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演奏会
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サラッとした暖かい風が吹いてきて僕のおでこの前髪がさらわれた。
まだ少し濡れているのを真野が真剣に乾かしつつクセづけていく。
今は肩甲骨まで伸びた髪が丁寧に編み込まれ、美しく結い上げられて、高い位置でポニーテールになった。
そして、僕にちなんだアイテムとして紗国で流行ってるらしい長くて美しい鳥の尾羽が飾られ、更に組紐で結ばれた。
そして頭頂部に王妃の冠としては一番小さいものが飾られる。
小さいとはいえ素晴らしい意匠できらめく宝石も数多く配されてそれはそれは美しい。
冠の地金は細く繊細に植物のツルのようになっているので、本当に軽い。
僕は試しに頭を振ってみる。
全く支障ない……
ストレスなく弾けそうで安心した。
お化粧は舞台だから遠慮できそうにないのが非常に残念だけど……フルですると僕が嫌がるのを知っている真野は、おしろいと頬紅を省き、目元と唇に朱を乗せた。
「さあ、お立ちください薫様」
侍女達が眩しそうな顔で僕をじっと見つめて溜息をついた。
「まあ……ほんとうに……ほんとうにお美しいです、薫様」
その言葉にフッと笑いながら椅子から立ち上がって、仙の持つ単衣の羽織に手を通す。
僕の注文したとおり、瑠璃色に染められた羽織は長い裾が床について50センチは引きずる形だ。
その裾には紗国の美しい山々や木々、草原などが描かれている。
一番下に着た白い着物から徐々に瑠璃色になっていくグラデーションは、遠くから見てもきっとキレイに映えるだろう。
「ほんとに……衣装係は頑張ってくれたよね……僕の思い描いたとおりだもの」
「いえ、そうではなく……薫様ご本人が、あまりにも美しくて」
「え?僕?」
少し驚いて目を見開いて仙を見つめたけど、他の侍女達もうっとりしていて頷いているので、居心地が悪くなってしまった。
この人達はちょっと……僕に贔屓しすぎるんだよね……
「まあ……いこっか……」
「そうでございますね」
「翠も着替えたかな?」
「はい、翠紗様はお着替えがお済みで次の間でお待ちです」
「そうなの?」
僕は長い羽織を引きずりながら歩いた、里亜がドアを開けてくれて次の間のソファにちょこんと座る翠を見つけた。
「翠、おいで」
「わあ、おかあさまきれい!」
翠は喜んで僕の腕の中に飛び込んでくる。
「そう?翠もかわいいよ」
翠も同じ素材で同じ組み合わせの着物だ、一緒に頼んだからね。
羽織には可愛らしい花の絵が描かれていた。
「じゃあいこっか」
「はい」
パタっと音がして僕の肩に鳳凰の姿でクーちゃんが止まった。
「クーちゃんその姿でいくの?」
「クルップ」
まあ……鳳凰のことはもう世界にバレているらしいから、いいかと思い直してそのまま馬車に乗り込んだ。
馬車は懐かしい風景を抜けて、港にほど近い市場のそばも通った。
そこを指差し翠に教えていると、歩く人々が皆嬉しそうに僕に手を振ってくる。
それに応えて手を振ると、翠も真似をして小さな手をフリフリしてキャッキャと笑って僕を見上げた。
こんな風に笑えるようになってくれて、本当に良かった。
アオアイの大きな城に近づき、近衛が先に城の衛兵と話をしている。
すぐには降りずに馬車で待っていると、城に仕える可愛らしい小さなリス族の侍女達が10名ほど出てきて並び、僕を迎えてくれた。
アオアイは小さな体の獣人が多くてほんとにかわいいんだよね……
頬を赤らめて嬉しそうに接してくれる。
侍女達に案内され広くて豪華な控室に入ると、すぐにおいしそうな香りの紅茶を淹れてくれた。
「ああ、ほっとする……」
僕は思わずソファーの背もたれにもたれて溜息をついた。
クーちゃんが一声鳴いて専用のとまり木に止まった。
どうやら僕が鳳凰を一緒に現れるかも?という予想もしていたらしい……さすがアオアイ……
持ち込んできたお菓子を仙が取り出すのを見て、その中からクッキーを選んで一つ口にする。
ホロっとしておいしい。
「翠も食べていいよ」
「はい!」
翠は可愛い仕草でお菓子を眺めて、ジャムのロールケーキを手にとった。
「ちょっと音出すね」
「はい、ここは防音がきいておりますので、大丈夫ですよ」
リスの侍女達が丸い絨毯の上に僕を案内してくれて、そこに立った。
そこからはベランダ越しにアオアイの港が一望できた。
美しい海を眺めながら練習をはじめる。
視線をまっすぐにアオアイの美しい風景に向けて。
身体が覚えてしまったのでもう譜面はいらない、確認することはもうないのだ。
何度も僕は気が済むまで弾いて、そしてバイオリンをケースに置いた。
「薫様、そろそろ演奏会が始まるそうです。出演の皆様もご覧になれますので、どうですか?」
リスの小さな侍女が僕を見上げて優しく話してくれる。
僕は目を細めて、うんと頷いた。
「ぜひ、見たいな」
「はい!」
翠は侍女に連れられて蘭紗様達の席に向かうというので、抱っこして頬にキスをした。
翠は耳元に小さな声で「おかあさまがんばってね」と囁いた。
僕は出演者達が集まる前室に案内され、色んな人から挨拶を受けた。
各国から集まった出演者達はほとんどが貴族階級だが、アオアイからは市井の人達の集団も出るようで、とても楽しみ。
その中に見慣れた二人がいる、ルカリスト王国のピアニストと王子だ。
二人は驚いた顔で僕をじっと見つめて、それからお互い顔を見合わせてる。
そんな二人に僕から近寄って微笑みかけた。
「今日はよろしくおねがいしますね、サスラス王子殿下」
「こ……こちらこそ、薫様」
サスラス王子は大きなたくましい身体を折り曲げて弾けるように礼をした。
そしてタレ目をこちらにちらっと向けて、口をへの字にした。
「どうかしましたか?」
「……あなたは……どうしてそんなに美しいんですか?」
「はぁ?」
本当にはぁ?である。
「ちょっと舞台に立つからおしゃれにしてるだけですって」
「いや……そういう問題だろうか……なあエサイアス……」
「フフ……殿下……平常心を失いますと、演奏に響きますよ」
「いや……失ってなどいない」
サスラス王子はとたんにバンと胸を張り、目をつぶってしかめっ面をしたが、またそのつぶらな目を開けて、ポッと顔を赤らめた。
「あの……大丈夫ですか?」
「もちろんだ……今日はしっかりと薫様の伴奏をやりきると約束しよう……なので、ステージに出る時に、手を取ってもいいだろうか?」
「え?」
「エスコートさせてほしいのだ」
僕は面食らってピアニストのエサイアスと仙を見た。
「まあ……アリでしょうか……」
「アリでしょうかね」
エサイアスも仙も微妙な微笑みで頷いてくれたので、それならとお願いした。
そして僕とサスラス王子はリスの侍女達に案内されて脇の通路から階段を上がり、ボックス席に出た。
ステージすぐ脇にある席で出演者が真下に見える位置だ。
そして各国の王族がひしめく観客の中に、翠を抱っこして座る蘭紗様の姿が見えて、小さく手を振った。
蘭紗様も翠も気がついて応えてくれる。
それだけで胸にあったかいものが流れ込んでくるようだ。
会場が暗くなり、スポットライトがあてられる中、演奏会の始まりのファンファーレが鳴り、出演者のアナウンスがされた。
誰一人知る人はいないけど、とても楽しみだ。
僕は勧められるまま天鵞絨張りの椅子に座ってステージを眺める。
一番最初に出てきたのは小さなリス族の女性と男性で構成された弦楽器のグループだった。
リュートのようなものやハープのようなもの、そしてギターのようなものもある。
音楽は市場で流れていたような南国調の異国情緒溢れたもので、日本人の僕が聞いてもなんとなく懐かしく感じるような不思議な魅力のある音楽だった。
どんどん進行していって、何人目かにあきらかに日本人っぽい顔つきの男性が出てきて、ハッとする。
アナウンスが流れ、会場から少しざわめきが聞こえた。
阿羅国のバイオリニストだった。
まだ少し濡れているのを真野が真剣に乾かしつつクセづけていく。
今は肩甲骨まで伸びた髪が丁寧に編み込まれ、美しく結い上げられて、高い位置でポニーテールになった。
そして、僕にちなんだアイテムとして紗国で流行ってるらしい長くて美しい鳥の尾羽が飾られ、更に組紐で結ばれた。
そして頭頂部に王妃の冠としては一番小さいものが飾られる。
小さいとはいえ素晴らしい意匠できらめく宝石も数多く配されてそれはそれは美しい。
冠の地金は細く繊細に植物のツルのようになっているので、本当に軽い。
僕は試しに頭を振ってみる。
全く支障ない……
ストレスなく弾けそうで安心した。
お化粧は舞台だから遠慮できそうにないのが非常に残念だけど……フルですると僕が嫌がるのを知っている真野は、おしろいと頬紅を省き、目元と唇に朱を乗せた。
「さあ、お立ちください薫様」
侍女達が眩しそうな顔で僕をじっと見つめて溜息をついた。
「まあ……ほんとうに……ほんとうにお美しいです、薫様」
その言葉にフッと笑いながら椅子から立ち上がって、仙の持つ単衣の羽織に手を通す。
僕の注文したとおり、瑠璃色に染められた羽織は長い裾が床について50センチは引きずる形だ。
その裾には紗国の美しい山々や木々、草原などが描かれている。
一番下に着た白い着物から徐々に瑠璃色になっていくグラデーションは、遠くから見てもきっとキレイに映えるだろう。
「ほんとに……衣装係は頑張ってくれたよね……僕の思い描いたとおりだもの」
「いえ、そうではなく……薫様ご本人が、あまりにも美しくて」
「え?僕?」
少し驚いて目を見開いて仙を見つめたけど、他の侍女達もうっとりしていて頷いているので、居心地が悪くなってしまった。
この人達はちょっと……僕に贔屓しすぎるんだよね……
「まあ……いこっか……」
「そうでございますね」
「翠も着替えたかな?」
「はい、翠紗様はお着替えがお済みで次の間でお待ちです」
「そうなの?」
僕は長い羽織を引きずりながら歩いた、里亜がドアを開けてくれて次の間のソファにちょこんと座る翠を見つけた。
「翠、おいで」
「わあ、おかあさまきれい!」
翠は喜んで僕の腕の中に飛び込んでくる。
「そう?翠もかわいいよ」
翠も同じ素材で同じ組み合わせの着物だ、一緒に頼んだからね。
羽織には可愛らしい花の絵が描かれていた。
「じゃあいこっか」
「はい」
パタっと音がして僕の肩に鳳凰の姿でクーちゃんが止まった。
「クーちゃんその姿でいくの?」
「クルップ」
まあ……鳳凰のことはもう世界にバレているらしいから、いいかと思い直してそのまま馬車に乗り込んだ。
馬車は懐かしい風景を抜けて、港にほど近い市場のそばも通った。
そこを指差し翠に教えていると、歩く人々が皆嬉しそうに僕に手を振ってくる。
それに応えて手を振ると、翠も真似をして小さな手をフリフリしてキャッキャと笑って僕を見上げた。
こんな風に笑えるようになってくれて、本当に良かった。
アオアイの大きな城に近づき、近衛が先に城の衛兵と話をしている。
すぐには降りずに馬車で待っていると、城に仕える可愛らしい小さなリス族の侍女達が10名ほど出てきて並び、僕を迎えてくれた。
アオアイは小さな体の獣人が多くてほんとにかわいいんだよね……
頬を赤らめて嬉しそうに接してくれる。
侍女達に案内され広くて豪華な控室に入ると、すぐにおいしそうな香りの紅茶を淹れてくれた。
「ああ、ほっとする……」
僕は思わずソファーの背もたれにもたれて溜息をついた。
クーちゃんが一声鳴いて専用のとまり木に止まった。
どうやら僕が鳳凰を一緒に現れるかも?という予想もしていたらしい……さすがアオアイ……
持ち込んできたお菓子を仙が取り出すのを見て、その中からクッキーを選んで一つ口にする。
ホロっとしておいしい。
「翠も食べていいよ」
「はい!」
翠は可愛い仕草でお菓子を眺めて、ジャムのロールケーキを手にとった。
「ちょっと音出すね」
「はい、ここは防音がきいておりますので、大丈夫ですよ」
リスの侍女達が丸い絨毯の上に僕を案内してくれて、そこに立った。
そこからはベランダ越しにアオアイの港が一望できた。
美しい海を眺めながら練習をはじめる。
視線をまっすぐにアオアイの美しい風景に向けて。
身体が覚えてしまったのでもう譜面はいらない、確認することはもうないのだ。
何度も僕は気が済むまで弾いて、そしてバイオリンをケースに置いた。
「薫様、そろそろ演奏会が始まるそうです。出演の皆様もご覧になれますので、どうですか?」
リスの小さな侍女が僕を見上げて優しく話してくれる。
僕は目を細めて、うんと頷いた。
「ぜひ、見たいな」
「はい!」
翠は侍女に連れられて蘭紗様達の席に向かうというので、抱っこして頬にキスをした。
翠は耳元に小さな声で「おかあさまがんばってね」と囁いた。
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各国から集まった出演者達はほとんどが貴族階級だが、アオアイからは市井の人達の集団も出るようで、とても楽しみ。
その中に見慣れた二人がいる、ルカリスト王国のピアニストと王子だ。
二人は驚いた顔で僕をじっと見つめて、それからお互い顔を見合わせてる。
そんな二人に僕から近寄って微笑みかけた。
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サスラス王子は大きなたくましい身体を折り曲げて弾けるように礼をした。
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「はぁ?」
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「もちろんだ……今日はしっかりと薫様の伴奏をやりきると約束しよう……なので、ステージに出る時に、手を取ってもいいだろうか?」
「え?」
「エスコートさせてほしいのだ」
僕は面食らってピアニストのエサイアスと仙を見た。
「まあ……アリでしょうか……」
「アリでしょうかね」
エサイアスも仙も微妙な微笑みで頷いてくれたので、それならとお願いした。
そして僕とサスラス王子はリスの侍女達に案内されて脇の通路から階段を上がり、ボックス席に出た。
ステージすぐ脇にある席で出演者が真下に見える位置だ。
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蘭紗様も翠も気がついて応えてくれる。
それだけで胸にあったかいものが流れ込んでくるようだ。
会場が暗くなり、スポットライトがあてられる中、演奏会の始まりのファンファーレが鳴り、出演者のアナウンスがされた。
誰一人知る人はいないけど、とても楽しみだ。
僕は勧められるまま天鵞絨張りの椅子に座ってステージを眺める。
一番最初に出てきたのは小さなリス族の女性と男性で構成された弦楽器のグループだった。
リュートのようなものやハープのようなもの、そしてギターのようなものもある。
音楽は市場で流れていたような南国調の異国情緒溢れたもので、日本人の僕が聞いてもなんとなく懐かしく感じるような不思議な魅力のある音楽だった。
どんどん進行していって、何人目かにあきらかに日本人っぽい顔つきの男性が出てきて、ハッとする。
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