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それぞれが抱えるもの2
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屋敷の裏には山があって、木々の香りが入り込んでくる。
僕は縁側を開け放ち、少し冷たい風がゆるやかに吹く中で深呼吸した。
お風呂で火照った身体に気持ちいい……
食事前に少しだけバイオリンを弾くことにして、仙に用意を頼んだ。
なにしろ、大仕事が待ってるからね!指を休めていられない。
今回は、阿羅国から来ているバイオリンの製作家も一人同行してもらっているので、なにもかも準備万端で手渡される。
アオアイでの演奏会は、僕にとって久しぶりの大舞台になる……というか、生まれてはじめての僕の名前で人を呼ぶ演奏会になったのかもね。
今まではコンクールや発表会程度だったから。
それでも国際的なコンクールに出たときなどは各界の大物が何人もいて、子供ながらに緊張したことを覚えている。
でも今回はその比ではない。
世界中の王族が集まって、僕の演奏を楽しみにしているんだ。
だけど……国際会議がメインイベントで、その後の後夜祭みたいなもの!と自分で納得させている。
そうでも思わないと、生きた心地がしない。
紗国ではあまり馴染みがないようだが、この世界にもピアノがある。
今回はその演奏者が僕の伴奏をしてくれるらしい。
僕は4ヶ月前に演奏者に楽譜を送っているが、その彼のプロフィールを見ると、なんとルカリスト王国の人だった。
ルカリスト王国と聞くと、どうしても思い出すのがサスラス王子だ。
アオアイの迎賓館でいきなり窓から入ってきたあの熊族の荒々しい人。
あの人が僕に与えたイメージがそのままルカリスト王国のイメージになってしまっている。
実際皆に聞いても、そのイメージは間違っていないようだ。
でも、あの時サスラス王子は言ったんだよね。
『今の音楽、素晴らしいねえ……誰が奏でていたの?』って。
最初は僕目的で侵入したのではなくて、本当に音楽に惹きつけられてたのかな……
なんとなくそう思った。
あの時は直前にあった毒事件もあって、必要以上に怖がりすぎてしまったかもしれない。
人の居住区に無断でベランダから侵入する王子も王子だけど……
それに、その後の態度も相当変人だったけどね!
「薫……練習すると聞いたんだけど、私らも聞いていいかな?」
涼鱗さんとカジャルさんが部屋にやってきて穏やかに微笑んだ。
その姿を見て翠が喜んでタタタっと駆け寄り、カジャルさんに抱き上げられている。
「もちろんですよ、防音必要でなければこのまま弾いてもいいでしょうか?周りにお屋敷はないみたいですし」
「ああ、このままで構わないよ、皆、音色を聞きたいだろう」
蘭紗様の言葉に皆も頷いてくれた。
「今度は伴奏がつくらしいね」
「この曲には独奏もあるんですけど、阿羅国にいたバイオリニストのお嫁様が伴奏付きの楽譜を残してくれていたんですよ、せっかくなのでそちらをと思って」
「なるほど、しかしピアノか……なんだか久しぶりだよねえ……学園のころ、よく弾いてたじゃないかアイツ」
「え?どなたがですか?」
「……んと、サスラス王子だよ」
カジャルさんが言いにくそうに呟いた。
翠に耳を引っ張られているが、されるがままにしている。
「え……サスラス王子はやっぱり……本当に音楽がお好きだったんですか?」
「ルカリスト王国ってのも不思議だよな、あれほど荒々しい気性の者が多いのに、音楽が盛んで多くの音楽家を出しているんだよ」
「ピアノもルカリストにしかないんですか?」
「いや、そんなことはないぞ、たまたま紗国では雅楽が盛んだから他の楽器が入る余地がなかっただけだ。これからはバイオリンに親しむ者も多くなるだろうし、ピアノだってそうだ」
「なんだか……意外……」
「うむ、それは皆思っているさ」
4人がケラケラ笑う中、翠だけはキョトンとしている。
「じゃあ弾くね」
僕は愛する蘭紗様を見つめながら音を奏でる。
愛する人にこの気持が届きますように、僕の心がいつもあなたのそばにいると、わかってもらえますように。
山が迫る美しい庭に静かに流れ出るバイオリンの音は、墨色に染められていく空に広がっていった。
遠くに見える小さな月が、美しく水色に輝き冷たい色の光を届けてくれる。
その光を浴びてキラッと翻り、クーちゃんが現れて僕は微笑んだ。
弾き終わって、すぐに楽譜を確認する、気になる所を羽ペンでチェックしてあるのだ。
そこは気をつけないといけない箇所。
最後のレッスンの時に、先生に言われたことを思い出す。
『薫君は心で弾くってことを理解できる人に、きっとなれます。』
先生の柔和な笑顔を思い出す。
お元気にしてらっしゃるだろうか……
「ああ、薫……本当に君の演奏は素晴らしいねぇ、私は君のバイオリンが本当に好きだよ」
涼鱗さんの声でハッとして顔をあげた。
興奮した様子の涼鱗さんとカジャルさん、そしてどこか誇らしげな侍女たちの中に、美しい蘭紗様が柔らかな笑顔を浮かべてじっと僕を見つめていた。
「クルゥ」譜面台に止まっていた小鳥姿のクーちゃんも鳴いている。
「あ、ごめんなさい、曲について考え込んでしまって」
「いいんだよ、僕らがお邪魔してる立場なんだからねえ……存分に練習してくれ。でも、蘭紗は本当に幸せだね。この曲はきっと、蘭紗への気持ちを歌い上げたものなんだろう?」
「え……と、そうです……」
僕は恥ずかしくて顔に熱が集まるのを感じた。
僕は縁側を開け放ち、少し冷たい風がゆるやかに吹く中で深呼吸した。
お風呂で火照った身体に気持ちいい……
食事前に少しだけバイオリンを弾くことにして、仙に用意を頼んだ。
なにしろ、大仕事が待ってるからね!指を休めていられない。
今回は、阿羅国から来ているバイオリンの製作家も一人同行してもらっているので、なにもかも準備万端で手渡される。
アオアイでの演奏会は、僕にとって久しぶりの大舞台になる……というか、生まれてはじめての僕の名前で人を呼ぶ演奏会になったのかもね。
今まではコンクールや発表会程度だったから。
それでも国際的なコンクールに出たときなどは各界の大物が何人もいて、子供ながらに緊張したことを覚えている。
でも今回はその比ではない。
世界中の王族が集まって、僕の演奏を楽しみにしているんだ。
だけど……国際会議がメインイベントで、その後の後夜祭みたいなもの!と自分で納得させている。
そうでも思わないと、生きた心地がしない。
紗国ではあまり馴染みがないようだが、この世界にもピアノがある。
今回はその演奏者が僕の伴奏をしてくれるらしい。
僕は4ヶ月前に演奏者に楽譜を送っているが、その彼のプロフィールを見ると、なんとルカリスト王国の人だった。
ルカリスト王国と聞くと、どうしても思い出すのがサスラス王子だ。
アオアイの迎賓館でいきなり窓から入ってきたあの熊族の荒々しい人。
あの人が僕に与えたイメージがそのままルカリスト王国のイメージになってしまっている。
実際皆に聞いても、そのイメージは間違っていないようだ。
でも、あの時サスラス王子は言ったんだよね。
『今の音楽、素晴らしいねえ……誰が奏でていたの?』って。
最初は僕目的で侵入したのではなくて、本当に音楽に惹きつけられてたのかな……
なんとなくそう思った。
あの時は直前にあった毒事件もあって、必要以上に怖がりすぎてしまったかもしれない。
人の居住区に無断でベランダから侵入する王子も王子だけど……
それに、その後の態度も相当変人だったけどね!
「薫……練習すると聞いたんだけど、私らも聞いていいかな?」
涼鱗さんとカジャルさんが部屋にやってきて穏やかに微笑んだ。
その姿を見て翠が喜んでタタタっと駆け寄り、カジャルさんに抱き上げられている。
「もちろんですよ、防音必要でなければこのまま弾いてもいいでしょうか?周りにお屋敷はないみたいですし」
「ああ、このままで構わないよ、皆、音色を聞きたいだろう」
蘭紗様の言葉に皆も頷いてくれた。
「今度は伴奏がつくらしいね」
「この曲には独奏もあるんですけど、阿羅国にいたバイオリニストのお嫁様が伴奏付きの楽譜を残してくれていたんですよ、せっかくなのでそちらをと思って」
「なるほど、しかしピアノか……なんだか久しぶりだよねえ……学園のころ、よく弾いてたじゃないかアイツ」
「え?どなたがですか?」
「……んと、サスラス王子だよ」
カジャルさんが言いにくそうに呟いた。
翠に耳を引っ張られているが、されるがままにしている。
「え……サスラス王子はやっぱり……本当に音楽がお好きだったんですか?」
「ルカリスト王国ってのも不思議だよな、あれほど荒々しい気性の者が多いのに、音楽が盛んで多くの音楽家を出しているんだよ」
「ピアノもルカリストにしかないんですか?」
「いや、そんなことはないぞ、たまたま紗国では雅楽が盛んだから他の楽器が入る余地がなかっただけだ。これからはバイオリンに親しむ者も多くなるだろうし、ピアノだってそうだ」
「なんだか……意外……」
「うむ、それは皆思っているさ」
4人がケラケラ笑う中、翠だけはキョトンとしている。
「じゃあ弾くね」
僕は愛する蘭紗様を見つめながら音を奏でる。
愛する人にこの気持が届きますように、僕の心がいつもあなたのそばにいると、わかってもらえますように。
山が迫る美しい庭に静かに流れ出るバイオリンの音は、墨色に染められていく空に広がっていった。
遠くに見える小さな月が、美しく水色に輝き冷たい色の光を届けてくれる。
その光を浴びてキラッと翻り、クーちゃんが現れて僕は微笑んだ。
弾き終わって、すぐに楽譜を確認する、気になる所を羽ペンでチェックしてあるのだ。
そこは気をつけないといけない箇所。
最後のレッスンの時に、先生に言われたことを思い出す。
『薫君は心で弾くってことを理解できる人に、きっとなれます。』
先生の柔和な笑顔を思い出す。
お元気にしてらっしゃるだろうか……
「ああ、薫……本当に君の演奏は素晴らしいねぇ、私は君のバイオリンが本当に好きだよ」
涼鱗さんの声でハッとして顔をあげた。
興奮した様子の涼鱗さんとカジャルさん、そしてどこか誇らしげな侍女たちの中に、美しい蘭紗様が柔らかな笑顔を浮かべてじっと僕を見つめていた。
「クルゥ」譜面台に止まっていた小鳥姿のクーちゃんも鳴いている。
「あ、ごめんなさい、曲について考え込んでしまって」
「いいんだよ、僕らがお邪魔してる立場なんだからねえ……存分に練習してくれ。でも、蘭紗は本当に幸せだね。この曲はきっと、蘭紗への気持ちを歌い上げたものなんだろう?」
「え……と、そうです……」
僕は恥ずかしくて顔に熱が集まるのを感じた。
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