狐の国のお嫁様 ~紗国の愛の物語~

真白 桐羽

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ティータイム2 留紗視点

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60階に着くと、翠紗様付きの侍女が待っていた。
そして、そのまま薫様の部屋に案内される。

長い廊下を歩いて美しい花の絵がある襖を開けると、テーブルの花を手直ししている薫様が見えた。

今日も美しくキラキラと輝いている薫様!
僕はまたうっとりとなったよ。

「翠、留紗!おかえりなさい!」
「おかあさまただいま戻りました!」

タタっと走っていって、薫様に抱きついて頬に口付けされているのをじっと見る。
僕には経験のないことだ。
母上に抱きついてあんなふうにされるなんて。

なんとなく両手を握ってぼんやりしていると、薫様が近寄ってきて座り、僕のことも抱きしめてくれた。
花の匂いがパーッと広がって、めまいがするほど幸せな気持ちになった。

「おかえり留紗、お勉強頑張ったね」

耳元でそう囁かれて、涙が出そうになった。

「……はい、はい、薫様。がんばりました」
「うん、えらいよ」

そう言って笑顔で頭をポンポンとされた。
心がほんわり暖かくなった。

椅子にどうぞと促されて、翠紗様の隣にかけると、薫様の侍女がワゴンに乗せてあるケーキを取り分けて、きれいな絵皿にケーキを乗せてくれた。
薫様がその上からベリーソースをタラリとかけてくれて、更にかわいらしい野いちごを乗せてくれた。

「うわー!おいしそう!」
「すごい!」

僕と翠紗様は二人で喜んで手を叩いた。

「さあ、食べましょうね」

侍女が紅茶をいれてくれるのを待って、僕たちは食べ始めた。

甘酸っぱいベリーソースは馴染みのないものだけど、甘いケーキにとても合ってすごく美味しかった。
夢のような味がしたんだ。

「おいしいです、薫様!」
「おかあさま、とってもおいしい!」
「うん、よかった」

薫様はにこにこしながら紅茶を手にした。

「おかあさま、ナナは?留紗にあわせたいのです」
「ナナは今寝ていたけど……仙、ナナ連れてきて」
「かしこまりました」

薫様は侍女たちのことを名前で呼ぶ、なかなか珍しいことだけど、名を呼ばれて誇らしげにしている侍女を見ると、なるほどと思う。
名前をきちんと覚えてもらえる、それは誰だってうれしいわけだ。

「ナナ?」
「うん、僕の……えと、妹?弟?」
「ん?どっちだっけ?」

薫様も困った様子で首を傾げる。

まもなく現れた侍女は茶色の毛玉を腕に抱えていた。
とても大事そうに扱われている。

僕はわけが分からずそれに見入る。

翠紗様が侍女からそれを受け取って、僕の方に見せにきた。
小さな体の翠紗様が抱くと、かなり大きく感じる。

「かわいいでしょ?ナナっていうの」

恥ずかしそうにそう呟いた翠紗様は、優しい眼差しでその毛玉をじっと見つめた。
よく見ると、細くて頼りないふわふわの手足がぴょんと出ている。

「キュル」

え……

「こんにちは!って」

翠紗様は嬉しそうに顔を上げて僕を見つめて、はいって毛玉を渡してくる。
思わず受け取って抱っこすると、驚くほどふわふわで、そして花のようないい匂いがした。
その毛玉はごそごそと動き、「キュ」と言いながら丸くてかわいい目を開けてじっと僕を見つめた。
おでこあたりの毛はかわいらしい水色のリボンで結ばれている。

「かわいい……」
「うん、かわいいでしょ?僕のきょうだいなの。えと、男の子か女の子かわかんないから、僑先生に聞かなくちゃ」
「留紗は、動物苦手なの?」

薫様が心配そうに顔を覗き込んできた。

「いえ、苦手とかそんなことは……乗馬は得意です」
「そうなの?すごいね!この子はね、僕が引き取ってここで育てることにしたの、だから、よろしくね」
「そうなんですか?すごくふわふわで、かわいいです」

僕は手に当たるふわふわした感触が気に入って、思わず頬ずりしてみた。
「きゅる」ナナも鳴きながらすりすりしてくる……かわいい。

「人懐っこいですね」
「うん、なぜか警戒心がないんだよね」

薫様は面白そうに笑った、そして、お茶のおかわりをお願いしている。
僕はナナを翠紗様に返して椅子に座り直した。

翠紗様は小さな膝の上にナナを置いて、小さな手で撫で始めた。
ナナも「きゅきゅ」鳴きながら嬉しそうだ。
この子が翠紗様を『兄上』にしてくれるんだね、よかったね。





僕は翠紗様のことをいずれ、『翠紗様』と呼びかける日が来るだろう。


始めは僕も『翠紗様』と呼んでいたんだ。
でも今は、『翠って呼んで!』そう頼まれている。


同じ王子なんだからって。
今は二人共幼いから、おかしくないだろうけど……そのうち違ってくるだろう。
だから心の中では今でも翠紗様、そう呼んでいるよ。

僕は精一杯勉強します。


そして、僕の生涯は紗国のために、兄様、薫様、翠紗様、あなた方に捧げます。


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