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白き手の神1
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うっすらとした明かりの中、見知らぬ部屋に寝かされていることに気づいた。
我はどれくらい寝ていたのか……
腕に暖かいものがあることに気づきふと横を見ると、翠紗の小さなかわいらしい顔があり驚く。
可愛い寝息がすうすうと聞こえ、むにゃむにゃと口を動かしてうっすら笑顔を浮かべたりしている。
なんともかわいらしい。
我は翠紗の頬を起こさないようそっと撫でる。
最近ふっくらとしてきて肌もすべすべだ。
そしてもう一度部屋を見渡して、どうしてここにいるのか考えた。
……そうだ雪山!
そして思わず飛び起きてしまって、腕に絡みついていた小さな翠紗がコロンと布団から飛び出てしまった。
慌てて翠紗を抱き寄せた。
「陛下?」
音に気づいたのか、廊下にいたらしい近衛隊長が腕に包帯を巻いた姿で顔を出した。
「ああ、隊長……無事であったか」
「そんな!わたしのことより陛下です!息も絶え絶えのところを翠紗様が陛下をお助けくださり」
「は?」
我はわけが分からず、転がってもなお腕の中で眠る息子を見た。
「どういうことだ?」
「私はあの時、陛下のすぐ横を飛んでいましたのに、一人だけ透明の壁にでもぶち当たったかのように弾き飛ばされて意識を失いまして……町外れで倒れていたそうなんですよ」
「なに……」
「それでこの有様なんですけどね……そしてですね。この長老の家を貸し切り、陛下の捜索をしていましたところ、びしょ濡れで裸の翠紗様が陛下と共にこの屋敷に突然現れたのです」
「……」
「私はその時別室にいましたので、報を聞き急いで翠紗様の元に飛んでまいりましたら、なんでも、雪の中に埋もれている陛下を掘り出したら、白い手が陛下の足を握っていて、その手が話し始め」
「……そうだ白い手!……そうだった、確かに我はそれを見たぞ」
「ええ、そしてその手は、この山の神だと名乗られ、この山から信仰が消えつつあることで神格が維持できず、なんとか魔力を補充したいと思っていたところ、強い力の陛下を見つけられ、必死に縋り付いたとのことです」
「なんと……」
我は山の神の存在は知っていた……ふくよかな女神で山だけでなく、春になれば田植えや苗を見守り、秋の豊穣をもたらしてくれる……そのように習った。
「しかし……我とともに雪の下にいたということは……」
「はい、陛下の魔力を吸い取ってもなお、まだ足りず、手しか顕現できない状態であられるようです。そしてすぐにお社に祈りと供物をお願いしたいと仰せでございます」
「……そうか……それを、翠紗が?」
「ええ……」
近衛隊長は柔らかに笑み、まるで自分の孫を自慢するかのように誇らしげに翠紗の様子を語りだした。
「それはもう、寒さでガタガタと震えながらも陛下を離さず、助けようとなされて。……山では一生懸命雪をかきわけ、陛下を助け出されたのでしょうなあ……そして町の者が作った簡単なお食事を終えられた後も、陛下のおそばでずっとご一緒に……そう言えば、山の神は陛下の魔力は翠紗様がそばにいれば元通りになると仰せだったようですよ」
我は自分の体からすべての魔力が失われたあの恐ろしい感覚を覚えている。
指先ひとつ動かせなかったあの悪夢……
しかし、今はどうだ。
まるでいつも通りではないか……
これを翠紗が……
「んにゃ……」
翠紗が眠たそうに少し目を開いてむにゃむにゃ言いながら我を見つめ、そしてにっこり笑った。
「おとうさま……おきた」
それだけ言って、そしてまた寝てしまった……
おとうさま……か。
我は腕の中の小さなぬくもりが愛おしくてたまらなかった。
「しかし……どのようにしてここに来たのだ?」
「なんでも……陛下の声が頭に響いたんだそうです。それで気がついたら雪山にいたそうです」
「……なんと……」
やはり、普通の子ではないのだな……
しかし、そなたは我の大事な息子だ。
「城へは報せを?ここに翠紗がいるということは、薫がさぞかし心配しているであろう」
「ええ、陛下と翠紗様がここに現れてすぐに」
「そうか、ならば……隊長も少し休むがいい。我も息子ともう少し寝よう。起きたら長老を呼んでくれ、話をせねばならんだろう」
「了解いたしました」
隊長は安心したようにその場を静かに去った。
「翠紗……」
我は腕の中で眠る子を我の横に寝かせ、自分も横になった。
上掛けをきっちりとかけてやり、顔をじっと見る。
うっすらとした明かりの中でもしっかりと見える、かわいらしい寝顔。
この寝顔には見覚えがあった……薫だ。
この子は薫に似ている。
色はまるで違うので普段は気づかなかったが……薄明かりの中で寝ている姿を見て初めて気づいた。
そなたは確かに我らの子なのだな。
心の中が暖かいもので満たされていく。
来てくれてありがとう、翠紗。
翠紗の寝顔を見ているうちにいつしか眠りに落ちていった。
我はどれくらい寝ていたのか……
腕に暖かいものがあることに気づきふと横を見ると、翠紗の小さなかわいらしい顔があり驚く。
可愛い寝息がすうすうと聞こえ、むにゃむにゃと口を動かしてうっすら笑顔を浮かべたりしている。
なんともかわいらしい。
我は翠紗の頬を起こさないようそっと撫でる。
最近ふっくらとしてきて肌もすべすべだ。
そしてもう一度部屋を見渡して、どうしてここにいるのか考えた。
……そうだ雪山!
そして思わず飛び起きてしまって、腕に絡みついていた小さな翠紗がコロンと布団から飛び出てしまった。
慌てて翠紗を抱き寄せた。
「陛下?」
音に気づいたのか、廊下にいたらしい近衛隊長が腕に包帯を巻いた姿で顔を出した。
「ああ、隊長……無事であったか」
「そんな!わたしのことより陛下です!息も絶え絶えのところを翠紗様が陛下をお助けくださり」
「は?」
我はわけが分からず、転がってもなお腕の中で眠る息子を見た。
「どういうことだ?」
「私はあの時、陛下のすぐ横を飛んでいましたのに、一人だけ透明の壁にでもぶち当たったかのように弾き飛ばされて意識を失いまして……町外れで倒れていたそうなんですよ」
「なに……」
「それでこの有様なんですけどね……そしてですね。この長老の家を貸し切り、陛下の捜索をしていましたところ、びしょ濡れで裸の翠紗様が陛下と共にこの屋敷に突然現れたのです」
「……」
「私はその時別室にいましたので、報を聞き急いで翠紗様の元に飛んでまいりましたら、なんでも、雪の中に埋もれている陛下を掘り出したら、白い手が陛下の足を握っていて、その手が話し始め」
「……そうだ白い手!……そうだった、確かに我はそれを見たぞ」
「ええ、そしてその手は、この山の神だと名乗られ、この山から信仰が消えつつあることで神格が維持できず、なんとか魔力を補充したいと思っていたところ、強い力の陛下を見つけられ、必死に縋り付いたとのことです」
「なんと……」
我は山の神の存在は知っていた……ふくよかな女神で山だけでなく、春になれば田植えや苗を見守り、秋の豊穣をもたらしてくれる……そのように習った。
「しかし……我とともに雪の下にいたということは……」
「はい、陛下の魔力を吸い取ってもなお、まだ足りず、手しか顕現できない状態であられるようです。そしてすぐにお社に祈りと供物をお願いしたいと仰せでございます」
「……そうか……それを、翠紗が?」
「ええ……」
近衛隊長は柔らかに笑み、まるで自分の孫を自慢するかのように誇らしげに翠紗の様子を語りだした。
「それはもう、寒さでガタガタと震えながらも陛下を離さず、助けようとなされて。……山では一生懸命雪をかきわけ、陛下を助け出されたのでしょうなあ……そして町の者が作った簡単なお食事を終えられた後も、陛下のおそばでずっとご一緒に……そう言えば、山の神は陛下の魔力は翠紗様がそばにいれば元通りになると仰せだったようですよ」
我は自分の体からすべての魔力が失われたあの恐ろしい感覚を覚えている。
指先ひとつ動かせなかったあの悪夢……
しかし、今はどうだ。
まるでいつも通りではないか……
これを翠紗が……
「んにゃ……」
翠紗が眠たそうに少し目を開いてむにゃむにゃ言いながら我を見つめ、そしてにっこり笑った。
「おとうさま……おきた」
それだけ言って、そしてまた寝てしまった……
おとうさま……か。
我は腕の中の小さなぬくもりが愛おしくてたまらなかった。
「しかし……どのようにしてここに来たのだ?」
「なんでも……陛下の声が頭に響いたんだそうです。それで気がついたら雪山にいたそうです」
「……なんと……」
やはり、普通の子ではないのだな……
しかし、そなたは我の大事な息子だ。
「城へは報せを?ここに翠紗がいるということは、薫がさぞかし心配しているであろう」
「ええ、陛下と翠紗様がここに現れてすぐに」
「そうか、ならば……隊長も少し休むがいい。我も息子ともう少し寝よう。起きたら長老を呼んでくれ、話をせねばならんだろう」
「了解いたしました」
隊長は安心したようにその場を静かに去った。
「翠紗……」
我は腕の中で眠る子を我の横に寝かせ、自分も横になった。
上掛けをきっちりとかけてやり、顔をじっと見る。
うっすらとした明かりの中でもしっかりと見える、かわいらしい寝顔。
この寝顔には見覚えがあった……薫だ。
この子は薫に似ている。
色はまるで違うので普段は気づかなかったが……薄明かりの中で寝ている姿を見て初めて気づいた。
そなたは確かに我らの子なのだな。
心の中が暖かいもので満たされていく。
来てくれてありがとう、翠紗。
翠紗の寝顔を見ているうちにいつしか眠りに落ちていった。
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