狐の国のお嫁様 ~紗国の愛の物語~

真白 桐羽

文字の大きさ
181 / 317

ゆきやまとおとうさま2 翠紗視点

しおりを挟む
このお話は『ゆきやまとおとうさま1』の続きの2です。
予約投稿がうまくいかず、投稿されないままになっていました。
順番は逆になりますが、こちらに入れておきます。
そのうち、順番は入れ替えます。


--------------------------


「え?」

振り向くと、白い手が僕の足をつかんでいた。

「やだ!やめて!」

僕はじたじたしてそれを振り払おうとしたけれど、おとうさまを抱きしめながらは無理だった。

「きみ……まさか……」
「しゃべった!」

僕はこわくて震えながらおとうさまを抱きしめる。
いつの間にか体は元の人に戻っていて、もう「きりん」じゃなかった。

「ああ、済まない、驚かせたね……もう、体全部を出現させるほど、魔力が残ってなくてね……でも、会えてよかった、きみ、霊獣だろう?」
「だれなの?!」

僕は怖くてガクガク震えながら必死におとうさまを抱きしめて、そして白い手を見つめた。

「私は山の守り神だよ。すまないね、こんなことになって……私の力が薄らいだせいで、この地方はもう終わりだ、山を制御できない」
「え?かみさま……」

白い手はもう僕の足をつかんでいなかった、そして雪の上にこてんと転がっている。
手しかなくて怖いけど……なんだかとってもさみしそう。

「だから、強い魔力の男を見てその魔力を少し貸してもらおうとしたのだけど……すまないね。失敗したみたいだ」
「えと……」
「ふふ……君はまだ幼いんだね。その強い魔力の男はお前の父なのか?」
「おとうさまは、紗国のおうさまです」
「は……はは……なるほどねえ」

僕は転がる手に少し触れて見た。
冷たくて氷のようだった。

「さむくない?」
「霊獣と話すのは初めてだよ。優しい心を持っているんだね、だけどどうして霊獣が獣人を父と呼ぶのだ?そなたはこちら側の者だろうに」
「僕は、おとうさまが王になったときに、ずいちょうとして現れたの。そしておとうさまとおかあさまに育ててもらってるの」
「瑞兆……」

白い手は人差し指だけをくるっと回して透明な膜で僕たちをおおってくれた。
雪がふきつけなくなって、少し寒さもやわらいだみたい。

「私は、その男から少しだけ魔力をいただくつもりが、全部吸い取ってしまったようなんだ。だけどこの通り……私はまだ全身を顕現させられないのだがな……とりあえず、申し訳なかった、謝るよ。そして君たちを麓まで送るよ」
「おとうさまの魔力、もどりますか?」
「もどるよ、君がいれば」
「僕……」
「そう、君だ。ああそれからね、麓の人に話してくれ、すぐに私のお社に祈りと供物を捧げてほしいと、私が力を取り戻せるよう……まあもう遅いかもしれないが……」
「力がとりもどせないと、どうなるの?」
「私が消えればこの辺りは人が住めなくなる、不可侵の森となり、魔獣のすみかとなるだろう」
「まじゅう……」

僕は家畜小屋で聞いた遠吠えを思い出してぶるっとした。

「あの……手だけでここにひとりでのこるの?いっしょにくる?」
「ははは……かわいいことを言うね」

白い手は僕の足をそっと撫でてくれた、ひんやりとしているけど今度は不思議と暖かさも感じた。

「私はね、この山自体なんだよ、だから動けないんだ、さあ、送るよ、すまなかったね」

キンっと高く美しい音が鳴り響いて、僕は思わず目をつむった。
そして急にあったかくなって「?」と思って目を開けておどろいたの。

だって、目の前におとうさまの近衛さんたちがぼうぜんと立っていたから。

「翠紗様!!な!それは陛下では!」
「うん、山の神様から戻してもらったの、魔力吸い取っちゃってごめんなさいって」
「なんですと????」

近衛さんたちはびっくりしてたけど、おとうさまの様子を見て顔色を変えてバタバタと動き出した。
裸だった僕もぐっしょり濡れた全身を拭かれ、どこからか持ってきてくれた子供用の着物に着せ替えてくれた。
おとうさまはお布団に寝かされているけれど、まだ目をつむったまま。

「翠紗様!……その……なぜ翠紗様がここに?」

肩から大きな布で巻かれた近衛たいちょうさんが、額に汗を垂らしながら走りよってきた。

「んと……お城で寝ていたら、おとうさまの声でもうだめかもしれないって、頭の中に聞こえてきてね、それでね、気がついたら山にいたの、雪がこんなにたくさんで」

僕は手で大きさを現してみた。

「声がきこえ……?」
「たいちょうさん、おケガですか?」

僕は近衛たいちょうさんの肩を指差した。

「はい……陛下と共に視察に山を見下ろしていた時に、私だけが弾き飛ばされて町外れに倒れていたのです、部下が見つけてくれまして」
「いたい?」
「大丈夫でございますよ、これしき、すぐに治ります」
「そうなの?」
「はい、それより陛下でございますよ、ここには良い医師がおりませぬ。急ぎ城に使者を送りましたので、すぐに来てくださるとは思いますが」
「えとね、山の神様がね、おとうさまには僕がついていれば魔力戻るって」
「ええええ?かみさま?」
「うん」

近衛たいちょうさんは目をぐるぐるさせながら僕の話を聞いてくれた。

「つまり……人々の信心が足りず、神格を失いそうになっておられるのか……」
「?」

僕は首をかしげた。

「翠紗様……本当に……陛下を助けていただいて感謝いたします。私は近衛の役目を果たせず面目ないことですが……」
「はやくおケガなおしてね」

よくわからないけどニッコリしたら嬉しそうにしてくれた。
その後僕は町の人が作ってくれたあたたかいお味噌汁とおにぎりをもらって美味しく食べた。

でも、ほんとはおかあさまのおかゆがたべたいな。

そして、おとうさまの隣に敷かれたお布団に入った。
お布団のすきまから手を出して、おとうさまの手をにぎろうとしたけれど、とどかない……
僕はさみしくなっておとうさまのお布団にそっと入り込んだ。
そしてすっかりあったまってきたおとうさまにピタっとひっついて、大きな腕にだきついておとうさまの顔をじっと見た。

ほんのりと明かりの付いたお部屋で、おとうさまのきれいでかっこいい顔が見える。

「僕、おとうさまのこと守れたかな?」

へへっと笑って僕も目を閉じた。

しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。  ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公

処理中です...