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番外編
まざりの子 4
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指導役は珍しく慌てた様子で、幾人かの大人と一緒に僕の元に来た。
一人は初日に挨拶をしたときに見た……この荘園の主だ。
そして案内されてきたのは、二人の男だった。
二人とも、立派で美しい装束の体の大きな人だった。
僕はちょうどおにぎりを食べた直後で、名残惜しくおにぎりのにおいの付いた指を舐めているところだった。
驚いて顔を上げ、じっと指導役を見つめた。
「お前に会いたいと言ってるお方がいる、すぐに行け」
指導役はじっと僕の顔を見て、そしてふうとため息をついた。
「こちらの方々は王族を守る近衛の方だ。お前を迎えに来たらしい、どういうことなのかわからないが、命を取られたりはすまい」
指導役は苦々し気に僕にそう小声で伝えた。
「それにしても、確かなのでしょうか?この子を呼べとお嫁様がおっしゃってるとは……」
立派なひげの生えた荘園の主は不安そうに近衛に問いかけた。
「ああ、そうだ。薫様がこの子を探しておられる」
「しかし、あやつはあのような様ですぞ、風呂にもはいっておらぬ汚い姿なのです、薫様の御前にあのまま連れてゆくなど……」
「いや、あの方はそれをお望みだ。心配するな、あの方にはきちんとお考えがおありになる」
「……はあ……」
荘園主は解せぬという顔を解かないまま、僕をじっと見つめ、そして促すようにうんうんと頷いた。
僕は訳が分からないままゆるゆると立ち上がった。
美しい装束の近衛の人は、そんな僕に目線を合わせるように片膝をついて手を差し出した。
「さあ、行くよ」
「えと、あの」
「心配はいらない、こちらへ」
近衛の人は僕を近くに寄せるとそっと抱き上げてくれた。
もう一人の近衛は荘園主と何かを話している。
僕は大きな体に軽々と抱き上げられ、一瞬にして目線が高くなり慌ててしまった。
「ひっ」
「怖がらないで大丈夫です、飛翔するんだから空を行くが、怖ければ下を見るんじゃないよ」
「ひしょう?」
僕は思わずたくましい大きな体にしがみついた。
そして気づいたんだ。
僕、初めてだっこされてるって!
喜ぶ僕に近衛の人は笑顔を返してくれた。
その時思ったんだ、僕に微笑みかけてくれた人は、この人が初めてだなって。
「院にお嫁様がいらっしゃる。その方は院を良くしてくださろうとしているのだ、お前の処遇も良くなることだろう」
「院を?」
僕は目を丸くして近くにあるきれいに整った近衛の人を見つめた。
もう一人の人が近くに来て僕の背をぽんぽんと優しく叩いた。
「では、我らは行くぞ、案内感謝する」
「いえ……こちらこそ何もできませんで」
荘園主は指導役と一緒に頭を下げていて、僕からはもう顔は見えなかった。
「では行くぞ」
スッと体が持ち上がり、一瞬にして僕は空の中にいた。
下を見ると、こちらを心配げに見上げる荘園の皆の顔がちいさくはっきりと見えた。
「怖いか?」
「ううん、こわくない……」
僕はたくましい体にぐっとしがみついて空からの景色を楽しんだ。
隣には同じく空を飛んでいるもう一人の近衛の人。
とても現実とは思えない不思議な光景だった。
やがて見えてきた建物に降りていく。
上空からはわからなかったけれど、降りていくうちにわかった、それは僕がいる院だった。
大勢の人が正面玄関にいて、こちらをじっと見ている。
その中に、ひと際輝く黒髪の人がいた。
綺麗なんていう言葉では足りない、なんて……なんて美しい人だろう……
でも、でも僕なんかがお客さんの目に触れちゃいけない……
「お、おこられる?」
「……いや、怒られたりはせぬ。大丈夫だ」
スタと地に降り立った近衛の人は僕を地面に下ろし、そして僕の背を押した。
「あの方がお嫁様だ、そなたを探しておられた方だ」
一人は初日に挨拶をしたときに見た……この荘園の主だ。
そして案内されてきたのは、二人の男だった。
二人とも、立派で美しい装束の体の大きな人だった。
僕はちょうどおにぎりを食べた直後で、名残惜しくおにぎりのにおいの付いた指を舐めているところだった。
驚いて顔を上げ、じっと指導役を見つめた。
「お前に会いたいと言ってるお方がいる、すぐに行け」
指導役はじっと僕の顔を見て、そしてふうとため息をついた。
「こちらの方々は王族を守る近衛の方だ。お前を迎えに来たらしい、どういうことなのかわからないが、命を取られたりはすまい」
指導役は苦々し気に僕にそう小声で伝えた。
「それにしても、確かなのでしょうか?この子を呼べとお嫁様がおっしゃってるとは……」
立派なひげの生えた荘園の主は不安そうに近衛に問いかけた。
「ああ、そうだ。薫様がこの子を探しておられる」
「しかし、あやつはあのような様ですぞ、風呂にもはいっておらぬ汚い姿なのです、薫様の御前にあのまま連れてゆくなど……」
「いや、あの方はそれをお望みだ。心配するな、あの方にはきちんとお考えがおありになる」
「……はあ……」
荘園主は解せぬという顔を解かないまま、僕をじっと見つめ、そして促すようにうんうんと頷いた。
僕は訳が分からないままゆるゆると立ち上がった。
美しい装束の近衛の人は、そんな僕に目線を合わせるように片膝をついて手を差し出した。
「さあ、行くよ」
「えと、あの」
「心配はいらない、こちらへ」
近衛の人は僕を近くに寄せるとそっと抱き上げてくれた。
もう一人の近衛は荘園主と何かを話している。
僕は大きな体に軽々と抱き上げられ、一瞬にして目線が高くなり慌ててしまった。
「ひっ」
「怖がらないで大丈夫です、飛翔するんだから空を行くが、怖ければ下を見るんじゃないよ」
「ひしょう?」
僕は思わずたくましい大きな体にしがみついた。
そして気づいたんだ。
僕、初めてだっこされてるって!
喜ぶ僕に近衛の人は笑顔を返してくれた。
その時思ったんだ、僕に微笑みかけてくれた人は、この人が初めてだなって。
「院にお嫁様がいらっしゃる。その方は院を良くしてくださろうとしているのだ、お前の処遇も良くなることだろう」
「院を?」
僕は目を丸くして近くにあるきれいに整った近衛の人を見つめた。
もう一人の人が近くに来て僕の背をぽんぽんと優しく叩いた。
「では、我らは行くぞ、案内感謝する」
「いえ……こちらこそ何もできませんで」
荘園主は指導役と一緒に頭を下げていて、僕からはもう顔は見えなかった。
「では行くぞ」
スッと体が持ち上がり、一瞬にして僕は空の中にいた。
下を見ると、こちらを心配げに見上げる荘園の皆の顔がちいさくはっきりと見えた。
「怖いか?」
「ううん、こわくない……」
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隣には同じく空を飛んでいるもう一人の近衛の人。
とても現実とは思えない不思議な光景だった。
やがて見えてきた建物に降りていく。
上空からはわからなかったけれど、降りていくうちにわかった、それは僕がいる院だった。
大勢の人が正面玄関にいて、こちらをじっと見ている。
その中に、ひと際輝く黒髪の人がいた。
綺麗なんていう言葉では足りない、なんて……なんて美しい人だろう……
でも、でも僕なんかがお客さんの目に触れちゃいけない……
「お、おこられる?」
「……いや、怒られたりはせぬ。大丈夫だ」
スタと地に降り立った近衛の人は僕を地面に下ろし、そして僕の背を押した。
「あの方がお嫁様だ、そなたを探しておられた方だ」
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