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真矢の章
第三話
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「ごめんね、そんなに驚かないで」
完全に凍りついた僕を見て彼女は申し訳なさそうに言った。
「いや、もう意味わからなさすぎて」
そのままの正直な感想。なんだよこれ、ハニートラップどころの騒ぎじゃない。彼女は一体何者なんだ。僕はハンカチを取り出して、まさかこの時期に出るとは思わなかった冷や汗をふく。
「私ね、1年前くらいからアキナリさんに養ってもらってるの。全然悪い人じゃないから大丈夫。だけど、私あと少しでアッキーの家を出ないといけないの。私もう幼女じゃないからアキナリさん興味を失っちゃったの」
彼女は訳がわからないことをさらりという。もちろん内容も飛躍しすぎだが、僕としては別の所に引っかかっていた。
「う、嘘だろ。もったいなさすぎるそれは!」
自分で言うものでもないが、僕は少し変なのかもしれない。
驚いた理由を解説しよう。
前提として僕は圧倒的巨乳派である。それは確認するまでもないことだ。だが同時に僕は貧乳の尊さというのも充分に理解しているつもりだった。おっぱいがおっぱいである限り、たとえサイズが変わろうとその存在価値は等しく、多種多用なおっぱいがあるからこそ、あらゆるおっぱいに個性と華がある。誰一人として同じ流線形を持つ者はおらず、おっぱいの芸術の幅は、国境を越えて無尽蔵に広がっている。つまりおっぱいがおっぱいであることにおっぱいが持つおっぱいとしての役割があり、普遍おっぱい的おっぱい観念は何を持ってしても崩されるものでない確かな自明の理であるはずだ。しかしながらこのアキナリというロリコンの男は、女をロリかロリではないかという2つの領域でのみ分類しているようだった。この美少女、たしかに歳だけで言えば僕と同じくらいの年頃のようでそろそろロリとは言えなくなる年齢であるが、おっぱいの方はそれほどの発達が見られず、一般的にはロリとして充分通用するだろう。だがアキナリはおっぱいを以てしても彼女のロリ性を認めない。彼は僕の理解の範疇を超えたロリ観念を持つ、究極のロリータコンプレックスなのかもしれない。
僕はアキナリという男を勝手に妄想してその心理を探求する。
「ちょっと、もったいないって何よ、てか今何考えてんの?話聞いてた?何なのよ、その反応は」
しばらく話そっちのけで、気色悪い妄想にふけっていた僕に、彼女は少し怒ったような顔をした。しかし心底腹を立てているようには見えない。それに気を良くして『なんだよ、君が可愛いんだから当然の反応だろ』と歯が浮くような事を言いかけ、やっと僕は突っ込むべきところが確かにそこじゃなかったことに気づいた。
「ごめんなさい。あなたとアキナリさんはどういう間柄なんですか?そして僕はそれにどう関係しているんですか?」
急に真顔を取り繕う。彼女はそんな僕の豹変ぶりに笑った。彼女は意外にゲラなのかもしれない。可愛い。
「アキナリさんは私となんの関係でもないよ。アッキー……あ、アキナリさんとは性関係も無いし暴力を振るわれたりもしてない。ちょっと関係性は違うけどまあ親みたいなもんだと思ってくれたらいいよ。全然誘拐とかじゃないから。とある事情で知り合ったんだけどね。あ、そのことは後で言う。そんなことより君にね、頼みたいことがあります」
彼女はあちこち話が飛ぶ癖があるようだ。僕は、暑さで肌がべたべたしてきたので、万引き用のでかい上着を脱ごうとする。一方彼女はなぜだか居住まいを正していた。それから予想だにしない言葉を発し、ベンチに額が付くほど深々と頭を下げる。
「真矢くんに私の彼氏になって欲しいです」
勢いよく降ろした上着のチャックが、思いっきりシャツに噛んだ。
完全に凍りついた僕を見て彼女は申し訳なさそうに言った。
「いや、もう意味わからなさすぎて」
そのままの正直な感想。なんだよこれ、ハニートラップどころの騒ぎじゃない。彼女は一体何者なんだ。僕はハンカチを取り出して、まさかこの時期に出るとは思わなかった冷や汗をふく。
「私ね、1年前くらいからアキナリさんに養ってもらってるの。全然悪い人じゃないから大丈夫。だけど、私あと少しでアッキーの家を出ないといけないの。私もう幼女じゃないからアキナリさん興味を失っちゃったの」
彼女は訳がわからないことをさらりという。もちろん内容も飛躍しすぎだが、僕としては別の所に引っかかっていた。
「う、嘘だろ。もったいなさすぎるそれは!」
自分で言うものでもないが、僕は少し変なのかもしれない。
驚いた理由を解説しよう。
前提として僕は圧倒的巨乳派である。それは確認するまでもないことだ。だが同時に僕は貧乳の尊さというのも充分に理解しているつもりだった。おっぱいがおっぱいである限り、たとえサイズが変わろうとその存在価値は等しく、多種多用なおっぱいがあるからこそ、あらゆるおっぱいに個性と華がある。誰一人として同じ流線形を持つ者はおらず、おっぱいの芸術の幅は、国境を越えて無尽蔵に広がっている。つまりおっぱいがおっぱいであることにおっぱいが持つおっぱいとしての役割があり、普遍おっぱい的おっぱい観念は何を持ってしても崩されるものでない確かな自明の理であるはずだ。しかしながらこのアキナリというロリコンの男は、女をロリかロリではないかという2つの領域でのみ分類しているようだった。この美少女、たしかに歳だけで言えば僕と同じくらいの年頃のようでそろそろロリとは言えなくなる年齢であるが、おっぱいの方はそれほどの発達が見られず、一般的にはロリとして充分通用するだろう。だがアキナリはおっぱいを以てしても彼女のロリ性を認めない。彼は僕の理解の範疇を超えたロリ観念を持つ、究極のロリータコンプレックスなのかもしれない。
僕はアキナリという男を勝手に妄想してその心理を探求する。
「ちょっと、もったいないって何よ、てか今何考えてんの?話聞いてた?何なのよ、その反応は」
しばらく話そっちのけで、気色悪い妄想にふけっていた僕に、彼女は少し怒ったような顔をした。しかし心底腹を立てているようには見えない。それに気を良くして『なんだよ、君が可愛いんだから当然の反応だろ』と歯が浮くような事を言いかけ、やっと僕は突っ込むべきところが確かにそこじゃなかったことに気づいた。
「ごめんなさい。あなたとアキナリさんはどういう間柄なんですか?そして僕はそれにどう関係しているんですか?」
急に真顔を取り繕う。彼女はそんな僕の豹変ぶりに笑った。彼女は意外にゲラなのかもしれない。可愛い。
「アキナリさんは私となんの関係でもないよ。アッキー……あ、アキナリさんとは性関係も無いし暴力を振るわれたりもしてない。ちょっと関係性は違うけどまあ親みたいなもんだと思ってくれたらいいよ。全然誘拐とかじゃないから。とある事情で知り合ったんだけどね。あ、そのことは後で言う。そんなことより君にね、頼みたいことがあります」
彼女はあちこち話が飛ぶ癖があるようだ。僕は、暑さで肌がべたべたしてきたので、万引き用のでかい上着を脱ごうとする。一方彼女はなぜだか居住まいを正していた。それから予想だにしない言葉を発し、ベンチに額が付くほど深々と頭を下げる。
「真矢くんに私の彼氏になって欲しいです」
勢いよく降ろした上着のチャックが、思いっきりシャツに噛んだ。
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