369 / 415
144.冬のビニールハウス③(怖さレベル:★★☆)
しおりを挟む「ったく、なんだよ……!!」
この、とてつもなく急いでいるときに!!
おれは打ち付けたひざを押さえつつ、つま先へと視線を向けました。
「ひっ……!?」
そこには、石が転がっていました。
いえ、正確に言うと、ただの石ではありません。
破片です。
地蔵の体の一部、腕や足、首や腹、
そういった体がバラバラになった四肢の破片が、
足元にいくつもいくつも、山ほど転がっていたんです。
「そ、んな……なんで……!!」
この道は何度も通ったことがあるけれど、
今まで、こんなものを見たことはありません。
おれが、地面にひっくり返ったまま呆然としていると、
ゴンッ、ゴンッ
すぐ背後から、重い音がしました。
地面を、重いものがたたくような音。
車や、人間の足音ではけっしてない、
なにか重量をもったものが、飛び跳ねて近づいてくるような、そんな音――。
「う……あ……あ……!」
見ちゃいけない。
振り返っちゃいけない。
ゴンッ、ゴンッ……コン
音が、すぐ後ろで止まりました。
尻もちをついた状態の、おれの背中。
すぐそこに、なにかが――いる。
コン
小さな音。
それとともに、肩に。
つめたい、人の体温ではありえない、冷たいものがそっと触れて――
おれは、パッタリと、その場で意識を失ってしまいました。
ええ……情けない話ですが、おれが覚えているのはそこまでです。
気を失ったおれは、道のまんなかで転がっているところを、
近所の農家の人に見つけてもらいました。
すぐに病院に担ぎ込まれて、いろいろ検査されたようですが、
幸い、なにもおかしいところはなかったようです。
ただ、意識を取り戻したおれはパニック状態で、
『ビニールハウスから地蔵がくる』やら『石が襲ってくる』しか言えないような有様だったので、
だいぶ頭の方を疑われはしましたが。
打撲の痕や、なにか危害を加えられた形跡もなく、
おれも、自分で見たアレコレを信じられなくなったほどです。
でも、ビニールハウスは、確かに壊されていたはず。
退院したら、車でも使って見にいってみよう、なんて思っていました。
それで、なんだかんだ、検査で三日ほど入院している間、
お見舞いにきてくれた親が、ふと思い出したように言ったんですよね。
あのボロボロになったビニールハウス、撤去されたみたい、と。
理由としては、獣が住処にしてしまっていて、
設置しておくと危ないから、というのが理由のようでした。
長期間放置されていたのに、どうして急に?
おれはとても理由に納得がいかず、
あとでコッソリ、あの辺でビニールハウスをやっていた家に、
事情を聞きに行きました。
ビニールハウスの撤去について聞くと、
まぁ案の定というべきか、その家のオッサンは、
『獣の住み処になるから』という理由しか言いません。
だからおれは、例の体験を話したんです。
『ありえない。夢でも見たんだろう』とバカにされることを承知で。
でも、オッサンは、とたんに厳しかった表情を憐れむようなものに変え、
「そうか、見たか」と言ったんです。
事情を知っているような言い方に、
おれがさらに問いただすと、オッサンはポツリと答えてくれました。
「おれんちにも来たんだよね、アレ」
と。
その後、うちの町にあった使われていないビニールハウスはすべて撤去され、
雪害による痕跡は、ほとんどわからなくなりました。
あの地蔵がなんだったのか。
それはどうやら、地元に古くいる人でも、よくわからないようでした。
ただ、はるか昔。
この辺りでは、前にも大雪で大損害を受けたことがあったようです。
その頃は、今よりも貧富の差が激しく、
かなりの数の子どもが亡くなったのだ、と聞きました。
だからそれを弔うために、うちの地域には、
石碑とお地蔵様が、たしかにいくつも建てられているんです。
でも、あの時おれが見たお地蔵様の顔は、
うちの地域にあるお地蔵様と、まったく違っていたんですよね……。
あれは、弔いきれなかった子どもの霊が、お地蔵様の形をして出てきたのか、
それとも、ただの、質の悪い悪霊的なものだったのか……。
ビニールハウスを撤去してからは目撃情報もなく、
おれ自身、再就職先を見つけて地元から離れたので、いまだに詳しいことはわかっていないんです。
消化不良……でしたか? へへ、スイマセン。
でも、お地蔵様に追っかけられたときのあの恐怖……あれはもう、二度と体験したくはないですね。
ええ、話を聞いてくださって、ありがとうございました。
1
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
百の話を語り終えたなら
コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」
これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。
誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。
日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。
そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき——
あなたは、もう後戻りできない。
■1話完結の百物語形式
■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ
■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感
最後の一話を読んだとき、
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる