのご実家に行っている。
そして翠は学び舎なので……自動的に僕は暇なのだ。
なので、各地からの嘆願書などに目を通している。
王妃である僕の元には各地から様々なお願いが舞い込むのだ。
「侍女長、よろしいでしょうか? 先代のお嫁様付きの侍女方が、薫様にお会いしたいと」
「え……」
里亜の言葉に、仙の眉間に皺が寄った。
「うん、わかったよ」
僕は仙の変化に気づかないふりをして彼女たちを部屋に通した。
流れるように美しい動作で4人が入室してきて、丁寧な自己紹介と礼を受けた。
「わざわざ会いにきてくれてありがとう。そちらのお嫁様はどうかな?」
「はい……それが……さきほどこの世界の事や、成り行きなどの告知を受けられまして。ようやく異世界にいることを認識されました……」
「そうなの?」
仙の母親が娘とよく似た顔をあげて、困ったように笑顔になった。
「なんでも、薫様となら話してみたいと呟いておられたのです」
「え……ほんとう?」
僕は身を乗り出して仙の母親をじっと見た。
「はい。ですので、薫様さえよろしければ……ということになりますが。少しお時間をいただけたらと思いまして」
「うん、もちろんだよ。僕も話したいと思っていたんだ」
「ああ、よかった」
4人の侍女たちは顔を見合わせて喜んだ。
「今からでもいいのかな?」
「はい、今なら起きておいでです」
「じゃあ、いこうか」
僕は立ち上がって仙を見た。
仙はじっと自分の母を見ていたが、すっと動いて僕に羽織を持ってきた。
このところ随分と気温が下がってきて部屋から出るときには羽織が手放せないのだ。
「では、お供いたしますね」
仙が静かにささいた。
「うん、お願いするよ」
僕は仙だけを連れて明かりの灯された廊下を歩く、その後ろには4人の先代の侍女たちが静かに続いた。
雨の降る音が響き、昼間なのに日も差さず、ひんやりとして……心の重さを現しているかのような陰鬱さだ。
「薫様がいらっしゃいました」
次の間から寝室に向けて、仙の母はしずかに障子の向こうに声をかけた。
「うん、どうぞ」
はっきりとした男の人の声が聞こえて、僕だけが中に入るよう促された。
仙は自分もと入りかけたが、母に制され押し黙った。
僕は仙に「大丈夫だよ」と頷いてから、一人で入室していく。
「失礼します……お初にお目にかかります、紗国王妃の薫と申します」
部屋の中は薄暗くて明かりもベッドから遠くに一つ置いてあるだけだった。
「ああ……君」
ベッドには大きなクッションを背に座っている痩せた男の姿があった。
気だるげに背をもたれさせ、今起きたばかりのような表情でこちらを見ている。
「君も、そうなんだって?こっちに連れてこられたって聞いたけどさ」
「連れてこられたというか……運命ですね。誰かの仕業ではなくて、世界を渡ってきました」
痩せた男は、フッとさもおかしそうに笑って首を弱々しく振った。
「日本とか言うところから来たんだって?そんな名前聞いたこともないんだけど」
「では……あなたはどこから?」
「僕は、ウルってところに住んでいたよ」
「では、地球ではないところなんですね……」
「ちきゅう?」
不思議そうな顔をして聞き返された。
13
あなたにおすすめの小説
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる