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真矢の章
第九話
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アキナリが出かけたのは行きつけのメイド喫茶である。このメイド喫茶は合法のちゃんとした所ではあるのだが、かなりサービスが過激で、みだりに違法店に通って足がつくことを恐れるアキナリには持ってこいの場所であった。15歳以下にしか興味のない彼にとって、法律は天敵ものであるのだ。メイド喫茶に着いたアキナリはいつものように、お気に入りのティアラちゃんとおしゃべりをして、その間に大量の写真を撮る。アキナリは店では極めて紳士的な対応をとり、ティアラちゃんに指一本触れることさえしない。
みだらなことをしたいのであれば、やはり違法店にいかねければならない。ここで特別にアキナリが昔よく通っていた3パターンの違法店を紹介しよう。
1つめは一番軽く、「JKと散歩デート!!3時間2万円!」というサービスで、これは割高であるが女の子の質が良い。付き添い人の男が常に一人つき、女の子側の安全性が比較的高いため、アキナリのストライクゾーンである中学生が多く在籍しているのも魅力だった。2つめはJK作業場である。これはガラス張りの空間の中で、折り鶴を作ったり靴下を編んでいる女の子たちを間近で見ることができるというサービスだ。かなり謎の深い内容のように感じるかもしれないが、店側が風営法を何とかかいくぐろうとした結果なのだ。
ただこれはこれで、檻の外から中を見ている感覚があり、また違った興奮を楽しむことができる。
最も過激なものは最後の3つ目、JKお悩み相談所だ。
近年誕生したばかりの新しい形態の店で、一見ネット広告を見ただけではいやらしいことは一切書いていない。そのページはさながらカウンセリング業務のような内容だ。
『社会人になってストレスを抱える貴方へ。心のピュアな女子高生に悩みを相談してみませんか?きっと心が癒されることでしょう』
内情はただの水商売であるのだが、摘発を免れるために料金は2重の形態をとっている。
まず、客は店頭でカウンセリング代金として規定の額を徴収される。こちらは半分近くが店側のお金だ。そのあと女の子とガラス越しのカウンセリングルームで、客がその子にやって欲しいこととその料金の交渉を個人的に行い、双方が承諾したら奥の別室に行き何かしらのサービスを行う。この段階はあくまで個人的なやり取りということで、店側は関与していないとの姿勢を貫いている。1日の業務が終わったら、女の子が個人的にもらったお金については基本自分のものとなるが、場所代として数割をお店側が受け取ることになっている。つまり女の子からすればお客さんからどれだけお金を引き出せるかが腕の見せ所で、生活に直結する。このシステムのためJKお悩み相談所の女の子は、顔の可愛い子からそうでもない子までまちまちだ。しかし顔の保証こそないものの、世間に蔓延る未成年風俗店のなかで現在唯一、交渉次第で本番がやれるかもしれない店なのだ。
と、ここまで違法店について熱く語ってきたが、正直なところアキナリが今後違法店に出向く可能性はほとんどないといえる。かつてはアキナリも迸る性癖を抑えることができないものだったが、20代の後半に差し掛かった辺りから次第に気持ちをコントロールできるようになってきていた。これも全部ユキのおかげかもしれない。ロリータコンプレックスを引き摺っていたかつての自分なら、一人きりでいる女の子に平気で話しかけるような行為を繰り返していたことだろう。
ティアラちゃんとのふれあいを堪能して、足取り軽くアキナリは帰路につく。おっと。大事なことをすっかり忘れていた。ユキの旦那だ。彼女がずっと探していたという少年だ。見た感じでは何がいいのかよく分からない奴だが、それは俺が付け入るところではない。ユキがあれほど信頼しているのだから不安なところはあれど、にこやかに送り出してあげるのが俺の役目だろう。
しかしユキは俺のことをなんて紹介したんだろうか?
彼氏かな、元彼。彼氏だったらちょっとうれしいぞ。
アキナリはへらへらと鼻の下を伸ばす。すると鼻毛が出た。
「いやー、中学生は雇えないよ。君家出でしょ?きっとお母さん心配してるよ。はやく家に帰ってあげなよ」
覚悟はしていたが、やはりここでも無下に断られる。
「そうですか……分かりました」
個人経営のコンビニから出た皆川桜は、曇天の空を見上げてぎゅっと下唇を噛んだ。
現金は残り少なくなっている。なんとかはやく職を見つけなければ。だが中学生の女を雇ってくれる店はそう簡単には見当たらない。
俯き加減で歩いていると風が吹いて、髪が彼女の視界を覆い隠した。
手で払いのけたその毛先は驚くほど油分を失っている。
ああ、恰好も早くちゃんとしなきゃ。
すっかり汚れが目立つようになったガウンで体を包み、桜は乾いた冷たい木枯の中をひっそり歩く。
大人は嫌いだ。大人はみんな口を揃えたように同じことしか言わない。私の親も人生も何も知らないくせに、全てを見知ったように「私」を語り、心配しているふりをして、そのくせ私に何もしてくれない。
だが何よりも桜は、自分がそんな大人に頼らなくては何もできない存在であることが辛くてたまらない。
桜はガウンの袖を強く握りしめる。
もう私は覚悟を決めなくてはいけない。私は自分の力でこの世界を生き抜く。その為には手段を選んでいられないんだ。曇り空の公園。
桜はベンチに腰掛け、昨夜あらん限りに集めた風俗店の資料をカバンから取り出す。割れた右手の爪には見向きもしない。
無造作に取り出された紙は、風に煽られバサバサと耳障りな音を立てる。桜は風に靡くビラを食い入るように見つめた。
みだらなことをしたいのであれば、やはり違法店にいかねければならない。ここで特別にアキナリが昔よく通っていた3パターンの違法店を紹介しよう。
1つめは一番軽く、「JKと散歩デート!!3時間2万円!」というサービスで、これは割高であるが女の子の質が良い。付き添い人の男が常に一人つき、女の子側の安全性が比較的高いため、アキナリのストライクゾーンである中学生が多く在籍しているのも魅力だった。2つめはJK作業場である。これはガラス張りの空間の中で、折り鶴を作ったり靴下を編んでいる女の子たちを間近で見ることができるというサービスだ。かなり謎の深い内容のように感じるかもしれないが、店側が風営法を何とかかいくぐろうとした結果なのだ。
ただこれはこれで、檻の外から中を見ている感覚があり、また違った興奮を楽しむことができる。
最も過激なものは最後の3つ目、JKお悩み相談所だ。
近年誕生したばかりの新しい形態の店で、一見ネット広告を見ただけではいやらしいことは一切書いていない。そのページはさながらカウンセリング業務のような内容だ。
『社会人になってストレスを抱える貴方へ。心のピュアな女子高生に悩みを相談してみませんか?きっと心が癒されることでしょう』
内情はただの水商売であるのだが、摘発を免れるために料金は2重の形態をとっている。
まず、客は店頭でカウンセリング代金として規定の額を徴収される。こちらは半分近くが店側のお金だ。そのあと女の子とガラス越しのカウンセリングルームで、客がその子にやって欲しいこととその料金の交渉を個人的に行い、双方が承諾したら奥の別室に行き何かしらのサービスを行う。この段階はあくまで個人的なやり取りということで、店側は関与していないとの姿勢を貫いている。1日の業務が終わったら、女の子が個人的にもらったお金については基本自分のものとなるが、場所代として数割をお店側が受け取ることになっている。つまり女の子からすればお客さんからどれだけお金を引き出せるかが腕の見せ所で、生活に直結する。このシステムのためJKお悩み相談所の女の子は、顔の可愛い子からそうでもない子までまちまちだ。しかし顔の保証こそないものの、世間に蔓延る未成年風俗店のなかで現在唯一、交渉次第で本番がやれるかもしれない店なのだ。
と、ここまで違法店について熱く語ってきたが、正直なところアキナリが今後違法店に出向く可能性はほとんどないといえる。かつてはアキナリも迸る性癖を抑えることができないものだったが、20代の後半に差し掛かった辺りから次第に気持ちをコントロールできるようになってきていた。これも全部ユキのおかげかもしれない。ロリータコンプレックスを引き摺っていたかつての自分なら、一人きりでいる女の子に平気で話しかけるような行為を繰り返していたことだろう。
ティアラちゃんとのふれあいを堪能して、足取り軽くアキナリは帰路につく。おっと。大事なことをすっかり忘れていた。ユキの旦那だ。彼女がずっと探していたという少年だ。見た感じでは何がいいのかよく分からない奴だが、それは俺が付け入るところではない。ユキがあれほど信頼しているのだから不安なところはあれど、にこやかに送り出してあげるのが俺の役目だろう。
しかしユキは俺のことをなんて紹介したんだろうか?
彼氏かな、元彼。彼氏だったらちょっとうれしいぞ。
アキナリはへらへらと鼻の下を伸ばす。すると鼻毛が出た。
「いやー、中学生は雇えないよ。君家出でしょ?きっとお母さん心配してるよ。はやく家に帰ってあげなよ」
覚悟はしていたが、やはりここでも無下に断られる。
「そうですか……分かりました」
個人経営のコンビニから出た皆川桜は、曇天の空を見上げてぎゅっと下唇を噛んだ。
現金は残り少なくなっている。なんとかはやく職を見つけなければ。だが中学生の女を雇ってくれる店はそう簡単には見当たらない。
俯き加減で歩いていると風が吹いて、髪が彼女の視界を覆い隠した。
手で払いのけたその毛先は驚くほど油分を失っている。
ああ、恰好も早くちゃんとしなきゃ。
すっかり汚れが目立つようになったガウンで体を包み、桜は乾いた冷たい木枯の中をひっそり歩く。
大人は嫌いだ。大人はみんな口を揃えたように同じことしか言わない。私の親も人生も何も知らないくせに、全てを見知ったように「私」を語り、心配しているふりをして、そのくせ私に何もしてくれない。
だが何よりも桜は、自分がそんな大人に頼らなくては何もできない存在であることが辛くてたまらない。
桜はガウンの袖を強く握りしめる。
もう私は覚悟を決めなくてはいけない。私は自分の力でこの世界を生き抜く。その為には手段を選んでいられないんだ。曇り空の公園。
桜はベンチに腰掛け、昨夜あらん限りに集めた風俗店の資料をカバンから取り出す。割れた右手の爪には見向きもしない。
無造作に取り出された紙は、風に煽られバサバサと耳障りな音を立てる。桜は風に靡くビラを食い入るように見つめた。
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