狐の国のお嫁様 ~紗国の愛の物語~

真白 桐羽

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ナナ1

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 春真っ盛りの紗国……美しく咲き乱れる花々が野山を彩って、そして動物たちが活発に動き出す。

僕はバイオリン製作家達を尋ねた。
紗国の弦楽器職人達の何人かが彼らに弟子入りをして、本格的に工房が作られたのだ。

それはどこか学校のようにも見え、若い紗国の男子達が阿羅国の職人に教えを請う姿がとても頼もしく感じられた。

バイオリン製作家たちは他にもヴィオラ、チェロ、コントラバスなども作る、それらを合わせてバイオリン属と言われているのだ。
若者たちはこれから何年かかけてそれらを学ぶ。

そしていま、見習いとなった紗国人の若者達ははじめて完成まで作ったバイオリンを手に、僕の前に跪いた。

「もう出来たのですか?」

僕は驚いて彼らを見た。
後ろでは、師となって彼らを指導する阿羅国の職人親子が嬉しそうに微笑んでいた。

「ええ、この4人はとても腕がいい……紗国の伝統的な楽器は、どこかバイオリンにも通じるのでしょうね」
「なるほど……そういうこともあるんでしょう」

僕はその一つを受け取り、さっそく弓を構えた。
音を出してみると良い音が出る。

「あぁ……さすがでございます……薫様が奏でるとどんなものでも素晴らしい音色になります……」
「本当に……」

作った若者は僕を見て涙ぐんだ。

「いえいえ!そんな!大げさですって。……でも、バイオリンは奏でる人次第だというのはある意味僕もそう思いますけどね」

そう言って照れ隠しにそのまま好きな曲を一曲弾いて、若者に返した。

「一挺目なんですから、記念でしょう。大切にね」
「ありがとうございます!」
「もっと学べることもあるでしょう、阿羅国からのお客様がいらっしゃるうちに、色々と貪欲に勉強してね」
「はい!」

若者たちは誇らしげに笑顔で返事をしてくれた。

僕はそのまま阿羅国の職人親子とテーブルに付き、以前頼んだ子供達の楽器の話をした。

「子どもたちにたくさんの楽器を運んでくださったようで、ありがとうございます、来週には子どもたちと楽器に触れ合う時間が取れそうなんです、本当に嬉しくて」
「本国の職人達も自分らの作ったものが輸出できたことを、とても喜んでおりました」
「よかった……あ、それから、ヴィオラやチェロなんかも入れてくれているようだけど」

僕は送られてきた荷物の目録を読み進めて指を止めた。

「そうでございます、阿羅国では弦楽合奏も盛んでございますから、陛下はいずれ、他国にもご紹介したいと思っているようです」
「なるほど……ならば、教師も何人かご招待できますか?僕では全てを教えることはできませんし、できたら子どもたちに教えるのはバイオリンも含めて誰か雇いたいのですよ」
「なるほど、そうであれば……どうだろう?なあ」

親子は恥ずかしそうに顔を見合わせた。

「どうかしましたか?」
「いえ、僕ら家族は弦楽に全てを捧げてきた一族ですから、古くから製作だけでなく、もちろん演奏の方も指南してきたのです。私の妻や、娘らも教師としてやれるでしょう」
「なるほど……そういう一面もあるんですね、では、どうでしょう?よろしかったらご家族を紗国へお迎えできませんか? 奥様や娘さん達も阿羅国でお仕事があるでしょうから無理にとは言いませんが」
「よろしいのですか?」
「もちろんです。そうしてくださるなら、僕の方からも波羽彦王には一筆書いておきましょう」
「ありがとうございます!」

父と息子は顔を見合わせ嬉しそうにした。
そうだよね、家族が別れて何ヶ月も暮らしたのは初めてだろう。
それに気づかなかった僕が浅はかだった……

「住まいは城下町に家を借り上げているとか」
「ええそうなのです、ちょうどよい大きさの借家がございまして、この工房からですと、歩ける距離なんです」
「そうですか、家族を呼ぶとなると手狭ということはありませんか?」
「いえいえ、十分な広さでございます、なんせ5部屋もあるんですから」
「そうですか、なにか不便なことがあったら何でも言ってくださいね、あなた方はお客様なんですから」

僕は明るい笑顔に包まれた工房を後にして、また春の森を歩き始めた。
ここは少し窪地になっているので、坂道を登るようにして城に向かう、今日は研究所が休みなのだ。

もう3ヶ月近くも毎日ウォーキングをしているだけあって、弱い僕でもさすがに力がついてきたようだ、これぐらいの道は何でも無い。
さくさくと歩けることに感動しながらも、歩みを進めた。

そして、森の先にキラリと光るものが見え、気になって立ち止まった。

なんだろう?

僕が真顔で立ちすくんだのを見て、近衛が身構える。

「薫様……何か?」
「……いえ……なにか光ったんです。ちょっと気になって」
「どこでしょう?私は気付きませんでしたが」
「えと……あの方向、そうそう、その木のあたり」

僕は、近衛の一人がザクザクと森に入り、僕が光を感じたあたりに入り込んでいくのを見守った。


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